アナザー・ディメンジョン -異界交流記-   作:誠龍

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第9話 天神で遊ぼう!(前編)

始業式の翌日から授業が本格的に始まる。龍馬達は普通科なので科目は基本的に1年の頃とあまり変わらない。ディレットのいる異界人留学生のクラスは主にこの世界の様々な事を学びつつ、道徳や倫理を中心に授業が進んでいき、ある程度授業が進めばそこに普通科の授業も徐々に入ってくるというシステムだ。

四時間目の授業が終わり、昼休みに入ると龍馬と勇斗とディレットの三人は屋上に移動して昼食を取る。三人はそれぞれ持参した弁当を開けて食べ始める。

 

「ディレット、初授業はどうだった?」

 

「この世界のこととか倫理観とか国とか宗教とか色々教わったわ。向こうの世界じゃ学べないことが多くて今からすごくワクワクしてる!」

 

「楽しいならよかったじゃん。俺等は眠くて眠くて……お、龍馬。お前の卵焼きひとつくれよ」

 

「しゃーねぇなぁ。ほらよ」

 

「サンキュー、お前のお母さんの卵焼きマジでうめえんだよなあ。あ、代わりに俺の唐揚げ一個食っていいぞ」

 

「んじゃもらうか」

 

龍馬はヒョイと勇斗の唐揚げをひとつつまんで食べる。

 

「なあ、龍馬。そういえばこないだの始業式の日、ゲーセン行き損ねたじゃん。ひと悶着あってさ」

 

「どっかの風紀委員サマが無茶したおかげでな」

 

「今週の土曜日に改めて行き直さねえ?ディレットもゲーセン見たいだろうしな」

 

「よくわからないけど、楽しいところなんだよね?行きたいなあ!」

 

「そうだな。土曜日なら次の日も休みだし、時間もあるしな。行くか」

 

そんな他愛ない会話をしつつ昼食を取っていた時、屋上に誰かが入ってきた。三人はドアの方向を見る。

入ってきたのは千春だった。

 

「……須崎か……なんだよ、今度は屋上で飯を食うなとでも言うつもりか?」

 

「違うわよ!……その……昨日のお礼……ちゃんと言えなかったから……昨日は……ごめん……それと……えっと……ありが……とう……」

 

千春は少しばつが悪そうに、視線を落としながらそう言った。そんな彼女を見たまま龍馬は口を開けて硬直していた。

 

「……おい、勇斗。明日地球が滅びるかもしんねえぞ。HDDとスマホのエロ画像は消しとけ」

 

「いや、地球が滅びるなら滅亡寸前に消しても意味がないだろ。落ち着けよ」

 

「し、失礼ね!!なによ!?私が謝ったり礼を言うのがそんなにおかしいわけ!?」

 

「罵倒しかされた記憶がないんでな」

 

彼女との記憶といえば何かしら罵倒されて反論、つまり口論にしか発展した記憶がない。

一度でも普通の会話なんてできたためしがないのだ。

そんな彼女が自分から謝罪してさらに礼を言うなど天変地異の前触れとしか思えないのも龍馬にとっては当たり前だった。

 

「ディレットさん……だったわよね。昨日は酷いこと言ってごめんなさい。私……言い過ぎたわ」

 

「ううん、いいの。気にしないで。あ、そうだ!」

 

ディレットは手をパンと軽く一回叩いて、何かを閃いたように言う。

 

「今週末"げーせん"ってとこに遊びに行くんだけど、スザキさんも一緒に来ない?」

 

「えっ?」

 

「はぁ!?」

 

「(モグモグ)」

 

ディレットの発言に驚く千春。そして何言ってんだこいつと言わんばかりの反応の龍馬。能天気に弁当を頬張っている勇斗。

 

「せっかくこうやって仲直りできたんだから、一緒に遊びに行ってみるのもいいかなって思って。それに、ほら、人数は多い方が楽しいじゃない?」

 

