龍馬とブラッドは協力して追っ手の博聖会構成員を叩き伏せる。
途中増援もあったが銃は持っておらず、もはや龍馬とブラッドの敵ではない。
二人はあっという間に敵を打ち倒すとさらなる追撃がないか辺りを警戒する。
「ブラッド、どうだ?」
ブラッドはカーテンウォールを周囲に張り巡らせて辺りを偵察する。
……コンテナの陰や上、建物の内部や屋上。…………辺りに敵は確認できない。
「……大丈夫だ。少なくとも僕達の周囲には敵影は存在しない」
「よし……追っ手はあいつらだけだったみたいだな」
どうやら周囲の安全は確保出来たらしい。
後はこのまま逃げれば作戦は完了だ。だがしかし、龍馬は"まだやるべきことがある"と考えていた。
龍馬はルナ・アームを装着したまま、未だ銃撃戦の音が鳴り響く方へ向かう。
「おい龍馬……どこへ行く?」
「……"落とし前"をつけさせにだ。博聖会とかいう連中も、
静かに、だが強い怒りに龍馬は身を震わせていた。
愛華は母親想いのごく普通の女子大生だ。
将来は美容師になりたいと夢を持ち、多忙な学校生活の傍ら忙しい実家の食堂を手伝って共に切り盛りし、嫌な顔ひとつせずに笑顔を振り撒いて店にやってくる客達を楽しませてくれる。
彼女の笑顔に支えられているからこそ、毎日の仕事が頑張れると客からも評判だ。
そんな天使のような彼女が一体何をしたというのか。いつものように学校に行って、いつものように実家を手伝う。彼女は何も悪いことなどしていない。
そんな彼女をこんな目に合わせたマフィアもヤクザも、それを裏で操っているリーも、龍馬は……"博多の怒龍"は決して許さなかった。
自分達の身勝手な理由で愛華を拉致し、こんな目に遭わせた連中には相応の"報い"が必要だ。
奴等は"龍"の逆鱗に触れたのだ。
"博多の怒龍"は……斎藤龍馬という男は大切な仲間を傷付けられた事を決して赦しはしない。
今までもそうだった。
高橋も、佐古田も、ラオグリッドも、ヴォルティスも、レオンハルトも、"博多の怒龍"の仲間を傷付けた者達は誰一人として龍の怒りから逃れられなかった。
それはたとえ裏社会の人間だろうと例外ではないのだ。
ああ、そうとも。奴等には地獄こそが相応しいーーーーー。
龍馬の怒りは今頂点に達していた。
「馬鹿が!死にに行くようなものだぞ!」
「じゃあブラッド、お前がそのカーテンウォールの力で守ってくれ。お前の事……信頼してるからよ。ただ……これは俺のワガママだ。無理についてくる必要はない」
「……!」
ブラッドは生体兵器故の存在か、物事を合理的に考える性格だ。
本来なら龍馬の行動は自殺行為だ。自ら銃弾飛び交う戦場の真っ只中に飛び込むなど。
自我に目覚めたばかりのブラッドなら理解できなかっただろう。
そう、"目覚めたばかりなら"。
だがブラッドも龍馬と行動を共にするうちに自分でもよくわからない感情が芽生えつつあった。
"仲間を放っておけない"ーーーーそんな感情が。
ふくまるのおばちゃんや愛華に対し、強い想いを抱いたのも龍馬という男のせいもあるかもしれない。
「……全く、どこまでも馬鹿みたいに真っ直ぐな奴だ。ここで見過ごしたら後味が悪いだろう。……いいさ、龍馬。お前に付き合ってやる」
「……ブラッド……すまねえ、ありがとう」
「礼なら無事に生き残ってから言え」
「……そうだな……よし……行くぜ!」
未だ銃声の響く方角へ、戦場と化した地の真っ只中へ、二人は歩き出す。
赦されぬ罪を犯した者に、報いを受けさせるために。
「ぐわぁっ!!」
また一人、黒狼会の構成員が凶弾に倒れた。
神鳥会は組織の一番の売りである"武器"の質で黒狼会を圧倒している。
