主人公転生   作:超高校級の切望

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魔女集会の始まり

 魔女。それについてルークが知っていることは少ない。

 取り敢えず前の世界では真のボス扱いされたり美女美少女だらけで薄い本の作者の味方だったり、この世界で知ったことも不死身且つネロも相手したがらないという事ぐらいだろう。

 

「ウス・異本?なんだそれは」

「まあ簡単に言うなら……エロ本」

「……向こうからしたら、私達は所詮空想だものな。悪意はないのだろうが………お前も読んだのか?」

「いや、俺前世16だから。あの手の本は18に成らないと買えないしな。それとルセリアは原作に出てねーから題材にはなってないと思うぞ」

「そうか……」

 

 魔女についてどれだけ知ってる?そう尋ねただけなのに凄く疲れた。

 

「だが、まあ……そのゲームには魔女が現れたのだろう?どんな奴等だ?」

「桧の棒で空間ごと斬ってくる女騎士風の魔女と仮面付けたシスター服の魔女。後は炎で龍とか狼とか作る魔女。それにフィールドを一瞬で凍らせる魔女。機人族(オートマータ)の見た目をした魔女だ」

「『剣の魔女』に『薬草』、『炎』、『氷』に、『憤怒』か……まあ、彼奴等なら納得だな」

 

 ルセリアは心当たりがある魔女達をあげていく。どいつもこいつも一癖二癖ある奴等ばかりだ。と、ルークが不思議そうに首を傾げているのを見る。

 

「他のはともかく、最後の………『憤怒』?確かに怒ってたが、憤怒と呼ばれる程か?」

「彼奴は元機人族(オートマータ)だ。怒りを覚える、その時点である種偉業なのさ」

「偉業?それが魔女になる条件なのか?」

「優秀な女。偉業を成したり、例えば剣の道を極めたりした女が魔女になるのさ。そいつの場合は感情を手にしただけだ。ただ、魔女になったきっかけが怒りだったから私達がそう名付けただけ」

「何でまた」

「さてな、私も是非知りたい」

「……………」

 

 誤魔化した。ルセリアは偉業を成した者が魔女になる理由を間違いなく知っている。彼女は嘘を付く時、罪悪感からか目を閉ざす。此方を見ないように……。最近気づいた癖だ。たぶん、烏滸がましいかもしれないが自分が彼女の中でそこそこ大きな存在になったから……。証拠にネロに嘘をつく時は目を閉じていない。

 とはいえ、別段魔女になる理由など興味はない。不死には憧れる。それさえあれば何時か目的は果たせるだろうから……。しかし女が条件である以上自分には無理だろう。だからどうでもいい。

 

「………時に、その狼は何だ?」

「トライアイウルフの元ボスだ。新しいボスが成長して、群にとどまる理由がなくなったらしくてな」

「どうせなら一緒に来ないってネロが誘ったんだよ」

 

 ねー、とトライアイウルフに抱きつきモフモフするネロ。まあ女の子共は毛がふさふさな生き物を可愛がることが多いから、それらしいことをしているだけだろう。後はまあ、ルークの役に立つと判断したのだろうか?魔獣故に進化すれば爆発的に強くなる。

 知能も、まあ個体や種族によって異なるが魔物と違って言うことを聞かせられやすいし、別段止める要因はない。

 それに魔物なら魔人族(デーモン)特有の力かそれを真似た『生命』『精神』『魂』の複合魔法が()()に必要になるが、魔獣はお手軽で良い。まあ、魔族共は魔物を完全に操っていたが……。

 

「ペットか……まあ良い……世話はお前等でしろ」

「まあ育てて使えるならな」

「お世話?するする~。ルークの役に立つ気だしねぇ」

 

 ルークはあくまで利益を考え、ネロはルークの利益を考えトライアイウルフを受け入れたようだ。実際使い魔というのは存外役に立つ。人より優れた五感を持つし、戦力にもなる。まあこの森では最初は役立たずだろうが……。

 

「名前はどうするか………」

「はいはーい!ネロに考えさせて!」

「…………そうか」

 

 ルークはそれだけ呟くと部屋に戻った。ネロは投げやりな態度に疑問符を浮かべ首を傾げていた。

 

 

 

「……ああ、全く……幸せになっちまいそうだなぁ」

 

 ネロのお調子者な態度も、母親のようなルセリアの態度も、どちらも平穏で、唾棄すべき幸福だ。

 幸せになる権利などない。やるべきことを忘れるな。怒りを鈍らせるな。鏡を見て、そう自分に言い聞かせる。光が灯っていた瞳が再び暗く濁る。

 

「……憎しみを忘れるな。幸せになろうなどとするな。お前が生まれたせいで、死ぬ命が増えたことを、これから増えるかもしれないことを忘れるな……」

 

 言い聞かせ終えると、部屋から出る。廊下で待っていたネロと目があった。

 

