アナザー・ディメンジョン -異界交流記-   作:誠龍

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第59話 異世界フェス・その②

翌日、龍馬は凛に呼び出されてトロバドルへと向かった。

龍馬が到着すると凛の隣に見知らぬ男性が同席している。龍馬は席に座ると凛からその男性を紹介された。

 

「斎藤君、紹介するね。この人は私がイベントでよく共演しているDJの島袋さん。……島さん、彼がさっき話した斎藤龍馬君だよ」

 

「ご紹介に預かりました、DJの島袋清真(しまぶくろせいしん)です、初めまして。福岡を中心にDJ活動をしています」

 

「あ、ああ、どうも。斎藤龍馬といいます。こちらこそ初めまして」

 

島袋と名乗る男性は沖縄出身のDJであり、現在は福岡を中心として九州各地のクラブでDJをやっているらしい。

龍馬は立ち上がって島袋と握手をし、再び席に座る。

 

「ちょっと気が早いかもしれないけど、今回の話を島さんに話したらすごく食い付いちゃって……」

 

「伊月ちゃん、だって異世界でDJ出来る機会なんて絶対ないぜ?ワクワクするじゃん!」

 

「島さん、まだ行けるかどうか決まったわけじゃないんだよ?」

 

「ああ……凛ちゃん、そのことなんだけど……実は昨日陛下から電話がきてさ……」

 

「……え?異世界に電話があるの?」

 

「あ、いや……俺が買ったプリペイド携帯を送ったからそれで……」

 

「ああ……なるほどね!それで……何か進展があったの?」

 

"陛下から電話が来た"というセリフをさらっと言う龍馬に島袋はこの話がスケールの大きな話だと改めて悟った。

目の前にいる彼はどう見ても普通の高校生だが

、凛の話通りあのアルカ帝国の皇帝と交流があるのだ。

 

「どうやら渡航費や運搬費は陛下が出してくれるらしいよ。上限はわからんけど、かなり余裕はあるらしい。流石帝国だな」

 

「そっか!良かった!あ……でも……」

 

凛はとある問題点を思い出す。

 

「電力はどうするの?機材は用意できてもさすがに電力そのものは無理だよ?」

 

「ふっふっふ、大丈夫だ。心配するな。その点はどうにかなりそうだしな」

 

 

 

 

それは前日のことであった。

 

 

 

 

 

 

その日帰宅した父に現在の状況を伝え、龍馬は協力を仰いだ。

 

「なるほど、野外の電力供給か……と、なると電源車かガソリン発電機……或いは充電式のバッテリーが必要になるだろうな」

 

電源車は野外フェスなどで大掛かりなステージの機材を動かすために使用される、文字通り電源そのものとなる車のことである。

変圧機能も付いているため音響機材を接続した場合、ノイズや音割れといったトラブルも少ない。

しかし車というカテゴリのため、運転できる人間が必要なうえに運搬の手間が一番かかるものでもある。

ガソリン発電機の場合はガソリンさえあればどこでも発電が可能だが、起動音が非常にやかましいのと変圧機能がないため、ノイズや音割れなどによって機材のスペックを発揮できないことがある。

バッテリーの場合は一番運搬が楽だが、ステージの照明などの大掛かりな電力は賄えないという欠点がある。せいぜいギターのアンプやスピーカー用の電力がいいとこだろう。

 

「うーん……親父、なんとかなるか?」

 

「丁度俺の後輩がそういった機材を貸し出す会社に勤めてるから口利きは出来るぞ。ただ、電源車を使うにはサイズにもよるがレンタル代と燃料代の他に電源の取り扱いができるオペレーターの人件費がかかる。金を出してもらえるとはいえ、ある程度調べて予算を算出してから陛下に相談した方がいいかもしれないな」

 

「わかった、じゃあ一番大きいサイズで頼むよ。何があるかわからないしな」

 

「よし、情報がわかったらまた声掛けるからお前は今出来ることを頑張れよ」

 

