アナザー・ディメンジョン -異界交流記-   作:誠龍

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今回で【中国大企業福岡侵攻編】は幕を閉じます。
中国大企業リオングループとチャイニーズマフィア・神鳥会によって引き起こされた今回の事件。
果たして龍馬、レナ、ブラッド、ラグーンの四人が戦いの果てに辿り着く結末とは?


第81話 戦いの果てに

遂にリーを倒した龍馬とレナ。しかし二人とも体力は限界に達しており、特にレナは血の力を大きく使用したためにその反動でその場に倒れてしまった。

 

「レナ……!」

 

「だ……大丈夫……ちょっと休めば……良くなるよ……」

 

「まったく……無茶しやがって」

 

かく言う龍馬ももう身体が動かない。

体力は全て使い果たした。龍馬は仰向けに倒れたレナのそばに座り込む。

ようやくだ。ようやく全ての元凶を倒した。

龍馬は座ったまま、レナは倒れたまま福岡の夜空を見上げる。自然と笑いがこみ上げてきた。

 

「は……はは……ははは!」

 

「ふふ……ふふふ!」

 

「ははは!……はぁ……遂にやったんだな、俺達」

 

「……うん!ラスボス撃破、ってね!」

 

打ち倒したリーは大の字に倒れたままピクリとも動かない。どうやら完全に気を失っているようだ。あれだけの攻撃を喰らっては無理もないが。

 

「龍馬!レナ!」

 

後ろから呼ぶ声が聞こえる。そこにいたのはボロボロの身体を引きずりながらようやく辿り着いたブラッドであった。

 

「ブラッド、無事だったか!」

 

「お前もな、龍馬。なかなかしぶとい奴だ」

 

「ハッ、お互い様だろ」

 

ブラッドが屋上に辿り着いた時を同じくして、屋上の端から足音が聞こえてきた。

龍馬達が謎の音の方角を見るとなんと外壁を登ってきたラグーンの姿が。

 

「ラグーン!お前も無事だったんだな!」

 

「ハァ……ハァ……色んな意味で死ぬかと思ったよ……」

 

5階からここまで登りきったラグーン。腹部に傷を受けてはいるが、とりあえず無事のようだ。

これで四人が揃った。皆無事にそれぞれの役目を終えたのだ。

四人がお互いの健闘を称えあっていると、今まで気絶していたリーがゆっくりと身体を起こす。

 

「く……くそ……何故私が……貴様等なんぞに……何故だ……何故負けた……」

 

未だに彼等に負けたという現実を信じきれないリー。

それもそのはず、ただひたすらに父と母の無念を晴らすべく修行を続けてきたのだ。その傍ら会社経営も行い、利用できるものはなんでもした。

ここで負けるということはーーーーそれまで自分が積み上げてきた修練を、努力を、思いを、全て否定されるのと同じことだ。絶対に認めるわけにはいかなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーそれがわからないからお前は負けたのだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

屋上に響いた謎の男の声。ヘリポートの階段の方を見ると黒いスーツを着、長髪を後ろで一本に束ねた男性がそこに立っていた。その出で立ちや放つオーラから只者ではないことがわかる。

 

「……と、父さ……いや、会長……!?何故ここに!?」

 

「大事をしでかしおって。この馬鹿息子めが」

 

そう。彼はリーの父親であり、リオングループの会長を務める雷王龍(レイ・ワンロン)その人である。

リーは父の姿に気付くとフラフラと立ち上がる。

 

「お前は憎しみだけを糧に修行を続けてきた。憎しみを持ち、自らのためだけに振るう拳では決して強くなることは出来ぬ。それを理解できないからこそ、お前は彼等に負けたのだ。

彼等は常に誰かのために強く有り続けた。それがお前との決定的な差だ」

 

「……!!」

 

リーの脳裏に少年時代の思い出が蘇る。

それは優しい父と母との思い出。リーはあの頃純粋な少年だった。

かつて抱いていた思い。それは父のように強くなりたい、母を守れるように強くなりたいというーーーー"誰かのために強くありたい"という願いだけだった。

だが今の自分はどうだ。もはやあの頃のような思いは微塵も残っていない。あるのは父と母を破滅へと追いやった真龍寺誠への憎しみだけだった。

 

