アナザー・ディメンジョン -異界交流記-   作:誠龍

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異界と現代文化が入り乱れる一夜限りのお祭り騒ぎ、『異世界フェス』編スタートです!


異世界フェス編
第58話 異世界フェス・その①


夏休みも残り二週間を切ったある日、龍馬の元に一通の手紙が届いた。

差出人は……アルバートからだった。

シルワ語ではなく、丁寧な日本語で書かれている。

 

「アルバートさんから……?一体何だろ……」

 

 

 

 

 

"「リョーマ君。元気にしているだろうか。私達は変わりないよ。怪我もすっかり回復して今は仕事に復帰している。

さて、今回君に手紙を送ったのは他でもない。君に知恵を貸してほしいのだ。

実は陛下と大臣があることで悩んでいてな……」"

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日前……

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……」

 

「どうされたのですか、陛下?」

 

アルバートがソフォスに今日の報告をしていた時、ソフォスはなんだか思い詰めた表情をしてため息をついた。

どうせまたメンタイコが食べたいとか言うんじゃないのかこのオッサン、と内心思うアルバートだったがもちろん口には出さない。

 

「いや、実はのう……もうじき夏の収穫祭じゃろ?その出し物が決まらなくてのう……」

 

「収穫祭、ですか……そういえばもうそんな季節ですね」

 

アルカ帝国では年に二度、収穫祭として大きな祭りが開かれる。

一度目は夏野菜の収穫を祝う祭り、二度目は秋の終わりに開かれる秋の味覚の収穫祭だ。

メインイベントはあくまで新鮮な食材による料理を提供する屋台や露店であるが、人が多く集まるこのイベントを目当てに国を越えて様々な商人や冒険者達も国内外問わず集まってくる。いわば、帝国の稼ぎ時なのだ。

 

「アルバート……これはボルドに頼んで調べてもらった過去の祭りの"でーた"なのじゃが……」

 

「それより陛下……よく"データ"なんて言葉知ってましたね?私も最近覚えたばかりですよ」

 

「ほっほ!儂とて一国の王じゃからのう。まあ、これはボルドの受け売りなんじゃがな。……それでのう、賑わってるのは間違いないんじゃが、どうも年々集客率が減っているようなのじゃ」

 

「と、言いますと?」

 

「うむ、商人や冒険者……物流の要となる者達は変わらずやってきてくれているのじゃが……そういった品物を買ってくれている一般の人々が減っているようでの」

 

大臣ボルドが過去の祭りの集客データを見てみた所、収穫祭を機に帝都に集まる商人達とは反対に購買層である一般市民の集客率が年々低下していることがわかった。

原因を調査したところ、ザックリ言うと祭りの"マンネリ化"が原因らしい。

確かに珍しい物が流れてはくるが、毎年参加しているとやはりこう、盛り上がりに欠けるという話だそうだ。

 

「今はまだ大丈夫だが、もしこのままお金を落としてくれる市民達の集客率が悪くなれば物流の要となっている商人達も来なくなる。それはなんとしても避けねばならない」

 

購買層が来なくなれば商人達の商品も売れなくなる。そうなれば必然的に物流を担う商人達も祭りから徐々に離れていくだろう。

収穫祭は帝国の重要な資金源のひとつだ。それだけは回避せねばならなかった。

 

「……なるほど、確かにそれは一大事だ。しかし陛下、今以上に集客を見込めるような出し物などそう簡単には……」

 

「そこなのじゃ。原因がわかっているのにそれを回避する手段が見つからぬ。一体どうしたものか……」

 

ソフォスは頭を抱えた。

ニホンのような文明があるならまだしも、自分達だけで出来ることなどたかが知れている。

しばらく考えこむ二人だが、これといった決め手になるような案は浮かんでこなかった。

 

「ううむ……何かいい案はないかのう……」

 

「陛下……私からひとつ提案があるのですが……」

 

「む?なんじゃ、アルバート?」

 

「ここはひとつ、リョーマ君に手紙で助言を求めてみませんか?」

 

「リョーマ君に……?」

 

アルバートは龍馬に助言を求めることを提案した。

彼には雑貨屋カムランの建て直しに貢献した実績がある。それに彼の母親である涼子も結果的に竜の髭亭を繁盛させている。相談してみる価値は充分にある。

 

「……なるほど……彼なら何かいい案を出してくれるかもしれぬ。アルバートよ、頼んでもいいか?」

 

