アナザー・ディメンジョン -異界交流記-   作:誠龍

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第86話 沖縄修学旅行・二日目(後編)

シーサーの置物が幻のお宝であり、それを追い求めていた男性と高級腕時計を交換したディレット。

「早速質屋で金に変えようぜ」と急かす龍馬と勇斗にそれを冷ややかな目で見つめる千春。

そもそもお宝の対価として合意の上で貰ったのだからそんな目で睨まれる覚えはないのだが。

時計をそのまま持ってても質屋を目指して歩いているとディレットの耳が何かの音を捉える。

 

「……?」

 

よく耳を澄ますと聞こえてくるのは……何やら怒号、そして男性の悲鳴だ。

 

「誰か……誰か襲われてるわ!リョーマ、行きましょう!」

 

慌てて声の聞こえた路地裏に駆け込む四人。そこで目にしたのは……チンピラ四人に囲まれて暴行を受けている男性の姿だった。

 

「オラッ!テメェ、この野郎!!」

 

「金が用意できねぇならテメェの内臓を売っ飛ばしてもいいんだぜ!?」

 

男性は明らかにチンピラヤクザといった四人に殴る蹴るの暴行を受け、息も絶え絶えだ。

このような現場を見て大人しく引き下がる龍馬と勇斗ではない。

特に龍馬は以前の事件で武装したヤクザやマフィアとも多く拳を交えてきた。今さら三下のチンピラ風情に遅れを取るほどヤワではない。

 

「おい、チンピラども何をやってやがる!」

 

「寄ってたかって大の男が弱い者いじめとは感心しねぇなあ」

 

「なんだぁ?」

 

「ハッ!何かと思えばただのガキじゃねぇか!消えな!テメェらにゃ関係ねぇんだよ!」

 

やはりチンピラというのは威勢ばかりだ。ロクに実力の差も察知出来ないのだ、こいつらは。

まあいい。ならばわからせてやろう。こちらの実力を。

 

「俺はリンチしてるバカ野郎どもを見つけるとぶん殴らねえと気がすまねえタチでね。おたくらのような三下のチンピラ見てるとイライラするんだよ」

 

「そういうこった。痛い目に遭いたくなけりゃとっとと帰るんだな」

 

龍馬と勇斗は余裕の笑みを浮かべながらチンピラ達を挑発する。

多くの修羅場を潜り抜けてきた二人だ。このような雑魚(チンピラ)は恐るるに足りない。

 

「なんだとこのガキが!!」

 

「俺らに喧嘩を売ったこと、後悔させてやらぁ!!」

 

チンピラの男達は拳を振りかざして龍馬と勇斗に襲い掛かる。

 

だがーーーー

 

 

「おりゃあっ!!」

 

「どりゃっ!!」

 

パンチを屈んで避けてからの龍馬のアッパーカットが男の顎に直撃し、勇斗の背負い投げが相手の身体をコンクリートの地面に叩きつける。

龍馬は直後に飛び蹴りでもう一人を地面に大の字に倒し、そのまま馬乗りになって胸ぐらを掴み、顔面を何度も殴り付けた。残った一人は勇斗のラリアットで悲鳴を上げる間もなくK.O.だ。

四人のチンピラをほとんど一瞬で倒してしまった龍馬と勇斗の後ろで千春が男性を抱え起こし、ディレットがヒールをかけて回復させる。

 

「う、うう……」

 

「大丈夫ですか?」

 

「あ、ありがとう……君達は?」

 

男性はまだ痛む身体を押さえつつも、立ち上がる。

手ひどくやられたようだが、命に別状はなさそうだ。龍馬は自分達がたまたま通りかかった修学旅行中の学生であること、そこで見つけた男性を放っておけずに助けに入った事を説明した。

 

「そうか……ありがとう。助かったよ」

 

「一体何があったんですか?」

 

「ああ、実は……」

 