「だが、それだけを……!それだけを頼りに僕は生きてきた……!父さん……ならば僕はどうすれば……!」

 

「…………リーよ、やり直そう。お前は若い。今ならまだ間に合う。死んだ母さんだってお前にこんなことはしてほしくないはずだ」

 

「……く……くうぅ……!!」

 

「すまなかった、息子よ。お前がこうなってしまったのは私にも責任がある。お前が苦しんでいるのに私は父として何もしてやれなかった。……本当にすまなかった」

 

「……そんな……!父さんは……父さんは何も悪くない……!」

 

リーは歯を食い縛り、涙を流した。

かつての純粋な、あの頃の思いをわずかだが取り戻したリーは様々な感情が混ざりあったもので胸がいっぱいになってしまっていた。

我が子を優しく抱き締めたレイはしばらくして龍馬達に歩み寄ってくる。

 

「斎藤龍馬君。それに真龍寺レナさん。そしてお仲間の皆さん。この度はうちの息子が大変ご迷惑をお掛け致しました。今回の騒動、我等リオングループが責任を持って後始末をさせていただきます。謝罪の一環としてあなた方が望む物、我等に出来ることであれば何でもいたしましょう」

 

レイは深々と龍馬達に頭を下げ、謝罪する。

龍馬はそれを聞いて少し考えた後、要求した。

 

「……じゃあ街で暴れてる神鳥会を何とかしてくれ。それからレナがお世話になってる食堂のふくまるのおばちゃんと愛華姉ちゃんにきちんと頭下げて謝れよ。あとメチャクチャになった博多の復興支援。やってほしいのはこの三つだ」

 

「……無論、博多の復興にはリオングループが総力を上げてご協力させていただきます」

 

リーが神鳥会を手引きして与えた街への損害は全てレイが責任を持って支援活動を行うことになった。

そしてレイからは「息子は本国へ送り返し、きっちりと厳しく再教育するのでどうか今回の件は内密にしておいてほしい」と頼まれた。

レイはどうやら人格者のようだし、龍馬達もリーに一発ぶちかまして気が済んだので後の処罰はレイに任せることにした。

レイは龍馬達に「恩に着ります」と再び頭を下げて礼を言う。

 

「…………し、真龍寺レナ…………!」

 

「……何よ」

 

そんなレイの後ろから涙でグズグズになった顔でリーがレナに呼び掛ける。

 

「……僕のこの……情けない顔を目に焼き付けておけ……!!お前達に負けたこの負け犬の顔を……!!見てろ……僕は……僕は絶対に強くなってお前と真龍寺誠を負かしてやる……!!"努力"が"才能"を上回ることを証明してやるからな……!!」

 

「………私は逃げも隠れもしない。いつでも勝負、受けて立つよ」

 

二人は約束する。いつかの再戦を。

リーもこれでは終わらない。いくら父に諭されたとはいえ、そう簡単に真龍寺誠に対する思いは無くなりはしないのだ。

ならば、勝てるようにもっと努力を積んでやると。リーはそう誓う。

 

「さあ、リーよ。帰るぞ。やらなければいけないことは沢山ある。まずは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

レイがそこまで言った瞬間ーーーー辺りに一発の銃声が鳴り響いた。

レイの肩に銃弾による穴が穿たれ、そこから出血したレイは肩を押さえながらその場に倒れ込む。

 

「ぐうっ……!!」

 

「と……父さん!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……困りますねえ、レイさん。余計なことをされては」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

声のした方向を見るとそこにいたのは黒いスーツを着た男達。

部下であろう男が一人と……恐らくはそれを率いている人間であろう先頭の男。

 

「お前は……フェイ!何故ここに!?いや、それよりも何故父を撃った!?」

 

「フッ、リーさん。あなたのお父さんは邪魔なんですよ。それに……あなたには"博多にマフィアを手引きする悪役"でいてもらわなくては困る」

 

フェイと呼ばれた男はリー達に銃を突きつけたまま言う。

 

「あいつは……何者だ……?」

 

「一体何でリーのお父さんを撃ったの……!?」

 

「な……なんだかヤバそうな雰囲気……!」

 

「なんだテメーは!いきなり出てきて拳銃(チャカ)ぶっぱなしやがって!!」

 

