アナザー・ディメンジョン -異界交流記-   作:誠龍

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第42話 花の里

「ノエルさん、乗り心地どうですか?」

 

「ええ。とっても快適です。"ジドウシャ"とは素晴らしいものですね」

 

城で一夜を明かしたノエルは龍一郎の運転するランドクルーザーに乗ってレクシア大聖堂まで送ってもらうことになった。

龍馬達は城でルミナの故郷へ向かう準備をしている。その前に龍一郎はノエルを送っていくことにしたのだ。

 

「うちの息子がお世話になったようで」

 

「とんでもありません。リョーマさんは私の命の恩人です。お世話になったのは私の方ですよ」

 

ノエルが死を覚悟したあの瞬間ーーーー命を省みず助けに来てくれた龍馬。あの時自分を助け出してくれた龍馬の顔は誰よりも優しかった。

 

「リョーマさんは強くて……とても優しい方です。きっと昔からああやって色んな人を助けてきたのでしょうね。とても素敵な息子さんです」

 

「ええ。あいつは自慢の息子です。ですが……実を言うとあいつ昔は喧嘩も出来ない泣き虫だったんですよ」

 

「えっ?」

 

ノエルは驚く。あそこまで悪人に対して怒りを燃やし、神であるアレクすら恐れなかったあの龍馬が泣き虫だったなど想像し難いことだ。

 

「まあ、俺達夫婦も仕事ばっかりであいつに構ってやれなくて……そのせいであいつを極限まで追い込んでしまった。あいつキレると止まらなくなるでしょう?その原因は俺達にもあるんです」

 

龍一郎は龍馬の小中学生時代を思い出しながら言った。

いじめを受け、誰にも助けてもらえず、ただひたすら耐えていた息子をなぜもっと早く助けてやれなかったのかーーーー龍一郎は未だにその事を後悔している。

 

「……すみません、湿っぽくなってしまいましたね」

 

「……いえ、お気になさらず」

 

「何か音楽でもかけましょうか」

 

龍一郎はカーステレオを操作してお気に入りの昭和時代のロックミュージックをかける。

 

「え!?何もないところから音楽が!?り、リュウイチロウさん!これはどこに奏者がいるのですか!?」

 

「異世界人らしい反応ありがとうございます。これはカーステレオって言って……」

 

 

 

 

 

 

龍一郎は無事にノエルを大聖堂に送り届けると、再び城へと引き返す。中庭まで向かうと既に龍馬達は準備を完了していた。

龍一郎は車から降りてルミナを呼ぶ。

 

「ルミナちゃん。ようやく今日君をお父さんとお母さんの所へ帰すことができる。準備はいいかい?」

 

「……はい」

 

故郷へ帰れるというのにルミナはどこか浮かない顔だ。一体どうしたのだろうか。

彼女の心情が気になるところだが、龍一郎はあえて気付かないフリをした。

着々と出発の準備は続く。この数日間で車とバイクはかなりのガソリンを消費した。しかし龍一郎はこのこともきちんと見越しており、車とバイク三台が三回は給油出来る量のガソリンを帝国と政府の力を借りて運び込んでいたのだ。

まずはガソリンの給油を済ませる。ガソリンスタンドのような設備がないため、手押しの緊急給油ポンプで地味な作業を繰り返すので時間がかかったがなんとか完了した。

途中、城のメイドや召使い達が手伝おうとしたが全力で止めた。ガソリンが如何なる危険物かを知らない彼等に給油作業を手伝わせるのは危険すぎる。

ガソリンは衣服や肌のわずかな静電気ですら引火・爆発を起こす危険な物質だ。

これは我々日本人にも勘違いをしている人間がまれに見受けられるが、ガソリンが引火するのは液体に直接ではなく液体から気化した気体……つまり空気中のガスに引火することで一気に火の手が上がる。ガソリンスタンドをはじめ、ガソリンを扱う施設や設備周囲で"火気厳禁"と定められているのはそのためである。

慎重に給油を完了したら荷物を積み込む。念のため携行缶によるガソリンも非常用として持っていこうと龍一郎が車に携行缶を積んだその時。

 

「あの……アレクさん?」

 

なんとアレクが当然のように車に乗って座っている。

 

「いやあ、このジドウシャというのは快適だな。馬車とはえらい違いだ。まるで移動する寝室だぞ」

 

アレクはランドクルーザーの真ん中の座席に乗り込み、伸びをしてくつろいでいる。

この女神、まさかついてくるつもりなのだろうか?