男性は説明する。

彼の名前は喜屋武剛(きゃんつよし)。本人曰く、"しがないサラリーマン"だそうだ。

会社にリストラされ、妻と病気がちな娘を養うために何とか金を工面しようとして闇金にまで手を出してしまったらしい。

最初は5万円だった借金が法外な利息でどんどん膨らんでいき、今では50万円という大金になってしまったそうだ。

 

「ひどい……!あんまりじゃない……!」

 

ディレットが怒りを露にする。それもそのはず、闇金というのは大抵は大なり小なりバックにヤクザが付いているかヤクザの末端の組織そのものがカタギの人間から利益を搾取する資金源となっている事が多い。

男性は下手に警察や弁護士へ駆け込めば家族に何かあるのではないかと恐怖して誰にも相談できなかったのだ。

 

「娘は身体が弱くて……でもこれじゃ病院や薬どころか、毎日の食べ物にすら困る始末で……せめて借金が無ければ……」

 

「……」

 

ディレットはポケットに手を入れる。そこにはあの骨董品コレクターの男性からもらった腕時計が。

確か売れば100万円以上はくだらない高級品だ。ディレットは時計を握りしめると喜屋武の手の上にその時計を置く。

 

「キャンさん。これを」

 

「これは……?」

 

「それを売ってお金に変えてください。そうすれば借金も返せるし、娘さんの治療費にもなります」

 

「そんな!こんな高価なものをいただくなんて……!」

 

「いいんです。どうせもらいものだから。ね?リョーマ」

 

「……あーあ、お前も大概お人好しだな。まあ、それで子供一人の命が救えるんならな」

 

正直言うと少し残念ではあったが、仕方あるまい。

それに落ち着いて考えてみれば自分達のような学生がこんな高級品を質屋に持っていけばあらぬ疑いをかけられて後々面倒なことになりそうだ。

触らぬ神に祟りなし。君子危うきに近寄らず。高いリスクを被るくらいならこの方がいい。……そのあたりがわかってなさそうな勇斗はつまらなさそうにしているが。

 

「あ、ありがとうございます!ありがとうございます!これで私達一家は救われます!見知らぬ学生さん達……本当にありがとうございます!」

 

男性は何度も何度も頭を下げて四人にお礼を言うとすぐさま借金を返すために時計を持って質屋へと向かった。

男性が去った後、千春が苦笑しながら龍馬の肩を叩く。

 

「ディレットに斎藤、いいことしたじゃない」

 

「どっかの鬼がずっと冷ややかな目で見てくるからな。あー、ようやく胸のつかえが取れたぜ」

 

「……誰が鬼ですって!?」

 

「い、いでででで!!耳を引っ張るな、耳を!!」

 

いつもの漫才が繰り広げられている後ろで何やら顔に手を当てて考え込んでいる勇斗。

そんな勇斗の神妙な面持ちに気付いてディレットが声をかける。

 

「ハヤト……どうしたの?」

 

「……嫌な予感がする。考えてもみろ。そんな法外な利息を被せてくるようなヤクザまがいの連中が50万円用意したところで素直に借用書を渡すと思うか?ああいうやつらは金になると踏めば理不尽な理由をつけてあの人にさらに首輪をかけかねないぞ」

 

勇斗の言うことは確かにもっともだ。

闇金のような連中は生かさず殺さず搾り取る、が信条のふざけた連中である。

もし喜屋武(きゃん)がいきなり大金を用意していけば、"お釣り"の金まで奪いかねない。もしそうなれば彼の家族は……最悪のシナリオを迎える可能性だってある。

 

「おい、須崎」

 

「何よ、今ちょっと取り込み中なんだけど」

 

相変わらず龍馬が千春に耳を引っ張られつつ悲鳴を上げている。

勇斗が割って入り、耳引っ張りの刑を中断させると彼は耳を押さえて痛がる龍馬を背に、千春に向かって真剣な目付きで言う。

 

「須崎。ちょいと危ないことになるかもしれねえ。お前はディレット連れて先にホテルに戻ってろ」

 

「え?ちょ、いや、何?訳がわからないんだけど」

 

「詳しい説明は後でディレットに聞け。……龍馬、行くぞ」

 