状況が飲み込めないレナ達。その中で怒りに震える龍馬はルナ・アームを装着し、火炎弾を放とうとする。

 

「おおっと。やめておきたまえ。こちらには人質がいるんでね」

 

フェイがパチンと指を鳴らすと後ろからさらに黒いスーツを着た男達が複数。その手には例外なく銃が握られており、さらにそのうちの一人は女性の頭に銃を突きつけている。

 

「……リンファ!」

 

「社長……!!」

 

「フフ、君の大事な秘書なのだろう?逆らえば彼女の頭に穴が開くことになる」

 

「クッ……!」

 

龍馬は燃え盛るルナ・アームをフェイと呼ばれた男に向けたまま、火炎弾の発射をためらうしかなかった。

相手は複数。あの男を倒した瞬間、容赦なくリンファの頭を銃弾が貫くだろう。

 

「や……やめろ龍馬……!奴は……僕より冷酷な男だ……!やると言ったら必ずやる……!」

 

「……チッ!あいつは一体誰なんだよ……!?」

 

「奴は……リチャード・フェイ……神鳥会のボスだ……!」

 

リチャード・フェイ。アメリカ系中国人の男で神鳥会を率いる男。リーの取引の相手だという。

 

「リーさん。先ほども言いましたがあなたには私達を手引きしていただく役目を担って頂きたい」

 

「……フェイ、あんたの目的はなんだ……?」

 

「……フッ、まあいいでしょう。私の目的……それは異世界の技術と資源です。まるで映画のようなファンタジー世界と繋がっている日本。それを私達が掌握し、異世界のものを独占する。それこそが我が組織の狙いです。

今や異世界に眠る数々の技術や資源を世界中が血眼になって求めている。アメリカや中国だけではない。ロシアやヨーロッパ諸国も喉から手が出るほど欲しいはずだ。日本進出はその計画の第一歩なのですよ」

 

ファンタジーの世界に存在する魔法や魔力を込めた様々なマジックアイテムを作る技術。それらは裏社会の組織だけではなく、各国の政府や軍隊も求めているという。

さらにこちらの世界には存在しない特殊な鉱石は新たな軍事開発の足掛かりと成りうるのだとフェイは語る。

 

「さて……お喋りがすぎたようだ。あなたの父親と……斎藤龍馬。そして周りの鬱陶しいハエども。お前達は邪魔な存在だ。消えてもらおう」

 

フェイが引き金に指をかける寸前、ブラッドがカーテンウォールを伸ばそうとした。だがもはやブラッドも満身創痍で動きはかなり鈍く、フェイがそちらに狙いをつける方が遥かに早かった。

続けざま響く二発の銃声。ブラッドは左肩と腹部に被弾してしまう。

 

「ぐあっ……!!」

 

「ぶ、ブラッドぉっ!!」

 

「動くな!!おかしな真似をすれば次は女の頭を撃ち抜くぞ!!」

 

フェイが龍馬達に狙いをつけ直す背後で配下の男がリンファの頭により強く銃口を突きつける。

リンファの顔は命の恐怖に怯え、カタカタと身体を震わせている。が、龍馬達にはどうすることもできない。

"万事休す"ーーーーそんな言葉が脳裏に浮かぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおおおおぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

轟音と叫び声。頭上に走る一筋の炎。響く複数の銃声。

龍馬達が上を見上げると……謎のパワードスーツを着たブラッドと同じ顔の人物が。

 

「アルファ……いや、ジーンか!?」

 

「アルファ!?まさかあいつは……!!」

 

「龍馬、お前の想像通りだ。あいつはあのロボットの正体……そして私が探していたNo.B7A01-αだ……!だがあいつはさっきの戦闘で死んだはず……!」

 

ジーンは上空からフェイ達に向けてどこかで拾ったであろう、最初に装備していたものとは別の拳銃を連射する。フェイは慌ててその場から離れ、ジーンの放った銃弾がフェイの配下の男達の頭を貫き、次々に絶命させていく。

リンファを拘束していた男も頭に被弾して即死し、その瞬間に彼女は地面に倒れた。

 

「……行け!リー!彼女を助けろ!」

 

「……うおおぉぉ!!」

 

