アナザー・ディメンジョン -異界交流記-   作:誠龍

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今回で『異界旅行編』は終了です。


第53話 さらば、異界よ

アークデーモンのガルダーンを倒し、無事赤目の救出に成功した龍馬達は帝都へと戻った。

皆傷だらけでしかも涼子はガルダーンから受けた傷と返り血で真っ赤だったのでアルバート達から驚かれた。

そして涼子は治療を受けたのちに城で赤目を風呂に入れてやり、綺麗に身体を洗う。

入浴を済ませた赤目は見違えるほど美しい少女となっていた。服も新しく新調している。

 

「よし!綺麗になった!赤目ちゃん、あんたやっぱり綺麗にしたら美人やねぇ」

 

「あ……ありがとう……」

 

「しかし……いつまでも"赤目ちゃん"じゃあれやねぇ……あんたら、なんかいい名前つけちゃりいよ?」

 

涼子は突然龍馬と勇斗に赤目の名付け親になるように指示した。

こういうのは普通あんたがやるもんじゃねぇの?と言いたかったが、母を怒らせそうなのでやめておく。

 

「な、名前かぁ~……うーん……」

 

龍馬は悩む。いきなり言われても急には浮かばない。腕を組んで口を歪ませ、龍馬はさらに悩んだ。

だが先に口を開いたのは勇斗だ。彼にはなんかいい案があるらしい。

 

「龍馬、俺に任せろ」

 

「……何か嫌な予感しかしないんだが」

 

「フフフフフ。確かに名前が欲しいな。"赤目"じゃいまいち呼びにくいッ!この勇斗が名付親(ゴッドファーザー)になってやるッ!そうだな……"メキシコに吹く熱風!"という意味のサ」

「スタアアァァァァァップ!!!!やめんかーい!!!!」

 

龍馬が危うい名前を言いかけた勇斗の頭を殴る。こうやって時々暴走しては危ない発言をする勇斗。そろそろ偉い人から怒られそうだ。

 

「うーん……そうだな……」

 

龍馬がじっと赤目の瞳を見つめる。赤目は赤面し、目を反らした。

 

「……ルビィ」

 

「……え?」

 

「ルビィなんてどうだ?俺達の世界にある、深紅の美しい宝石の名前だ」

 

本来なら黒の一族に忌まわしき存在の証拠である赤い目。逆に龍馬はそれに美しさ、個性を見出だしたのだ。

 

「ルビィ……アタシの……名前……」

 

「ルビィ……いいやないね!よし……!」

 

涼子はルビィの肩に両手を置いて彼女を見つめーーそして言った。

 

「あんたの名前は"斎藤ルビィ"!今日からあたし達の家族や!」

 

「ええ……!?」

 

涼子は決意していた。彼女を救い出せたら自分達の家族に迎え入れようと。そして彼女を無事に救出した今、もはや障害は存在しない。

 

「家族……!?アタシが……!?」

 

「おう。あんたはもう家族や。あたしたち斎藤家の人間たい。誰が何と言おうとな」

 

そして涼子と龍一郎はこのためにソフォスに頼んで特別渡航資格を発行してもらっていた。皇帝のお墨付きとあれば文句を言う人間などいまい。

あとは帰国してから色々手続きをすればいい。

異界を巡る二週間の旅行もいよいよ今日で最後だ。明日の昼には迎えのフェリーが来る。それに乗って日本へと帰国する予定だ。

その夜、龍馬達は疲れているせいかすぐに眠りについた。だが突然夜中に目が覚めた龍馬は気晴らしにスマホをいじっていた。

SNSを見ていると向こうの世界のニュースが流れてくる。

 

「ふーん……"有名女優、熱愛発覚!"、"新発売!ヨーグルトシェイク!"、"中国企業リオングループ、日本進出"、"8月全国的に猛暑"……どうでもいいニュースばっかだな」

 

龍馬はスマホを切り、客室のベッドから降りて窓を開けてバルコニーから帝都を見下ろす。

電気のないこの世界は明かりが深夜には非常に少ないため絶景、というわけにはいかないが代わりに空には満天の星空が広がっていた。

空を見上げていると、龍馬の部屋のドアがノックされる。

 

「……誰だ?」

 

「……私。ディレット。……入っていい?」

 

