アナザー・ディメンジョン -異界交流記-   作:誠龍

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第73話 黒狼会本部強襲

暴力団とはいえ表向きは会社組織である。

黒狼会の場所はすぐにわかったが、ヤクザ相手に流石に一人で乗り込むのは厳しい。

先ほどの戦いの疲れもまだ癒えてないのでここは仲間を待つことにした。少なくともブラッドとラグーンがいれば心強い。

勇斗の顔も一瞬頭をよぎったが、事情を知らない彼を巻き込むわけにはいかないと龍馬は考えを振り払う。

愛華のことは心配だが、自分が無理をしてしくじっては元も子もない。龍馬ははやる気持ちを抑えて小倉にいるブラッド達が翌日に帰ってくるのを待つことにする。

自宅に帰るとディレットが心配した様子で龍馬を出迎えた。

 

「リョーマ、どこ行ってたの?心配したんだよ?」

 

「……ちょっと用事があって北九州までな」

 

まさか中国マフィアのアジトに殴り込みをかけてました、などとは口が裂けても言えない。ディレットを危険なことに巻き込むわけにはいかないからだ。

何度か詳細を尋ねられたが、龍馬はその度になんとかはぐらかした。

……愛華の身が心配だが、今焦って行動するのはかえって危険だ。明日に備え、龍馬は早めに休むことにした。

明日は日曜日だ。二日連続で学校・バイトが無い日が続くのはタイミングがよかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。朝早くに起きて出発した龍馬は連絡を取ったブラッド、ラグーン、レナと合流する。だがレナにはまだ疲労の色が見受けられる。

 

「レナ、大丈夫か?」

 

「なんとか……大丈夫……」

 

「レナ……お前はふくまるへ戻れ。今日お前の親父さんが来るはずだからな」

 

「……お父さんが?どういうこと?」

 

「お前の身体のことだ」

 

龍馬はあの事を説明した。

レナに隠された真龍寺一族の"血"の力の秘密を。それに伴う激しい心身のダメージを。

意図せずに"血の力"を使用してしまった場合の事を考えて龍馬は家に戻るように言った。

 

「わ……私なら大丈夫だよ!だから愛華姉ちゃんを助けに……」

 

「どこが大丈夫だよ!戦ってる最中にぶっ倒れたら助けてやれないぞ!」

 

「う……」

 

前回は戦いが終わった直後だったからよかったものの、もし敵との戦闘中に血の力を発動して倒れでもしたらレナを助けてやれる保証がない。

今日は彼女の父親がやってくるはずだ。そこで力のコントロールを教えてもらえれば今よりはずっと良くなるはず。

 

「レナ。龍馬の言うとおりだぞ。もし敵陣のど真ん中で倒れでもしたらいくら僕達でもお前を庇いながら戦うのは不可能だ。そうなれば愛華の救出も厳しくなる。ここは僕達に任せるんだ」

 

「レナ、愛華姉ちゃんは俺達が必ず助け出す。だからお前は自分の身体のことに集中しろ」

 

「ボク達に任せて、レナは休んでてよ」

 

三人にこうまで言われてはレナも諦めざるを得なかった。

彼等の言う通り、万が一"血"の力の反動が来てしまえば愛華の救出どころではなくなってしまう。

 

「……わかった。その代わり絶対に愛華姉ちゃんを助けてよね」

 

「任せな。絶対に助け出すからよ」

 

「ああ、約束しよう」

 

「もちろんさ!」

 

惜しみながらもレナはパーティから離脱し、ふくまるへ向かう。

レナを見送った後、龍馬はスマホのマップを開いて黒狼会本部の場所をブラッド、ラグーンと共に確認する。

黒狼会の本部は薬院にある。本部を叩けばきっと愛華の身柄を確保している傘下の組織を見つけ出せるはずだ。

 

「よし……じゃあ黒狼会本部にカチコミかけんぞ。ブラッド、ラグーン、準備はいいな?」

 

