アナザー・ディメンジョン -異界交流記-   作:誠龍

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第61話 異世界フェス・その④

噴水広場前にて島袋と合流した龍馬達はステージ設営をニコラス達に任せて一旦城へと引き返す。

城に戻ると各々の準備のためにそれぞれに割り当てられた客室へと籠った。

島袋は他のキャストへのオファーの連絡、凛とアメリアはステージで歌う曲決めとリハーサルを行っている。龍馬は露店の情報をまとめ、再び平蔵やレナに連絡を取る。

一度休憩して部屋にある鏡をふと見ると口元にかすかにお好み焼きのソースが付着していたので拭き取った。

その時、龍馬は何かを思い出したかのように再びスマホを手に取って今度は千春に電話をかける。

 

「"もしもし、斎藤?どうしたの?"」

 

「須崎か?すまん、頼みたいことがある」

 

「"?"」

 

「……と……と……を帝国のある場所に送ってほしいんだ」

 

「"いいけど……何に使うの?"」

 

「実は……で……」

 

「"……なるほど。そういうことなら仕方ないわね。わかったわ、私に任せなさい"」

 

「助かるぜ。じゃあ頼んだ。費用は帝国が負担してくれるからよ」

 

そう言って龍馬は電話を切る。

明後日の帰国までに間に合えばいいのだが。

とにかく今日やれることは全部やった。あとは明日次第だ。

龍馬は客室のベッドに大になり、一眠りした。

 

 

 

どれくらい眠っていたのだろうか。ドアをノックする音で目が覚める。

辺りをゆっくりと見回すと既に日は落ち、夜になっていた。

ノックと共に聞き覚えのある声が自分を呼んでいる。龍馬は目を擦りながらベッドから降りた。

 

「リョーマさん……?私です、マリーです。お食事の準備が出来ました」

 

「ん……ああ……マリーか」

 

龍馬は寝ぼけ眼でドアを開ける。青い髪のメイド……マリーがそこにはいた。

 

「大丈夫ですか?だいぶお疲れのようですが」

 

「あー……悪い。ちょっと寝てたわ。晩飯?」

 

「はい。準備が出来ておりますのでどうぞ食堂へ」

 

マリーに案内されて食堂へと向かう龍馬。

すれ違う衛兵達が皆にこやかに会釈してくれる。

ここの城の人々は皆優しい。皇帝の客人であるとはいえ、ただの庶民でしかない龍馬に嫌な顔ひとつせず、皆笑顔で接し、歓迎してくれる。

城の人々だけではない。城下の町の人々もだ。

彼等のためにも今回の祭り、必ず成功させてみせる。そう心に誓う龍馬であった。

 

「そういやマリーも祭り、参加するんだよな?」

 

「いえ……私はお城の仕事がありますので……」

 

「マジ!?せっかくの国を上げての祭りに仕事かよ!?」

 

メイド達に休みはない。

城全体の掃除に中庭の草花の手入れ、洗濯、買い出し、調理、数人がかりでの皇族の入浴の介助、照明の管理など夜遅くまで城の仕事を担っている。

もちろんマリーもだ。祭りといえど彼女らに参加する暇などない。

 

「メイド長からのお達しですので……それに私達が雑用をこなさなければ城は大変なことになってしまいます……」

 

「ざっけんな!こちとら帝都の皆を喜ばせるために必死で準備してんのに!マリー、メイド長のところに案内しろ!」

 

龍馬は憤慨した。

これだけ祭りを盛り上げるために色々動き回っているのに、年二回の祭りに参加できないなどいくらメイドの仕事があるとはいえ、酷すぎる。

龍馬は半ば強引にマリーにメイド長の元へ案内させた。

メイド長は眼鏡をかけた気の強そうな中年の女性だ。衣服にはシワひとつなく、身だしなみは整えられている。ちょっと潔癖な雰囲気が漂っているのは仕事柄だろうか。

 

「おや……?マリー、何しているのです?お客人を食堂に案内するよう指示したはずですが」

 

「それが……その……」

 

「俺が会わせろって言ったんです。あなたがメイド長ですか?」

 

「……ええ。私がメイド長のノーラ・ハドスンです。リョーマ様、私めに何か御用でしょうか?」

 

メイド長・ノーラはそう坦々と喋る。

龍馬は今のやり取りで感じ取った。彼女は"仕事人間"だと。

生きるために仕事をするのではなく、仕事のために生きる人間。本人もそれを信条としている徹底した仕事中毒(ワーカー・ホリック)だ。

城という大きな"家"で"家事"という欠かせない仕事を担当するメイドという仕事だからこそだろうか。

 