「ありがとう、親父」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「電源車……なるほどね」

 

「それなら照明も音響機材もバッチシだな」

 

「とりあえずうちの父親の情報を待って電力に関しては追って連絡します。それと俺からも質問があるんですが……島袋さん、ステージってどんな形にします?」

 

龍馬が考えていたのはステージの形や間取りだ。あまりイベントごとに詳しくない龍馬はその点を二人からしっかり聞いておく必要があった。

 

「そうだなぁ。まあ、略図だけど……」

 

島袋は持っていたノートに大体の図を描いた。

ステージの背後には控え室的なスペースも欲しい。

それから照明と……可能ならばスモーク演出も欲しいところだ。

もし龍馬の父親のツテが用意出来るのであれば"フォグマシン"が欲しいと島袋は言う。

フォグマシンとはステージ演出装置の一種でスモークを排出して演出効果を出す機械のことだ。

ちなみに霧メイクと呼ばれるフォグマシンもあり、こちらは霧状のスモークを排出することができる。

また、足元のみにスモーク演出を張るローフォグマシンというドライアイスを利用したフォグマシンもある。島袋は状況に応じて演出の使い分けが出来るように揃えられるならばその三種類を揃えてほしいのだそうだ。

期待に沿えるかどうかはわからないが龍馬は照明機器、フォグマシンの件について了承した。

 

「さて、設備に関する話はこれくらいで大丈夫かな」

 

龍馬は自分のメモに今話題に上がった事を書き留める。

 

「斎藤君、設備もだけど……肝心のステージ設営は大丈夫かなあ?」

 

「ああ、凛ちゃん心配すんなよ。帝都にはニコラスさんっていう建築ギルドの知り合いがいるからステージの設計図さえあればあとはニコラスさん達がしっかり仕事してくれるはずさ」

 

帝都の建築の多くを請け負っている建築ギルド長ニコラスとその部下である屈強な男達。彼ならステージくらい簡単に作り上げてくれるだろう。

 

「すごいな、斎藤君そんなに異世界に知り合いいるんだね」

 

「まあ、こないだの帝国への旅行で色々ありまして」

 

何度も言うが、本当に帝国でのあの二週間の出来事の後で生きてるのが不思議なくらいだ。

龍馬はあの異界旅行の体験を思い返しながらコーヒーを口にする。

同時に向かい側で同じくコーヒーを飲む凛と島袋。

 

「ん?凛ちゃんそういえばコーヒー飲めたっけ?」

 

「最近飲めるようになったんだよ」

 

凛はついこの前までコーヒーが飲めない人間であった。

トロバドルに来た際はいつもジュース類か紅茶を飲んでいたが、最近マスターに勧められて飲んでみたら意外にもハマったらしい。しかもブラックだ。

凛はこの時ある決意をしていた。そしてコーヒーカップを置くと口を開く。

 

「よし……島袋さん、まずは下見に帝国に行くよ!」

 

「うん、何となく予想はしてたよ」

 

「マジか……」

 

イベントを開くのであれば会場(ハコ)の下見に行くのは当然のことだ。

それに帝国の人々の一部がスタッフにも成り得るわけだし、挨拶もしておかなければと凛は考えていた。

島袋は凛のそんな考えを薄々わかっていたようで大して驚きもしなかった。

こうして龍馬は凛と島袋から帝国への案内役を頼まれつつ、再び帝国へ向かう準備をするのだった。

急いで翌々日の飛行機を予約する。予定は二泊三日だ。今回は急ぎの用事なのでバイクはなしだ。

夕食の席で龍馬の帝国行きを知ったディレットは口を尖らせる。

 

「リョーマずるい!私も行きたい!」

 

「遊びに行くんじゃないんだぞ、大体お前は明日明後日バイトだろうが」

 

「むぅ……」

 

今回は彼女は留守番だ。帝国へ行くのは龍馬、凛、島袋の三人である。

 

「あんた気を付けりーよ。向こうじゃしょっちゅう変なことに巻き込まれるけんね」

 

