アナザー・ディメンジョン -異界交流記-   作:誠龍

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第63話 異世界フェス・その⑥

「カツオブシ……?ギョフン……?アオノリ……?」

 

初めて見聞きする日本の調味料。

龍馬が取り出したそれは木屑のようなもの、何かの粉、それから緑色のハーブを粉にしたようなものだ。

 

「鰹節はカツオという魚を加熱して乾燥させて固くなったものを削ったもの、魚粉はイワシという魚を乾燥させて粉末にしたもの、青のりは海藻の一種でそれを乾燥させて粉末にしたものです。日本ではたこ焼きやお好み焼きなどの粉物の料理の薬味として使われてるんですよ」

 

実は龍馬はお好み焼きを教えたカムラン一家にこれを提供するつもりでいた。

彼はソフォスに頼んで馬車を出してもらい、ダンボールを積んでカムラン一家の元に向かった。

早くも家族三人で仕込みをしており、馬車から降りた龍馬は挨拶をした。

 

「おはようございます、キースさん」

 

「おや?リョーマさん、おはようございます。どうしたのですか?こんな朝早くから」

 

「実はプレゼントを持ってきたんです」

 

龍馬は例のダンボールを降ろすと中身を披露する。初めて見る鰹節、魚粉、青のりにカムラン一家は困惑する。

 

「とりあえず、まずはお好み焼きを焼いてみてください」

 

「は、はあ……」

 

キースは困惑しながらも龍馬の指示通りにお好み焼きを焼く。

出来上がったお好み焼きにソースとマヨネーズをかけたところで龍馬は魚粉と青のりを振りかける。

 

「最後は鰹節、っと……」

 

龍馬が鰹節をかけるとキース達には木屑のようにしか見えないそれはまるで生物のようにゆらゆらと気持ち悪く動き始めた。

 

「よし!」

 

お好み焼きを切ると龍馬はそれを美味そうに食べ始めた。あのゆらゆらと不気味に動く木屑も一緒に。

龍馬は切り分けてカムラン一家に差し出すが、どうにもこの"カツオブシ"が気味が悪くて勇気が出ない。

本当にこれが元は魚なのかと疑いたくなるキースだが、龍馬のせっかくの行為を無下にするわけにはいかない。彼は意を決してそれを食べ始めた。

するとどうだろう。魚粉と鰹節の香ばしさ、青のりの香りが重なってお好み焼きがぐっと美味くなった。

 

「う、うまい!」

 

「でしょ?やっぱりお好み焼きにはこいつがないと始まらないですよ!さあ、大量に持ってきたから存分に使ってください!祭りの時にまた持ってきますから!」

 

薬味をかけたお好み焼きを試食しているとグレッグが出勤してくるのが見えた。

龍馬は彼にも薬味入りのお好み焼きを勧めるが、やはりグレッグも鰹節を気味悪がって食べようとしない。

イライラしたので「おい、お好み焼き食わねぇか」と無理矢理口に突っ込んでやったらようやく美味さを理解したらしく、ちゃっかりおかわりを要求したのであった。

 

 

 

 

 

龍馬はカムラン一家に別れを告げた後、噴水広場に向かった。

すでにステージの土台は完成しており、あとはニコラス達に任せれば何とかなりそうだ。

タマラの仕立屋にも顔を出してみたが、衣装はまだ秘密とのこと。しかし製作は捗っており、どちらの衣装も半分ほど出来ているそうだ。

龍馬は安心してタマラに製作を任せ、バザー通りに戻る。

いつもの活気もさることながら、皆祭りの準備に向けて忙しそうにしている。

そんな帝都の人々の様子を見て今回のフェス計画、絶対に成功させるぞと意気込む龍馬であった。

城へ戻り、帰国の準備をする。荷物をまとめてあとは出発を待つだけだ。

大体いつもならこの辺で何かしらトラブルが発生しそうなものだが、今回はそんなことはなく無事に帰国出来そうだ。

船の時間が近づき、あと一日残る祖父母やソフォス達に別れを告げて港へと向かう。

海洋港から船が近づき、港に入港してきた。

龍馬、凛、島袋、アメリアの四人は船に乗り込み帝国を後にした。

 

「あっという間だったなぁ」

 

遠ざかる帝都を甲板から眺めながら島袋が呟く。

 

「島さん……また数日後に行かなきゃいけないでしょ……何もう終わったみたいな顔してんの?むしろこれからだよ?」

 