龍馬の合図と共にリーが走り出し、倒れたリンファを抱き抱えて安全な場所に避難する。

さらに龍馬とレナが倒れたレイを引き起こしてラグーンと共に物陰へと運んだ。

ジーンは地面に降り立ち、弾薬の切れた銃を捨てるとチェーンブレードを装備してフェイへと突進する。

 

「クソッ!出来損ないの分際で!」

 

フェイがジーンに向けて銃を放つ。ジーンは身体のあちこちに被弾し、青色の人工血液を噴き出しながらもその勢いを止めない。

そしてーーーー彼のチェーンブレードがフェイの腹部を貫いた。

 

「がはっ……!ば、馬鹿な……!こんな……こんなところで……!」

 

「……お前の……ような……ヤツを……生かして……置く……もの……か……ぐふっ……!」

 

ジーンは口から青色の血を吐き出す。

彼はサイボーグ化しているとはいえ、半分は生身の身体である。これだけのダメージを受ければただでは済まないはずだ。

さらにジーンはブースターのエンジンを作動させ、離陸しようとする。

 

「ジーン……!?一体何をする気だ!?」

 

「……ブラッド。今度こそ……お別れだ。こいつは私が地獄に連れていく。お前は……生きろ。私と……兄弟達の分まで……」

 

「おい、馬鹿な真似はやめろ!!せっかく息を吹き返したというのに……!!」

 

「……私は……機械に生かされている身体だ。どのみち長くは生きられん……最期くらい……誰かの役に立って死なせてくれ……さらばだ、ブラッド。……ありがとう」

 

ジーンはさらにブースターを加速させるとフェイを貫いたまま博多湾の上空へと飛び去ってしまう。

 

「ジーン……!!ジーンんんんんっーーーー!!!!」

 

ブラッドの叫びはブースターの音にかき消されーーーー彼に届いたかどうかはわからない。

だがブラッドの表情はどことなく穏やかであった。

 

「ぐ……ぐ……貴……様……出来損ない風情が……」

 

「……リチャード・フェイ。お前なら知っているだろう。私の"動力源"を」

 

「ま……まさ……か……」

 

「私の動力源は"小型原子炉"……そうだ。私はこれをメルトダウンさせる。お前は……私と地獄に落ちるのが相応しい」

 

「お……の……れ……おの……れぇぇぇ……!!!!」

 

ジーンの身体から発せられる熱が徐々に高くなっていく。

 

 

 

 

 

そしてーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(さらばだ、我が最愛の兄弟(とも)よ)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジーンがそっと目を閉じた瞬間ーーーー博多湾の上空で大爆発が起きたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。暴動は鎮圧され、博多の街は復興に向けて活動が進んでいた。

今回の一件は神鳥会単独の計画によるものと警察から発表があり、リオングループとの関連性は触れられなかった。

奇跡的にそれほど深い傷を負わなかったレイは龍馬との約束通り、リオングループより博多の街への復興支援を全面的に行うと傷付いた身体にも関わらず記者会見で発表した。

また、息子共々ふくまるへ出向いておばちゃんと愛華に謝罪し、多額の謝礼金を置いていったのである。

ブラッドはE.V.S.O.によって治療を受けたが、驚異的な回復力でわずか数日で何事もなかったかのように回復した。

そしてブラッドの退院の翌日。丁度この日は福岡市東区箱崎にある筥崎宮(はこざきぐう)にて放生会(ほうじょうや)と呼ばれる祭りの最終日だったため、龍馬はブラッド達を連れて祭りに参加していた。

 

「ブラッド、浴衣似合ってるよ」

 

「……あまりこういうのには慣れていないのだが」

 

「今から慣れていけばいいさ」

 

ブラッドは龍馬とレナの薦めで青色の浴衣を着ていた。

ラグーンはケチャップがたっぷりついたフランクフルトをかじっているせいか口周りがケチャップまみれになっていてレナがそれを見て笑う。

後からやってきたディレットと勇斗、千春とも合流し、七人で祭りを楽しむ。

どうやらルビィとルミナも来ているようだが、いつものように涼子や龍一郎と一緒に別行動を取っているらしい。

まだ残暑が残る9月の中旬。おそらく今年の夏の思い出はこれが最後になるだろう。

仲間達と過ごす一夏の時。祭りを堪能したあとはブラッドのマンションに全員でお邪魔して話に花を咲かせた。

そして仲間と談義する楽しい一時は夜が更けて最後の一人が寝静まるまで続いたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一週間後、ブラッドは黒いスーツに身を包んでとある霊園の一角に立っていた。