答えはイエスだった。理由はやはり"面白そうだから"。

代わりに道中で神の力で護衛してやるとアレクは言う。龍一郎は仕方なく彼女を同行させることにした。

今回は全員車で移動する。バイクは城に置いていくことにした。

帝都の北門から出発し、北東の森を目指す。ナビゲートはディレット担当で助手席に座っている。

帝都北部・北アルカ街道を北上し、途中の分かれ道を右へ。この先には小麦の栽培が盛んな農村のメルク村があるのでまずはそこを目指す。

しばらく走ると車の前に突然緑色の小さな小人のようなモンスターが現れ、龍一郎は急停車する。

 

「な、なんだ!?」

 

「リュウイチロウさん!あれはゴブリンです!」

 

ゴブリン。王道ファンタジーにはお馴染みの雑魚モンスターだ。棍棒や手斧を持ったゴブリン達は道を塞ぎ、車を威嚇している。数は7人ほど。そのうち徐々に広がって車を取り囲んだ。

 

「ふん。ゴブリンなど前菜にもならんわ。おい、リョーマ!」

 

「な、なんだよ?」

 

アレクは車を塞ぐゴブリンを見てつまらなさそうに言うと後部座席の龍馬を呼ぶ。

 

「お前、あのゴブリンどもを追っ払ってこい。ルナ・アームを試すいい機会だ。何、ゴブリンは群れることしか能がない。一匹二匹痛い目に合わせれば後は恐れをなして逃げ出すだろうよ」

 

「ええ!?俺が!?」

 

アレクはめんどくさそうにそう言った。

龍馬は少し抵抗があった上、両親は反対したがアレクが「万が一の時は守ってやる。心配するな」と言うので龍馬は渋々車を降りる。

 

「龍馬……あんた気を付けなさいよ?ヤバかったらすぐ戻ってきーよ?」

 

「わかってるって母さん。じゃ、ちょっと行ってくる」

 

皆に心配されつつ龍馬は車を降りてゴブリンと対峙した。

ゴブリンは知能が低いため、言葉を喋れない。口々にギャーギャーと喚いているだけだ。

 

「さてと……じゃあ、やるか!」

 

龍馬は拳を構え、念じる。すると龍馬の手足が光に包まれ、ルナ・アームが装着される。

この神具は龍馬の意思ひとつで一瞬で着脱が可能なのだ。

 

「ギィッ!」

 

ゴブリンがジャンプして棍棒を龍馬に叩きつける。しかし龍馬はルナ・アームで棍棒を防御する。

武器をガードできる装備品というのは非常にありがたい。さらに喧嘩を得意とする龍馬にとっては籠手と脛当ての形態を取るルナ・アームは頑丈さがそのまま彼の破壊力となる。

 

「どりゃあ!!」

 

「ギェェッ!?」

 

ゴブリンは龍馬に殴られて吹き飛ぶ。この時ゴブリンは頭蓋骨を全て粉砕され、数メートル吹き飛ぶと痙攣した後、動かなくなった。

仲間を一人殺された別のゴブリンが怯んだ。その隙に龍馬は拳をゴブリンの頭頂部に振り下ろして頭蓋骨を砕く。さらにその側にいたゴブリンの腕を掴んで振り回し、別の仲間に叩き付けた。

一気に仲間の半数を失った残りのゴブリン達は龍馬の猛攻に恐れ、武器を捨てて悲鳴のような叫びを上げながら逃げていった。

 

「……ふう」

 

龍馬はゴブリン達が見えなくなったのを確認すると構えを解き、ルナ・アームを解除する。

ルナ・アームは再び光に包まれ、小さな光の粒となって消えた。

龍馬が車に戻ると両親から賞賛の言葉が贈られる。

 

「龍馬!よくやったな!」

 

「さすがあたしの息子やが!神の武器をもう使いこなしとるやないね!」

 

さらに仲間達からも賞賛の言葉が。

 

「くう~!神の武器で戦えるなんて羨ましすぎるぜ龍馬!」

 

ゴリラ、いや、勇斗が羨ましそうに言いつつ、龍馬の首に手を回した。

 

「リョーマはやっぱり強いね!」

 

「ま、まあ……ちょっとはやるじゃない、斎藤も……」

 