「わ、わかってるよ。打ち合わせの時間があっという間だったなぁって意味だよ」

 

「シマさん、だいぶはしゃいでたもんね」

 

いつの間にか島袋を"シマさん"と呼ぶほどに親しくなったアメリアが隣でふふっと笑う。

そんな三人を尻目に龍馬は空を見上げながらフェスへの決意を新たに帰途につくのであった。

 

 

 

 

 

帰国後、福岡空港まで母がディレットを連れて車で迎えに来てくれた。

スーツケースを車に積み込んで車は自宅を目指して走り出す。

 

「リョーマ、どうだった?」

 

「ああ、順調だよ。あとはじーちゃん達次第かな。あとは前日の準備を除けば俺に出来ることはないよ」

 

平蔵達がうまくまとめ、機材や道具の搬入が滞りなくいけば前日の準備を残すのみだ。

祭りまであと四日。少なくとも三日後にはまた帝国へ行かなければならない。

 

「そーいやあんた、父ちゃんが言いよったばい。電源車は明後日までには帝国に運び込めるってよ」

 

「マジか。何とか間に合ったな」

 

父が用意してくれた電源車。さらに島袋が可能であれば欲しいと言っていたフォグマシンから大型の音響機材に至るまで全て揃っているとのこと。

さらには設置業者まで手配してくれたらしく、これでステージと設備は万全だろう。

 

「そういや、ルビィとルミナは?」

 

「家でゴンゴン寝とるわ」

 

「いい気なもんだ」

 

しかし同じ夏だというのに日本(こちら)は帝国より暑い。気温は31℃を越えているようだ。

とりあえず今日は早く帰ってゆっくりしたい。祭りの準備であちこち動きすぎて疲れてしまった。アイスでも食べたい。

 

「母さん、アイス食いたい」

 

「あたしもちょっとアイスコーヒーが飲みたいし、コンビニ寄るかね」

 

涼子は近くのコンビニへ車を走らせる。

エアコンの効いた車内から一歩外へ出るだけで夏の熱気が身体を襲う。

涼子はアイスコーヒーを買ってマシンで注いでおり、龍馬とディレットはアイスクリームのコーナーへ向かう。

 

「俺ブラックモンブランにしよ」

 

「私はトラキチ君かな」

 

龍馬はブラックモンブラン、ディレットはトラキチ君を選んで購入する。

ブラックモンブランは佐賀県の小城(おぎ)市に本社を置く竹下製菓が製造するアイスクリームだ。

ミルクアイスをチョコレートでコーティングし、ザクザクしたクランチをまぶしたもので九州ではお馴染みのアイスである。

"ブラックモンブラン"の名前の由来は竹下製菓の前会長・竹下小太郎氏がアルプス最高峰の山であるモンブランを眺めて「この真っ白な山にチョコレートをかけて食べたらさぞ美味しいだろうな」と発想したところから来ている。

ディレットが買った"トラキチ君"はにこやかに笑う虎のキャラクターが印刷されたパッケージが特徴的なアイスだ。

バナナ味の黄色いアイスにまるで虎の模様のようにガナッシュチョコが入っているこれまた竹下製菓製のロングセラーのアイスである。

なお、九州ではどこのコンビニでもスーパーでも当たり前に置いているので全国展開していると九州内の県民には思われがちだが、関東の方ではほとんど売っていないため、上京した九州の県民がブラックモンブランをはじめとした竹下製菓のアイスが売っていないことに嘆くことも多いのだとか。

購入後、店の外でアイスを頬張る龍馬とディレット。

 

「ブラックモンブランうめえけど……このクランチが絶対こぼれるんだよな……」

 

「早く食べないと溶けちゃう……」

 

二人はアイスを食べた後、涼子と共に車に戻り家を目指した。

家に着くと目を覚ましたルビィとルミナが迎えてくれた。

 

「おかえり、リョーマ!」

 

「リョーマ兄ィ、おかえり!」

 

「ああ、ただいま」

 

二人は飛び付くようにして龍馬を出迎える。

ルミナはともかくルビィはすっかり甘えん坊というか……ブラコンみたいになってしまっていた。

 

「……ん?リョーマ兄ィ、口元になんかついて……あっ!リョーマ兄ィ!帰ってくるとき、"ぶらっくもんぶらん"食べたな!」

 

「口元についたクランチだけでわかるとかどんだけやねん」

 