「ああ」

 

ガチャリと扉が開き、ディレットが入ってくる。

さっきまで寝ていたのか、寝癖がついている。服装は黒いトレパンに白いTシャツと龍馬とほぼ同じ寝間着スタイルだ。

 

「リョーマ、起きてた?」

 

「寝てた。けどさっきなんか急に目が覚めちゃってさ」

 

「そう……私もなんだ。急に目が覚めて……トイレに行ったらなんだか目が冴えちゃった」

 

そう言いながらディレットもバルコニーまで歩いてきて龍馬の隣に立つ。

二人の頭上に広がる星空。地球とはまた違った星。この世界にも星座はあるのだろうか。そんなことを考えながら龍馬は星空を見上げる。

 

「……綺麗な星空だね」

 

「……ああ」

 

「色々あったけど、楽しかったね」

 

「何度も死にかけたけどな」

 

暗殺者やら幾多のモンスターやら最強の騎士やらアークデーモンやらと戦う羽目になり、決して手放しで楽しかったとは言えない今回の旅。

だがその中で多くの人々との出会いがあり、龍馬に多くの何かを与えてくれたのも事実だ。

 

「ま、終わってみれば中々にスリリングな体験が出来たしな。いい経験出来たってことにしとくか」

 

龍馬は苦笑した。RPGやアニメの世界でしか有り得ない体験を実際に色々出来たのだ。

こうして無事にここに立っているわけだし、あまり悪いようには考えないでおこう。

ディレットと話しているといい感じにまた眠くなってきた。彼女も目をこすりはじめている。

 

「……そろそろ寝とくか。明日は帰国だしな」

 

「そうだね」

 

ディレットはおやすみ、と言って自分の部屋に戻り、龍馬も再びベッドに入る。

 

 

 

 

 

 

 

翌日、早めに目が覚めた龍馬は出国までの数時間の間に帝都で知り合った人々に別れの挨拶に行くことにした。

バイクでのんびりと一人で走る。まずはカムラン一家だ。

相変わらず焼きうどんを焼いている。ソースのいい香りが辺りに漂う。

 

「キースさん」

 

「おっ!リョーマさんじゃあないか!どうしたんだい?」

 

「実は今日で日本に帰るんです。だから別れの挨拶に」

 

「ああ……そうだったのですか。寂しくなりますね……」

 

「リョーマさんには本当にお世話になりましたわ。どれだけお礼を言っても足りないくらいに」

 

「……リョーマお兄ちゃん、帰っちゃうの?」

 

龍馬からの別れの挨拶を聞いてカムラン一家は寂しそうな顔をする。

思えば帝国へ来て初めに知り合ったのはこの一家だっただけに色々と感慨深いものがある。

 

「そーかぁ……リョーマ……帰っちまうんだなぁ……」

 

グレッグも龍馬との別れを惜しむ。

彼との出会いは決していいものではなかったが、この出会いが自分を真っ当な道に戻してくれたのも事実だ。グレッグにとって龍馬は恩人でもあった。

 

「そんな顔をするなよ、グレッグ。また会えるさ。……しっかり働いてキースさん達を守ってやれよ」

 

「ああ。言われなくてもそのつもりさ」

 

最後にカムラン一家、そしてグレッグと握手をした龍馬は再びバイクに跨がりエンジンをかける。

 

「じゃあみんな!元気で!」

 

「また帝国へ来てください、リョーマさん!」

 

「ニホンでもお元気で!」

 

「ばいばい!リョーマお兄ちゃん!」

 

「達者でな、リョーマ!」

 

龍馬はカムラン一家とグレッグに向かって手を振りつつアクセルを回し、次の場所へ向かった。

 

 

 

 

 

 

次に向かったのは竜の髭亭だ。

まだ午前中なこともあってか客はおらず、店の掃除をレベッカとバルガスがやっていた。

 

「あら、リョーマ!いらっしゃい!」

 

「リョーマか?どうした?」

 

「いや、今日で日本に帰国するからさ。別れを言いに来たんだ」

 

「えっ?そうなの?……おかみさーん、ちょっと来てくださーい!」

 

レベッカが呼ぶ声に厨房で仕込みをしていたアンナがやってきた。

別れの挨拶に来た、という龍馬の話に皆寂しそうな顔をする。

 

