アナザー・ディメンジョン -異界交流記-   作:誠龍

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日常編2
第54話 夜空に咲いた、打ち上げ花火


異界旅行から帰った翌日、龍馬とディレットはバイクの洗車をしていた。

ずっと彼等の旅を支え続けたオフロードバイク。それを労うように思いを込めて丁寧に洗車をしていく。

水洗いを終え、濡れた車体を拭き上げていると家からルビィが出てきた。

 

「リョーマ()ィ、お母さんが呼んでるよ」

 

「?……わかった、すぐ行く」

 

手を洗って家に戻ると家の電話の前で涼子が待っていた。

 

「龍馬、じーちゃんから電話ばい」

 

「じーちゃんから?……もしもし」

 

「"おう、龍馬!お前電話したけど出らんやったけん、家に電話かけたばい!"」

 

「あ、ごめん。バイク洗車しててスマホ部屋に起きっぱなしだったわ」

 

平蔵からの電話。一体どうしたのだろうか?

 

「"今週の日曜日に花火大会があるけん、お前ディレットちゃん連れて来たらいいんやないかっち思うて電話したったい"」

 

「あー、花火大会か」

 

毎年8月、福津市の宮司浜海岸では規模の大きな花火大会が開かれる。

それを目当てに多くの人々が福津へと訪れるのだ。

近場では大濠公園でも花火大会があるのだが、異界滞在が伸びたので見るのを逃してしまった。

ならば、行き慣れた福津市の花火大会に行くのもいいかもしれない。

 

「そうだなぁ。じゃあ、ディレットとルミナ連れてじーちゃんちに行くよ。あ、そうだ。最近新しい家族が増えてさ。そいつも連れていくけどいい?」

 

「"新しい家族?"」

 

そういえばまだ帰国したばかりで平蔵は知らない。自分に新たな"孫"が出来たことを。

比喩ではなく、戸籍上の正式な"孫"だ。

 

「まあ、見てからのお楽しみだよ。じゃ」

 

「"?"」

 

龍馬はそう言って電話を切る。

彼はガレージにいるディレットとルビィの元に戻り、花火大会のことを伝えた。

 

「ディレット、ルビィ、花火大会に行かないか?」

 

「ハナビ……?」

 

「空に火薬でデカい光を光らせるんだ。綺麗だぞ」

 

向こうの世界には花火という概念がまだ無く、二人とも花火は初めての経験だ。

リビングにいたルミナも誘って今週は花火大会に行くことになった。新しい家族であるルビィを見たら祖父母はきっと驚くだろうと龍馬は少しワクワクする。

 

 

 

 

 

 

そうして過ごすうちに花火大会当日となる。

今日は博多駅から電車で行く。バスで博多駅まで移動し、博多駅前に着いた時、ルビィはその光景に圧倒される。

 

「……すごい……」

 

行き交う多くの人々。そして博多駅ビルを含め、周囲を取り囲む多くのビル。ルビィはここが異世界なのだと改めて実感した。

中に入るとより多くの人々でごった返す博多駅構内はまるで祭りか何かかと思うほど、混雑している。

 

「そういえばSUGOCAの残高足りなかったからチャージしなきゃ」

 

「もうあと400円くらいしかなかったもんね」

 

ディレットがルミナと一緒に切符の券売機に近より、自分の愛用のSUGOCAを入れて3000円をチャージする。

地下鉄やバスでの移動が基本となる博多の街では交通系電子マネーは必須アイテムだ。

特にバスではすぐに降りられるため、現金より便利なものである。

だがルビィにとって見るもの全てが常識を越えているこの世界は何が何だかわからない。そもそもこの大きな建物だって一体何のために来たかわからないのだ。

 

「ルビィ、この金をそこに入れてみろ」

 

「……?」

 

龍馬から500円玉を渡されるが、"そこ"が"どこ"なのかわからない。

仕方なく龍馬から教えてもらい、目の前の光る板の絵を龍馬が指で触れるとなんと絵が変わった。

 

「な、なんなの!?」

 

その後龍馬から教えられた通りにボタンを押すと下の方から小さな紙が排出され、さらに細かい小銭がいくつか出てきた。

 