龍馬もわけがわからないといった感じで肩を竦めながら、いつも陽気な親友がいつになく真剣な顔で言うので後についていくことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほどね……有り得る話だ」

 

勇斗から道中話を聞いた龍馬は納得した。

確かにそれほどまでに法外な利子を取る輩は平気でそのようなことをしかねない。勇斗は龍馬を連れて先ほど質屋に向かった喜屋武を追い掛ける。

質屋の前で丁度店内へと入っていく喜屋武を見つけ、物陰から様子を伺った。

しばらくすると喜屋武は笑顔で店から出てきた。どうやらそれなりの値段にはなったらしい。足早にどこかへと去る喜屋武に気付かれないように龍馬達は尾行を続ける。

すると喜屋武は何やら怪しげな雑居ビルの内部へ足を運んだ。二階にある事務所の窓には会社の名前が。

 

「"龍琉金融"……ここが喜屋武さんが金を借りてるところか?」

 

「なんかラーメン屋みたいな名前の金融会社だな」

 

二人はビルの階段を登り、事務所の入り口で聞き耳を立てる。

……喜屋武と事務所のチンピラ達の会話が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

新城(しんじょう)さん、お借りしていた50万円です。お確かめください」

 

「ほーう?あれだけ金に困ってた貧乏人がよく用意できたな?どれ……」

 

社長の新城は喜屋武の出した50万円を一枚一枚確認していく。

そして50枚目。確かに50万円キッチリある。偽札というわけでもなさそうだ。

 

「……確かに50万円受け取ったぜ」

 

「これで借金は全部ですよね?」

 

「ああ」

 

「それじゃ、借用書を……」

 

「いいや、まだだ」

 

「えっ?」

 

確かに法外な利子を含んだ分すら払ったはず。だがしかし、新城は借用書を渡すことを拒んだ。

この時、彼の中にはあまりにも身勝手で非情な考えが浮かんでいたのだ。

 

「喜屋武さん、あんた……支払いが滞って何日立つ?催促の度に頭下げてよぉ……その間待ってやった迷惑料と延滞金……追加で50万円払ってもらおうか」

 

「そ、そんな!!利息や延滞金も含んだ50万円だってあなたは……!!」

 

「あぁ!?舐めてんのかテメェ!?」

 

新城が声を荒げながら椅子を蹴飛ばし、立ち上がる。そして喜屋武に迫り、更に声を大きくしながら脅しをかけた。

金がないはずの喜屋武がいきなり50万円もの大金を得たのには何かしら理由があると踏んだ新城はまだ金を持っているのではと察し、理不尽なまでの請求を行ったのだ。

こういうハイエナは無駄に金の臭いには敏感である。

 

「金がねぇなら内臓売るか!?あぁ!!」

 

「……!!」

 

喜屋武はチラリと出入口を見る。ご丁寧にドアに社員の男が寄りかかって逃げられないように封鎖までしている。

絶体絶命。そんな単語が喜屋武の脳裏をよぎった。

 

 

その瞬間ーーーー、

 

 

 

 

 

 

「オラァッ!!」

 

「邪魔するぜぇ!!」

 

勢いよくドアが蹴破られ、ドアに寄りかかっていた男は弾き飛ばされて机に頭を打ち付けて気絶してしまう。現れたのはもちろん龍馬と勇斗の二人だ。

 

「な、なんだぁ!?」

 

「き……君達は……!」

 

「やっぱり、こんなことだと思って後をつけて正解だったな!なあ、龍馬ぁ!?」

 

「ああ。修学旅行ついでに沖縄に貢献しようじゃねぇか……"ゴミ掃除のボランティア"でな!!」

 

二人は拳をバキボキと鳴らし、目の前にいる金に群がるハイエナどもを睨み付ける。

容赦などいらない。このような輩は……徹底的に叩きのめさねばまた新たな被害者を生むことになる。

 

「どこの組がカチコミかけたかと思えば……ガキ二人で何ができる!いいぜ、殺してやるよ!!」

 