「げ、ゲーセンって……ゲームセンターのことでしょ?私は風紀委員よ!?そ、そんな不良の溜まり場に行けるわけないでしょ!」

 

千春は思った。ゲームセンターなど素行不良の生徒の溜まり場だ。風紀を正す存在である自分が風紀を乱すような人間のたむろするような場所に自分が行くなど本末転倒もいいところだと。

 

「えー、いいじゃない、行こうよスザキさんー。ねぇ、リョーマもハヤトもいいよね?」

 

「俺は……モグモグ……構わないぜ」

 

弁当のおかずを頬張りながら勇斗はそう答えた。彼は大して気にしていないらしい。

 

「いやいやいや!こいつ風紀委員だぞ!?ゲーセンなんか連れていってあることないこと生徒会やら教師に吹き込まれてみろ!俺らの学校生活終わ……!」

 

「いいよね?リョ・オ・マ?」

 

「うぐ……」

 

ディレットから何とも言えない気迫を感じる。これはアレか。RPGとかで"はい"と"いいえ"の選択肢が出るくせに"はい"を選ばない限りストーリーが進まない"選べるのに選べない選択肢"的なアレか。

 

「わ、わかったよ……」

 

「やったぁ!二人ともありがとう!」

 

しぶしぶ了解する龍馬。そして嬉しそうなディレット。

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!私はまだ行くなんて言ってないわよ!」

 

「スザキさん、食わず嫌いは良くないよ?私、"げーせん"がどんなとこかよくは知らないけど、楽しく遊べるとこなんでしょ?それとも危ない場所なの?」

 

「うんにゃ。一昔前は"暗い・狭い・怖い"の三拍子揃った場所だったらしいけど、今は全体的に明るいし、小学生同士や家族連れやカップルで遊べるようにはなってるぜ」

 

ディレットのその問いに弁当を食べ終えた勇斗が答える。

 

「ほら、ハヤトもこう言ってるし!一緒に行こうよ、スザキさん!」

 

「う……」

 

千春の両手を握り、キラキラした目で見つめてくるディレット。青く澄んだ無垢なその瞳が期待の眼差しをこちらへ絶え間なく向けている。これは……断りづらい。

 

「わ、わかったわよ……そこまで言うなら……」

 

「わあい!やった!」

 

まるで子供のようなまぶしい笑顔を見せるディレット。それを見て「やっぱりエルフは最高だぜ!」などとゴリラが言い出したので上履きで頭を一発ひっぱたいてやった。

ゴリラの頭は上履き程度ではびくともしないのか、何事もなかったかのようにポケットをゴソゴソしながらスマホを取り出す。

 

「なら、連絡先交換しとこうぜ。連絡出来なきゃ不便だろ。須崎、LINEのID教えてくれ」

 

このゴリラ適応力早すぎないか。そう思った龍馬であった。

 

「う、うん」

 

素直にスマホを取り出す千春。続いてディレットもスマホを取り出し、龍馬もしぶしぶ自身のスマホを取り出す。

四人はそれぞれ電話番号とLINEのIDを交換した。

 

「これでよし、と。しかし、いちいち一人一人連絡するのは面倒だから俺等のグループ作ろうぜ」

 

勇斗の提案でグループを作成した。これで一人が発したメッセージが全員に伝わる。

 

「じゃあ、今週の土曜日に天神の大画面前に集合な!時間は追ってLINEで知らせるわ」

 

いつも思うのだが、勇斗は皆をまとめるのが上手い。

いかつい見た目に反して温厚で寛容な性格なため、自然とそうなるのも不思議ではなかった。

ただ、ゴリラ面のために女子からの人気は芳しくないが。

 

「……龍馬、お前今何かすごい失礼な事考えなかったか?」

 

「何を言ってるんでしょうね、このウンチーコングは」

 

「ウ ン チ ー コ ン グ

にどとまちがえるなくそが」

 

「ノリ良すぎて草」

 

「とにかく、これであとは連絡を待つだけでいいのよね?土曜日が楽しみだなぁ」

 

