アナザー・ディメンジョン -異界交流記-   作:誠龍

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第38話 小倉名物・焼きうどん(前編)

「みんな下がりなさい!下がって!」

 

衛兵達が野次馬を寄せ付けないようにしている。燃えているのは雑貨屋カムランだ。

龍馬はたまらずアクセルを回し、人の合間を縫って店に近づく。

急ブレーキをかけて燃え盛る家の前に止まり、バイクを降りて駆け寄る。

 

「奥さん!危険だから下がって!」

 

「娘が……!!まだ娘が中にいるんです!!」

 

「ああ……シャル……そんな……!」

 

炎上する自宅に戻ろうとするマルタを必死に止める衛兵。するとそこにバイクを降りた龍馬が駆け寄ってきた。

 

「マルタさん!キースさん!」

 

「リョーマさん!?」

 

「一体何があったんですか!?」

 

どうやら竜の髭亭で食事をした後帰宅して就寝したところ、その数時間後に不審な物音で目が覚めたらしい。その時に既に火の手が上がっており、慌てて三人で脱出するも、シャルルが母から貰った大切な"ある物"を取りに制止を振り切って家へと戻ってしまったというのだ。

 

「シャルはどこにいるんですか!?」

 

「二階の自室です……!!」

 

「よし……!!」

 

龍馬は近くにあった井戸から水を組み上げてそれを頭に被る。そして燃え盛る家を睨み付けた。

 

「待ってろよ、シャル……!!」

 

「おい君!何をやってるんだ!危ないから早く戻りなさい!」

 

「うるせえぇぇぇ!!!!」

 

「うっ!?」

 

龍馬は龍の咆哮の如く怒鳴り、彼を止めようとした衛兵が怯んだ隙に炎の燃え盛るカムラン邸へと突っ込んでいった。

 

 

ーーーー家の中は酷い有り様だった。

そこら中に火の手が回り、熱気と煙が家中を覆い尽くしている。

さらに頭上から梁の一部がガラガラと落ちてきた。

 

「くっ……!!」

 

龍馬はたまらず腕で顔を防御する。

 

「おとーさーん!!おかーさーん!!うわあぁーん!!」

 

二階からシャルの泣き声が聞こえてくる。

既に火の手は二階をも飲み込もうとしており、家全体が軋む嫌な音が聞こえる。このままでは家屋の倒壊は時間の問題だ。

 

「シャルー!!今行くぞー!!」

 

龍馬は炎の中を突っ切って階段を駆け上がり、二階の一番奥のシャルの部屋を目指す。

奥の部屋のドアを開けようとするが、歪んでしまっているのか開かない。

しかし龍馬はドアを蹴破ろうと蹴りを入れ続ける。

 

「オラッ、オラァ!!」

 

そうしている間にも火の手は広がり続け、家がさらに嫌な音を立てる。だが龍馬は諦めない。

今、目の前で幼い命が助けを求めている。子供を見捨てるなどそんな真似は出来ない。気付けば身体が勝手に動き、こうして自らの命も顧みず、炎の中へと飛び込んでいた。

だが、自分が死ぬつもりもシャルルを死なせるつもりもない。龍馬はとにかくドアを蹴り続けた。

 

「開け!開けって言ってんだよこのクソドア野郎がぁ!!」

 

龍馬は渾身の力を込めてドアを蹴飛ばした。するとドアが金具部分から外れ、大きな音を立てて倒れた。

 

「シャル!!」

 

中に入るとシャルルは部屋の隅でクマのぬいぐるみを抱いて震えている。

 

「りょ、リョーマお兄ちゃん……?」

 

「シャル、よかった!無事か!?」

 

「う、うん!」

 

「よし……外でお父さんとお母さんが待ってる。立てるか?」

 

龍馬は立ち上がったシャルルを抱き抱えると急いで階段を引き返す。しかし階段を降りようとすると梁が落下し、龍馬達の行く手を塞いだ。

 

「うわっ!?」

 

燃え盛る太い梁のせいで階段を降りることが出来ない。だが龍馬はドアの時のようにその梁を何度も蹴飛ばした。

 

「どきやがれ!!!!」

 