「大丈夫だって、母さん」

 

夕食を食べ終えて旅支度を始める龍馬。

荷物も纏め終わった頃、父が部屋にやってきた。

そこで渡されたのは電源車や設備機材レンタルの見積書だ。しかも後からLINEで追加で調べて欲しいと言ったフォグマシンまで追加されている。

……やはり数日借りるとなると結構な金額だが、帝国の財力ならなんとかなるだろう。

龍馬はアルバートとソフォスに渡すため、見積書をスーツケースに一緒にしまう。

そして二日後。龍馬は福岡空港で凛と島袋の二人と合流した。

しかし人数が一人多い。それはアメリアであった。

事の成り行きを聞いてみると凛は二日前の晩、アメリアにある提案を持ちかけたらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リン、話ってなに?」

 

「アメリア……あのね……今度帝国で収穫祭あるでしょ?あそこでステージを作って歌うことになったの」

 

「え!?ほんとに!?リン、凄いじゃん!」

 

アメリアにとって凛はもはや親友と呼べるレベルにまで仲良くなった異界の友。その友がまさか帝国で歌うことになるとは。アメリアはまるで自分のことのようにそれを嬉しく思った。

 

「……それでね、アメリア。ひとつ、相談なんだけど……私と一緒にステージで歌わない?」

 

「え!?私が!?」

 

凛はあの夜、トロバドルで聞いたアメリアの歌声をとても素敵に感じた。それはアメリアも同じで凛の振り撒く笑顔と元気が湧いてくるような明るく、しかし力強い歌声に憧れにも近い感情を抱いていたのである。

アメリアは少し悩んだが、それを引き受けることにした。

 

「でも……ほんとに私なんかでいいの?」

 

「当たり前じゃない!私達二人ならもっともっと多くの人達を歌で笑顔に出来るよ!だからアメリア、一緒に歌ってくれない?」

 

「……リン、ありがとう……じゃあ、よろしくね!」

 

「こちらこそ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……っていうやり取りをこないだリンとやってね」

 

「なるほど、そりゃあ盛り上がりそうだ」

 

荷物を預けた龍馬達はターミナルで飛行機の出発時間まで待つ。

その時島袋が気を利かせて全員分の飲み物を買ってきてくれた。飲み物を飲んで一息付きつつ、島袋は龍馬に帝国の事を尋ねる。

 

「そういえば龍馬君、帝国旅行はどんな感じだったんだい?」

 

「あ、私も聞きたい。教えてよ、斎藤君」

 

「リョーマ、帝国は楽しかった?」

 

「あ、ああ……まあ、楽しかったんだけど……色々濃密すぎたな」

 

どこから話したものか。

帝国に着いてから様々な人と知り合った。

雑貨屋カムランのカムラン一家やゴロツキのグレッグに竜の髭亭のおかみであるアンナと従業員のレベッカ。

それにレクシオン教団司祭のノエルに女神アレク……その他諸々。帝国だけでもかなりの人と顔馴染みになった。

まずはカムラン一家。彼等を邪魔するラオグリッド商会と一悶着あったことを龍馬は話す。

 

「……んで、このラオグリッドってヤツがほんとにクソで……盗賊兼暗殺者まで雇ってやがったんですよ」

 

「龍馬君、よくそんなのと喧嘩して無事でいられたね……」

 

「斎藤君、やっぱり化け物じゃないの?」

 

「ラオグリッド商会、やっぱり裏があったんだね。あいつら私達セイレーンの海産物の卸売にまで邪魔をしに来たことあったからそれ聞いてスカッとしたよ」

 

龍馬は続けてルミナの里を救ったこと、隣国であるヴィヴェルタニアにさらわれたモニカと千春を助けるために仲間達と乗り込んで最強の騎士・バルガスと戦ったことやアークデーモンと戦ったことも話した。ただし、ルナ・アームのことは伏せておいた。

 

「……龍馬君、君は人間だよね?」

 

「斎藤君化け物説が濃厚」

 

