主人公に憑依した男
最近は転生物が流行だとか。
まあありきたりな現代社会より法則も神話も自由自在な異世界の方が弄りやすいから仕方ないと言えば仕方ない気もするがもはや何番煎じと言ったところか。
さて、異世界転生には大きく分けると二つ。死んだ後肉体そのまま異世界に行くのと赤ん坊からの再スタートの二種類だ。転生前には神に会うパターンと会わないパターンもあるな。
んで、転移後の世界も様々だ。単純に主人公にとっても何も知らない世界だったりするもの、ゲームや漫画の世界に転生するもの。これは二次創作に使われるな。
この知ってる世界に転生だとやはり2パターン。憑依と非憑依。ゲームや漫画の原作に登場する存在に憑依するのと原作には登場しない存在になるのだ。
あ、後人間以外に転生するのもあるな。動物モンスターはもちろん無機物になるのもあるな。
因みに転生者は基本的にチートだ。狡いって意味じゃないぞ?いや、狡いとも言えるが。ようするに強いってことだ。まあ強い奴らがチートと呼ばれる時代だから最早強すぎる奴を指す言葉だけどな。
因みに強さの要因は神様にあってチートスキルと呼ばれる強すぎる力を与えられるか、赤子から鍛えてるから強くなりやすい、だ。そのままの場合はチートスキル貰わなくても現代知識で罠とか作ると経験値扱いになってレベルが上がる。
さて、何でこんな長ったらしく話しているかというと、転生しました。いや、マジで。
神様に会わず、赤ん坊から、原作ありの、憑依系。
転生した世界の名は『World end breaker』。直訳すると世界の終わりを破壊する、でいいのかね?何とも痛々しいタイトルだ。しかも主人公ですよ。
このゲームは所謂ファンタジー世界で戦うドラ○エみたいなもんだ。恋愛もある。ハーレムENDだって存在する。やったね!
──────まぁ、んなわけないがな。そりゃ前世じゃ彼女も居ないし童貞だったけど、家族は居たんだ。友達だって居たし、好きな人も。
数年も経てば落ち着いてきたが、幼い頃は前世を思い出し、幼い体は勝手に泣いた。おかげでよく泣く子と認識され村の大人達が皆過保護だ。
人は慣れるもので、今はだいぶ落ち着いた。新しい家族達も、決して嫌いではない。優しいひとたちだ、好きな部類にはいる。しかしやはり考えてしまうのだ、本当は、俺はここにいる資格なんて無いと。だから一線引いてしまう。それでも、きちんと愛してくれる両親には頭が上がらない。
────
『World End Breaker』……通称
学園編では主人公『 』を含めた
この世界には
俺は
身体的特徴は角や翼があったりと魔人族と似ているが肌の色が青だったり紫だったりして、魔物、つまりモンスターを操る能力を持つ。一応そういう魔法もあるが、魔族は規模が異なる。
魔物は人類の天敵だ。獣は襲わないが魔獣や11種族をやたらと狙う。因みに魔獣というのは魔物の同じく魔力を内包する動物で、しかし飼い慣らすことが出来るのを指す。中には神獣と呼ばれる知性を持つ魔獣もいる。
まあとにかく、魔獣を家畜として魔物を狩る獲物として、11種族は平穏に暮らしていた。大戦時代、多くの命を失い争うのは無意味だと判断したからだ。
しかし二千年前、大戦の名残で人類生存領域外となった暗黒領域と呼ばれるところから魔族を名乗る種族が種族関係なく滅ぼしに現れた。当時11種族の最強達、11英雄と呼ばれる者達が軍を率いて何とか退けたのが千年前。以来、硬直状態が続いている。
そして主人公が六歳のある日、再び攻めてきた。暗黒領域と人間界を遮る結界を破壊して、辺境の村々を滅ぼして。
人間界を囲む結界は全部で四つ。二つ目は破壊できずに引き下がったが、主人公の村は第一結界と第二結界の間。軍が到着し保護される間に、主人公の村は主人公の妹と男幼馴染み2人と女幼馴染み2人しか残らなかった。主人公達は二度と自分達のような境遇が生まれぬように魔族を滅ぼすことを誓ったわけだ。
とはいえ魔族が攻めてくるのを解って何もしないわけがない。村の周囲に猟師達から学んだ罠を出来るだけ強力にして設置し、近くの森で隠れられそうな場所に目星をつけておき子供達と隠れん坊しながら場所を教える。
そして────
「──よっと」
「きゅい!?」
鉈で角の生えた兎の頭をかち割る。低級とは言え魔物だけあり生命力が高く、未だビクビク動いている。
この世界にはレベルと言う概念がある。戦闘経験を積めば自然とあがる。積まなくても日常的に過ごしていても、少しずつ上がっていく。だけど当然だが、戦闘経験を積んだ方がいいに決まっている。俺はこうして魔物を狩っている。
「……んー、最近延びしろがいまいちだな」
暗黒領域に近いのだから強い魔物が多いと思うかもしれないが、そんなことはない。むしろ資源となるダンジョン──王道だな──がある各国の首都や商業都市の方が強い魔物が多い。ダンジョンから溢れた魔物やダンジョンの魔力を求めて強い魔物が集まったりするからだ。
もちろん暗黒領域の奥にもダンジョンがあって、強い魔物が居るのかもしれないがこんな人間界の近くにはいない。魔物とは魔力が集まり生まれるのだから。