「龍馬、あんた千春ちゃんはこげん言いよるけどあんたが戦いよう時に一番心配しとったけんね」

 

「ちょっ……!おばさん!」

 

「なんだ委員長、心配してくれてたのか?」

 

「誰が委員長よ!」

 

「いて!」

 

千春にゲンコツをもらい、いつもの漫才が始まる。車内が笑いに包まれた。

 

「どうだいリョーマ。我が最高傑作のルナ・アームの使い心地は」

 

「ああ。めちゃくちゃ軽くて丈夫で使いやすいよ」

 

「そうだろう。世界に二つとない、私が鍛えた最強の武器だ。ゴブリンなんぞ恐るるに足らん」

 

アレクが鍛えたルナ・アームは決して壊れることのない神界の武器である。たとえ人の身であろうと充分な破壊力を発揮する。攻防一体のこの武器は龍馬の心強い味方になってくれるはずだ。

ゴブリンを退治した一行は再び出発し、メルク村を目指す。

 

「(最高傑作……か。あんなことがなければもっと胸を張って言えたのだが……私も神としてはまだまだということか……)」

 

ランドクルーザーのパワーウィンドウから流れる景色を眺めながらアレクははるか過去の事を思い出していた。その心中を理解出来るものは……誰一人としていない。

 

 

 

 

 

メルク村に辿り着いた一行はここで休憩することにした。

馬もなしに走る自動車の存在に驚く村人達。だが好奇心旺盛な子供達は車から降りた一行に駆け寄ってくる。

子供達をふれあう龍馬達を見て安心したのか、村人は村長の元に案内してくれた。

 

「ワシが村の長のアルフですじゃ。小麦とそれから作るパン以外には大して何もない村ですがゆっくりしていってくだされ」

 

「ありがとうございます、村長。異世界の人間である我々にこうまでしてくださって本当に感謝しております」

 

龍一郎が深く礼をする。さすが営業マン。礼節を弁えた人との接し方はプロとしか言いようがない。

 

「ところで皆様はどこに向かおうと?」

 

「北東の森です」

 

「ここから北東というと……ワガタの森ですかな?」

 

「はい、そこです」

 

「あの森は人を惑わせる力がある"幻惑の森"とも呼ばれております。決して深入りをしてはいけませんぞ。あくまでも入り口付近でとどめておきなされ」

 

北東に広がる深い森。ピクシー族の住む花の里が存在するワガタの森は帝都の民や周辺の村の薬草の採取地として有名である。

龍一郎は詳細を話すが、ピクシー族の住処があるということだけは伏せた。ちなみにルミナは旅人のピクシーということでなんとか誤魔化した。

村長は客人である龍一郎達に焼きたてのパンを振る舞った。表面は香ばしく焼き上がり、とてもふんわりしていて美味い。

パンをご馳走になった一行はしばらく村の子供達と遊び、別れを告げてメルク村を出発した。

一時間ほど走ると森が見えてきた。木々の間隔はそれなりに広く車でも入れそうだ。

森に入り、しばらく走るとおかしなことに気付く。さっきから草木一本一本の配置が全く同じ光景が何度も続いている。これはピクシー族の長がかけた幻術の影響だ。

 

「なるほどね……方向感覚を狂わせる幻惑の森……か」

 

龍一郎は一旦車を止める。するとディレットがナビを開始した。

 

「リュウイチロウさん。まずは右に行って下さい。その後左へ。次はまっすぐ」

 

「よし、案内頼むよディレットちゃん」

 

龍一郎は再び車を走らせる。ディレットの言うとおりに進むが景色は相変わらず変わらない。

だがしばらく進むと同じ景色の中に違う物が現れたことに気付く。木の根元に篝火を焚くための燭台が設置されているのだ。

 

「リュウイチロウさん、あの燭台に篝火を灯してください」

 

「あれに?わかった。じゃあ……」

 

龍一郎はオイルライターを取り出すと車を降りる。しかし……

 

「龍馬のお父さん!俺に火つけさせてください!」

 

「え?勇斗君が?ま、まあいいけど……」

 

何故か勇斗は車から慌てて降りると篝火に火を灯したいと言い出した。龍一郎は不思議に思いながらも勇斗にライターを渡す。それを見て龍馬は何かを悟ったようだ。

勇斗は篝火の小さな薪にライターで火をつけた。

 

「B○NFIRE LIT」

 