「そうかい……ニホンに帰るのかい……残念だねえ……」

 

「リョーマ、向こうでも元気でね」

 

「お前とは色々あったが、こうして借りが出来た。今度はニホンで会おう、リョーマ」

 

「ああ。待ってるぜ、バルガス。……レベッカとおかみさんもお元気で」

 

「身体に気を付けてな、リョーマ。リョーコさんにもよろしく伝えとくれ」

 

「はい」

 

龍馬は三人に別れを告げ、竜の髭亭を出ると次の場所にバイクを走らせる。

ここからそう遠くない場所にそこはあった。グレンディルの鍛冶屋だ。

 

「グレンディルさん」

 

「おお、リョーマか。今日は何の用じゃ?」

 

「実は今日で日本に帰国するんです。なので別れの挨拶にと」

 

「……そうか。帰るとはわかっていたが、いざその時が来ると寂しくなるな」

 

最初は龍馬の母である涼子との出会いが最悪だったグレンディルだが、彼の母親のおかげで異界の料理にありつけた。さらに竜の髭亭に白炭を卸す仕事まで出来て儲かっている。

彼や彼の母親には感謝せねばなるまい。

 

「達者でな、リョーマ。またこっちに来た時はいつでも寄ってくれい」

 

「ありがとう、グレンディルさん。……じゃあ、さようなら」

 

龍馬は次の目的地へ向かう。次はタマラの仕立屋だ。龍馬は店に入るとタマラに今日で帰国することを伝えた。

 

「そうなんだね……寂しくなるね。リョーマ、ディレットちゃんをよろしく頼むよ。元気でね」

 

「はい、タマラおばさんもお元気で」

 

龍馬は店を出て最後の目的地へ向かう。

行き先はレクシア大聖堂だ。大聖堂に到着した龍馬はバイクを降りて礼拝堂へ向かう。そこにはノエルがいた。

 

「ノエルさん」

 

「あら……リョーマさん。どうされたのですか?」

 

「実は……今日で日本へ帰るんです。その別れの挨拶に来ました」

 

「まあ……それは寂しい話ですね……」

 

龍馬には命を救ってもらった恩があるノエル。彼との別れは寂しいものだ。……後ろで粉々になっている女神像を破壊された思い出もあるが、命に比べれば安いものだ。

 

「ほう!お前、帰るのか?ニホンとやらに!」

 

柱の影からうるさい駄女神、もといアレクが出てきた。

 

「お前今、神であるこの私に対してすごい失礼なこと考えなかったか?」

 

「気のせいじゃねーの?」

 

「まあまあ、お二人とも……」

 

「というかほんと今さらだが、ノエルに対しては敬語なのに何で私に対してはタメ口なんだ!?私は神だぞ!?」

 

最後までうるさい駄女神だ。だがこのルナ・アームをくれたことには感謝している。この武器には相当助けられた。

 

「……リョーマさん。そしてあなたのお仲間には本当に感謝しています。何とお礼を言ったらいいか……」

 

「いいんですよ、ノエルさん。……そうだ、よかったらノエルさんもいつか日本の福岡に来てください。歓迎しますよ」

 

「ニホン……ですか。ふふ……いいですね」

 

今回のことでノエルは自分の視野の狭さを知った。色々なことを経験するためにもニホン行き、というのは有りかもしれない。

 

「ノエルが行くなら私も行くぞ!ニホンの美味い食い物や酒には興味があるしな!」

 

「オメーは来んでいい」

 

「……おい、リョーマ……私の扱いがさらに酷くなってないか?」

 

ブーブーと文句を言うアレクをほっといてノエルに向き直る龍馬。

改めて彼女に別れを告げると大聖堂の外まで見送りに来てくれた。

バイクに跨がり、アクセルを回して去る龍馬に大きく手を振る。

 

「リョーマさーん!!お元気でー!!」

 

「またいつでも来るんだぞー!!」

 

龍馬はバイクを進ませながら後ろ手を振り、ノエルとアレクとの別れを惜しみつつ、城を目指した。

城に着くと既に皆、帰国の準備を終えていた。

中庭で兵士、騎士、メイドや側近達が彼等との別れを惜しみ、見送る。中にはマリーの姿もあった。

港まではアルバートが馬で先導し、その後ろに龍馬達のバイクと車が続き、後ろには見送りのために馬車に乗ったソフォスとモニカ、そしてその馬車の手綱を握るアルフォンスとレイラの姿があった。