「ふっ、誰に聞いている?龍馬、お前こそ準備はいいんだろうな?」

 

「ボクはいつでも大丈夫さ!」

 

二人とも意気込みは充分だ。レナが抜けたのは痛いが仕方がない。三人で殴り込みをかけるしかない。

龍馬達はタクシーを使って黒狼会本部近くまで行くことにした。

約二十分後。龍馬達三人は黒狼会本部前に到着した。

さすがヤクザの本拠地だけあってかなり大きい。一体何坪あるのかもわからない広大な土地を大きな塀で囲っており、ご丁寧に監視カメラまで付いている。もはや要塞か城のようだ。

頑丈で巨大な門の前で本部の大きさに圧倒された龍馬はゴクリと唾を飲み込む。

深呼吸をして覚悟を決めると一本足を踏み出すが、その瞬間ブラッドが呼び止める。

 

「待て、龍馬。突入の前に作戦を立てるぞ」

 

「作戦?」

 

「ああ。奴等は銃器で武装した連中も多いはずだ。だから僕が先頭に立ち、銃弾を防御する。ラグーンは私の後ろからウェブを飛ばして敵の銃器を無力化しろ。そして龍馬、お前は一番後ろに付いてその籠手と喧嘩技で丸腰になった奴等を叩きのめしてしまえ。余裕があればあの火炎の技で援護しろ」

 

「なるほどな。それぞれの能力を活かした攻防一体のフォーメーションってわけか」

 

「さすがブラッド!冴えてるね!」

 

確かに無闇やたらに突撃しては銃器を持った敵に対応できないことがある。

龍馬のルナ・アームは銃弾をも弾くとはいえ、ガード範囲は限定されるし、ラグーンに至っては先に発砲されれば防御手段が皆無だ。ここはブラッドの言う通りの陣形を組んで行くべきだろう。

 

そしていよいよ"カチコミ"の時は来た。

 

ブラッドは先頭に立つと監視カメラを破壊し、カーテンウォールを変形させて門に叩き付け、黒狼会の代紋が描かれた門を吹き飛ばした。

 

「行くぞ!僕に続け!」

 

「いっくぞー!」

 

「おう!!」

 

ラグーンは戦闘体勢に入り、龍馬もルナ・アームを装着してラグーンの後ろに続く。

門を正面から破り、白昼堂々殴り込みをかけたことで黒狼会本部は大騒ぎだ。黒いスーツを着たヤクザ……黒狼会直系の構成員達が怒号を上げながら続々と集まってくる。

 

「なんじゃコラアァァ!!」

 

「ぶっ殺したるぞオラァァ!!」

 

素手の人間もいるが大半は小刀(ドス)や刀、拳銃(ハジキ)で武装している。ブラッドの読み通りだ。

 

「なんだ、黒狼会本部にカチコミかけるたぁどこの組のもんかと思ったら……変な異界人に……おかしなクモのバケモンに……けったいな籠手付けたガキが一人だけかい。ヤクザなめとんのかワレェ!!!!」

 

幹部らしき男が凄む。さすが本職のヤクザだ。迫力がチンピラのそれとは一線を画している。

 

「吠えてないでかかってきたらどうだ?その手に持った小刀(ドス)拳銃(ハジキ)はオモチャか?それとも……ヤクザってのは吠えることしか出来ないのか?ああ、そうか。"弱い犬ほどよく吠える"って言うしな」

 

ブラッドは中指を立ててクイクイと動かしながら煽り文句を並べ、幹部の男と構成員達を挑発する。

ここまでコケにされて黙っている連中ではない。更に構成員達から怒号が飛び交い、幹部の男も怒りを露にして叫ぶ。

 

「よほど死にてぇらしいな!!だったらお望み通りぶっ殺して博多湾に沈めてやらぁ!!ヤクザ敵に回したこと、後悔しろや!!……撃てやぁ!!」

 