博聖会もまた、神鳥会の力にあやかって強力な銃器で武装している。
対する黒狼会は人員でも武器でも奴等には劣っているのだ。
博聖会が離別する前にもたらした武器の恩恵を黒狼会もある程度受けているものの、それだけでは二つの組織には到底及ばない。
「クソッ……!」
仁は車の陰から拳銃を放ち、応戦する。
二、三発放って再び物陰から身を出した瞬間、仁の左肩を一発の弾丸が貫いた。
「ぐおっ……!!」
「か、会長!!……ぐわっ!!」
直後に仁のそばにいた構成員が胸に被弾し、倒れる。
仁は車に寄りかかったまま、徐々に近づく銃弾の嵐を前にして死を覚悟した。
「はーっはっはっは!!死ね死ねぇ!!」
川崎は高笑いを上げながら神鳥会から受け取ったばかりのM4A1カービンから弾丸を放っている。
「(ここまでか……)」
部下はほとんどが負傷したか物言わぬ屍となっている。残る味方もわずかだ。
ーーーー弾が尽きるか、命運が尽きるか。もはやそのどちらかを待つばかりとなった黒狼会。
ーーーーその瞬間、"怒れる龍"が空から大地に降り立った。
穿たれる大地。燃え盛る炎。その"龍"の目は怒りに満ちていた。
辺りに土埃が舞い、突然の出来事に銃撃戦が止む。
「上空から真っ只中に落とせだなんてまったく、頭のネジが飛んでるんじゃないか?」
「へっ、ちょっとド派手にやりたかったもんでね」
現れたのは龍馬とブラッド。
龍馬はブラッドに上空まで運んでもらい、そこからルナ・アームによる怒りの一撃を着地と同時に地面に叩き込んだのだ。
突如現れた二人にどよめきが走る。
「龍馬……!それに異界人のガキ……!お前ら、なんで……」
仁は被弾した左肩を押さえながらヨロヨロと立ち上がる。
「……あんたらヤクザで言うところの"ケジメ"、"落とし前"をつけさせるためだ」
「……!?」
たかだか17歳の高校生が放つ異様な殺気にあてられて仁はたじろぐ。
本部で喧嘩をした時とは比べ物にならない、その殺気は本職のヤクザですら思わず身震いしてしまうほどだった。
「な、なんだこのガキは!?死ねぇ!!」
川崎はアサルトライフルから再び銃弾を放つ。
しかしその弾は龍馬の前に現れる謎の青いオーロラのようなエネルギーによって防がれてしまう。
他の博聖会構成員や神鳥会構成員も弾丸を放つが、その全てが"オーロラのような何か"によって防御され、川崎と幹部の男以外は弾き飛ばされて無力化されていく。
「無駄だ。僕達に銃弾は通用しない。僕のカーテンウォールの前にはその程度の弾では蚊ほども効かん」
ブラッドがそう言っている影で密かに彼の頭部に狙いをつける者がいた。
だが……彼には"お見通し"だ。
「うわぁっ!?」
突如現れた青い炎に構成員が攻撃され、全身に凍傷を負い、見るも無惨な姿となる。
「ああ、そうだ。ひとつ言い忘れたが……僕はこのカーテンウォールから伝わる振動で辺りの様子を把握することができる。この辺り一体は建物の中から屋上に至るまで僕の"力"によって監視されている。不意打ちは不可能だぞ」
「なっ……!?そ、そんなバカな……!?」
川崎は歯軋りをしながら再びアサルトライフルを龍馬に向け発砲する。しかしやはり全てブラッドの能力によって防がれてしまう。
弾薬を撃ち尽くし、引き金を引くもカチリ、カチリと空しい金属音が響くだけだ。
「く、クソッ……!!」
「頼みの綱のオモチャももう手詰まりのようだな。その男を殺したければ接近戦で勝負するしかないぞ。
……最も……その男に"勝てれば"の話だがな」
「!?」
川崎の前に怒りに満ちた表情の龍馬が立ちはだかる。学生とは思えぬそのあまりの迫力に腰を抜かした川崎は尻餅をつく。
「ひ……ひぃッ!?」
「コ、コノガキメ!!……ヌワァッ!?」