龍馬が蹴飛ばすと梁は音を立てて砕け、瓦礫と化して階下へ転がり落ちる。辺りの火の手がゴウゴウと音を立てて龍馬達を包み込もうとする中、彼はシャルルを、幼い命をしっかりと抱きしめたまま、急いで階段駆け降りて屋外へ飛び出した。

 

「シャル!!」

 

「お父さん!お母さん!」

 

「ああ、シャル……無事で良かった……!!」

 

龍馬は抱き抱えたシャルルをキースとマルタに引き渡すと二人はしっかりと我が娘を抱き締めた。

 

「リョーマさん……!!ありがとうございます……!!あなたは娘の命の恩人です……!!」

 

「気にしないでください。それよりもシャルが無事で本当に良かった」

 

二人は涙を流しながら何度も龍馬に頭を下げた。

幸いにもシャルルはほとんど無傷であった。

どうやら家に戻った理由はこのマルタが編んだ手作りのぬいぐるみを取りに戻ったためらしい。

その後、龍一郎や涼子達も合流し、事の次第を把握した。

 

 

 

 

 

翌日、火は消し止められたが焼け跡は酷いものだった。

もはや何も残っておらず、あるのはただ焼け焦げた瓦礫だけ。カムラン一家は家と財産を一夜にして失ってしまったのだ。キースは焼け跡になったかつての我が家を見てガクリと膝をついた。

 

「ああ……家も財産も失って……これから私達はどうやって生きていけばいいんだ……」

 

「あなた……」

 

「お父さん……」

 

一家の様子を見に来た龍馬もかける言葉が見つからない。

落ち込む夫を励ます妻と娘。その背後からジャラジャラと装飾品が揺れ動くうるさい音を立てながら一人の男が近づいてきた。

 

「おやおや、キースさん。どうされたのですか?……まあなんと、家が無くなっているではありませんか。これはお気の毒に。これではもうこの土地には住めませんなぁ」

 

「ラオグリッド……!!」

 

ニヤニヤと下品な笑みを浮かべながら近づいてきたのはラオグリッドだ。

 

「家がなくては店も出来ないでしょう。どうです?今ならこの土地を私が買ってあげますよ。その金でどこか別の場所で商売でも始めたらどうです?フフフ……」

 

「お前だな!私達の家に火を放ったのは!」

 

「はて、何のことやら。根拠のない言い掛かりはやめていただきたいですなあ。

それよりもこれからどうするのです?店も財産もない状態では家族を養うことは出来ないでしょう。

……奥様、どうです?ご主人を捨てて私の元へ来るなら(めかけ)として養ってあげてもよろしいですよ?ああ、お子さんももちろん一緒に。まあ、子供は雑用がいいとこでしょうが」

 

言いたい放題のラオグリッド。やはりカムラン邸に放火をしたのはこの男の仕業で間違いない。龍馬は拳を握り締めてズンズンと歩いていく。

 

「貴様……!!」

 

「ふん、大人しく土地を売り渡していれば良かったものを。これこそ"自業自得"というヤツですなあ!はっはっはっ!!……ぶごぉっ!?」

 

高笑いを上げるラオグリッドの顔面に龍馬の拳がめり込んだ。そのまま数メートル先まで吹っ飛ぶラオグリッド。

 

「テメーは絶対許さねぇ。何の罪もねぇ人をテメーのためだけに踏みにじりやがって」

 

龍馬はラオグリッドを見下ろして拳をわなわなと震わせながら怒りに満ちた声で言い放つ。

昔読んだ漫画の主人公も言っていた。『悪とは自分自身のためだけに弱者を踏みつけ、利用する奴のことだ』と。今目の前にいるこの成金野郎こそまさにそれだ。

 

「くっ……!また貴様か……!」

 

「見てろ。"雑貨屋カムラン"は俺達が必ず復活させる。テメーがいくら邪魔をしようとお前らは何度でも叩き潰してやるからな」

 

「ふ、ふん!やれるものならやってみろ!どうせ無駄だがなぁ!はっはっはっ!」

 

ラオグリッドは龍馬に殴られた鼻っ柱を押さえて涙と鼻血を流しながら捨て台詞を吐きつつ、高笑いを上げながら去っていった。

 

 

 

 

 

 

その後、龍馬は勇斗達と合流してカムラン邸跡にてキース達とある会話を行っていた。

それは先ほど言った"雑貨屋カムランを復活させる"ことについてだ。

聞けばキースとマルタは娘が生まれる前は小さな屋台を営んでいたらしい。娘が生まれたのをきっかけに一念発起してそれまで貯めた貯金を投げうって店舗を構えたという。そこで……