「ルビィ。今から電車っていう公共の乗り物に乗るんだ。そのための切符を買ってるんだよ」

 

「デンシャ……?キップ……?」

 

「まあ、上に上がればわかるさ」

 

ディレットが早速自分のSUGOCAで改札を通り、ルミナは後に続く。鉄道職員によればピクシーは無料で構わないらしい。

その後、龍馬は先にルビィに改札を通らせた。

 

「そこの隙間にさっき買った切符を入れるんだ」

 

言われた通りに改札機に切符を差し込むと切符がスッと吸い込まれ、反対側から一瞬で顔を出す。

 

「!?」

 

「ルビィ、あれを取ってここを抜けるんだよ」

 

改札機に切符を通したルビィの反応を見てディレットはかつての自分と同じ反応にちょっと可笑しくなった。

今では自分もSUGOCAを作ってだいぶこの世界に馴染んできたかもしれない。そんな事を考えつつ、ディレットは後の二人とともに駅のホームに上がる。

ピーン……ポーン……という視覚障害者誘導用のチャイムが鳴り響く博多駅のホームに立ち、電車を待つ。

 

「"1番乗り場を列車が通過します。黄色い線の内側までお下がりください"」

 

プルルルルル、という電車の通過・到着のチャイムの音にルビィは一瞬ビクッと肩を震わせた。

その音の直後、まるで蛇のように長く連なった鉄の乗り物が目の前を高速で駆け抜けていき、ルビィは恐怖で思わず龍馬にしがみついた。

 

「りょ、リョーマ()ィ……!」

 

「大丈夫だって、特急列車が通過しただけだ」

 

しかしルビィは不安そうに龍馬にしがみついたまま離れようとしない。

無理もない。彼女は何の予備知識もなしにこの世界にいきなりやってきたのだから。

その時、再び電車の接近を知らせるプルルルルル、という音がホームに響き渡る。

 

 

「"1番乗り場に列車が到着します。危険ですので黄色い線の内側まで下がってお待ちください……"」

 

 

音とアナウンスに再び怯えるルビィはより一層龍馬に力を込めてしがみつく。

しかし接近してきたあの乗り物は徐々にスピードを落とし、龍馬達の目の前まで来ると止まり、扉を自動で開いた。

 

「さ、乗るぞ。ルビィ」

 

「……これに……乗るの……?」

 

「ああ。俺達の世界の"電車"って乗り物だ。……そんな顔をするなよ。俺がついてるから心配するな」

 

龍馬は怯えるルビィを連れてディレットと共に電車に乗り込む。

丁度隅っこに四人席が開いていたのでそこに座る。相変わらず龍馬の腕にしがみついたままのルビィ。龍馬は隣にルビィを座らせ、向かい側にディレットが座り、ルミナはディレットの膝の上に座った。

 

 

「"11時49分発、普通列車、福間行き発車致します。閉まるドアにご注意下さい……"」

 

 

 

アナウンスと共に再び扉が自動で動き、閉じる。

列車が動き始め、博多駅のホームの光景が遠ざかっていった。

ガタン、ガタンと列車の振動と音に不安になり、ギュッと目を閉じて龍馬により一層強くしがみつくルビィ。だがーーーー

 

「ルビィ、外を見てみな」

 

「いい景色だよ!」

 

「……?」

 

龍馬とディレットの言葉におそるおそる目を開けて外を見るとそこには体験したことのない光景が広がっており、ルビィは目を奪われた。

 

「すごい……!」

 

車よりも早く、レールに沿って走る電車から眺める景色はルビィに大きな感動を与えた。

あの世界では決して目にすることのない乗り物とそれから眺める景色。ルビィはそれに心を奪われた。

こうして見ていると彼女も年相応の少女なのだと感じる。

思えば盗賊として孤独に過ごしていた帝国での日々はその日を生きられるかどうかの必死な生活だった。

来る日も来る日も衛兵に捕まりはしないか、黒の一族に見つからないかと恐怖を感じながら生きるために盗みを続け、暗い地下で一人で暮らす毎日であり、娯楽や楽しみなどは皆無だった。