港に着くまでの間、帝都の景色を楽しむ。今日でこの景色ともお別れだ。

港に着くと既に日本のフェリーが待機している。車とバイクを止め、車両から降りて見送りに来てくれたソフォス達に別れの挨拶をする龍馬達一行。

 

「陛下、皆さん。お世話になりました」

 

「リュウイチロウ殿。そして皆様。またいつでも帝国に来てくだされ」

 

「ええ。私も父も、城の皆もお待ちしておりますわ」

 

龍一郎とソフォス、そしてモニカが握手をする。

アルバート達騎士の三人も馬から降りて手を差し出した。

 

「皆様、お気をつけて。また会えることを楽しみにしていますよ」

 

「ありがとね、アルフォンスさん。今度はあんたも福岡に来ーね」

 

「はい、機会があれば是非」

 

「リョーコさん、またアタイと一緒に酒を飲もうぜ」

 

「ああ、もちろんたい」

 

アルフォンス、レイラと握手をした涼子。

せっかくここまで仲良くなったのだ。アルフォンスにも是非福岡に来てほしいものだ。

レイラとは既にいい飲み仲間だ。また彼女と酒を飲みたいものだと涼子は思った。

 

「リョーマ君、君には本当に助けられた。まさかあのバルガスを打ち破るとはな。……短い間だったが、君達と共に戦ったこと、忘れはしない」

 

「俺もですよ、アルバートさん。……怪我、まだ治ってませんよね?お大事にされてください」

 

「ああ、ありがとう」

 

龍馬の友人達も別れを惜しむ。

 

「は~、ファンタジーの世界とも今日でお別れか~。帰ったら何しよっかなー」

 

「城島……あんたはまず夏休みの宿題でしょ」

 

「ゲッ、須崎ぃ……お前こんな時に急に現実味を帯びた話を……」

 

「リョーマ、私達も夏休みの宿題やらないと……」

 

「はぁ~、憂鬱だぜ……」

 

「(……私、ピクシーでよかった)」

 

全員が別れの挨拶を済ませ、車両をフェリーに乗せる。

フェリーに乗ったルビィはまだ緊張しているようだ。

 

「ルビィちゃん。そげん心配せんでいいとよ。向こうの世界に着いたら今より驚くかもしれんけどね」

 

「う、うん……ええと……その……」

 

「?なんね?」

 

「お、"お母さん"……ありがとう……」

 

「ん、こっちこそありがとね、"ルビィ"」

 

ルビィを斎藤家の養子に迎え入れることは誰も反対しなかった。

そして龍一郎と涼子は(手続きはまだだが)、正式にルビィの父親・母親となったのだ。そしてダークエルフにしては若い14歳という歳から龍馬は彼女の兄ということになる。

名前すら与えてもらえず"忌まわしき魔の子"と呼ばれたダークエルフの少女は異世界の家族によって救われ、名を与えられ、愛情を受けて育てられることになった。

手続きを済ませれば彼女は"斎藤ルビィ"という名の日本国籍を持つダークエルフとして日本に永住することになる。

車両をフェリー内に駐車した龍馬達はデッキに出ると桟橋にいるソフォス達に手を振る。

 

「さよーならー!!みんな元気でなー!!」

 

「リョーマ君!!また遊びに来るんじゃぞー!!」

 

「皆さーん!!お元気でー!!」

 

出航するフェリー。そのデッキから手を振り続ける龍馬達に対し、ソフォス達もずっと手を振り続けていた。

 

 

こうして龍馬達の二週間の波乱万丈の異界旅行は幕を閉じた。

様々な出会いと別れを胸に、彼等は今、帰国する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海洋港に入り、次元の門を抜けるとそこは東京湾。

フェリーから降りると現代日本の世界が広がっている。ルビィは初めて見る異界の光景に目を疑った。

いくつも並ぶ鉄の高い建物、天空まで届きそうな塔、頭上を飛んでいく巨大な鉄の鳥。

 

「こ……ここがニホン……」

 