「ええ陛下、私めにお任せください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほどね……祭りの出し物か……」

 

龍馬はアルバートからの手紙を読みながら顎に手を当てて考える。

まあ、この時点でも多少案はあるのだが正直手紙でやり取りするのは時間がかかるし、疲れる。

龍馬はすぐに出かける準備をするとバイクに跨がり、ある場所に向かった。

その先は……携帯ショップだ。

 

「すみません、プリペイド式携帯を契約したいんですが」

 

「はい、プリペイド携帯ですね?」

 

龍馬はすぐにソフォスやアルバートと連絡を取れるようにプリペイド携帯を契約しに来たのだ。

一昔前のプリペイドといえばおもちゃみたいな物が多かったが、今は普通のガラケーとなんら変わらないデザインのものが多い。龍馬は適当に青い携帯を契約し、5000円分のプリペイドカードを買ってそれに突っ込んだ。

早速それを持ち帰って充電し、梱包と使い方の説明を書いた紙を入れておく。……まあ、アルバートならなんとかしてくれるだろう。

充電を待つ間、LINEにて仲間達に連絡を取る。残念ながら勇斗はバイトで千春は母親と出掛けているそうだ。ディレットはふくまるでバイトである。

しばらく待つと凛とアメリアから連絡が来た。どうやらトロバドルに一緒にいるらしい。

龍馬は一時間後にふくまるで待ち合わせをすることにした。

準備をする間、久しく会ってなかった凛とアメリアにルビィを紹介するために彼女とルミナを連れていく。

……大事な物を忘れるとこだった。龍馬は充電の完了したプリペイド式携帯に自分の携帯の番号を登録しておく。

……そういえば充電はどうしようと考える龍馬だったが、その気になれば帝国がソーラーパネルでも設置出来るだろうとあまり深く考えずに携帯と充電器を梱包してバッグに入れる。

その後彼はルビィとルミナを連れてふくまるに向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

途中でコンビニに寄り、プリペイド式携帯を発送した龍馬はふくまるで二人に合流した。

 

「あ!斎藤君、久しぶり!」

 

「やっほー、リョーマ!元気してた?」

 

「ああ、おかげさまでね」

 

すっかりコンビが板に付いた凛とアメリア。まるで昔からの友達のようだ。

龍馬はそんな二人の仲睦まじさを微笑ましく思いながら席に座る。

 

「斎藤君、もしかしてその子が例の?」

 

「ああ。うちで引き取ったルビィだ。まあ、義理の妹っつーことになる。……ルビィ、挨拶しな」

 

「あ、こ、こんにちは!サイトウ・ルビィです!」

 

「よろしくね、ルビィちゃん!私は伊月凛。一応、芸能活動やってるよ」

 

「私はアメリア。見ての通り、セイレーンだよ。帝国出身のね。今はこっちでガクセーやってる」

 

自己紹介が済むと龍馬が全員分の水を持ってくる。

水に手を付けるとディレットが注文を取りにやってきた。

龍馬とルビィはラーメンを、残りの三人は飲み物だけを注文する。

注文の品がほぼ同時に到着し、それを口にしながら龍馬は本題を切り出した。

 

「二人とも。実は今日皇帝陛下と騎士団長のアルバートさんから手紙が来た。どうやら毎年恒例の収穫祭の集客が落ちてるって悩んでるそうなんだ。それで俺に出し物で何かいい案はないかと。無いこともないが、俺一人の知恵だけじゃな……二人は何かアイデアないか?」

 

「あー、なるほど。夏の収穫祭か。確かに年々一般のお客さんが減ってる気はするねぇ」

 

帝都に魚を卸す仕事をしていたアメリアは心当たりがあるようだ。

主にアメリア達セイレーンをはじめとした海の種族は海産物をメインとした露店を開いていたらしいが、客足の減少から徐々に店そのものを出さなくなった者達もいたらしい。

やはり祭りのマンネリ化は誰もが感じていたようだ。

さすがにアメリアには特にこれと言ってアイデアはないようだ。ならば凛はどうか。

 

「私?私は……そうだなぁ……うーん……色々手間やお金もかかるけど……」

 

「なんだ?もったいぶらずに教えてくれよ、凛ちゃん!」

 

凛にはある考え……というより願望があった。

 

「私ね、異世界でステージに立ってみたい!」

 

「ファッ!?」

 