銃を持った構成員達が一斉に射撃を開始する。

その瞬間、ブラッドのカーテンウォールが自分とラグーンと龍馬を囲むように形成され、あらゆる方向からの銃弾を防いだ。

弾丸はカーテンウォールに防がれたのちに、むなしくその場にパラパラと落ちる。

完全に防がれた弾丸を見て動揺する構成員達。

 

「な、何しとんじゃお前ら!!はよ次を撃たんかい!!」

 

弾を打ち尽くした構成員達は予備のマガジンを慌ててリロードしようとするが、この隙を三人は見逃さなかった。

 

「それっ!!」

 

ブラッドを踏み台にして高く跳躍したラグーンは空中から構成員達の銃にウェブを的確に撃ち出して命中させる。彼等の銃は薬室内部までクモの糸で満たされて射撃不可能になり、さらに構成員達は動揺した。

そしてーーーー

 

「うおおおおおぉぉぉぉ!!!!!!」

 

龍馬が後ろから飛び出して集団に突っ込んでいき、ルナ・アームを付けたその四肢で異名通り"怒り狂う龍の如く"、構成員達を叩き伏せていく。

小刀(ドス)や刀も龍馬の前には意味を成さない。刃物を持った敵とは異世界で散々戦ったのだ。銃さえ封じれば今さら恐るるに足りない。

 

「どりゃあぁぁっ!!」

 

龍馬は頭を掴んで地面に叩き付ける。さらに拳の連撃で複数人をあっという間にノックアウトした。

 

「そこだ!!」

 

「てやぁっ!!」

 

ブラッドのカーテンウォールがまるで複数のオーロラのように変形して数人の構成員達を殴打し、さらにラグーンがジャンプして空中前転からの多脚による脳天への叩き付けで攻撃した。

 

「く……クソがっ!!」

 

幹部の男は本部内の建物へと逃げていく。龍馬達もその後を追った。

先ほどのブラッドの作戦通り、銃撃を警戒してのフォーメーションで進んでいく。

建物に入るとそこは旅館か何かと見まごうほどの内装が施された広い施設であり、やはり先の方で待ち構えた構成員達が銃を構えている。しかも今度は拳銃ではなくサブマシンガンだ。

 

「撃てぇ!!!!」

 

幹部の男が命令し、その瞬間に大量の弾丸が轟音と共にバラまかれる。ブラッドはカーテンウォールの壁を作って防御体勢に入る。

しばらく弾丸を防いだのちにやはりリロードの隙ができる。が、距離が遠すぎてラグーンのウェブが届かない。

 

「喰らえぇ!!」

 

素早く前に出た龍馬がルナ・アームにバレンの獄炎を宿し、火炎弾を連発する。

襲い来る火炎弾の脅威に構成員達は成す術もなく打ちのめされていく。

 

「か、カシラぁ……!!あのガキ、おかしな手品を……!!」

 

「なんだありゃあ……魔法か……!?」

 

「ええい、火の玉のひとつやふたつなんじゃい!!おめぇらそれでも黒狼会直系の人間か!!ヤクザがガキや得体の知れない異界人にナメられてたまるかってんだ!!やれ!!」

 

幹部の男は数に物を言わせて次々と構成員を呼び出す。

やはり銃が通用しないと見るや、全員近距離用の武装で廊下の向こうから一気になだれ込んできた。

 

「詰めが甘いな、ヤクザというやつは」

 

ブラッドのカーテンウォールが変形し、無数の波動の束となって構成員達を弾き飛ばしていく。その合間を縫って突進してくる連中にはもれなく龍馬の拳かラグーンの尻尾多脚による攻撃のプレゼントだ。

 

「ちくしょうっ!!」

 

幹部の男はさらに奥に逃げようとする。だがラグーンのウェブが素早く捕縛し、男をこちらへ引き寄せてくる。

 

「ぐっ!は、離せっ!」

 

「離すわけないだろバーカ!」

 

そしてウェブが引き寄せる先にいるのはーーーー龍馬だ。

 

「どりゃあああああっっっ!!!!」

 