「えー!リョーマずるい!私達の分は!?」

 

「あるわけないだろ、そんなもん!」

 

「リョーマ兄ィのケチ!」

 

二人してポカポカと龍馬を叩く。

龍馬は結局二人に気圧されてこの日差しの中、コンビニまで二人分のアイスを買いに行くハメになったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、勇斗と千春からLINEのメッセージが来ていた。どうやら帝国から収穫祭への招待状が来たらしい。収穫祭前日から行くそうなので奴等にも作業を手伝わせよう。

そんな事を考えながら今日くらいは涼しい部屋でのんびりしようと何気なしに龍馬はテレビをつけた。

 

「"……続いてのニュースです。異世界・アルカ帝国でもうすぐ収穫祭が開かれるようです。その祭りに密着しました"」

 

「ファッ!?」

 

何故かニュースで帝国の収穫祭の特集をやっている。映像には祭りの準備に勤しむアルカ帝国の人々の映像が映し出され、ナレーションが進むと映像が代わり、ソフォスがインタビューに答えている。

 

「"ここ数年、帝国の収穫祭は集客率が減少しておりました。詳しくは申し上げられませんか、とあるニホン人の少年と交流し、その少年が祭りを盛り上げるために尽力してくれておるのです。おかげで様々なニホンの人々が祭りのためにこうして動いてくれています"」

 

おそらく、というか間違いなく自分のことだろう。龍馬はリモコンを持ったまま固まっていた。

その後も帝都の人々へのインタビューや現地で活動する日本人を取材した内容が続いている。

……だいぶ大事になってしまったようだ。これは絶対に失敗できない。龍馬にプレッシャーがかかる。

 

 

 

 

 

 

 

祭りの前日、朝早くから準備をする龍馬。

既に島袋や凛達キャストはさらにまた前日から帝国入りしており、先に準備やリハーサルを行っているとのこと。

龍馬は家族で飛行機に搭乗する。勇斗や千春らはバラバラの便で向かうようだ。

初めて乗る飛行機ではしゃぐルミナとルビィ。

やはり離陸時は悲鳴を上げたが、雲より高く空を飛ぶ飛行機からの眺めで再びはしゃいでいた。

飛行機はすぐに東京へ到着し、そこから船に乗り換えて帝国へ。

帝国入りした龍馬は家族を城に待たせ、早速荷物を客室へ置いてディレットを連れて帝都の様子を見に行く。すると今までの帝都とは様子がまるで違っていた。

多くの人々で町はごった返し、露店や屋台が普通以上に数多く立っている。

様々な国から野を越え、山を越え、海を越えて様々な人種や種族が集まっている。

中には他国の貴族や王族もやってきているので皆気合いの入り方が違う。

 

「す、すげー人だかり……」

 

「こんなに多いの私も初めて見たよ!」

 

多くの人々が集まるこの収穫祭は絶好の商売の機会でもある。それに加えて今回は異世界の要素を多く含んでいるとの噂を聞き付け、例年の減少傾向にある集客率が嘘であったかのように多くの人々で賑わっている。

二人は準備のため噴水広場へと向かう。途中、準備中の露店を眺めたりしつつ歩いていると露店はおろか、敷物すら引かずに裏路地近くの道端に佇む人物がいた。

背中には大きなリュックを背負っており、ボロボロの黒いローブを着ていて顔はフードに隠されてわからない。

龍馬は明らかに不気味なその人物に違和感を覚えたが、無視して通りすぎようとした。その時である。

 

「……待ちなよ、アミーゴ」

 

その人物は龍馬を呼び止める。面倒な雰囲気を感じるが、呼び止められた以上は相手をせねばなるまい。龍馬は仕方なくその人物の前に歩み寄る。

 

「……何だよ?」

 

「あんた……この世界の人間じゃねぇな。日本人か……少々若いが……どうだ?うちの店に興味ないか?」

 

「……何を売ってるのかも分からないのに興味湧くわけないだろ」

 

声からして男だろうが、相変わらずフードの中は真っ暗で何も見えない。

 

「大体、俺以外に日本人なんていくらでもいるだろ。何で俺なんかに声をかけるんだよ?」

 

「……"勘"さ、ソルジャー。あんた……結構色んな修羅場潜ってるだろ?」

 

「……まあ、それなりにはな」

 

ヒッヒッヒと怪しい笑いを浮かべる男を疑心の目でディレットも見ている。

 