だが衣食住の心配も黒の一族による襲撃の心配もない今、ようやくルビィは年相応の少女になれたのだ。

 

「ルビィ、ジュース買ったけど飲むか?」

 

龍馬はバッグから駅で買っておいたオレンジジュースのペットボトルをルビィに渡す。

柑橘類の色の液体が入った瓶とは違う容器にルビィは興味を示す。

 

「これどうやって開けるの?」

 

「こうして蓋を回して……ほら」

 

龍馬がルビィのペットボトルの蓋を開けてやり、再び渡す。それを向かいの座席から見ていたディレットとルミナはクスリと笑った。

 

「ふふ、リョーマったらちゃんとお兄ちゃんしてるじゃない」

 

「ほんとほんと」

 

「え……そ、そうかな……」

 

家を出てからずっと不安がるルビィに優しく接する龍馬の姿はまさに頼れる兄である。

戸籍上、ルビィの兄になった龍馬だがあまり妹が出来た或いは自分が兄になったという自覚はまだない。だが、ルビィの面倒をしっかり見なければという強い気持ちはあった。

龍馬からペットボトルを受け取ったルビィはオレンジジュースを口にする。甘い味とさわやかな酸味が口いっぱいに広がる。

 

「美味しい……!」

 

「そりゃよかった。……ディレットとルミナは何がいいか分からなかったからサイダーにしといたぞ」

 

ディレットには500ミリリットルの、ルミナには350ミリリットルのサイダーを渡し、龍馬自身はブラックコーヒーを飲む。

飲み物を飲みつつ雑談をしながら電車に揺られていると目的の駅が近づいてきた。

 

 

「"次は福間。福間。終点です。お降りの方はお忘れ物のないよう、ご注意ください。降り口は左側です。開くドアとお足元にご注意下さい……"」

 

 

目的地の駅が近づき、アナウンスが流れる。

リョーマは三人に促し、降車の準備をして電車から降りる。

 

 

 

 

 

JR福間駅。福津市の玄関口のひとつとなる駅でそれほど規模は大きくない駅だったが2007年から改築工事が始まり、現在では駅の両側に入り口とロータリーが出来、複数の立体駐車場や駐輪場、駅前には小さなモールが建設されるなど、大型化・近代化が進んだ。

龍馬達はみやじ口方面に駅を出た。すると既にロータリーで平蔵とヨネ子が車で迎えに来ていくれていた。

 

「じーちゃん!」

 

「おう、龍馬!待っとったぞ!」

 

「あんた、元気しとったね?」

 

複数乗せられるように自家用兼農作業用に使っている愛車であるシルバーのダイハツ・ハイゼットカーゴに乗ってやってきた二人。龍馬は早速新しい家族、そして二人の"孫"を紹介する。

 

「じーちゃん、新しい家族のルビィ。ダークエルフって種族なんだ」

 

「ほう!この子がか!は~、あいらしか顔しとるのぉ!」

 

「こ、こんにちは……」

 

「はいよ、こんにちは。俺が龍馬のジジイの平蔵っちゅうんや。よろしくのう。こっちがばーさんのヨネ子たい」

 

「よろしくねぇ、ルビィちゃん」

 

そして龍馬は二人が驚く衝撃の事実を遂に口にした。

 

「じーちゃん、ばーちゃん。その子は二人の"孫"だぞ」

 

「……龍馬、お前何言いよーとか?」

 

平蔵はわけがわからないという顔をした。ヨネ子も首をかしげている。

 

「あ、あの……アタシ……リョーマ兄ィのお父さんとお母さんに"養子"として引き取ってもらいました……なので……その……おじいさんとおばあさんも……アタシの……」

 

「……は?ちょ、ちょっと待ってくれ。まさか……"孫"っちゅうのは……」

 

「はい……アタシはおじいさん達の"孫"です」

 

「なにいいいぃぃ!?」

 

「えええぇぇぇ!?」

 

平蔵とヨネ子は異世界出身の亜種族の孫が出来た事実に驚きを隠せなかった。まあ、無理もない話だが。

 

 

 

 

 

 