龍馬のストレートが幹部の男の顔面に直撃し、その瞬間にラグーンがウェブを切り離す。

男はきりもみ回転しながら数メートル先へ吹き飛ばされて床に叩き付けられた。

呻く男に龍馬は近づいて"いつものように"、髪を引っ掴んで引き起こすと男の顔を睨み付けて凄む。

 

「おめぇら黒狼会の誰かがチャイニーズ・マフィアの神鳥会と取引してさらった女性を預かってるのは知ってんだ!!答えろ!!どの組の、誰が、その人を捕らえてやがんだ!?」

 

「うぐ……ぐ……知るか……クソ野郎……」

 

「ふざけんなよゴラアァ!!」

 

龍馬は怒りを込めて男の顔を殴り飛ばした。

 

「知らねえで済まされるとでも思ってんのか!!神鳥会の幹部がゲロッたんだよ!!お前らに女性の身柄を引き渡したってなあ!!」

 

龍馬は倒れたままの幹部の男の胸ぐらを掴んでなおも激しく揺さぶり、怒鳴る。

知らないなどとは通用しない。間違いなくこの黒狼会傘下のどこかの組織が愛華の身柄を確保しているはずなのだ。

だがなおも男は知らないと言い張る。その時であった。

 

「……騒がしいな」

 

「か……会長……!!」

 

奥から現れた黒スーツに髭を生やした眼光鋭い男。

顔中に刻まれた多くの傷が数々の修羅場をくぐってきたことを暗示させている。

この男の名は、黒谷仁(くろたにじん)。黒狼会五代目会長であり、この組織のトップである。

彼は龍馬達に近づくとゆっくりと言った。

 

「……ガキがヤクザのアジトに何の用だ」

 

「俺達の知り合いの女性が中国マフィアの神鳥会にさらわれた。そいつらをシメに言ったら幹部の男が"女は黒狼会に引き渡した"って言ったんだ。だから助けにここまできた」

 

「神鳥会?……ふん、なるほどな」

 

仁はネクタイを締め直すと、踵を返して歩き出す。

 

「ガキのくせにヤクザに喧嘩売るとは度胸のある奴じゃねぇか。気に入った。……自己紹介が遅れたな。俺は黒狼会五代目会長・黒谷仁だ。……ついてこい。話くらいは聞いてやろう」

 

仁はそう言って龍馬達を先導し、本部の応接室へと案内する。

部屋のソファに腰掛けると仁は煙草を取り出して火をつける。そして軽く一服したのちに煙草を片手に口を開いた。

 

「……さて、お前らの話では"俺達が神鳥会と取引をした"って話だったな?」

 

「……ああ」

 

「残念だが、俺自身はそういった情報は知らん。そもそも神鳥会は俺らのシマを奪おうとしている外国勢の商売敵だ。争いこそすれ、取引なんざやった覚えはない」

 

どういうことだ。話が噛み合わない。

神鳥会幹部のチャンが咄嗟の嘘でもついたのだろうか。

さらに話を聞いてみると、この間の薬院での発砲事件。あれは黒狼会傘下の組と神鳥会の抗争によって起きたのだと言う。

 

「と、すればだ。俺達黒狼会傘下のどこかの組織が秘密裏に神鳥会と取引している可能性が高い。おそらくその組がお前らの探してる女を監禁してるはずだ。……いいだろう、女を探すのに協力してやる。ただし、条件がある」

 

「……なんだ?」

 

「まずは俺についてこい。そこで話そう」

 

仁は煙草を灰皿に押し付け、火を消して立ち上がると応接室を出ていく。仕方なく龍馬達も後に続いた。

仁は無言で本部内を歩き、遂には玄関口から出てしまった。

そして石畳の通路の途中で止まると、龍馬達に背を向けたまま言った。

 

「おい、小僧。……お前、名前は?」

 

「龍馬……斎藤龍馬だ」

 

「……なるほど。じゃあ、龍馬。条件を言うぞ。"俺と喧嘩で勝負しろ"」

 