ディレットは両手でiスプレーを握り締めて遠足を待ちわびる小学生のような顔で笑っている。そんな顔を見ていると千春も自然と顔が緩んでしまう。

 

「お?須崎のデレ期きた?」

 

「~ッッ!!うっさい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ……」

 

時刻は夜9時を回った頃だ。千春は自室の机に向かって座り、勉強に励んでいる。

いや、励んでいたはずなのだ。

しかし今日の出来事がどうしても頭から離れず、勉強が手につかない。ノートの側に置いてあるスマホがどうも気になってしまう。

 

「勢いに押されて約束しちゃったけど……どうしよう……」

 

約束してしまった以上、LINEの通知が気になる。"追って集合時間を知らせる"と勇斗が言っていたが、通知はまだ来ない。

 

 

「ふぅ……」

 

さっきからため息ばかり出ている。頭がモヤモヤして集中できない。

 

「(私、もしかして……いや、そんなわけないわ!)」

 

認めたくない。周りから白い目で見られようと風紀委員一筋でやってきた自分が、

 

"誰かと遊びに行くのを楽しみにしている"などとは。

 

風紀委員である自分がゲームセンターなどに遊びに行くなど、非行に走る生徒と同レベルではないか。そんな生徒を正すために自分は風紀委員になったというのに。

風紀委員という立場上、異性からも同性からも鬱陶しがられるということは覚悟していた。

だが、規律を乱す者がいれば集団のそこにほころびが生まれ、そしてほころびは大きな亀裂となり、次第に過ちを犯す者が増えて罪に抵抗がなくなっていく。

そして最後は"取り返しのつかない事"になって本人だけでなく、周りも不幸に巻き込まれてしまうのだ。

 

「(だから私は風紀委員になったんだ……私達の学校で罪を犯す人間や不幸になる人間を出したくない……)」

 

ぐっと拳を握り締める千春。と、その時LINEの通知音が鳴る。千春はあわててスマホを確認する。

 

 

城島

『時間は午前11時でいいか?集合場所は昼に言った通り、大画面前な』

 

斎藤

『オッケー』

 

ディレット

『わかつた』

 

城島

『つが大文字wwww』

 

斎藤

『慣れてないからしゃーないw』

 

ディレット

『まだうまくうてない』

 

城島

『須崎もオッケーか?』

 

『うん』

 

城島

『遅れんなよー。遅れたら風紀委員の恥だぞ(´・ω・`)』

 

『遅れないわよ』

 

城島

『了解、じゃーな』

 

斎藤

『ういーす』

 

ディレット

『あやす』

 

城島

『あやす?』

 

斎藤

『おやすみだってさ』

 

城島

『なるほどw』

 

 

城島がスタンプを送信しました

 

 

斎藤がスタンプを送信しました

 

 

 

 

「……ふぅ」

 

千春はスマホを置いた。もうここまで来てしまっては仕方がない。腹を決めて行くしかない。

 

「(……そうよ、これは遊びじゃないわ。監視、そう、監視よ!あいつらが非行に走らないかどうか監視するために行くの!何も遊びに行くわけじゃないわ!)」

 

千春は自分にそう言い聞かせ、無理矢理納得させた。そして机を片付けて眠りに着いた。

 

 

 

 

週末ーー西鉄福岡(天神)駅。

"大画面前"の愛称で知られる大きなモニターの前。西鉄福岡駅中央口の階段を降りると見えてくるモニターで、天神での待ち合わせによく使われるスポットだ。

時刻は午前10時45分。待ち合わせの時間まではまだ15分ある。

5分後、勇斗がやってきた。

 

「よう、須崎。やっぱり早いな」

 

「当たり前でしょ?風紀委員なめないでよね」

 

「流石だな」

 

待ち合わせの時間の5分前、龍馬とディレットがやってきた。

 

「遅い!」

 

「んだよ、まだ5分前だろ」

 

「ギリギリじゃないの!集合するときは10分前行動が基本でしょ!」

 