「いやー、心臓止まるかと思ったが!」

 

「ほんとほんと!まさかいきなり孫が増えるとか思いもせんやったけん」

 

「ごめんごめん、ビックリさせようと思ってさ」

 

平蔵の家に向かう車の中で龍馬は帝国での出来事とルビィのいきさつを話した。

帝国で様々な人々と出会い、それを手助けしてきたこと。ルミナの里を救ったこと。ディレットの森でイレーナを助けたこと。隣国に乗り込んで最強の騎士と戦ったこと。そしてルビィと出会い、彼女を救うために黒の一族やアークデーモンと戦ったこと。

今思えば生きているのが不思議なレベルだ。

 

「龍馬、お前色々大変やったのう……やけどさすがは俺の孫。しっかり人助けしとるやんか」

 

「へへ……まあね」

 

そうこうしているうちに車は平蔵宅に到着した。中に入るとターボが皆を出迎える。ターボはすぐにルビィにもなつき、友達になったようだ。

まだ昼食を取っていなかった龍馬達のためにヨネ子が料理を作ってくれた。と、言っても昨日の残り物だが。

それはカレーライスと味噌汁だった。ルビィは初めて見るカレーライスに少し戸惑っていたが食欲を誘う香りには勝てず、それを口にする。

 

「美味しい!」

 

「そりゃよかったたい。まだいっぱいあるけん、おかわりしたかったら()いーね」

 

盗賊時代はろくにその日の食べ物すら確保できなかったこともあったルビィ。

だが今はこうして優しい家族や仲間に囲まれて美味しい、温かい食事にありつける。ルビィはそんな幸せを噛み締めていた。

昼食を取った後は夕方までのんびりと過ごす。

 

 

そして夕方。日が徐々に沈んでくるとディレット・ルビィ・ルミナの三人にはヨネ子から"ある贈り物"がされた。

龍馬が花火大会に行くため、玄関先で待っていると戸が開き、ディレット達が出てきた。

 

「ごめん、リョーマ。お待たせ」

 

「おお……」

 

ディレット達はそれぞれが浴衣を着用していた。

やはり、夏……そして花火大会といえば浴衣だ。ヨネ子はディレット達の浴衣を用意しており、ルミナに関しては手作りだ。ルビィのものは先ほど急遽買いに行ったそうな。

龍馬はその美しさについつい見とれてしまう。

 

「"ユカタ"って素敵な服だね!リョーマ、どうかな?似合う?」

 

「あ、ああ……似合ってるぜ」

 

「あ、リョーマったらディレット見て鼻の下伸ばしてる!」

 

「の、伸ばしてねえよ!」

 

浴衣を着たルミナがからかうように龍馬の周囲を飛び回る。一方ルビィはディレットの影に隠れて若干恥ずかしそうだ。

 

「ルビィどうした?大丈夫か?」

 

「……こ、こんな綺麗な服着れるなんて思ってなかったから……その……アタシなんかに似合ってるのかなって……」

 

「……大丈夫だ。とても似合ってるぜ。ほら、行くぞ」

 

「……っ……!」

 

龍馬は恥ずかしがるルビィの手を引いて歩き出す。ディレットとルビィの履いた下駄のカラン、コロンという風情ある足音が辺りに響き渡り、横を浮遊するルミナも連れて龍馬は花火大会の会場……宮司浜海岸へと向かう。

会場は既に多くの人々が集まっていて屋台も出ている。

 

「いい匂い~……」

 

屋台で焼かれているのははしまきだ。鉄板で焼かれたお好み焼きを割りばしに巻き付けたもので、それらが香ばしい香りを辺りに漂わせていた。龍馬は全員分のはしまきを買い、みんなで食べる。

はしまきを食べ終わると、ルビィが先ほどから何かをじっと見ていた。それに気付いた龍馬は視線の先に目をやった。

 

「なんだ、ルビィ?わたあめが気になるのか?」

 

「……う、うん……」

 

ルビィが目をやった先では家族連れの子供がわたあめを買ってもらっている光景があった。

龍馬はルビィと一緒に屋台に近づく。

 

「すみません、わたあめひとつください」

 