「うちは特別な"武器"を売ってる。この世界の人間には扱えないシロモノだ。どうだい?興味はないか?」

 

「武器なら生憎間に合ってる。詳しくは言えないが俺以外にこの武器を持っている奴はいないだろうな」

 

「……そうかい。だけど俺の武器は"この世界にはないモノ"だからな。もし気が変わったら"忘却の谷"に来な。その時は是非うちの商品を見てってくれよ。ヒッヒッヒ……」

 

男は薄ら笑いを浮かべながら顔を上げる。

その時、フードの中の暗闇にギョロリとした眼球が僅かに見え、龍馬を驚かせた。

男はそのまま歩いて帝都の門へと向かう。

 

「おい、あんた!名前は!?」

 

「……名前か……そうだな……俺は……"コメル・シアンテ"。コメル、或いはルシアンテとでも呼んでくれ。アディオス、アミーゴ。ヒッヒッヒ……」

 

そのまま男は人混みに消えて、やがて見えなくなった。

 

「……なんだったんだ、あいつは……」

 

「リョーマ、あの商人が言ってた"忘却の谷"って……」

 

「知ってるのか?」

 

「うん。帝国領をずっと北東に行った岩山にあるよ。あそこは何だかよくない魔力が渦巻いててモンスターですら近寄らないの。何でも不定期に小規模な空間の歪みが発生してるとかって噂を聞くけど……実際に入ったことはないから真実は誰も知らないよ」

 

「そんな物騒なところに来いなんてあの商人何者だよ…………ん?待てよ……?」

 

「どうしたのリョーマ?」

 

先ほどのコメル・シアンテと名乗る商人の男の会話を思い返し、何か引っ掛かるものを感じた。

 

 

最初は話し掛けられた時。

 

 

"「……待ちなよ、アミーゴ」"

 

 

 

次に別れ際に言葉を放った時。

 

 

 

"「……名前か……そうだな……俺は……"コメル・シアンテ"。コメル、或いはルシアンテとでも呼んでくれ。アディオス、アミーゴ。ヒッヒッヒ……」"

 

 

 

 

 

 

"アミーゴ"はスペイン語で"友"を意味する。

同じく"アディオス"はスペイン語の別れの挨拶だ。

何故異世界の住人であるはずの彼がスペイン語を知っているのだろうか?

 

「……あいつ……まさか……」

 

「……リョーマ?大丈夫?」

 

「……何でもない、大丈夫だ。さあ、行こう」

 

龍馬は浮かんだひとつの答えをかき消すように軽く首を振り、ディレットと共に噴水広場へと向かって歩き出す。

広場に着くと既に電源車が入り、機材のセットやステージの飾り付けが行われていた。

組み立て始めた時とは違い、飾りもあるおかげでかなり華やかになっている。どうやらそれらの装飾品もタマラによるものらしい。

さすが帝都一の建築家と仕立屋。素晴らしい仕事をしてくれた。

ステージの裏側では何やら書類を持った島袋と凛が話し合っており、傍らではアメリアが歌詞カードを片手に暗記をしている。

 

「島袋さん!凛ちゃん!アメリア!」

 

「お!龍馬君!待ってたぜ!」

 

「斎藤君、お疲れ!」

 

「リョーマ、待ってたよ!」

 

話を聞くと現在は最終的な打ち合わせの真っ最中だそうだ。

ただ、まだ現地入りしてないDJ陣も多いらしく、機材のセットに遅れが生じているらしい。

龍馬とディレットはそれらを手伝うべく、他のDJと共に機材のセットに向かう。

だが流石に二人加わっただけではなかなか作業ははかどらない。何せ音響機材はかなり重い。島袋も打ち合わせと平行して運ぶが明らかに男手が少ないのだ。

さらにステージを設営したニコラス達は別の仕事のために帝都の各地に散らばっていて応援は難しい。どうしたものか。

 

「もう少し男手がいれば……でもそんなのいるわけ……」

 

龍馬が呟いたその時、ステージに向かって歩み寄ってくる複数の人影が。

それはガラの悪い男達であり、こちらを見てニヤニヤと笑っている。

 

「おうおう!なんだか異界の珍しいもんがあるからって来てみれば……」

 

「こりゃあ、貴族が欲しがりそうなもんがたんまりあるぜ!」

 

「こいつは俺達がいただくぜぇ!」

 