「あのヴィヴェルタニアの騎士やアークデーモン相手に喧嘩技で勝つなんて……」

 

「正真正銘の人間ですしおすし、ごく普通の男子高校生です。あとアークデーモンにトドメ刺したのはうちの母親です」

 

そもそも男子高校生は異世界の騎士と喧嘩なんてしないし、アークデーモンを返り討ちにする男子高校生の母親なんて普通はいない、と龍馬以外全員が思ったが、それは黙っておくことにした。

話をしているうちに飛行機の時間になり、搭乗して飛行機は羽田空港へ向かう。

空港から東京湾沖行きのフェリーに乗り、海洋港にて帆船に乗り換える。

そういえば前回は車両の乗せられるフェリーオンリーだったので帝国の帆船に乗るのはこれが初めてだ。

帆船が進み始め、薄暗い次元の門を抜けると眩しい日差しが龍馬達を包む。そして見知った光景が再び見えてきた。

 

「すごい、すごい!ほんとに異世界だ!」

 

「ああ、テレビで見るのと実際に見るのとでは大違いだな」

 

「久々の帝国だー、懐かしいな」

 

凛ははしゃぎ、島袋は景色を楽しみ、この世界の住人であるアメリアは久々の帝国に思いを馳せる。

 

「(こないだ行ったばかりだけど、なんだか久々なような気がするな)」

 

龍馬がそんなことを考えているうちに船は港に到着する。

桟橋から通路へと上がると既に"迎え"が来ていた。

 

「久しぶり……というほど時間は経っていないかな。また会えて嬉しいよ、リョーマ君」

 

「アルフォンスさん、また会いましたね。迎えに来ていただいて感謝します」

 

そこにはオールデン騎士団のアルフォンスがあの時と同じように迎えに来てくれていた。

実は龍馬が前もってソフォスに連絡していたので再びアルフォンスが遣わされたのだ。

 

「え!?え!?何このかっこいい騎士様!?」

 

「すげえ……本物の騎士だ……しかもイケメン……」

 

「オールデン騎士団がお出迎えなんて凄い厚待遇だよ……」

 

凛達三人がアルフォンスに対してそれぞれ違ったリアクションを見せるのが面白くてたまらない。

 

「お初にお目にかかります、私はアルカ帝国オールデン騎士団第1部隊隊長アルフォンス・リーゲルと申します。皆様のお迎えとご案内を仰せつかっております。馬車をご用意しておりますのでそちらにお乗りください」

 

アルフォンスの案内で用意されていた馬車に乗り込み、城を目指す。

初めて乗る馬車に凛と島袋ははしゃぎっぱなしだ。アメリアは懐かしそうに外を見ている。

馬車から見えるバザー通りの眺めを楽しみつつ、龍馬達は進んでいった。

城へと到着し、龍馬達は謁見の間にてソフォス皇帝やアルバート達と再開した。

 

「おお、リョーマ君か!待ちわびたぞ!」

 

「元気そうで何よりだ、リョーマ君」

 

「陛下!アルバートさん!お久しぶり……っていうほどじゃないですかね」

 

三人は再会を喜んだのち、場所を謁見の間から応接室へ移す。

 

「リンさんとアメリアさんは一度フクオカで会ったことがあるが……そちらの御仁は?」

 

そういえば島袋は顔合わせは初だ。緊張からか、彼はさっきからガチガチに固まっている。

まあ、この反応が普通だろう。何せ相手は一国の王だ。緊張していない龍馬達の方がむしろおかしい。

 

「あ、あ、あの……じ、自分は……」

 

「島さん、声震えてるよ……」

 

やれやれ、といった表情で島袋を見る凛。

 

「ほっほ。そう緊張めさるな。なに、近所のジジイのような感覚で接してくれて構いませぬぞ」

 

「陛下の言う通りです、名も知らぬお客人よ。このオッサ……陛下はメンタイコが食べたいだけで人をフクオカまで連れ回す仕方のない人ですから」

 