新城と社員の男達は一斉に龍馬と勇斗に殴りかかる。

が、所詮は弱者しか相手に出来ぬ哀れなハイエナ。"龍"と"修羅"に勝てるはずもなく。

 

 

 

 

ーーーー数分後にはメチャメチャになった事務所に彼等は無様に這いつくばる結果となった。

 

 

 

 

「ひ……ひぃっ……!なんだ……こいつ……ら……!」

 

ボコボコになった新城は自らを見下ろす龍馬に恐怖を覚え、尻餅をついたまま動けなくなっていた。

まさに蛇、いや、龍に睨まれた蛙である。

 

「オラ、どうしたチンピラが。ガキ相手に負けて恥ずかしくねえのか」

 

龍馬は新城の胸ぐらを掴んで顔面に一発、拳を入れる。

 

「ぎゃはっ!」

 

「喜屋武さんの借用書をさっさとよこせよクソ野郎。そして二度とあの人に近づくな」

 

さらに龍馬はもう一発お見舞いする。

 

「ぐはっ!……わ、わかった!わかった!お、俺のデスクに置いてある……持ってけよ……」

 

「ついでにさっき受け取った50万も喜屋武さんに返せや。どうせ不正な契約なんだ。早く払った方が身のためだぞ」

 

「ひい!わ、わかったよ……そこにあるから持っていけよ……ちくしょう……」

 

龍馬が新城の胸ぐらを掴んでいる間に借用書と50万円の入った封筒を彼のデスクから見つけ、回収する。

勇斗は部屋の隅に避難していた喜屋武にその二つを渡した。

 

「はい、喜屋武さん。これだけあればしばらく大丈夫だろ?」

 

「君達……私なんかのために……どうしてそこまで……」

 

「俺達は修学旅行のついでに気に入らない連中をぶっ飛ばしにきただけです。な、龍馬」

 

「おう。人も救えて悪人も倒せて、いい観光になったぜ」

 

これで喜屋武とその家族はしばらく大丈夫だろう。

そんな感謝する喜屋武と一仕事終えた龍馬達の背後でゆっくりと起き上がった新城。彼は痛む腕を押さえながら怒りに満ちた表情で彼等を睨み付け、言い放つ。

 

「て、てめえらこんなことしてタダで済むと思うな……こっちはバックにヤクザが付いてんだぞ……泣く子も黙る"安座間一家"がお前らを殺しに行くからな……!」

 

「へえ、そうかい」

 

龍馬は軽く鼻で笑う。まったく、この手の輩は自分が勝てないとわかるとすぐ後ろ楯に頼ろうとする。それは福岡でも沖縄でも変わらないようだ。

龍馬はスマホを取り出すとある人物に電話をかける。

 

「よう、会長さん。今俺修学旅行で沖縄にいるんだけどそこでカタギ相手にアコギな商売してるケチな金融屋がいてさ……ああ……なんか"安座間一家"が後ろにいるとか……何とかしてもらえます?……え?金融屋の名前?新城とか言うヤツだけど……」

 

すると龍馬は無言で通話状態のスマホを新城に渡す。新城は怪訝な顔で龍馬のスマホを受けとると恐る恐る「もしもし」と呟く。

 

「"新城。久しぶりだなぁ"」

 

「な……!?まさか……黒谷さん……!?」

 

電話の相手は仁だった。偶然、新城もよく知っていた。

何せ安座間一家の組長と黒狼会の仁は偶然にも古い付き合いだったのだ。新城も何度か会ったことがある。

黒狼会は安座間一家よりも遥かに巨大な組織だ。そんな組織のトップとこんな年端もいかない学生が何故つるんでいるのか、新城は理解出来なかった。

電話をする新城の顔がみるみる青ざめていく。どうやら何か恐ろしいことを言われているようだが、ヤツにはいい薬だろう。

通話を終えると新城は真っ青な顔で龍馬にスマホを返し、ソファに力なく座り込んだ。

 

「……なんなんだよお前ら一体……金は持っていけ……二度とツラ見せんな……ちくしょう……」

 

そんな新城を尻目に龍馬達は取り返した金を手に悠々と事務所を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に何から何までありがとうございました。大したお礼は出来ませんが、せめてこれを……」