男達は口々に勝手な事を言っては騒ぎ立てている。どうやら祭りに便乗して悪事を働くならず者達のようだ。

 

「キターーーーー!!!!」

 

普段ならブチキレるところである龍馬だが、この時ばかりは違った。

馬鹿な脳筋共が己の身も弁えずノコノコとやってきたのだ。これを利用しない手はない。

 

「おう、クサレ脳ミソ共!俺が相手になってやる!祭りの前の準備運動だ!」

 

「なぁにぃ!?なんだぁこのガキは!?」

 

「俺達を誰だと思ってやがる!」

 

「構わねぇ!やっちまえ!」

 

襲い来る五人の男達。龍馬はステージから飛び降りて男達に飛び掛かる。

一人目は回し蹴りで一撃ノックダウン、二人目は噴水の塀に顔面を叩き付け、三人目は鳩尾への一撃を入れ、四人目はアッパーカットで顎を粉砕、最後の一人は顔面に鋭いパンチを打ち込む。

だが最後の一人は打たれ強いのかふらつきはしたものの、体勢を立て直して龍馬に襲い掛かる。

 

「このガキぃぃ!!」

 

「おっと」

 

軽々と攻撃を受け流し、背中に蹴りを入れる龍馬。その瞬間背後から声が聞こえた。

 

「バーサーカー!これ使いな!!」

 

民衆の一人が龍馬に向かって細長く黒い何かを投げた。

それは乗馬に使われる馬上鞭(ばじょうべん)と呼ばれるムチであった。

 

「おお!こいつぁいいや!」

 

龍馬はそれを見事にキャッチすると男の顔に容赦なくムチを叩き込み、男が顔を押さえて呻いている隙に後ろに回り込んだ。そしてーーーー

 

「おおぉぉぉりゃああぁぁぁっ!!!!」

 

「ぎゃひぃぃぃぃっ!!!!!」

 

男の尻に思い切りムチをフルスイング。

スパーンという小気味良い音が辺りに響き、男はあまりの激痛に失神してしまった。

龍馬一人にあっという間に倒されて呻く男達を見た町の人々が口々に言う。

 

「馬鹿な奴等だ。ニホンのバーサーカーに喧嘩を売るなんてな」

 

「ああ、全くだ。ヴィヴェルタニアの騎士すら打ち倒したって話だからな」

 

龍馬は既に町で有名人になっている。もはや帝都のほとんどが彼の顔馴染みのようなものなのだ。

中にはこうやって龍馬の喧嘩を手助けする者まで現れる始末である。

 

 

 

 

 

 

 

結局というかやっぱりというか、男達は例によって龍馬に尻を蹴飛ばされながらステージ設営の作業を手伝わされている。

作業開始から一時間ほど。ようやく勇斗と千春も現地入りし、手伝いにきた。

 

「よう、龍馬!やってるな!」

 

「だいぶ様になってきたわね。私達も手伝うわ」

 

「ああ、頼む。勇斗は重たい機材を、須崎は島袋さんに指示を仰いで軽めの機材や柵の設置を頼む。あとバーカンの準備もな」

 

勇斗は龍馬と共に重量を伴う機材や照明の設置を行い、千春はテーブルやそれに乗せる軽量の機材を運び、ステージ前に柵を設置する作業に入る。

そんな中、更なる助っ人が。

 

「リョーマさん、お久しぶりです」

 

「元気でやってるか、リョーマ?」

 

「ノエルさん!……と、駄女神!」

 

「誰が駄女神やコラしばくぞ」

 

現れたのはノエルと駄女神、もといアレクであった。

 

「リョーマさんが帝国のお祭りを手伝ってると聞いて何か手伝えることはないかとやってきたんです」

 

「まあ、私はノエルがどうしてもというから仕方なくな。ま、頭を下げて礼を弾むならこの神である私が多少は手伝ってやらんこともないぞ!」

 

「さすがノエルさん!やっぱり天使だわ!じゃああっちにいる須崎と一緒にバーカン設営の手伝いをお願いします。あと、お前は邪魔だから帰れ駄女神」

 

「おいコラ」

 

「まあまあ、リョーマさん……」

 

ノエル達を交え、作業は夕方まで続いた。

そして暗くなる前にどうにかこうにか完成したのである。

 

 

 

 

遂に全ての準備が整った。

収穫祭を明日に控えた龍馬達は城へ戻り、ゆっくりと休むことにした。

 

 

 

 

異世界フェスの、始まりだ!!

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