「……は?」

 

その瞬間、仁はスーツとシャツを脱ぎ捨てて上半身を露にする。

その背中には桜吹雪と共に月に向かって遠吠えを上げる勇ましい黒い狼の刺青が彫られていた。

 

「最近のヤクザにさえお前みたいに骨のある奴はなかなかいねえ。俺も昔の血が疼いてな……これだけの極道モンを恐れもなしにぶっ倒す……そんなお前の男気を試してみたくなったのさ」

 

仁は言う。裏社会ではほとんどが銃器(チャカ)をハジいて終わるのだと。

それは上の方ほど顕著であり、殴り合いの喧嘩など有り得ないのだ。

仁も黒狼会の幹部、そして会長(トップ)にまで上り詰めてから銃器(チャカ)をハジくことすら滅多になくなった。

だが心の底では闘争への渇望が溢れていた。そしてーーーー目の前には度胸と実力を兼ね備えた人間が。

 

「……約束は守れよ」

 

「これでも組織のトップだ。約束は果たさねぇと下のモンに示しがつかねぇ」

 

「そうかい。じゃあ……行くぜ」

 

龍馬はルナ・アームを解除すると上着を脱ぎ捨てる。素手の状態で"龍"と"狼"が睨み合う。

「公平を期すため」と、仁の指名でブラッドが審判を行うことになり、ラグーンは離れた所から龍馬を見守る。

 

「ほう。その籠手は出したり消したり出来るのか」

 

「異世界の女神サマからもらったもんでね。……言っとくが変な気は起こすなよ。この武器には意思があって俺にしか使えない」

 

「はっ、そんなもんいらねえよ。……さて、おしゃべりはここまでにしようや。……行くぞ。ガキだからって手加減はしねえ……本職のヤクザの喧嘩技、思う存分味わえや!!」

 

「上等だよ!!来やがれ!!」

 

黒狼会構成員達が見守る中、お互いに鋭いパンチを繰り出し、龍馬と仁の戦いが始まる。

鍛え上げられた仁の肉体から繰り出される拳はそれ自体がまるで凶器だ。龍馬はガードを重ねるが、拳がぶつかるたびに骨の髄まで響くような衝撃が走る。

だが龍馬も負けてはいない。隙を見ては仁に攻撃を加え、確実にダメージを与えていく。

パワーに驚いたのは龍馬だけではない。それは仁も同じだった。

若い頃は喧嘩に明け暮れ、数々の強敵を相手にしてきた仁もこのような子供が恐るべきパワーを持っている事に驚きを隠せなかった。

技のキレやスピード、その全てが年齢の割に規格外とも言うべき脅威を持っている。

仁は拳を交わしたことで彼を"ただの子供"という認識は出来なくなった。

 

「うらぁっ!!」

 

仁の蹴りが龍馬の脇腹に直撃する。一瞬苦しむ龍馬だが、すかさず仁の顔面に拳の一撃を喰らわせた。

仰け反る仁。そして追撃を繰り出す龍馬。だが龍馬の攻撃をガードした仁はカウンターパンチを龍馬の顔面へとお見舞いした。

 

「ぐはっ!!」

 

「おら、どうした小僧!!そんなもんか!!」

 

さらに襲い来る仁の連撃。素早いジャブの連続攻撃の(のち)の丸太が直撃するかのような強烈な蹴り。

"今まで戦った連中とはまるで格が違う"ーーーー龍馬は仁の戦闘力の前にそう思わざるを得なかった。

だがここで諦めるわけにはいかない。相手がたとえヤクザだろうが、マフィアだろうが、負けるわけにはいかないのだ。愛華を救うためにも。

大切な人達への想い、そしてそれらを傷付けた連中への怒り。その全てがひとつとなって龍馬の心に激しい闘志の火を灯す。

湧き上がる怒りの力をみなぎらせ、龍馬は反撃に転じた。

 

「オラオラァッ!!」

 