懐から別の拳銃を取り出した神鳥会幹部の男をブラッドのカーテンウォールが巻き付くように男の身体を拘束した。
「おっと、お前の相手はこの僕だ。野暮な真似は止めることだな。……龍馬、殺さない程度にやってしまえ」
無言で頷く龍馬はルナ・アームをつけたまま、川崎の胸ぐらを掴んで無理矢理引き起こす。
そしてーーーー
「おおおおおらあああああぁぁぁぁっっっっ!!!!」
「ごばああぁぁぁぁっ!?」
籠手をつけた龍馬の怒りの右フックが川崎の左頬に深くめり込んだ。
顔面の骨が砕け、歯が数本派手に吹き飛ぶ。
吹き飛んで地面に叩き付けられた川崎。しかし身体を震わせながらも這いずって逃げようとする。
「どこに行くつもりだ」
「はがっ……!や、やめっ……!」
襟首を掴まれて引き起こされた川崎は再び胸ぐらを掴まれ、今度は左の頬を殴り飛ばされる。
「ぐわぁぁぁっ!!!!」
「おら、立てよクソ野郎」
再び引き起こし、今度は顔面を殴る。続けてもう一発。さらに顎を殴られる。顎と鼻の骨が砕け、川崎の顔はメチャメチャになっていた。
「お前ら博聖会と神鳥会は俺の大事な人達や場所を傷付け、奪おうとした。……ただで済むと思うな」
龍馬のルナ・アームにバレンの極炎が宿り、彼の怒りの凄まじさを物語るかのように大きく燃え上がり、大の字に倒れた川崎の顔面に龍馬の拳が再び振りかざされる。
「ヒィッ!」
川崎が顔を覆った瞬間、彼の顔面……の隣の地面が激しく穿たれる。
炎に包まれた籠手が地面にめり込み、土埃が舞い、川崎は恐る恐る目を開ける。
「分かるか。どれだけ俺がキレてるか。……覚えとけ。この顔を。もしまた同じような事をしてみろ。……次は……」
「殺すぞ」
「…………!!!!」
何という迫力。何という恐ろしい殺気。
これがただの学生が出せる気迫だと言うのか。川崎はあまりの恐ろしさに腰が抜け、股間が温かくなるのを感じた。
龍馬はめり込んだ地面から腕を引き抜くとゆっくりと立ち上がり、仁の元へと向かう。
「大丈夫か、会長さんよ」
「……全く、オメーは大したヤツだよ。本当にカタギの学生かよ?」
「一応な」
ーーーーこうして事態は終結した。
"殺害はせず、警察に身柄を引き渡す"という条件をつけて川崎と幹部の男をはじめ、黒狼会にその身を預けた。
「……約束は守れよ、会長さん」
「大丈夫だ。うちのツテでサツに渡しておく。ヤクザもカタギも関係ねえ。男と男の約束だ」
愛華の救出は成功し、神鳥会の幹部の一人と川崎率いる博聖会を壊滅に追い込むことに成功した。あとは……リーとの決着を残すだけだ。
ホッと一息をついた龍馬。その瞬間に彼のスマホが鳴り響く。
相手は……ディレットだ。
「もしもし、ディレットか?どうしたんだ?」
「"りょ、リョーマ!!大変だよ!!うちが……私達の家が……!!"」
「なんだ!?家がどうした!?」
電話の向こうからは慌てたディレットの声。
そして彼女から告げられた信じられない事実。
「"家が……家が襲われてるんだよ!!チュウゴク人達に!!"」
「な……!?なんだと……!?」
「"今リョーコさんとリュウイチロウさんが家の周辺で戦ってるけど……!!数が多すぎて……!!リョーマ、早く戻ってきて!!"」
ディレットは慌てた様子でそのまま電話を切る。
通話が切れた瞬間、再びスマホが鳴り響いた。相手はレナだ。
「もしもしレナ!?どうした!?」
「"龍馬!!大変だよ!!街が……博多が大変なんだよ!!あちこちで中国人の暴動が起きてる!!"」
「ま……まさか……!!」
「"愛華姉ちゃんは離れた病院へ避難させたから安心して!!龍馬、早く博多に戻って!!"」