ステージとはあのアイドルが歌うステージか?異世界で?正気かこの娘は?そんな思いを隠せない龍馬。

 

「うせやろ!?ステージ!?」

 

「まあ、ステージ設営に音響や照明、DJとかMC、色々揃えなきゃいけない人材や機材が多すぎてただの夢物語でしかないけどね。でも異世界の人達にも私の歌を届けられたらなぁって思ったんだ」

 

あの世界でーーーーこちらの文化をほとんど知らない人々に"歌"を届けられたらどんなに楽しいかーーーー凛はそんなことを度々考えていた。

だが現実は厳しい。まず渡航費がかかる。それからさっき言った通り、異界での機材やスタッフの準備などをどうするか。それにあちらの世界には電力がない。

凛の夢は夢で終わるはずだった。だがーーーー

 

 

「……凛ちゃん、意外といけっかもよ?それ」

 

「え?」

 

「陛下の足元見てやるんだよ……渡航費や機材の運搬はあの人に何とかさせよう。何、"私にいい考えがある"っていったら喜んで金出すさ」

 

「おお、ゲスいゲスい。ちなみに斎藤君、そのセリフ死亡フラグだからね?」

 

まあな、と龍馬。

そういえば龍馬自身も何か案があるそうだが、一体何があるのだろうか。

 

「……ああ。ま、突発的に考えたヤツだからこれも実現性はないけど山笠とか担いだらいいんじゃないか?」

 

「うーん、悪くはないけど肝心の山笠が機材より難しいかもしれないね」

 

「だよな」

 

「諦めるのは早いんじゃない!?」

 

そう言ってドン、とテーブルにコーラが置かれる。

 

「れ、レナ!?」

 

「諦めたらそこで試合終了だよ」

 

「どこのバスケ部の顧問だ」

 

「ところで面白そうな話してるじゃない。私にも一枚噛ませてよ。あ、これはオゴリね」

 

なんと彼女まで参加を表明してきたのだ。

奢りのコーラを全員置くと店の中が落ち着いたのをいいことに椅子を持ってきて龍馬達のテーブルに座る。

ルビィとルミナは笑顔でストローからコーラをすすっていてそれを見たレナも嬉しそうだ。

 

「美味しい?」

 

「うん!とっても!」

 

「ただのコーラでそこまで喜んでくれるなんて嬉しいねぇ」

 

ニコリと笑うレナ。やはりこの少女には不思議な魅力がある。老若男女問わず人々を笑顔にさせる不思議な魅力が。

ハチマキを巻いた格闘少女キャラのような見た目が面白いという人もいるが、それだけではないだろう。もはや彼女はふくまるになくてはならない存在にまで昇華していた。

 

「あー、丁度コーラ飲みたかったんだわ。ありがてぇ」

 

「今暑いからねー」

 

「ところでレナ、自分にも一枚噛ませろって行ったって一体何すんの?一発芸で酔拳でもやんの?」

 

「龍馬だけコーラ代取ろうか?」

 

「すいません!許してください!何でもしますから!」

 

「ん?今何でもするって言ったよね?」

 

「何でもするとは言ってない」

 

「えぇ……」

 

ついにおばちゃんみたいなことを言い始めたレナ。このまま年を取ったらどんな強烈なキャラになるのか想像もつかない。

一昔前の格ゲーですらここまで個性的な女格闘キャラいねーぞと密かに思う龍馬であった。

 

「そりゃ私の出し物と言ったら母さん直伝のこの料理とお菓子だよ!帝国の人達にも味わってほしいなぁ」

 

どうやら屋台や露店が多いと知ってレナは自らの料理の腕を披露するつもりらしい。まだ行くと決まったわけでもないのに気が早いものだ。

まあ、そんなところも彼女の魅力のひとつなのだが。

 

「……リョーマ、私を忘れてない?」

 

使い終わった食器をトレーに乗せて頬を膨らませているのは頭に白い三角巾を付けたディレットだ。

片付けをこなしつつもこちらをじっと見ている。

 

「ごめん、忘れてた」

 

「……フルゥム」

 

「あちっ!!あぢっ!!アツゥイ!!」

 

「わーすごーい、魔法だー」

 

龍馬の頭にフルゥムの小さな火が灯り、龍馬が慌てて火を消そうとするその様子を楽しむ愛華。鎮火はしたが、頭の一部が使い終わった線香花火みたいになってしまった。

プスプスと未だにかすかな黒い煙を上げる龍馬の髪。

 