「……アルバート……今お主オッサンて言いかけたじゃろ……お主、儂になんか恨みでもあるの?」

 

遂にソフォスのことを声に出してオッサン呼ばわりし始めたアルバート。

気のせいか最近のアルバートはやたらソフォスに対して辛辣だ。結構な気苦労をかけられているに違いない。

そんなコミカルな雰囲気になってか、島袋は幾分か緊張の糸がほどけたようだ。

 

「失礼しました。自分は島袋清真と申します。福岡を中心に九州でDJをやっております」

 

「でぃー……じぇい?」

 

「"ディスクジョッキー"の略で既存の音楽をかけながらそれを組み合わせたり繋げたりして会場を盛り上げる職業のことです」

 

「音楽……演奏者みたいなものかの?」

 

「演奏者……とはちょっと違いますね。まあ、似たようなものですが」

 

「島さん、実際に見てもらった方が早いんじゃない?」

 

「そうだね。緊張もだいぶほぐれてきたし……百聞は一見にしかずだ」

 

島袋はそう言ってリュックからタブレットとターンテーブルのついたコントローラーを取り出す。

近くにあった小さなテーブルを借りてコントローラーとタブレットを繋ぎ、音楽をかけ始める。

曲は無難にEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)などのクラブ・ミュージックだ。

段々と盛り上がったその瞬間、"つなぎ"を感じさせずに全く別の曲へと変え、絶え間なく曲を流し続け、観客(オーディエンス)を盛り上げ続ける。これがDJだ。

聞いている龍馬達も自然と曲のテンポに合わせて身体がリズムを刻み始める。

最初はEDMに驚いたソフォスとアルバートたが、彼等も自然に身体が動き始めている。掴みはいい感じだ。

 

「素晴らしい!これが"でぃーじぇい"か!儂は音楽や踊りには明るくないが、聴いていると身体が自然に踊ってしまうな!」

 

「これなら会場にいる誰もが音楽を楽しめる!こんな文化もニホンにはあるのだな!」

 

ソフォスとアルバートはすっかり島袋のDJの虜になってしまった。

さらにここでソフォスからある提案が。

 

「シマブクロ殿。よろしければ場所を中庭に移していただけるかな?城の者達にも是非聴かせたい!」

 

「ええ、喜んで!」

 

特技であるDJの腕を披露したことで緊張は完全に解けた島袋。

ソフォスの頼みで中庭に場所を移し、騎士や兵士達、メイドや大臣など城の関係者を中庭に集めて島袋のちょっとしたDJイベント(予行演習)が始まった。

何やら怪しげな機械を用意したニホン人を前に兵士達は首を傾げる。

だが、それも音楽が鳴り始めるまでだ。島袋がEDMをかけ始めると最初は困惑していた兵士達が徐々にリズムを刻み始めた。

そこからはもう芋づる式だ。隣がリズムに乗り始めればその隣がリズムに乗る。

段々と中庭(ハコ)が沸き上がるのが手に取るようにわかる。

書類整理に追われていた大臣のボルドもちょっとした息抜きのつもりでやってきたが、すっかりハマってしまった。

 

「陛下!何やら!この音楽は!ついつい!身体が!踊って!しまいますな!」

 

「そうじゃろうボルドよ!これが!"でぃーじぇい"と!いうもの!らしいぞ!」

 

「なるほど!これは!よい出し物に!なりそうですな!ついでに!私の!お腹もへこみそうですぞ!わっはっは!」

 

30分ほど島袋は回し続け、異世界での予行演習DJは成功を納めた。

DJが終わった後、再び応接室に場を移す。

龍馬はこれからのことと、"異世界フェス"計画の出し物について話し合った。

まず、凛とアメリアによるボーカル。それから島袋をはじめとしたDJ陣によるミュージック・パフォーマンス。

そしてそれらを行うためのステージの設営や電力源のレンタルや運搬、そして会場への設置。

これらだけでもやることは山積みだ。

龍馬は父からもらった見積書を渡す。それを渡されたアルバートが退室し、早速手配を始める。

 