「ああ、わかってる……!!みんなを助けないと……!!」
龍馬は通話を終了し、スマホをしまう。
「どうした、龍馬?」
「ブラッド、やべえぞ!俺んちが中国人に襲われてる!いや、俺んちだけじゃねぇ!!博多全体で暴動が起きてるらしい!!」
「何!?本当なのか!?」
「おい、龍馬!その話は本当なのか!?」
龍馬の言葉にブラッドも仁も驚きを隠せない。
その瞬間、今度は仁のスマホの着信音が鳴り響く。
「もしもし、俺だ!……何!?……わかった、俺もすぐに行く!可能な限り応戦しろ!神鳥会の息のかかった連中を見かけたら容赦するな!!」
仁も慌てた様子で電話を切り、腕を庇いながら残った構成員と共に車を用意する。
「龍馬の言っていることはマジだ。奴等め……うちの本部はおろか、末端の組の事務所にまでカチコミかけてやがる」
「まさか……やはりリーの奴が……!!」
「龍馬!異界人のガキ!早くお前らも車に乗れ!急いで博多に戻るぞ!」
仁と共に龍馬もブラッドも車に乗り込み、すぐさま博多へと戻る。
道中、車を走らせる中でスマホのテレビを起動してみると博多の街に関する臨時ニュースが報道されていた。
「"……現在、福岡・博多で暴徒と化した中国人による大規模な暴動が発生しています。あまりの規模の広さに警察も機動隊も事態の収拾が追い付かず、依然として博多の街全体が脅威に晒されています。
なお、負傷者の数は重軽傷者あわせて数百人にもなると見られており、被害はさらに拡大するものと思われます。付近の住民の皆さんは出来るだけ安全な場所に避難するか、避難が困難な場合は戸締まりをしっかりとして自宅から出ないようにしてください……"」
その後マスコミのヘリコプターから映し出される映像に切り替わり、映像には街中の建物を破壊し、火炎瓶などを投げつけ、警官隊と揉み合いになる中国人達の姿が映し出されている。
「……狂ってやがる……」
おそらくリーの仕業だろう。まさかここまで大規模な騒動を起こすとは龍馬達も夢にも思わなかった。
龍馬は甘く見ていた。裏社会の力を。残忍さを。
そしてこうした最悪の形で思い知らされることとなった。奴等の恐ろしさを。
龍馬は唇を噛み締めながら車が自宅へと到着するのを待つ。
そして三十分後。自宅近くまで車を近づけた。
……辺りの住宅は窓ガラスが割られ、中には火炎瓶による火災が発生し、警官隊や消防隊が入り乱れている。
「龍馬、俺達がしてやれるのはここまでだ。俺は自分の組へ向かう。……死ぬなよ」
「あんたもな、会長さん」
龍馬とブラッドを車から降ろした仁はそのまま負傷した身体で黒狼会本部へと向かう。
二人は龍馬の自宅へと駆け足で向かい、そしてすぐに到着した。
「オラオラァ!かかってこんかい!」
「次から次へとしつこい奴等だ!」
「来なさい!……フルゥム!」
涼子と龍一郎が中国人達と素手で戦い、ディレットが精霊魔法で援護している。龍馬とブラッドも辺りの敵を倒しながら三人に近づき、ようやく合流を果たした。
「母さん!親父!ディレット!」
「リョーマ!!戻ってきたのね!?」
「龍馬か!?無事なのか!?」
「龍馬!?あんたどこさい行っとったんね!?」
「実は……」
龍馬は話した。今までの事を全て。
それを聞いた涼子は怒鳴り声を上げる。
「……このバカチンがぁ!!裏社会の人間がどれだけ恐ろしいかわかっとんかキサンこの馬鹿息子が!その結果がこれたい!!」
「わかってる!!だけど……大事な人さらわれて黙ってられるわけないだろ!!」
涼子の怒りは至極当然のものであった。
裏社会の、人殺しなど日常茶飯事の世界に身を置く人間達に喧嘩を売るなど自殺行為もいいとこだ。