 

「キースさん!もう一度屋台をやりましょう!」

 

「……え?」

 

「俺にいい考えがあります!あいつらラオグリッド商会の持っていない……日本の料理で勝負してやりましょう!」

 

「で、でも……」

 

「大丈夫、乗っかった船です。もしあのバカの差し金が来ても俺が守りますよ!な?勇斗!」

 

「しょーがねぇなあ。協力してやんぜ!」

 

「私も!」

 

「ま、まあ、手伝うくらいいいけど……」

 

他の四人の仲間達も快諾してくれた。……千春は"快諾"と言っていいものかわかりかねるが。

 

「……あなた。もう一度やり直しましょう。私達が落ち込んでたらシャルが不安になってしまうわ」

 

マルタがそっと夫の背中に触れる。そしてキースは決心をし、立ち上がった。

 

「……そうだな。私達が頑張らないで誰が娘のために頑張るんだ。やってやる。何度だって立ち上がってみせる!」

 

「その意気です、キースさん!」

 

こうしてカムラン一家と龍馬達一行は一致団結して"雑貨屋カムラン"を復活させることにした。

まずは焼け跡を片付ける。土地を更地にしたら次は屋台だ。建材となる木材の調達をどうしようかと考えていたらいつの間にかシャルルが消えていたことに気付く。するとシャルルが屈強な男達を連れて帰ってきた。

 

「あなたは……建築ギルドのニコラスさん!」

 

「よう、キースさん!」

 

どうやらいつの間にか消えたシャルルは顔見知りであり、店の常連であった建築ギルドを頼ったらしい。

 

「急に娘さんが来てよお。『お金は働いて絶対返しますからお願いします』って必死に頼み込んで来たんだよ。こんな小さな子にここまで頼まれて無下に帰してちゃ建築ギルドの名が廃るってもんよ!それにあんたんとこ店には皆が世話になってる。喜んで協力させてもらうぜ」

 

ニコラスはギルドの男達と共に屋台を建て始めた。さらにその後ろには小さな小屋を建てている。

 

「寝るとこも無くて宿暮らしなんて子供が可哀想だろ!ちょっと小さいが、その代わり今日中に完成させてやるよ!」

 

「ありがとうございます、ニコラスさん……!」

 

ニコラスが屋台と小屋を建てている作業に龍馬達も加わる。皆で一丸となって作業を進めた。

途中で龍馬、マルタ、千春が作業を離れて屋台で使うものの買い出しに出かける。

 

「斎藤、あんたいい考えがあるっていってたけどどうするの?」

 

「まあ、待てって。……マルタさん、小麦は原価は安いんですか?」

 

「ええ、まあ。小麦は帝国の特産品の一つですし」

 

「よし、マルタさん。今から作るものは小倉名物"焼きうどん"です!」

 

「ヤキ……ウドン?」

 

焼きうどんはその名の通り鉄板でうどんを焼きそばのようにソースや醤油で焼いて食べる、北九州は小倉の名物である。

 

「まず麺や具はいいとして……問題はソースだな。一から作るには……」

 

龍馬はスマホを操作して作り方を調べる。

日本人観光客が増えたため、帝都とその周辺にはアンテナが設置されている。そのため、こちらの世界でも帝国内であればスマホが使えるのだ。

 

「お、動画サイトに作り方載ってる」

 

マルタがスマホに驚きながらも動画サイトの"本格!焼きそばソースの作り方!"というタイトルの動画を三人で凝視する。

この中でわかったことは焼きそばや焼きうどんに使うソースを作るにはいくつかの野菜・リンゴ・砂糖・醤油・ケチャップまたはトマトジュース・赤ワイン・酢・片栗粉・レモン汁・ナツメグとローリエなどのハーブ・塩・コショウなどが必要となる。もっと本格的なソースとなるとさらに沢山の具材が必要だが、この動画のレシピではこれでも充分にできるとのこと。