「まったく、なんてことしやがる」

 

「私を置いてけぼりにした罰だよ」

 

「お前バイト中だろうが!」

 

龍馬に対して厨房の奥で舌を出して龍馬を挑発するディレット。

龍馬が向き直るといつの間にか凛がノートを取り出し、今までの案を書き留めていく。

まずひとつは山笠を担ごうという龍馬の案。

問題点はこの際置いておき、もし山笠を担げたならなかなかいい見世物になるに違いない。

そしてレナの屋台。ふくまるの料理をはじめとした様々な日本の料理や菓子は帝都の人々を唸らせるはずだ。

そしてもうひとつが凛のステージイベントだ。

ひとつひとつ詳細に書いた案からそれぞれ準備するものや問題点も書いていく。

 

「なんか……ステージに露店ってフェスみたいだな……」

 

「フェス……フェスか……!うん、そうだね!さながら"異世界フェス"ってとこかな!」

 

「異世界フェスか……なんか面白くなってきやがったぜ……!」

 

こうして龍馬達による帝国収穫祭を盛り上げるための"異世界フェス計画"がスタートしたのであった。

その翌日、都合のついた勇斗と千春を呼び、バイト休みのディレットを連れて再びふくまるへ……と、思ったのだが今日のふくまるは非常に混んでいて店内は慌ただしい。

仕方なく龍馬達は場所を移すことにした。行き先はカフェバー"トロバドル"だ。

店内に入るとコーヒーのいい香りが漂ってくる。奥のテーブル席に四人で座ると龍馬と勇斗はコーヒー、ディレットはクリームソーダ、千春はアールグレイを頼み、早速話し合う。

 

「龍馬、帝国の祭りの出し物を話し合ってるんだって?」

 

「ああ。案があるなら何でもいい。なんかアイデアないか?」

 

「アイデアねぇ……」

 

千春はアールグレイを口にし、カップを置いて少し考える。

多くの人々が集まる帝国のイベントだ。せっかく何かを出すならしっかりと下準備をしてからの方がいい。学校の文化祭とはわけが違うのだ。

しかしそう急にはアイデアは出ない。

そもそも学生の身分で異世界とはいえ、他国の祭りの出し物を考えるなど無理があるのではないか。

 

「ねえ、斎藤。やっぱり……」

 

「無理とか出来ないとか話はナシだぜ。俺はやる。陛下がわざわざ俺達を頼ってくれてるんだ。何もしないわけにはいかないだろ」

 

千春が言葉を言い終わる前にそれは龍馬にさえぎられた。

一国の王がこうしてわざわざ自分を頼ってくれている以上、期待に応えるべきだと彼は主張する。

龍馬の真剣な表情を見て考えなおす千春。その時勇斗が口を開いた。

 

「なあ、龍馬のじーちゃんならなんかその手のことに詳しいんじゃないか?人脈も広そうだし」

 

「じーちゃんか……」

 

龍馬の祖父である平蔵。そう言われてみれば祖父は昔からあの地に住んでいる。確かに人脈で言えば広いほうだろうとは思う。相談してみる価値はあるかもしれない。

 

「……そうだな。とりあえずじーちゃんにも色々相談してみるよ。他になんかないか?」

 

そうは言ったが、これ以上は皆何も案はなさそうだ。龍馬達はこれで解散をすることにした。

次の日、龍馬はバイクで平蔵の家へと向かった。

珍しく一人でやってきた孫を祖父母はいつもと変わらぬ笑顔で迎えてくれる。龍馬はヨネ子の出した冷たい麦茶を飲み干すと平蔵に話を切り出す。

 

「じーちゃん、頼みがあるんだけど」

 

「なんか、そげん改まって」

 

龍馬は説明した。収穫祭の集客に伸び悩む帝国と皇帝からの"龍馬の知恵を借りたい"という直々の手紙のことを。

 

「……お前……ただでさえこないだとんでもない大事に巻き込まれとってからに、またスケールのでかいことしよるのお……」

 

「皇帝陛下からの直々のお願いだし、突っぱねるわけにはいかないしね。……んで、じーちゃん。なんかいいアイデアない?」

 

「そんなんいきなり言われてものお……あるにはあるけど動いてみらんとなんとも言えんわ。しばらく待ちぃや」

 