それに報復を受けるのは本人だけでは済まない。こうして親族までもが報復措置を取られることだって当たり前なのだ。
「……ハァ、もういい。今は親子喧嘩しよる暇やない。とにかく周囲の安全の確保たい。それに……どうせ止めても行くんやろーが。そっちのお兄さんとね」
「……すまない、涼子さん」
「ブラッド君、あんたが謝る必要はないとばい。ただ……うちの馬鹿息子をよろしくお願いします」
「……ええ。僕の命に代えても。……行くぞ、龍馬」
「……ああ」
龍馬とブラッドは走り出す。大切な場所、大切な人達を守るために。
暴動が依然として続く街中で暴徒の中国人達を倒しながら進み、時には襲われている人達を助け出した。
そんな中、一本の電話が。相手は……勇斗。
「もしもし、勇斗か!?」
「"ああ、龍馬か!急いで商店街へ来てくれ!中国人どもがどんどん増えている!今はレナやラグーン、それに商店街の人達となんとか食い止めてるが、奴等の攻撃が激しすぎる!今はふくまるの前にいるから急げ!"」
「わかった!すぐに向かう!…………ブラッド!」
「ああ、わかってる!」
龍馬とブラッドは商店街を目指して更に走る。
道中にも中国人達が蔓延り、破壊と略奪を繰り返している。
「このクソ野郎がぁぁぁ!!!!」
龍馬は怒声を上げながら中国人達に怒りの鉄拳を浴びせ、一人、また一人と地に伏せてゆく。
ブラッドもカーテンウォールと青い炎で援護しながら商店街への道を突き進んだ。
自宅の周辺だけではなく、商店街へ至る道中の建物も無惨に破壊されている。
至る所で火の手が上がり、人々は逃げ惑い、街は大混乱の最中にあった。
龍馬とブラッドは見つけた中国人達をかたっぱから叩き伏せて片付け、敵を排除しながら商店街への道を走りに走った。
ようやくたどり着いた商店街もやはりメチャメチャに荒らされており、もはや以前の面影はない。
中国人達は龍馬とブラッドに気が付くと彼等に襲いかかるが雑魚はもはや彼等の敵ではない。
「どけぇぇぇ!!雑魚に用はねぇぇぇぇ!!」
「邪魔をするならどうなっても知らんぞ!!」
二人は怒りの力で中国人暴徒達を圧倒しながら荒れ果てた商店街を突き進む。
そしてようやくふくまる前に到着し、勇斗とレナ、ラグーンと合流した。
「みんな!!」
「龍馬!ブラッド!」
勇斗がこちらに気付き駆け寄ってくる。
今はどうやら応戦と、ふくまるやその他各店内を避難所として使っているようだ。
ふくまるの店内には千春と彼女の母親もおり、悲しみに暮れている。
「須崎!」
「斎藤……!無事だったのね……!」
「お前こそ、無事だったんだな」
「城島がいち早く助けに来て避難させてくれたの。でも街はもう酷い有り様よ……」
今のところ商店街の敵はある程度片付けて落ち着いたが、またいつ敵の襲撃があるかわからない。戦える者は疲弊し、おばちゃんをはじめ、女性や子供達は恐怖に怯えている。警官隊の応援が来るには時間がかかるらしい。
と、その時だ。
「ハァ……ハァ……クソッタレが……!」
ボロボロになった久龍がふくまるへと這いずるようにやってきた。
彼もこの非常事態に対し、商店街の人々と共に応援に駆け付けた……のだが。
「久龍!?」
「斎藤……すまねえ……奴等がまたやってきたから向かったんだが……数が多すぎる……ベストは尽くしたんだがこのザマだ……ぐっ……」
久龍は糸が切れたようにその場に倒れ、彼を龍馬が抱え起こす。
「久龍!おい、久龍!しっかりしろ!」
「さ、斎藤……事情は城島や……おばちゃんから聞いた……頼む……お前なら……出来るんだろ……?お、俺達のこの街を……博多を救えるのは……お前しかいないんだ……頼んだぜ……"博多の怒龍"……」
久龍はそこまで言うと気を失ってしまう。