まずは塩・コショウ・砂糖を買い揃え、次に果物だ。これは簡単に見つかった。

市場で売っていたペレットの実という果実がまんまリンゴだったのだ。

次に野菜。必要なものはニンジンとタマネギだ。ニンジンはキャローテを買い、タマネギはケルパという花の球根を使う。

ケルパの花は球根が食用とされており、タマネギよりもやや小振りで辛味は控えめだが食感はタマネギのそれと食感や味は変わらない。

トマトはマトールという小さな赤い実がそれに近かったので購入。一緒に具となるキャベツの代わりのロキートも沢山仕入れた。

ハーブに関しては龍馬は分からなかったが、千春がハーブを色々知っていたため香辛料を片っ端から探してようやくそれに近いハーブを探し当てた。

そして片栗粉を作るため、ポルタットを大量に購入。そしてレモンに近い柑橘類のモルドの実も買った。

あとは赤ワインと酢と醤油だが、ワインと酢は難なく見つかったものの、醤油が見つからない。

そこで龍馬は一旦カムラン邸跡へ戻ってバイクに乗り、竜の髭亭へ向かう。竜の髭亭では涼子がアンナにレシピを教えており、まだ腰が完治していないアンナの代わりに龍一郎やルミナが雑用を手伝っている。

そこで醤油の仕入れ先から安定して仕入れをできるまで涼子がカムラン一家から大量に買っておいた醤油の在庫を分けてもらう。母が大量に買ってくれていてよかった。これでなんとか持ちこたえられればいいのだが。

ここで嬉しい事が起きる。アンナが調理用の鍋を分けてくれたのだ。

 

「カムランさんとこにはあたしもお世話になってるからね。これぐらいはしないとね!」

 

「おかみさん、ありがとう!助かるぜ!」

 

「龍馬、あんたよう頑張るねえ。あんたはバカやけど自慢の息子たい!」

 

「バカは余計だよ!でもまあ、ありがとな母さん」

 

龍馬は母からのねぎらいの言葉を受けつつ、バイクの後ろに鍋を革紐で固定して次なる目的地へ。次は鉄板の調達だ。龍馬はグレンディルの鍛冶屋へ向かった。

龍馬がグレンディルに事の次第を説明すると、武具以外にも日常生活に必要な金物を作っているグレンディルは鉄板を格安で譲ってくれた。

 

「リョーコさんのせがれとあっちゃあ、協力せんわけにはいかんのう!その"ヤキウドン"とやら、楽しみにしておるぞ!」

 

「グレンディルさん、ありがとな!店が出来たら来てくれよ!」

 

龍馬はグレンディルから受け取った鉄板を革紐で身体に固定して背負い、カムラン邸跡へ一度戻る。

既にカムラン邸では屋台は完成しており、ニコラス達建築ギルドの男達は新しい住居となる小屋の建築に取り掛かっていた。

龍馬は調達した調理器具と醤油を置くと今度は勇斗と共にバイクで小麦の調達に向かう。

小麦は特産品とだけあって大量に安く手に入った。帰りにブラウンボアの肉もたっぷり買っておく。

荷物の積みすぎで少しふらつきながらも小麦と肉を屋台まで持ち帰る。これで準備は整った。だが……

 

「……なんか、全体的に寂しくねえか?」

 

勇斗の言う通りだ。屋台には何も装飾が無いため、殺風景に見えてしまう。そこでディレットが提案する。

 

「そうだ!リョーマ、ついてきて!」

 

ディレットの案内で龍馬は再びバイクに跨がり、ある場所へと向かう。

それはディレットがエルフ生地を卸していたタマラの仕立屋だ。

 

「タマラおばさん!」

 

「いらっしゃ……あら!?ディレットちゃん!久しぶりじゃないか!?元気にしてたかい?」

 

「ええ、おかげさまで!」

 

「そうかい、そりゃあよかったよ!……ところで隣のニホン人の子は誰だい?」

 

「紹介しますね!私がお世話になってるニホンのサイトウご一家のリョーマっていいます!」

 

「斎藤龍馬といいます。よろしくお願いします」

 

龍馬は丁寧にタマラに挨拶をする。

 

「はいよ、これはご丁寧にどうも。それで……今日はどんな用だい?」

 

ディレットはここに来た理由を説明する。

彼女は屋台を飾るための布などを相談しにやってきたのだ。

 

「なるほどねえ……それで?どんな外見にするんだい?」

 

「えっ?えっと……」

 

「おいおい、ディレット……お前なぁ……」

 