「メイドは祭りに参加出来ないと聞きました。せっかくの祭りなんです。一日くらい融通利かないんですか?」

 

「なりません。私達メイドは城の雑務をこなすことこそが仕事であり、生き甲斐です。それに城だけではない。皇族の身の回りのお世話も私達メイドの大事な仕事です。それを怠ることはこの私が許しませんとも。ええ、決して」

 

「……それが祭りの出し物を陛下より任された俺からの頼みであってもですか?」

 

「はい。リョーマ様の頼みであってもそればかりは」

 

表情ひとつ変えずノーラは言う。

マリーは悲しそうな表情でうつむき、エプロンの裾を握る。

彼女だって年頃の少女だ。たまには羽目を外したいはず。だがノーラは自分にも他人にも厳しい女性であった。眉間にシワを寄せたまま、龍馬を睨み付けるようにこちらを見ている。

だがここで引き下がる龍馬ではない。

 

「そこを何とか。お願いします。一日だけ、いや、半日だけでも」

 

龍馬はノーラに深く頭を下げて頼み込む。

自分のためにそこまでやる龍馬に対し、マリーは困惑してしまった。だがノーラの考えは変わらない。

 

「そこまでして頂いて大変恐縮ですが、私の考えは変わりません。……マリー、早く自分の仕事をなさい」

 

やはりノーラは考えを曲げない。節度を持って頼んでいた龍馬だがだんだん腹が立ってきた。

そして彼は歯軋りをしながら壁を殴る。

 

「いい加減にしやがれこのクソババア!!人が下手に出てりゃ調子に乗りやがって!!服のシワは治せてもその眉間のシワは治せねーのかコラァ!!」

 

「なっ……!?」

 

城の中に龍馬の怒声が響き渡り、周囲の衛兵やメイド達が何事かと集まってくる。

急に怒りを露にした龍馬に流石のノーラも驚きを隠せない。

騒ぎを聞き付けてアルバートがその場に駆け付けた。

 

「リョーマ君!一体何をやっているんだ!」

 

「アルバートさん!このババアに言ってやってくださいよ!祭りの日くらい休みを取らせてやれって!」

 

そのまま龍馬、ノーラ、アルバートの三人は口論に発展する。収集がつかなくなった三人を見かねたマリーはその場を抜け出してソフォスに助けを求めたのであった。

 

 

 

 

場所は移って謁見の間。

口論になった龍馬とノーラを見てやれやれとため息をつくソフォス。

 

「リョーマ君……一体何をしとるんじゃ……」

 

「陛下!マリー、いや、メイド達にも祭りの日くらい休みを取らせるように行ってください!せっかくこっちの世界じゃ普通は出来ない出し物をするんだから俺はみんなに楽しんで欲しいんです!」

 

「なりませぬ、陛下!祭りにうつつを抜かして私達メイドが一日でも休めば誰が陛下や姫様のお世話をするのですか!私は反対です!」

 

「うるせーな、黙れよババア!俺達の世界じゃ赤ん坊でもない限り風呂は一人で入るし、自分の部屋は自分で片付けるんだよ!大体一日くらい掃除しなかったり風呂に入らないくらいで死にゃあしねえよ!!」

 

「なんと不潔な……!!そのような事が許されるとお思いですか!!」

 

「だったらアンタ一人で城の仕事やりゃあいいだろうが!!テメーの価値観だけで物を語るな!!人に押し付けるな!!」

 

 

 

 

「よさぬか!!馬鹿者が!!」

 

 

 

 

ソフォスの怒鳴り声に辺りが静まり返る。

滅多に怒らないあのソフォス皇帝の怒声に流石の龍馬も驚いて黙らざるを得なかった。

 

「……失礼した。リョーマ君、ノーラメイド長の言うことは正しい。ここは城だ。普通の一般家庭ではないのだ。城というものは政事(まつりごと)を執り行う王族と雑務をこなすメイドや召使い、そしてそれらを守る兵士達がいて日常が成り立っておる。どれかひとつでも欠けてはならんのだ」

 

「そんな……!」

 

「やはり偉大な我等が陛下ですわ。私達をよくご理解してくれてらっしゃる」

 

拳を握り、歯軋りをする龍馬を尻目に勝ち誇ったような顔をするノーラ。

 