龍馬は傷付いた久龍の介抱を勇斗に任せ、ふくまるを飛び出し、目前まで迫る暴徒達と対峙する。
そしてルナ・アームを装着するとーーーーこれまでの怒りと想いを身体に込めた。
「うおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!」
龍馬の激しい怒りに呼応するかのようにバレンの獄炎もまた、激しく燃え上がる。
もう奴等を許すつもりなど微塵もありはしない。あるのはただ、自分達の街を滅茶苦茶にした連中への尽きぬことのない怒りだけ。龍馬は暴徒達に突進し、次々に叩き伏せてゆく。
そんな彼を援護するかのように現れた三つの影。……レナ、ブラッド、ラグーンの三人だ。
「龍馬!私達も戦うよ!」
「……全く、猪突猛進を地で行くようなヤツだな、お前は」
「龍馬一人にいいカッコはさせないからね!」
「お前ら……!……よし、こいつら全員日本から叩き出すぞ!!」
四人は再び戦闘を開始した。龍馬とレナの拳が敵を地に伏せ、ブラッドのカーテンウォールと青い炎が敵をなぎ払い、ラグーンのウェブが敵の集団を拘束する。
リオングループの日本進出から始まった今回の事件。その中で起こった戦いを共にした四人は今やダイヤモンドよりも固い絆で結ばれていると言っても過言ではない。
この四人ならどんな奴等が相手でも負ける気がしない。龍馬は自分達の後ろにいる人々を守るためにその拳を振るい続けた。
そしてーーーー三十分後。
「ハァ……ハァ……クソ野郎共が……!」
龍馬達の目の前には数多くの暴徒達が気を失って倒れていた。
何とか商店街の防衛に成功した四人。ひとまずはこれで大丈夫だろう。
そしてこの状況でブラッドは龍馬、レナ、ラグーンを集めてある判断を下す。
「ここまで規模の大きな暴動に発展した以上、もはや僕達だけで事態を収束することは不可能に近い。と、なればやるべきことはひとつだ。……リーの本拠地に乗り込み、奴を直接叩く」
「その意見、乗ったぜ」
「いよいよ決戦だね」
「腕が鳴るよ!」
四人で解決するにはあまりにも大事になりすぎた。
こうなれば首謀者リーの所在地を突き止めてこの暴動を止めさせるほかない。
だがリーは一体どこに……。
「龍馬、夕方のニュースであいつが出てたぜ。リーはおそらく"ヒルトン福岡シーホーク"ホテルにいる」
「本当か、勇斗!?」
「おそらくは、だが。でも夕方にリゾート開発についての記者会見をホテルで開いてたから可能性は高いぜ」
勇斗によれば夕方のニュースにリーは出演し、リゾート開発に関する記者会見の会場をヒルトン福岡シーホークに設定していたらしい。
だとすると奴はあのホテルの最上階にいるはずだと勇斗は睨んだ。
「勇斗、お前を信じるぜ。……お前はこの場でみんなを守ってくれ。俺達で……リーを倒す!」
「ああ、任せろ相棒。……あのクソッタレチャイニーズ野郎をぶちのめしてこい」
「言われなくても、そのつもりさ」
龍馬は苦笑しつつも、親指を立てる。
こうして龍馬、レナ、ブラッド、ラグーンの四人によって事件の首謀者リーを止めるという作戦が立てられた。
しかし、ホテルまではここから遠い。行くには足が必要だ。
そんな時、おばちゃんがこの近くに停めてある自分の車を使えとキーを貸してくれた。
どうやらブラッドが運転出来るようで、龍馬達はやや不安ながらブラッドに運転手を任せることにした。
キーを受け取り、車の場所まで向かう。
車に乗り込んでブラッドがエンジンをかけ、車を発進させた。
遂にリーとの直接対決の時が来たのだ。
・vs中国人暴徒戦イメージBGM……
『Clay Doll On The Cradle』
(『龍が如く3』より)