「はいよ!」

 

露店のおっちゃんが割りばしを機械に入れると割りばしの先にまるで白い雲のように真っ白なわたあめが形作られ、モコモコと大きくなっていく。そんな光景を見てルビィは目を輝かせた。

出来上がったわたあめを受け取るとルビィは早速それを口にする。

甘い味が口の中に広がると同時にあっという間に溶け、気付けばルビィは夢中でわたあめを食べていた。

そんな二人を離れた場所から見ているディレットとルミナ。

 

「全然兄妹として違和感がないね、あの二人」

 

「そうね、ふふふ」

 

龍馬に手を引かれ、露店を回るルビィはとても楽しそうだ。

四人はその後もかき氷を食べたり、ヨーヨー釣りを楽しんだり、くじびきをしたりと露店を楽しんだ。

そしていよいよ、本日のメインイベントが開催される。

 

「みんな、花火が上がるぞ!」

 

龍馬が真っ暗な夜空を指差す。すると次の瞬間、大小様々な花火がドン、ドンと打ち上がり、真夏の夜空を彩った。

 

「うわぁ、すごい……!」

 

「綺麗……!」

 

「あれが……花火……」

 

異界の国から来た彼女達は花火を知らない。

その分、花火を初めて見た感動は大きかった。

夜空に咲く無数の光の花。そして大きな花びらを咲かせた花は次の瞬間、夜空に散って儚く消えていく。

次々に打ち上がる夜空の大きな花に風情を感じつつ、花火大会の時間は過ぎていく。

 

「リョーマ、綺麗だね」

 

「ああ」

 

そう言ったディレットはさりげなく、龍馬の手を握る。

 

「!!」

 

龍馬はそれに気付いた瞬間、顔から火が出そうなほど恥ずかしくなった。だがその手を引っ込めることはせず、彼女の手を握り返した。

チラリとディレットの顔を見ると、彼女も顔を赤らめて視線を反らしている。

……ルミナとルビィは龍馬達の前で打ち上がる花火に夢中で気が付いていない。

 

「リョーマ……ありがとう……」

 

「あ、ああ……その……まあ、なんだ……これからも……よろしくな」

 

「……うん!」

 

現代世界の少年と異世界のエルフの少女。その二人の一夏の思い出を彩るかのようにクライマックスの花火が打ち上がる。

大きく咲いた打ち上げ花火は儚く消えて、夜空に咲いた記憶となって、二人の心に深く刻まれた。

 

 

ーーーーこうして、2016年度の福津花火大会は終了した。

 

 

 

 

 

 

花火大会の帰り道、龍馬はルビィを背負って歩いていた。

花火大会ではしゃぎ疲れてしまったのか、龍馬に背負われながらぐっすりと眠っている。

 

「ルビィ、疲れてたんだね」

 

「だろうな。屋台と花火でめっちゃはしゃいでたもんな」

 

「ふわぁ~ぁ……私も眠くなってきた……」

 

龍馬の横を飛ぶルミナが大きくあくびをした。

こっちまで眠くなるからやめろ、と言いながら龍馬はルビィを背負ったまま家路を行く。

背中で寝息を立てるルビィの頭にはキャラクター物のお面、そして龍馬の肩に回した手にはヨーヨー釣りで取った風船ヨーヨーがしっかりと握られていた。

 

「……ムニャ……リョーマ兄ィ……」

 

「ん?」

 

「リョーマ兄ィ……ありがと……大好き……スー……スー……」

 

「……ふっ」

 

恐らくは寝言だろう。だが龍馬は悪い気はしない。

あまり良いとは言えない出会い方をしたはずの彼女がここまで彼を信頼してくれている。

そして戸籍上、龍馬は彼女の正式な兄となった。ならば兄として、この妹のために出来ることなら何でもしよう。龍馬はそう密かに誓った。

 

「さて……まずはこの眠り姫をエスコートしてやりますか」

 

龍馬はルビィを背負ったまま、ディレットやルミナと共に祖父の家を目指して歩く。

 

 

ーー背中で寝息を立てる眠れる姫。そんな姫をエスコートする騎士(ナイト)の如く。

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