「だが、リョーマ君の言い分ももっともだ。今回の祭りは今までとは違う。異世界の文化を含んだ今までにない行事になるのだ。国に住まう皆がこの帝都で身分に関係なく楽しんで欲しい。そのためにリョーマ君にお願いしたんじゃからな。

……祭りの日くらい休んだってバチは当たるまいて」

 

「なっ……!?本気で言っておられるのですか、陛下!?」

 

「ノーラよ。お前が城のために様々な仕事をこなしているおかげで儂らや兵士達も自分の仕事に集中できる。お前達メイドの働きがなければ我等はない。そのことはよくわかっておるし、感謝もしている。

じゃがな、皆人間なのじゃ。リョーマ君の肩を持つわけではないが、誰もが仕事一筋で生きられるわけではない。お前のように完璧に仕事をこなす人間もいれば物覚えが悪い人間だっているし、仕事一筋の人間もいればたまには遊びたい人間だっておるのじゃよ。

せっかくの祭りじゃ。国民も、それを目当てにやってくる他国の者にも全てに楽しんで欲しい気持ちはリョーマ君以上に儂の方が強い。だからこそ彼に祭りを盛り上げるための方法を頼んだのじゃからな。……何か異論はあるか、ノーラよ」

 

「……いえ、ありません……」

 

ここまで皇帝に言われてはさすがのノーラも反論は出来なかった。

まだ納得いかないような顔をしているものの、渋々それを了承した。

 

「わかればよい。……それからリョーマ君、君の気持ちもわかるがすぐに頭に血が上るのは君の悪い癖じゃ。まあ、若さゆえのその熱く豊かな感情が君のいいところでもあるのじゃがな。

とにかく、気に入らないからといきなり相手を罵倒する前にまず落ち着いて相手の立場になって考えてみなさい。それで納得がいかなければ自分の考えを述べた上で反論すればいい。わかったかね?」

 

「……はい、ごめんなさい……」

 

龍馬は何だか久々に人に真面目に怒られた気がした。

双方の立場、気持ち、考え方を理解し、尊重し、ただ叱責するだけではなく"どうすればよいか"をきちんと話してくれる。

やはり彼は"皇帝"なのだ。国という非常に大きな組織の上に立つ者として時に組織内の対立やいがみ合いを制する手法も持つ者こそ人の上に立つ者としてふさわしい。

正直、最近の少し間抜けな言動からオッサン呼ばわりしていた自分が恥ずかしい。

 

「わかればよろしい。……ノーラよ、お主は夜風にでも当たって少し頭を冷やせ。リョーマ君は早く食事を済ませてしまいなさい」

 

「……かしこまりました」

 

「……はい」

 

ノーラが一礼して先に謁見の間を出ていき、後からマリーが龍馬を案内しながら食堂を目指す。

食堂へ向かう途中の廊下でマリーは龍馬に頭を下げた。

 

「リョーマさん、ごめんなさい……私のせいで……」

 

「……メイド長に喧嘩を売ったのは俺の方だ。マリーは何も悪くねえよ。こっちこそすまなかったな」

 

「……いえ、そんな……」

 

ノーラは自分にも他人にも厳しい人間でメイド達からは畏怖の対象であった。

少しでも仕事に手を抜けば厳しい叱責と罰が待っている。

そんなノーラに対し、自分なんかのために食ってかかった龍馬にマリーは感謝と謝罪の気持ちを募らせていた。

確かに皇帝の言う通り、龍馬は頭に血が上りやすい。どちらかというと喧嘩っ早く短気な方だ。

だが彼のその性格が多くの人々を助けてきたことも事実である。自分だってその一人なのだから。

怒りっぽくて口が悪い。けれども困っている人や助けを求める人を放っておけない正義感の強さが彼にはある。そしてそれに伴った力も。

食堂に着くと既に島袋達が先に食事を取っていた。龍馬も席について食事を取り、ようやく初日が終わった。

 

 

 

 

翌朝、マリーをはじめとしたメイドと召使達はノーラに呼び集められた。

全員を集合させるなどただ事ではない。彼女らはまたノーラの叱責が始まるのではと恐怖した。

 

「おはようございます、皆様。今日は皆様に伝えなければいけないことがあります。……今度の収穫祭、あなた達全員に休みを取らせます。祭りを存分に楽しみなさい」

 

あの厳格なノーラの口から誰もが予想だにしなかった"祭りの日は全員休み"の言葉。メイド達の間にどよめきが上がる。

 

「皇帝陛下からのお達しです。皆ありがたく思うように。……私からは以上です。では、今日の仕事に取りかかりなさい」

 