手に持った花束を墓に添える。墓標にはこう刻まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

"Gene R.I.P.(ジーン、安らかに眠れ)"と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブラッドが花束を添えてしばらくすると遠くからバイクのエンジン音が聞こえてきた。

エンジン音が止まり、足音が近づいてくる。ブラッドが顔を上げると黒いスーツを着たレナと学生服を着た龍馬が花束を持って立っている。

 

「ブラッド見ーっけ」

 

「ブラッド、やっぱりいたんだな」

 

「ああ。大事な肉親が……ゆっくりと眠れるようにな」

 

わずかに残ったジーンの身に付けていた装甲の破片。それを遺骨代わりにブラッドはこの地に埋葬したのである。

龍馬達も持ってきた花を添えると手を合わせて祈りを捧げた。さらに後からやってきた来客が二人。それはレイと仁であった。

 

「龍馬君。それに皆もやはりここにいたか」

 

「よう龍馬。お前、相当デカいこと成し遂げたみたいだな。レイさんから話は聞いたぜ」

 

レイはたまたま仁と出会う機会があり、そのまま共にここに着たのだという。

 

「ああ、そうだ。お前ら、あいつが寂しがってたぞ?」

 

仁が車の方を指差す。すると車の後部座席からラグーンが飛び出してきた。どうやら仁達についてきたようだ。

ラグーンは走り、真っ先にブラッドに飛び付く。

 

「ブラッドったら急にいなくなるんだもん!心配しちゃったよ!」

 

「お……おい、ラグーン……」

 

結局あの戦いを最後まで戦った四人が集合した。

その後、レイと仁からその後の話が語られる。

リーはあの後リンファと共に中国へ帰り、一から己を鍛え直すべく修行に励んでいるとのこと。

レイももう息子が暴走する心配はないだろうと述べた。リンファという"守るべき存在"のために強くなるとリーも言っていたそうだ。

仁は襲撃を受けたあの日から組の立て直しに追われているようだが、龍馬から事情を聞いた時、多忙な身の傍らこうやってやってきたのだ。神鳥会のトップを、命を賭して倒した"恩人"を弔うために。

 

「ジーンっていったか?そいつが(タマ)ぁ張ってお前らやレイさんを守ったからこそうちの組も存続出来たんだ。

今、神鳥会は組織のトップを失ってガタガタだ。潰れるのも時間の問題だろうな」

 

「うむ。奴等が我等リオングループや龍馬君達に報復を仕掛けることもないだろう。それどころではないはずだ」

 

レイも仁も花を添えてジーンの墓に線香を上げて手を合わせる。

しばしの黙祷ののち、彼等は立ち上がる。

 

「じゃあ、俺は組の仕事があるから帰るぜ。レイさん、あんたもいいか?」

 

「ああ。私も仕事が山ほどあるからな」

 

リオングループはあの後日本からの撤退を発表した。ヤフオクドーム前のチャイナタウン・モールの建設計画は白紙に戻り、あの場所は手つかずの更地になったそうだ。

レイはその後始末の仕事に今追われているらしい。

 

「ブラッド、俺はレナをバイクに乗せて帰るけどお前はどうすんだ?」

 

「僕は……」

 

「乗れよ、ブラッド。どのみちお前んとこのクモヤローも送ってかなきゃならないんだ。一緒の方がいいだろ」

 

仁は車に乗るようにブラッドに促す。

結局ブラッドも仁の車に乗ることになり、家路を共にすることになった。

龍馬とレナはバイクに跨がってエンジンをかけ、仁も車を準備する。

ブラッドはジーンの墓をしばらく見つめると、一言だけ呟いて歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ありがとう、兄弟(とも)よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして龍馬、レナ、ブラッド、ラグーンによる四人の戦いは幕を閉じた。

だが彼等の人生の旅路はまだまだ続く。

おそらく彼等の人生にはそれぞれの困難が待ち受けているだろう。

だが、彼等はそれでも前に進むのだ。生きている限り。生き続ける限り。明日へと、未来へと向かって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それが、自分達を守って死んだ戦友(とも)に対する最大の手向けなのだから。

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