「ぐっ!!」

 

あれだけダメージを受けいるにも関わらず激しさを増す龍馬の攻撃を前にさすがの仁も気圧されていく。

 

「(なんだこのガキは……!?さっきからかなり殴られているはずなのに、怯むどころかますますブチキレてやがる……!!)」

 

間違いなくダメージは通っているはずだ。なのに龍馬の攻撃は激しさを増すばかりだ。

 

「(なるほど……さしずめ虎の尾……いや、"龍の逆鱗に触れた"ってとこか……おもしれえ!!)」

 

仁は思わぬ強敵を前にしてかつてない高揚感に見まわれていた。

これほど気持ちの高ぶる喧嘩はいつぶりだろうが。若かりし頃の記憶が仁の脳裏に蘇り、笑みすらこぼれるほどであった。

 

「行くぞ仁んんんん!!」

 

「来やがれ龍馬ああああ!!」

 

お互いにガードを捨てて攻めの一手に入る。

龍馬のワンツーパンチ、仁の左フック、龍馬の右ストレート、仁のジャブ連打とお互いの攻撃を激しく受けながらの殴り合いが続く。

 

「もらったあああ!!」

 

仁の右ストレートが龍馬の顔面を直撃した。

だがーーーー

 

「なっ……!?」

 

龍馬を歯を食いしばって仁の右ストレートを敢えて"顔面で"受け止めたのだ。

顔に走る激痛。しかし龍馬の闘志が、怒りが、彼を支え、仰け反ることを許さない。これにはさすがの仁も度肝を抜かれた。

龍馬は鼻と口から激しく出血しながらも、ニヤリと笑う。

 

「おらあぁぁぁ!!!!」

 

すかさず仁の鳩尾に拳を打ち込み、彼が腹を押さえて怯んだ瞬間にラッシュを一気に叩き込む。

そしてーーーー

 

「ぶっ飛べやあああ!!!!」

 

仰け反って距離が空いた瞬間、龍馬は跳躍し、仁の顔面に彼の得意技にして必殺のニーキックを思い切り喰らわせた。

 

「ぐはぁっ……!!」

 

その威力たるや、まるで襲い来る龍の牙の如し。

龍馬の膝が思い切り顔面に食い込み、仁はそのまま吹き飛ばされて地面に大の字に倒れた。

……彼が起き上がる気配はない。その瞬間にブラッドが二人の間に割って入る。

 

「……勝負ありだ。勝者は龍馬。異論はないな?仁」

 

「……ハァ……ハァ…………ククク……ハッハッハッハ!!……まったく……なんてガキだ……この俺までのしちまうとはな。……ああ。俺は敗け、龍馬は勝った。文句はねえさ」

 

ただの学生が、あの黒狼会五代目会長をステゴロの殴り合いで倒してしまったという事実を前にして構成員達にどよめきが上がる。

龍馬は倒れたままの仁にゆっくりと近づき、右手を差し出す。

 

「……立てるか?仁さんよ」

 

「……ああ。悪いな」

 

仁は龍馬の手を握ると彼に引っ張られながらゆっくりと立ち上がる。

 

「約束だ。俺達は神鳥会と繋がっている組織を探し、お前らにはそいつらが拉致した女の情報を渡す。……それでいいな?」

 

「ああ。助かる」

 

「……フッ、全く大したガキだぜ。ヤクザ相手に物怖じしないどころか、小刀(ドス)拳銃(ハジキ)も恐れねえ。……お前のような奴がうちにいたら今頃うちの組織はテッペン取ってるだろうな」

 

仁は投げ捨てたスーツとシャツを拾うとそれを肩に担ぎ、本部へと向かって歩き出した。

 

「ついてこい。今後の事を話し合おう」




・vs黒狼会構成員戦イメージBGM……
『Scarlet scar』
(『龍が如く』より)

・龍馬vs黒狼会五代目会長・黒谷仁戦イメージBGM
『Bad fortune flower』
(『龍が如く極2』より)
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