ノーラはそれだけ言うとさっさとそこから去ってしまう。

残されたメイド達は休暇を喜ぶ者、困惑し続けるものと反応は様々だ。マリーはその中で困惑している一人である。

彼女は慌ててノーラを追い掛けた。

 

「メイド長!」

 

「……マリーですか。どうしたのです?早く仕事に取りかかりなさい」

 

「あの……!何故メイド達に休みを……?」

 

「……祭りの時くらい休ませてあげてもいいのではないかと。私もそういう考えに至っただけです。わかったら早く今日の仕事をなさい」

 

ノーラは人差し指で眼鏡をくいと上げながらそれだけ言うと踵を返して去っていく。

ポツンと後に一人残されたマリーはようやく事態を把握して我に帰ると急いで龍馬の部屋に向かった。

朝からいきなり激しいノックで起こされた龍馬は寝ぼけ眼でドアを開ける。

 

「なんだマリーか……どうしたんだよ、こんな朝っぱらから」

 

「りょ、リョーマさん!大変です!あのメイド長が……皆に祭りの日は休んでいいって……!」

 

「……マジでか」

 

確かに驚きはあったが、起きたばかりとあってテンションの低い龍馬。

目を擦りながらスーツケースから洗顔用具を取り出して洗顔と歯磨きに向かう。

祭りに参加できると知ってテンションの上がったマリーはその間ずっと龍馬の横で舞い上がって話しかけてきていた。正直鬱陶しい。

朝食を済ませたら今日の作業の確認だ。

今日の午前中はタイムテーブルの打ち合わせ、そしてフェス中に提供されるドリンク類について話し合う。

昨日の時点でオファーとその返事はなんとか完了したようなので島袋と凛がアメリアを交えて話し合い、彼女らの出番も決める。

 

「じゃあ凛ちゃんとアメリアちゃんは7番目ね。トップバッターとトリ(タイムテーブルの一番最後の出番のこと)は俺が担当するよ」

 

「じゃあ島さん、そこはお願いね」

 

「タマラさんに頼んだ衣装、出来るの楽しみだね」

 

……クラブやライブハウスなどに行ったことがない龍馬は置いてけぼりだ。三人の話が落ち着くまで龍馬はスマホをいじることにした。

と、その時島袋からある相談を持ち掛けられた。

 

「龍馬君、会場のバーカンで販売するドリンク類について話したいんだけど……」

 

「……バーカン?」

 

「ああ、"バーカウンター"の略だよ。クラブでお客さんにお酒を提供するカウンターのことさ。そこを設けるつもりなんだけど……」

 

島袋によればバーカンで販売する酒の取引先に一部一週間以内に用意できないものがあり、龍馬にダメ元でツテがないか頼んできたらしい。すると……

 

「ああ、どうにかなりますよ」

 

「マジで!?」

 

「ええ。俺のバイト先酒屋ですもん。多分どうにかなるでしょ」

 

実は龍馬は近所のスーパーの近くにある酒屋でバイトをしていた。

小さいながらも品揃えは豊富で地元の人々からはなかなかの評判の店である。

 

「さ、斎藤君酒屋でバイトしてたんだ……」

 

「うん、だから足りない酒は多分なんとかなりますよ。島袋さん、酒のリストを作っといてくれたら助かります」

 

「助かるよ、龍馬君!じゃあそっちは君に任せた!」

 

「了解です」

 

龍馬は一旦部屋に戻り、バイト先の酒屋に電話する。

丁度店長が電話に出たので事情を説明すると店長は快諾してくれた。

 

「"なるほどな……よっしゃ、わかった!じゃあ注文の酒の詳しい数がわかったらまた連絡してくれ!"」

 

「ありがとうございます、店長!」

 

話のわかる店長で助かった。そこが地元民に愛される彼ならではの器量なのだろう。

その後はタイムテーブルの打ち合わせに戻ったが、これはすぐに決まったらしい。

これで午前中の仕事は終わりだが、そのまま待つのもアレなのでニコラス達の様子を見に行ってみることにした。

噴水広場に行ってみるとステージの土台が既に完成しており、作業は順調なように見えた。

だがニコラスは書類を片手に難しい顔で頭を抱えており、何かしらトラブルがあったことが容易に想像できた。

 

「ニコラスさん、どうしたんですか?」

 

「ん?……ああ、リョーマか。実はな、少し足りない建材があったからハーピーの郵便屋に頼んでヴィヴェルタニアの方に建材の発注をしたんだが、どうも街道にモンスターが出没して道を塞いでいるらしいんだ。参ったなあ……」