「それで陛下……ステージの位置はどこにします?」

 

「ふむ。ならばバザー通りから城へ上がる階段前……噴水広場がよかろう。あそこは普段から人が多く行き交い、集まる場所じゃからな」

 

「なるほど」

 

見上げれば帝都の城がそびえ立つ広場。祭りの中心としてはうってつけだ。それに城に近い方が何かと都合がいい。

 

「じゃあ、陛下。俺達はステージ設営の依頼をニコラスさん達に頼んできます」

 

「頼むぞ、リョーマ君。ほっほ、今年の祭りは盛り上がりそうじゃわい!」

 

龍馬達は城を後にし、建築ギルドへと向かう。

と、その前に……。

 

 

 

 

腹が減った。朝からバタバタしていたのて空港で食べたサンドイッチくらいしか食事をしていない。龍馬は凛達を"あの店"へ案内することにした。

竜の髭亭。色々とお世話になり、お世話もしたあの酒場だ。おかみさんやレベッカ、バルガスは元気にしているだろうか。

 

「こんちゃーす」

 

「いらっしゃいませー!……って、あれー!?リョーマ君じゃない!?どうしたの!?」

 

「実は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふーん……そんなことがあったんだ……」

 

「そ。んで今準備で色々忙しくてさ。また帝国に来ることになった。まあ、明後日には帰るんだけどな」

 

龍馬は現状を説明し、凛達をレベッカとあとから出てきたおかみのアンナに紹介する。

バルガスはどうやら学校に行っているらしく、今は留守にしているようだ。

龍馬はコカトリスの香草焼きとサマージの塩焼きを頼む。

出来上がった料理を全員で食べながらその味わいに舌鼓を打つ。

 

「美味しい!」

 

「ん!うまい!」

 

「相変わらず美味しいね!竜の髭亭の料理は」

 

アンナの作る料理は帝都の酒場でも最も人気がある。さらに龍馬の母である涼子直伝の日本料理を修得したことで売り上げも人気も以前以上にうなぎ登りだ。

アメリアは久々の帝国、そして竜の髭亭の味に懐かしさを感じている。

食事をしていると酒場の扉が開き、大柄な男が入ってくる。

白銀の髪と髭、眼帯をつけた隻眼の男。言うまでもない、龍馬と死闘を繰り広げたヴィヴェルタニア王国最強の男であるバルガスだ。

 

「よう、バルガス」

 

「……む?リョーマか?どうした?ニホンに帰ってからまだ日が浅いはずだが」

 

「いや、陛下から頼まれてさ。今度の夏の収穫祭の出し物をすることになったんだ。今は会場の下見や陛下達と話し合いと準備のために三日間だけ帝国に来てんの」

 

「……なるほどな。道理で見知らぬ顔を連れているわけだ」

 

バルガスは凛達を見る。そのあまりの眼光の鋭さに反射的に竦み上がってしまう凛達。

眼帯をした隻眼とあってか、余計に威圧感がある。

 

「おい、バルガス。あんたがそんな仏頂面で睨み付けるから凛ちゃん達がビビってんじゃねーかよ」

 

「む……睨み付けたわけではないのだが……そうか、すまんな」

 

バルガスは少し傷付いたのか、軽く俯いて大人しくなる。

 

「ね、ねえ……斎藤君……このバルガスさんって人まさか……」

 

「ああ、ヴィヴェルタニア王国で俺とやり合ったガルム騎士団の団長だよ」

 

さらりと言って再び食事を再開する龍馬。あっけらかんとした彼の態度に「えぇ……」とでも言いたそうな表情をする一同。

バルガスもバルガスで「敗北はしたがあれは良き闘いだった」と腕を組んでうんうんと唸る。

それを聞いて尚更どよめく凛達。

龍馬は三人のそんな反応など意に介さず、食事を続けるのであった。

 

 

 

食事を終えたら次はいよいよ建築ギルドだ。

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