「お、ドロップアイテム多めだな………」
故に死ねば消えるのだが核となる魔石と体の一部が残ったりする。今回は毛皮と肉。別段珍しくもない。角兎10匹狩れば九匹とれる、そんなレベルだが平均より量が多い。発生から時が経ち世界にそれなりに固定化されたのだろう。
完全に固定化されれば死体そのものが残る。その場合かなり強くなるから、そうなる前に討伐されるわけだが。
「いちいち解体しなくていいのは楽だけど魔獣や普通の獣を狩った時忘れちゃいそうだなぁ………」
まあ村で家畜の切り分けしてるから大丈夫か。あれのおかげで生き物を殺すのにだいぶ忌避感も消えた。生きるためなら、まあ殺せる。人型や、しばらく世話していた年老いた家畜とかはやっぱりつらいけど。
「と、そうだ。お金お金………5ルピか……」
魔物は体内で魔石以外に結晶体を作る。魔物の魔力、つまり強さが高いほど良質な。
平べったい円形の銅色が五枚。この世界の硬貨だ。魔物を狩るメリットは経験値、素材、そして金。金はそのまま使うことも出来るし魔力を帯びた金属、魔金と呼ばれる物質なので加工して武器にすれば通常の武器よりよほど良質な武器になる。
「そろそろザフエロ商会が来る頃か………魔族の襲撃も、解ればいいんだけどな」
そりゃ俺だって何度も忠告した。けど、誰も子供の言うことなんか信じやしない。魔族は壁の外にいて、俺達は安全。それが常識で、人は常識が崩れるのを崩れるその瞬間まで信じ続ける。俺だってここが何も知らない世界だったら皆と同じように。
「傭兵とかを雇いたいところだけど、金がなぁ」
今の俺は六歳。つまり一年以内に襲撃があるという事。そんな長い期間傭兵を雇える金は俺にはない。傭兵だって辺境の村を一年間護衛してくれなんて依頼うけるはずもない。罠になる材料を買って仕掛けていた方がよほど現実的だ。
そもそも正規軍が居ないわけでもない第一領域を通り第二結界まで迫ったということはその間の軍は敗走、全滅したという事。無駄に死なせるだけだろう。
「…………死ぬ、か」
隠れ家はいくつか用意した。けど、だから何だ?それで生き残れるとは限らない。ほんの少し確率が上がっただけだろう。半数以上が、絶対に死ぬ。だからと言ってやはり俺に出来る事なんてありはしない。俺の強さは村の衛士や狩人達には大きく劣る。強くなるために昔から鍛えているのだ。当然といえば当然だが。
ザフエロ商会の護衛達にいる魔導師から魔法を学びはしているが、戦闘に使えるかと言われれば微妙なところだ。いや、過大評価はよそう。俺の魔法は役に立たない。雑魚魔物ならともかく魔族には絶対通じないだろう。
「……主人公なら色々チートで救うんだがなぁ」
そもそも原作でどうやって六人も生き残ったんだっけ?何分数年前の記憶だからなぁ……軍に保護された後ザフエロ商会の預かりになり、そこで鍛えたという設定があるのは覚えている。
まあ村の生き残りはあくまで六人であって、第一領域の生き残りはそれこそ数万といる。偶然、その一言に限るだろう。少なくとも、俺では全員を救えない。主人公の肉体を持っていても、所詮は子供で、元々ただの一般人。
開拓村とか見てたから穴窯で土器や炭の作り方は知っているがそんなもん第三領域でもやってる。精々ここより金のある第二領域で売れる程度だ。
まあこの村の近くの森でしか生えない木の実は貴重だけどな。中央領域まで行き来できるザフエロ商会がわざわざ他の商会に売らない、という契約を持ちかけてくるぐらいだ。他の商会も黙らせられるらしいし………。
「ザフエロ商会に頼むか?でも、理由がなぁ」
中央領域というのは全ての結界内の領域、各種族の王達が各の国を治める広大で裕福な場所だ。もちろん、広すぎる故にうちの村と大差ない村だってある。そもそも国が複数存在できる時点でその広さは伺い知れない。未だ未開の地もあると聞く。
改めて思うが海まで範囲内のこの結界は相当デカい。それでも大陸の一角で、暗黒領域の方が広いというのだから驚きだ。この世界、この星、地球より遙かに大きい。前世のゲーム画面でみたマップによるとゲームステージは人間界と暗黒領域の一部でしかないが、その外はどんなところなのか……。
「ま、んなこと俺には関係ないか」
雑魚魔物ならともかく魔族と戦うなんてまっぴらごめんだ。普通に怖い。そういうのは幼馴染組に任せる。
原作でも魔王を倒したんだ、一人居なくても大丈夫だろう。後は妹のノエルが闇落ちしないように俺が見てればいい。それだけでもだいぶ違うはずだ。
「…………………」
前世にも居たっけ、妹。ノエルみたいに素直な奴じゃなかったけど………会いたいな。
「………帰りたい………けど、皆とも別れたくない。はぁ、ホームシック先が二つあるとつらいわぁ」
まあ精々村人Aとしての人生を過ごそう。どうせ俺には何のチートもなかったんだから。あ、原作じゃ『 』は『救世の勇者』とかいうスキルに目覚めてたっけ、学園編の頃に。俺は、どうなるのかね?
「ま、主人公なんて目指す気さらさらないけどな」
主人公の体だが俺自身はただの一般人。主人公は誰か別の奴に譲るよ。