「そう。ここがあたしたちの世界よ。色々覚えることも多くて大変かもしれんけど、がんばろうね、ルビィ」

 

「う、うん……」

 

ここから乗り換えて門司行きのフェリーに乗る。だが出航は夕方のため、龍馬達は東京で時間を潰す。そこからは再び夕方出航のフェリーに乗り、門司を目指す。

今回最後の船旅を楽しみながら龍馬達は故郷を目指した。

フェリーは無事に明け方に門司に到着し、そこからはバイクと車で高速を走り、博多を目指した。ルビィはバイクや自動車が無数に走る、現代人にとっては当たり前の光景に興味津々だ。

九州自動車道を南下して都市高速を目指し、来た時と同じように貝塚ICで降りて博多へ向かう。

博多の見慣れた街並み。ようやく龍馬達は帰ってきたのだ。なんだかほっとしたような、少し寂しいような、そんな気持ちになる。

博多の街並みを抜け、龍馬達は自宅近くまでやってきた。ここで勇斗と千春が離脱する。

 

「じゃあ、須崎は俺が送ってくからよ。ここでお別れだな」

 

「勇斗、気を付けてな。須崎、じゃあまた今度な」

 

「斎藤、今回の旅……怖いこともあったけど楽しかったわ。また機会があれば帝国へ行きましょう」

 

「だな。またみんなで行こう」

 

思えば勇斗は昔から何度も共に修羅場をくぐり抜けてきた。

まさか、ファンタジーの世界に来てまで修羅場を共にするとは思わなかった。

だが彼は親友のために危険を省みず、ずっとついてきてくれていた。こんなに頼れる相棒は勇斗を置いて他にはいない。

 

「勇斗。夏休み、どっかツーリング行こうぜ」

 

「いいな。どこへ行く?」

 

「それよりまず夏休みの宿題でしょ!」

 

そんな他愛ない話をして今回の長いようで短かった旅を共にした仲間に龍馬は別れを告げる。

 

 

「気を付けて帰れよ。合言葉は?」

 

「"キーを抜くまで気を抜くな"だろ?おうちに帰るまでがツーリングです。……じゃあな、龍馬!」

 

「ああ、じゃあな!」

 

龍馬はセローを運転する勇斗と後ろに乗る千春を見届けた後、また自らのバイクに乗る。

異世界での相棒、KDX220SR。ずっと龍馬を乗せて旅をしてくれた彼は今回の旅で汚れていた。

 

「……お前は頑張ってくれたなあ。ある意味今回の旅で一番活躍したのはお前かもな」

 

「リョーマ、どうしたの?」

 

「ん?いや、ずっと頑張ってくれたこいつを明日にでも洗ってやろうかと思ってさ」

 

「そういえば、私のKLXも……」

 

ディレットのKLX250も酷く汚れている。これは明日二人揃って洗車コースだなと二人は思ったのであった。

 

旅を支え続けた、影の活躍者のために。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、遂に帰ってきた。我が家に。

 

 

 

 

 

 

 

ガレージに止めた車両から荷物を自宅に運び込む龍一郎。ルビィは斎藤家宅を見上げる。

 

「……」

 

「ルビィ。ここが今日からあんたの新しい家ばい。もう盗みをしなくていいし、衛兵や黒の一族から狙われることもない。ご飯もお風呂も寝るとこもちゃんとあるけんね」

 

「……うん!」

 

ルビィは涼子に連れられて家に入っていく。

二階には和室があり、物置になっているがそこをルビィの部屋にしようと涼子は和室の片付けを始めた。

片付けが終わり、夕飯の支度をしようと冷蔵庫を確認する涼子。

 

「ちょっと!買いもん行くけどあんたら……あら」

 

涼子がリビングにいる龍馬達を見ると、ディレットもルビィも、ソファで身を寄せ合ってぐっすりと眠っている。

 

「……馬鹿みたいにぐっすり寝てからに……」

 

「疲れてるんだろ。晩飯が出来るまでは寝かせてやっとけ」

 

「ふふ、そうやね」

 

ガレージから戻ってきた龍一郎は涼子と共に息子達の安心した寝顔を見てふっと笑った。

 

 

多くの強敵と戦い、誰かを救い続けてきた小さな英雄達を労うように。

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