どうやらどんな装飾にするかのイメージまではディレットは考えていなかったようだ。たまに彼女はこういった間の抜けたところがある。まあ、そんなところも可愛げがあるのだが。

龍馬はそこで何かを閃いたらしく、スマホをいじって"ある画像"を見せる。タマラは「便利で不思議な道具だねえ」とスマホに感心していた。そして羊皮紙にある日本語を書いてタマラに見せた。

 

「タマラさん、こんな感じの幕にこの日本語を大きく書いてもらえますか?」

 

「任せな!お安いご用さ!あんたらも忙しいんだろう?完成したら届けてあげるよ!一晩かかるけど急いで作ってやるから待ってな!」

 

「タマラおばさん、ありがとうございます!」

 

「タマラさん、感謝します!」

 

二人は先に料金を払って屋台へ戻った。いよいよ今からソース作りを始める。

買い出しの時間でキースはシャルルと共にかまどを作っていた。準備は万端だ。

まずは片栗粉を作るため、皮を向いたポルタットを細かく潰して麻袋に包む。口を革紐でよく縛り、ボウルの水にさらして水の中で10分ほどよく揉む。

揉み終わったら"さらし"となる麻袋をよく絞り、15分ほど置くとボウルの底に白い沈殿物が溜まるので水を入れ替えてさらに15分置く。これが芋のデンプンである。水が透き通ってきたら水を再び入れ替えてさらに15分待つ。

そして15分経ったら水を捨てて、底の白い塊をヘラでよくほぐす。

あとはこれを大きな木の盆に移し、半日ほど充分に乾かせば……

 

「よし、片栗粉はこれでいいな」

 

「リョーマさん、これが"カタクリコ"ですか?」

 

「そうです、とろみをつけるための材料なんですよ!」

 

次にいよいよソース作りだ。小麦を練って麺を作る作業は勇斗達とカムラン一家に任せ、龍馬は鍋に水を入れ、砂糖と水を入れて煮込む。

煙が立ってきたらかまどから鍋を下ろしてそこに新しく湯を加える。再び火にかけたら鍋にこびりついたカラメルを溶かしながらマトール・ケルパ・キャローテ・ペレットの実を細かく刻んだものとハーブ類を入れて弱火で煮込む。

さらに赤ワイン・醤油・塩・コショウを加えて蓋をしてさらに煮込んだら酢とモルドの実の絞り汁を加えて一晩寝かせる。後の工程は明日だ。

龍馬達は片栗粉作り、麺作り、ソースの下ごしらえに一日を費やした。日も傾く頃、ようやく小屋が出来上がった。小さな小屋だが作りはしっかりしており、しかもニコラスは木造ではなく、レンガ作りの家にしてくれていた。これなら簡単に燃やされる心配はないだろう。

 

「よし、出来たぜ!ちょっと狭いが、作りは頑丈だ!」

 

「ニコラスさん……本当に何とお礼を言えばいいのか……」

 

「いいってことよ!先行投資みたいなもんだ!そっちのリョーマとかいうボウズ達と作る"ヤキウドン"とやら、楽しみにしてるぜ!じゃあな!」

 

ニコラスを初めとした建築ギルドの男達は道具を片付けて帰っていった。

 

「さあ、俺達ももう少し粘るぞ!」

 

龍馬達は日が沈むまで再びソースと片栗粉と麺作りの作業に没頭する。

だが、その時ーーーー。

 

「よう、カムランさんよぉ」

 

「まーだ悪あがきしてるのか?」

 

「ぐへへ……往生際が悪いなあ?」

 

「全くだ。そろそろ諦めたらどうだ?」

 

ゴロツキ四人がこちらに近づいてきた。間違いなくラオグリッドの刺客であろう。

 

「……お前達!ラオグリッドの手先だな!?」

 

「お前らに居付かれるとラオグリッドさんが困るんだよなぁ。とっとと立ち退いてくれねぇとよぉ。へへへ……」

 

リーダー格のゴロツキが近付いてくる。しかしその前に立ち塞がる龍馬と勇斗。

 

「あぁ~ん?なんだこのガキは?」

 

「帰れバカ共。ここはお前らの来る場所じゃねぇぞ」

 

「全く、よく喋るゴミだぜ。ゴミは掃除しねえとな」

 

「なっ……!?なめやがってこのガキ!!構わねぇ、おめぇら!!やっちまえ!!」

 