「はいはい、わかったよ」

 

「まあまあ、スザキさん……。それで、ハヤト?"げーせん"ってどこなの?」

 

「おう、こっちだ。すぐそこだよ」

 

先頭を行く勇斗に続く三人。

目的のゲームセンターは天神駅北口を抜けてサザン通りへ。

しばらく歩いてあるゲームセンターに入る。

 

"タイトーステーション福岡天神店"

 

それがこのゲームセンターの名前だ。

 

「わあ……!すごい……!」

 

入口から入ると大小様々なUFOキャッチャーが置いてある。大きな音楽に見たこともない様々な機械。元来好奇心の強い性格であるディレットにとってこの場所はワクワクせずにはいられなかった。

 

「へえ、中は意外に明るいのね」

 

ゲームセンターに行ったことがない千春は中の明るさに少し驚いた。もう少し暗いものだと思ってたが。

 

「そんな暗いゲーセンなんて昭和の時代ぐらいだろ。ゲーセンだって客商売なんだからイメージアップをずっと図ってんだよ。さ、とりあえずUFOキャッチャーでもするか?」

 

近くにあったUFOキャッチャーの一台に近寄る。

 

「ねえねえリョーマ、これは何をする機械なの?」

 

「これはUFOキャッチャーっていって金を入れて中にある景品をアームで掴んで取るんだ。ただ、これがなかなか取れないんだがな」

 

とりあえず龍馬は目の前にあるお菓子の詰め合わせが入ったUFOキャッチャーに100円を入れてプレイする。が、取れない。

 

「ああ!掴めたのに!」

 

「アームのパワーの設定とかあるからそれも考えて掴まないと簡単には取れないのさ」

 

二人が和気あいあいとしていた時、千春は別の台に目が行った。

 

「あ……これ……」

 

中にはひよこを模した"ぴよっち"というキャラのぬいぐるみ。実はひそかに千春が好きなキャラクターグッズなのだ。

これは店では見たことがない。どうやら景品限定らしい。

 

「なんだ?そのぴよっちのぬいぐるみが欲しいのか?」

 

台の中身を見つめる千春に気が付いた勇斗が近付いてきた。

 

「……べっ、別に興味ないわよ!こんな子供だましなキャラクター……!」

 

「嘘つけ。顔に思いっきり好きだと書いてあるぞ。別に女なんだから可愛い物が好きでもおかしなことはないだろ」

 

「うっさいわね!あんたに関係ないでしょ!」

 

「おお、こわいこわい」

 

そう言いつつ勇斗はずいと前に出て100円を入れてアームを動かす。アームは綺麗にぴよっちの胴体を掴んで移動し、そのまま景品の取り出し口へと運ばれていった。

勇斗は取り出し口に落ちてきたぴよっちのぬいぐるみを掴むと、千春に差し出した。

 

「ほら」

 

「……えっ?」

 

「やるよ。欲しかったんだろ?」

 

「……べ、別に欲しくなんか……」

 

「人からの好意は素直に受け取っとくもんだぜ?」

 

千春は困ったように視線を背け、しばらく悩んでいたが最終的にはそのぬいぐるみを受け取った。

 

「あ……ありがと……」

 

「そのままじゃ持ちにくいだろ。ほら」

 

勇斗は近くに下げられていた景品用の持ち帰り袋を千春に渡す。

 

「おっ、さすが勇斗だな。こいつUFOキャッチャーうめーんだよ」

 

「ハヤトー、リョーマったらなかなかお菓子取れないのよ」

 

「このUFOキャッチャーの得意な勇斗にお任せあれ」

 

そう言って龍馬とディレットが先程から張り付いているお菓子の景品が入ったUFOキャッチャーに向かう勇斗。その姿を後ろから見つめる千春の顔はどこか嬉しそうであった。

 

 

 

しばらくUFOキャッチャーを楽しんだあとはビデオゲームコーナーへ移動した。

 

「よし、勇斗。久々に格ゲーで対戦しようぜ」

 

「いいぜ」

 

格闘ゲームで対戦する龍馬と勇斗。龍馬の側にはディレットが付き、勇斗の側には千春が付いて対戦を見守っている。

 

ガチャガチャ

 

「このっ!」

 

ガチャガチャ

 

「おっ、やるな!」

 

ガチャ タタタン

 

「まだまだ!」

 

ガチャガチャガチャガチャ

 

 

K.O.