 

別れ際、喜屋武は龍馬にある物を渡す。それは赤い小さな布袋を紐で結んだお守りで中に何かが入っているようだった。

 

「これは……?」

 

「私が身に付けているお守りです。中には清めの(マース)が入っています。これくらいしか出来ませんが、是非受け取ってください」

 

龍馬は喜屋武が自分の手に乗せたお守りを見つめる。

美しい模様の描かれた赤い布。携帯のストラップより少し大きいくらいの大きさだ。

 

「いいんですか?」

 

「ええ。間違いなく、ご利益のあるお守りですよ。あなたがそれを証明してくれました」

 

「……わかりました。ありがたく受け取っておきます」

 

喜屋武のくれたお守りを握り締めると何やら不思議な力を感じる……ような気がする。

喜屋武は返しきれない程の恩を受けた目の前の少年に何度も礼を言う。

彼と彼の友人達のおかげで借金が無くなったどころか、多額の資金まで入手出来た。これでしばらくは家族を養えるし、娘の治療費もしばらくは安心だろう。本当に感謝してもしきれない。

龍馬は"いつも通り"弱いものいじめをしているクソ野郎をブッ飛ばしただけなのだが、結果的にこうしてまた人を救うことが出来たのだ。

喜屋武が去った後、龍馬は勇斗と共にホテルへの道を歩きながらお礼にもらったお守りを眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二日目の夜、眠りについた龍馬は不思議な夢を見た。

美しい海。緑の木々。真っ白な砂浜。龍馬は手付かずの自然が残る沖縄のどこかの海岸に立っていた。

辺りには誰もいない。龍馬は白い砂の上を海沿いに歩いていく。

しばらく歩くと彼は何かを見つけた。白い砂浜の遥か彼方に赤い小さな何かが見える。龍馬はそれに向かってただひたすらに歩く。

それは人間だった。龍馬に気付き、こちらを振り返る。

まるでハイビスカスの花のように赤い髪を持ち、鮮やかなエメラルド色のワンピースを着た少女が龍馬に向かって微笑んでいる。

 

 

けれど、その笑顔はどこか寂しそうでーー哀しそうでーー今にも消えてしまいそうなほど、儚げだった。

 

 

少女は哀しそうな微笑みを浮かべたまま、龍馬に手を伸ばす。彼女の手はまるで透き通るように白く、美しかった。

そんな少女の手を取ろうと龍馬も手を伸ばす。その瞬間ーーーー世界は白に包まれてーーーー海も、砂浜も、緑の木々も、空も、少女の姿もかき消えていき、世界の全てが真っ白に包まれた瞬間、龍馬の意識は暗く深い闇に飲まれて消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リョーマ、大丈夫?」

 

ホテルで朝食を取る龍馬達だが、龍馬がなんだかボンヤリしていたのでディレットは心配して声をかける。

 

「ん……なんか変な夢見た……気がする」

 

何か不思議な夢を見たのは覚えているが、どうしても夢の内容が思い出せない。夢の影響かは知らないが、どうも今朝は頭がボーッとして働かない。

今日の日程は午前中に沖縄本島最北端の地・辺戸岬(へどみさき)を見学し、帰り道で沖縄パイナップルを堪能できるナゴパイナップルパークを訪れて、その後はホテルに戻って自由時間となる。

 

「後でコーヒーでも飲めば目が覚めるよ。それよりリョーマ、今日はオキナワ最北端の場所へ行くんだって!楽しみだね!」

 

「ああ……うん……」

 

ディレットがウキウキしながら言うものの、依然として龍馬の頭はボンヤリして目覚めを拒否する。

朝食を取り終えた後に龍馬はロビーに向かい、ディレットに言われた通り自販機でコーヒーを買って飲む。

しばらくして少しは目が覚めてきたようでだんだんと意識がハッキリしてきた。

だが相変わらず夢の内容は思い出せない。

 

モヤモヤしたものを抱えたまま、龍馬は三日目の行事のバスへと乗り込むのだった。

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