「やると思った。あと○の意味ないぞ」

 

「これで死んでもこっからやり直せるな」

 

「いいから早く車に戻れゴリラ」

 

勇斗はウキウキしながら車に戻る。篝火に火をつけて満足そうな勇斗を見てアレクは首を傾げた。

 

「リョーマ、ハヤトはなぜたかが篝火をつけただけであんなに楽しそうなのだ?」

 

「あー、気にしないで。神の力でも治らない病気みてーなもんだから」

 

「???」

 

ますますわからない、という表情をするアレク。

その時周りの景色に変化が起こる。同じ配置の草木が塗り替えられるように別の景色に変わり、車の前にまるで一行を導くように一本の道が現れた。これが花の里へと通じる道だ。

龍一郎は車を走らせ、先へと進む。

しばらく走ると周囲に徐々に花が増えてきた。そして森を抜けると、そこには一面の美しい花畑が広がっていた。

 

「うわあ……ここが花の里……」

 

「綺麗……」

 

あまりの美しさに思わず息を飲むディレットと千春。花の周囲ではピクシー族が花の蜜を採取している。

と、ピクシー族の一人が車に気付き慌ててどこかに行った。しばらくすると鎧をつけたピクシー族の戦士らしき女性達がやってきて弓をつがえた。

 

「おのれ怪しい奴らめ!そのような魔獣に乗って我らが花の里に来るとは一体何の用だ!」

 

「……ミラベル?ミラベルなの!?」

 

ルミナはパワーウィンドウのスイッチを自分で押して外へ飛び出していく。

 

「……ルミナ?ルミナか!?」

 

「ミラベル!やっぱりミラベルだ!」

 

「一体長い間どこへ行っていたルミナ!父君と母君が心配しておられたぞ!まったく……だが元気そうで何よりだ。ところであの魔獣に乗っている者達は?知り合いか?」

 

「うん。私を助けてくれたの!」

 

ルミナはミラベルと呼んだその女性に訳を説明する。それを聞いたミラベルは部下達の弓を降ろさせた。安全を確認すると龍一郎達も車から降りる。

 

「これは失礼した。私は花の里の守備隊長のミラベルと申す。ルミナの恩人と知らなかったとはいえ、先ほどのご無礼をお許しいただきたい」

 

「いえ。こちらもいきなりこんなデカい乗り物で押し掛けて申し訳ありません」

 

「そらこんなデカいもんがドカドカ入ってきたら誰だってビックリするたいね」

 

ミラベルと斎藤夫妻はしばらく会話を交わす。直後に守備隊のピクシーがミラベルの元にやってきて耳打ちした。

 

「サイトウ殿。そしてそのお仲間達よ。ルミナの父君と母君がお待ちです。どうぞこちらへ」

 

ミラベルの案内で一行はある広場に案内された。敷物が敷いてあり、人間の客人用とされているらしい。

ミラベルからしばらく待つように言われると、一行は敷物に座って待つ。

待つこと五分。ミラベルをはじめとした守備隊のピクシー達に護衛され、二人のピクシーがやってきた。一人は王冠を被った男性。もう一人は美しい花のドレスをまとった女性だ。

 

「……お父さん!お母さん!」

 

「ルミナ!無事だったか!会いたかったぞ……!」

 

「ああ、ルミナ……!また生きて会えるなんて……!神よ、感謝致します……!」

 

ルミナの父と母は我が娘をしっかりと抱き締めた。

どれだけ探しても見つからなかった我が娘。遺体すら見つからず、魔物に喰われてしまったのではないかとさえ思ったこともあった。

だがこうして再び最愛の娘と再会出来たことに二人は至上の喜びを感じていた。

再会の喜びを分かち合ったルミナの両親は龍一郎と涼子の前までやってきて深く一礼した。

 

「お初にお目にかかります。私は花の里の国の王アドニスと申します。こちらは妻のジェナ」

 

「ジェナと申します。この度は娘を助けていただいて、感謝の限りでございます」

 

「斎藤龍一郎です。いや、まさかルミナちゃんのご両親が里の王様とは……」

 

ルミナは花の里を治める王の子であった。

これにはさすがの斎藤一家も驚いたものだ。

 

 

 

 

 

 