 

 

「ああー、くっそ!」

 

龍馬はあと少しというところで勇斗に敗北した。

 

「ハヤト、強いんだね」

 

「そうだなぁ。昔からこいつとはずっとやってるけどたまにしか勝てたためしがないんだ。いいとこまではいくんだけどなぁ」

 

反対側の台では勇斗がガッツポーズを決めていた。

 

「おっし!勝った!しかし今回はちょっと危なかったな」

 

「ふうん、あんたってこういうゲーム強いのね」

 

「まあな。普段から家庭用で鍛えてるしな」

 

「その情熱を勉強や普段の生活態度にも向けてくれたらねぇ……」

 

「それは言わないお約束だぜ」

 

 

 

 

 

「何これ?」

 

「クイズゲーム。こういうのお前得意そうだからな」

 

勇斗が選んだゲーム機はクイズで勝負をするアーケードゲームだ。

隣の席には龍馬とディレットが座り、その右隣に勇斗と千春が座る。

カードと100円を入れてプレイする。クイズバトルの画面になると、まずアニメやゲームに関するクイズが出された。

 

"『起動戦機ダンガル 復讐の牙』において主人公アポロが搭乗した機体を全てカタカナで答えよ"

 

「スペイザーってあのロボットのやつ……?こんなの私わからないわよ」

 

「ほいほい。こんなの簡単だぜ。"ニューダンガル"っと……」

 

"正解"

 

「へぇ、やるじゃない」

 

「こう見えてダンガルオタクなんでね」

 

次の問題が表示される。

 

"幕末の時代に活躍した組織『新撰組』。その新撰組の前身となった組織名をひらがなで答えよ"

 

「げっ、こんなのわかんねぇぞ……」

 

「私にやらせて。こんなの簡単よ。"みぶろうし"と……」

 

"正解"

 

「すげ!さすが委員長!」

 

「誰が委員長よ。委員長じゃなくて風紀委員よ。"壬生浪士"って知らないの?授業で習わなかった?」

 

「記憶にありません」

 

「しっかり勉強しときなさいよ!」

 

その時隣では龍馬が頭を悩ませながらクイズに挑戦している。ディレットは楽しそうにゲーム画面を見つめている。

 

「あああ……また不正解か」

 

「残念だったね」

 

「次の問題は、と……」

 

 

 

その後、様々なゲームをプレイして四人はゲームセンターを満喫した。

ゾンビ系ガンシューティングを敢えて素人の二人にやらせて見守ったり、勇斗がパンチングマシーンで300kgを叩き出したり、音楽ゲームでノリノリになったり、メダルゲームで大量に稼いだりと様々なゲームを楽しんだ。

気付けば時間は午後1時を回っていた。

 

「もうこんな時間か。龍馬、昼飯どこにする?」

 

「この近くだと一蘭とかいんじゃね?」

 

「一蘭か。四人なら込んでなければ個室使えるな。ディレットと千春はラーメンでいいか」

 

「わあ!らーめん?私、らーめん大好き!」

 

「私も構わないわ。ただ、一蘭って行ったことないのよね……」

 

「マジかよ!?」

 

「普段外食しないんだから仕方ないじゃない……」

 

なんとなく想像してはいたが、やはり千春は勉強に重きを置きすぎてあまり外出をしない、いわゆるというか身も蓋もない言い方をすれば“世間知らず"な所がある。それ故に偏見を持ちがちだ。

ならば社会勉強だ。学生とラーメンは切っても切れない存在だと(勝手に)考えている龍馬は千春を連れて一蘭へ行くことを決めたのである。

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