「いい返事期待して待ってるぜ、じーちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

後日、龍馬のスマホに一本の電話が入る。

それは登録したあのプリペイド式携帯からであった。

 

「もしもし?」

 

「"おお!繋がったぞ!リョーマ君か?"」

 

「皇帝陛下ですか?……どうやら無事にプリペイド携帯を使えたみたいですね」

 

「"最初は苦労したぞ。なんせ異世界の文明の利器。説明書はニホン語だから所々わかりづらいところも多くてのう。いやはや、手紙と違って本当に便利なもんじゃな"」

 

「そうでしょう?あ、でも陛下。それはプリペイド式だから俺が最初に支払った通信料以上に通話すると使えなくなるから通話のしすぎには気を付けてくださいよ」

 

「"うむ。了解した。それで……リョーマ君。早速だが何かいい案はあるか?"」

 

「ええ、ある程度は」

 

「"それはいい知らせだ!で、一体何かの?"」

 

龍馬はこれまでの経緯で出た案をソフォスに伝える。

特に一番重要になるのが"電力の確保"である。

少なくともこれからの連絡用にまずはソフォスの携帯だけでも充電出来なければ話にならない。

 

「"ううむ……"デンキ"の確保か……これはニホンの力を借りねばどうにもならんのう……"」

 

「陛下、そこを帝国の力でなんとか。電力の確保、スタッフの渡航費や機材の運搬費などをなんとかしてもらえればこちらもかなりリソースを確保できると思うんです」

 

「"ふむ……儂らが頼った他ならぬリョーマ君の考えじゃ。費用はなんとかしよう"」

 

「ありがとうございます。それとまずはその携帯電話を充電出来るように日本に頼んで比較的規模の小さなソーラーパネルなんかを設置してもらうといいかもしれません」

 

「"そーらーぱねる?"」

 

「太陽の光を利用して電気を作り出す機械です。これならそこまで大規模な工事をせずとも携帯電話の充電くらいはできるでしょう」

 

「"なるほど。では早速手配するとしよう。リョーマ君、恩に着る"」

 

「まだ始まったばかりですよ、陛下。お礼なら全てが成功してからにしてください」

 

「"ははは、それもそうじゃな。……では、リョーマ君。よい報せを期待しておるぞ"」

 

「任せてください」

 

龍馬は電話を切る。

どうやら当面の問題は"電力の確保"になりそうだ。

仮に凛が歌うとしてステージを設営した場合、照明・音響機材がどうしても必要になる。

機材だけを帝国に持ち込めたとしても意味がない。電力がなければ動かないのだから。

屋外でそれをやる場合、一体どうすればいいのだろうか。そういった機械に詳しくない龍馬には解決案が浮かばない。

 

「……親父に相談してみるか」

 

機械に詳しい父ならば何か知っているかもしれない。電力の問題はそれまでとりあえず置いておくとして、気になるのは平蔵の方だ。

勇斗の読み通り何かしらの人脈は持っているようだったが、あれからどうなったのだろうか。

その瞬間、スマホが着信音を鳴らす。画面には"じーちゃん"と表示されていた。

 

「……っと、噂をすればか」

 

祖父からの着信で龍馬はすぐに電話に出る。

 

「"龍馬か?俺たい!"」

 

「じーちゃん、何か進展あった?」

 

「"有りも有り。大有りたい!祭りと聞いて地元の連中がみんな協力に意欲的になってくれたんや!"」

 

「マジで!?」

 

平蔵が地元の知り合いに話を持ちかけたところ、そこから噂が一気に広まっていつの間にか平蔵すら把握出来ないほどに話が膨らんでしまったのだという。

様々な飲食業を生業とする人間から花火職人、伝統工芸品の職人、縁日での屋台の経験がある者達などが平蔵に話を聞きに訪れたのだという。

 

「花火か……!祭りにはかかせないな!」

 

あちらの世界には花火がない。大きな音と色とりどりの無数の光で夜空を彩る花火はきっと祭りを盛り上げるに違いない。これは大きな助っ人だ。

さらに嬉しいことに地元の祭りで使う山笠までもその気になれば持ち出せるという意見まであった。

いよいよ話が本格的に動き出してきた。不安や問題点もまだまだあるにはあるが、ようやく計画が現実味を帯びてきたのだ。何とかして問題や課題をクリアしたいところである。

 

 

 

まずはこれらの情報をまとめて、次に電力源を確保せねば。

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