激昂したゴロツキの男達は龍馬と勇斗に襲い掛かる。二人は構え、戦闘体勢に入った。

龍馬は襲い来るパンチを避けて男を背中から蹴飛ばしてダウンさせる。そしてその後ろの男に三連続の攻撃を喰らわせる。

 

「オラ、オラアァッ!!」

 

ボディーブロー、顔面パンチと喰らわせ、とどめに顔にハイキックを浴びせる。

勇斗はその後ろの男のパンチを受け止めると、顔面にお返しとばかりにパンチをお見舞いした。よろけたところに背中に回って腰から羽交い締めにし、後ろに投げ飛ばして必殺のジャーマンスープレックスだ。

さらに横にいた男をその巨体を生かしたタックルで吹き飛ばすと、倒れた男に対して馬乗りになり、顔面に思い切りストンプを喰らわせる。

 

「くっ、クソがあぁぁぁ!!!!」

 

リーダー格の男が起き上がり、龍馬に襲い掛かる。龍馬は突進を避けて再び背後に回る。

男が振り返った瞬間、足に強烈なローキックを浴びせて男をすっ転ばした。平蔵から教わった必殺の足払い攻撃"五十嵐流・鬼崩し"である。

 

「どりゃああああああ!!!!」

 

龍馬は仰向けに倒れたリーダー格の男の顔面に思い切り拳を打ち込み、その攻撃を受けた男は失神してしまった。

龍馬と勇斗の二人にコテンパンに叩きのめされた男達は気絶したリーダー格の男を抱えると慌てふためきながら這う這うの体で逃げ出していった。

 

「ざまあみやがれ!ターコ!」

 

「二度と来んじゃねーぞ!ゴミ共!」

 

龍馬と勇斗は逃げ帰るゴロツキ達の背中にファックサインをしながら罵声を浴びせるとこちらに戻ってきた。

 

「リョーマさん、ハヤトさん、また助けられましたね」

 

「本当にありがとうございます。私達はもうあなた方には足を向けて寝られませんわ」

 

「リョーマお兄ちゃんもハヤトお兄ちゃんもすっごく強いんだね!かっこいいや!」

 

カムラン一家が龍馬と勇斗に頭を下げた。

 

「あいつらがどんだけ邪魔しようと俺らが叩き潰してやりますよ!な、勇斗!」

 

「おうよ!俺らにかかれば怖いもんなしだからな!」

 

「さっすがリョーマにハヤト!頼りになるね!」

 

「その力をもうちょい勉強にも生かしてくれればね……まあ、でもあんたらが喧嘩が強いおかげでカムランさんが助かったのも事実よね。そこは認めるわ」

 

ディレットと千春からの言葉を受けて照れつつ、龍馬達はソース作りに励むが、不安な事がひとつあった。

それは夜のうちに再び悪漢達が屋台を壊すなどの行為に及ぶ可能性のことだ。そうなれば流石の龍馬達でも対応できない。

 

「ご心配には及びませんよ、リョーマ君」

 

「アタイ達がちゃーんと手は打っているからな!」

 

そこへ現れたのはアルフォンスとレイラ。レイラとは帝国へ来てからは初の顔合わせだ。一体どういうことなのか。

 

「レイラさん!アルフォンスさん!」

 

「ひっさしぶりだな、リョーマ!相変わらずケンカの腕は強いみたいだな?」

 

「まあ、それなりに。ところで手って何ですか?」

 

「それは私からご説明しましょう」

 

アルフォンスがずいと前へ出る。

 

「カムラン邸が何者かの悪意による放火を受けたのは誰が見ても明らかでした。そこでアルバート団長は安全が確保されるまでこの辺り一帯の見回りを強化するようにと兵たちに指令を与えたのです。これでしばらくは大丈夫でしょう」

 

「ちなみにカムラン邸の前には夜の間は衛兵が見張りに付くことになったから隙を突かれる心配もないぜ!」

 

ありがとうアルバートさん、と心の中で感謝する龍馬。

カムラン一家の安全も確保され、開店の準備もだいぶ整った。あとは明日の開店に向けてしっかりと休むだけだけだ。




・vs帝都のゴロツキ戦汎用イメージBGM……
『Blood Maker』
(『龍が如く 見参!』より)
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