その後、ピクシー族の歓迎の宴が催された。

花の里の蜜で作られた菓子、森で採れた野草やキノコを使った料理など数々の品が一行に振る舞われ、ピクシー族の舞いが披露された。

宴は夜まで続いたので一行はここでキャンプをすることにした。

広場まで車を移動させ、この場所を一晩借りれることになった。

先ほど食べたとはいえ、さすがに腹が減った。龍一郎は手早くテントを設置し、焚き火台です火を焚く。

龍一郎は若い頃、バイクであちこちにキャンプに行っていた。そのためアウトドアにも強い。

さらに折り畳み式の小さなテーブルとシングルバーナーを取り出す。

バーナーから突如上がった火に周りのピクシー達は驚く。期待通りの反応がなかなか面白い。

さらにLEDランタンを複数用意してスイッチを入れる。白い光が煌々と辺りを照らす。

 

「何と不思議な……これが異世界の火なのか?」

 

ミラベルはLEDランタンを珍しそうに見つめている。火を焚かずともスイッチひとつで明かりを切り替えられる現代文明の利器だ。さらにライトも。これらは龍一郎が愛用している"イルミネーター"というブランドだ。頑丈さと明るさ、そして電池の持続性でキャンパーに人気のブランドである。

さて、本日のメニューだがせっかくピクシー族がくれたキノコがたっぷりあるので持ってきた肉でバター醤油炒めを作ることにする。アウトドアでの調理は龍一郎の担当だ。

焚き火台の網にフライパンを乗せてバターを引き。肉と野菜と野草、それからキノコをたっぷり入れて醤油と塩コショウで味付けして炒める。辺りにいい香りが漂ってきた。

しっかりと火を通したら『花の里特産キノコのバター醤油炒め』の完成だ。

盛り付けをしたら龍一郎は先に龍馬達に食べさせ、新たに大量に作る。他のピクシー達の分だ。食べやすいように少し小さめに細かく刻む。

手早く作るとまずはルミナ、それから彼女の両親に振る舞う。

二人はバターと塩コショウと醤油で味付けされたキノコを一口食べる。

 

「ほう……いい香りと味がふんわりと広がってこれはとても美味いな」

 

「ええ。私達の里の食べ慣れたキノコのはずなのにとても新鮮に感じるわ。この"ショーユ"という調味料が特にいいわね」

 

「うーん、ショーユで味付けした料理はやっぱり美味しい!」

 

二人は醤油での味付けを気に入ってくれたようだ。日本の味に慣れたルミナも満足そうに食べている。

龍一郎が残りを調理すると王達が美味そうに食べるのを見て残りのピクシー達が皿を持って一斉に龍一郎の元に集まってくる。

 

「はいはい、慌てないで並んで!ちゃんと全員分あるからね!」

 

龍一郎はピクシー達の小さな皿に少しずつ盛り付けていく。

彼等は異界の調味料で味付けされたキノコを気に入ったらしく、おかわりまで要求する始末だ。

さらに龍一郎はインスタントのコーヒーや紅茶、ココアを入れて全員に配る。食後のティータイムだ。

焚き火から立ち上る煙と夜空を見上げながら花の里でのキャンプの夜は更けていく。

 

 

 

その夜は二つのテントと車に別れて眠ることにした。ちなみにルミナは久しぶりの実家で親子水入らずの時を過ごしている。

車ではアレクが寝ている。ランドクルーザーがかなり気に入ったらしく、一人で独占している。自動車で寝る神などおそらく神界でもこれまでに例がないだろう。

あとは男性陣三人、女性陣三人に別れて眠ることにした。

眠りについてから何時間か経った時、何やら外が騒がしくなり、龍馬は目を覚ました。寝ぼけ眼でテントの外に出ると守備隊のピクシー達が慌ただしく飛び回っている。

 

「ミラベル……一体何の騒ぎだ?」

 

「おお、リョーマか!大変だ!敵襲だ!敵の群れが"またやってきたんだ"!!」

 

「敵襲……敵の群れね……あー……はいはい…………敵襲!?!?」

 

龍馬は慌てて着替え、テントの外に飛び出す。

すると花の里の入り口方面から褐色の巨体を揺らしながら醜い化け物が五体、こちらに迫ってくる。

 

「クソッ!なんだあのブサイク共!」

 

「トロールだ!知能は低いが怪力を持っている!殴られればひとたまりもないぞ!」

 

龍馬はルナ・アームを装着してトロール達を迎え打とうと構える。

 

 

花の里を、守らねば。

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