 

話によればちょうどピャルナチの森の辺りで複数のコボルトが馬車を襲おうと待ち構えているらしい。

素早く逃げたので積荷は無事だが、コボルトは道のど真ん中に居座ってしまい、馬車は身動きが取れないのだそうだ。

 

「コボルトってーと……頭が犬の亜人のモンスターですかね?」

 

「ああ。しかも奴等はゴブリンよりは戦闘力があって武装もそれなりにいいものを使っている。厄介だな……」

 

「……ニコラスさん、そのコボルトの奴ら、俺が退治してきましょうか?」

 

龍馬にはこのルナ・アームがある。トロールだって倒したのだ。コボルトくらい、訳はない。

それに今は時間をかけてられないのだ。早く問題を片付けるに越したことはない。

 

「おお、そうか!リョーマなら大丈夫だな!何てったって"ニホンのバーサーカー"って巷じゃ噂になってるレベルだからな!」

 

「ば……バーサーカー……」

 

以前、カムラン一家を襲おうとしたゴロツキを怒りの喧嘩殺法で倒したのを皮切りに、龍馬はまるで狂戦士の如く恐ろしく、しかし勇敢な戦士だと噂になっている。

考えてみればあのラオグリッドやヴォルティスの雇った私兵や暗殺者をもその喧嘩の腕前を武器に倒しているのだ。更にはモニカを助け出すためにヴィヴェルタニアの兵士や騎士達も相手にしている。

これほどの勇猛さと実力を兼ね備えた戦士は帝国広しといえど、なかなかいない。

 

「じゃあリョーマ、頼んだぜ!」

 

「任せてください!」

 

龍馬はニコラス達と別れると電話でソフォスと連絡を取った。

ソフォスはすぐに馬車を用意し、多忙だったアルバートの代わりにアルフォンスを遣わせ、馬車に乗って大急ぎでピャルナチの森の街道に向かう。

 

 

そして、その道中の馬車の中。

 

「……なんであんた達までいるんですかねぇ」

 

馬車の中で周りを見渡す龍馬の周囲には島袋、凛、アメリアの三人が。

 

「いや、だってさ、龍馬君。モンスターの退治なんてイベントは見過ごせないじゃないか!これでも俺はファンタジー好きだしね!」

 

「そうそう。それに斎藤君強いらしいから私達のことも守ってくれるでしょ?」

 

「うんうん、リョーマなら大丈夫大丈夫!」

 

「オメーら遠足かなんかと勘違いしてねえか」

 

好奇心だけでついてきた三人にやれやれと肩をすくめる龍馬。

馬車はガタゴトと揺られながら街道を行く。

龍馬は馬車の手綱を握るアルフォンスに声をかけた。

 

「すみません、アルフォンスさん。付き合わせちゃって」

 

「いえ。このぐらいなんてことはありません。私もリョーマ君達の企画する"ふぇす"とやらを楽しみにしているのでね。私に出来ることであれば協力は惜しみませんよ」

 

いい人だ。これはモテる理由もわかる気がする。ぶっちゃけ男でも惚れるレベルだ。

龍馬はそんなアルフォンスを労うようにバッグからある差し入れを取り出した。

帝国に来る途中に空港で買ってからそのまま忘れていたチョコレートバーだ。

 

「アルフォンスさん、差し入れです」

 

「これは……?」

 

「チョコレートバーです。包みを開けて食べてください」

 

アルフォンスは言われた通り、包みを開封して中の茶色い棒のようなものを一口かじる。

口の中に食べたことのない甘い味が広がり、そのまままた一口かじる。

 

「ほう……!これはなかなか……!甘い物など久しぶりですよ。疲れた身体に染み渡りますね」

 

「でしょう?騎士とか兵士の人って肉体労働だし、甘い物がいいかなと思って」

 

「うむ。確かに疲労には糖分が効くと聞いたことがあります。しかし甘い物はなかなか食べる機会がなくてですね……リョーマ君、感謝します」

 

「どういたしまして。フェスの時にはもっと色んな甘い物が出ると思うので楽しみにしててください」

 

「期待していますよ」

 

馬車はアテリ村を過ぎ、いよいよピャルナチの森に近付いてきた。

 

「報告にあった地点はもうすぐです。リョーマ君、準備を」

 

「はい」

 

龍馬は拳を鳴らし、戦闘準備に入る。

フェスの成功のため、迅速に解決せねば。

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