「………」

「……!」

 

 ニコッ!と笑みを浮かべるネロはそのまま抱きついて背中に回る。

 

「ルーク、悩んでたね?苦しんでたね?自分だけが、あの村で自分だけが幸せになるのがそんなに許せない?」

「………嬉しそうだな」

「うん!ネロはルークが迷って悩んで苦しむ姿がだーい好きだよ♡」

 

 にぱぁ、と無邪気な……漫画ならさぞトーンや花がたくさんあてがわれるであろう笑みを浮かべるネロ。ルークに合わせ少女どころか幼女な見た目でも、やはりその顔は可愛らしく百年の恋にうつつを抜かす者でもあっさり靡くだろう。台詞は特殊性癖でもない限り千年の恋も冷めそうだが。

 ルークと言えば、そもそも欲情するだけの余裕はないし、仮にしてもそう言った女をものにしたいなどという欲望はネロが食う。

 ジト目でネロを睨んだ後、ため息をはいて頭を撫でてやる。満足したのか去っていった。どうせまた会うだろうが。何せ同じ家の住人なのだから。

 ネロが壁をすり抜け外に出て行くと、ルークは己の首を撫でる。何にも触れず何も見えない。だが『霊視』を使えば首に填められた枷と其処から伸びる鎖。ネロの首にも同じ枷があり、鎖は繋がっている。これは契約の証。此が繋がっている限り、ネロは自分を裏切ることはないだろう。同時に自分もネロから逃げることは出来ないが。

 

「……俺が苦しむ姿が好き、ね………はっ。今の俺にとっちゃ、最高の女だな」

 

 

 

 

「ふんふ~ん、ふふふ~ん、人の不幸は蜜の味~♪」

 

 翌朝。流石に服を着て寝ることを覚えたネロと共に朝食に向かう。ネロの歌に辟易しながらも朝食を済ませる。と、食器を片づけたルセリアが服を持ってきた。

 

「それは?」

「礼服だ。魔女共はお前を一目見ようとしている。私を含め老人ばかりとは言え女に会うのにその服装はな……」

 

 確かに今のルークの格好は、村で見つけた着れそうな子供服。あんな村だ、質素な服しかない。しかもボロボロ。血や土などの汚れは魔法で落としたが見てくれが良いとはとても言えない。

 

「まあ彼奴等がガキ一人、わざわざ害するとは思えんが一応防護術式をかけている」

「……術式?」

「防御特化の魔術式だ。ん、いや……大戦時代はともかく今は研究されてるのか?」

「少なくとも俺は知らない。師匠がまだ教えなかったのか、知らなかったのかは解らないが……」

 

 と、メイド服姿の師匠を思い出す。彼女なら案外知っているような気もするが……。

 

「メイド?それがお前の魔法の師匠か」

「ああ………」

「好きなのか、メイド?」

「いや別に……師匠がメイドだっただけで、メイドだから師匠になってもらったわけではないんだが」

「そうか……いや、な……クリスの奴が私によくメイド服を着せていたから………」

「…………仲の良いご夫婦で」

「私のことは良い。それより、早く着ろ」

「サイズが合わねーよ…………ネロ」

「はいはーい♪」

 

 ルセリアが持ってきた服はルークには明らかに大きい。袖を切って整えた形跡はあるが、不格好には違いない。

 本来の目的が身の安全のためならもっとましなのがあるとルークはネロを呼ぶ。察したネロは己を構成するエネルギーをルークに分ける。

 光を飲み込む闇が蠢き、ルークの体に絡み付く。黒い革で出来たような見た目の黒衣。ベルトが各所に付いており錠で繋がる。中には錠が外れているのもあるがどう見ても拘束衣だ。

 

「…………霊装か」

「ああ。これなら血に汚れることも破れることもないしな。それに、別に害を加えてくるわけでもねーんだろ?」

「それはまあ、そうだが………」

 

 ルセリアは眉間を揉み、はぁとため息を吐く。自分が作ったこの服と霊装の防御能力なら、器に合わせて出力を落としている霊装が下だ。だがいざ力を解放すれば精霊王クラスの霊装であるリフューザルの方が上なのは確か。

 下手に自分の加護下にある故に興味を引かせるより精霊王クラスの相手しなければならないと思わせた方が手を出されないか?いや、どちらにしろ興味を持つか。なら、精霊王クラスと自分が相手になると思わせればあるいは……。

 

「………まあ、少しは要望をかなえてやらなくてはならないのも居るが、それはルークが決めることか」

「?」

「私は天才だ。基本的には何でもこなせる」

「何だいきなり」

「剣も魔法も、初めてやれば教育係のプライドがへし折れる程度には優秀だった私だが、勝る者はいる。そも私は極める気はない。極める気で、才能まであり、極致に到達した者には及ばない」

「…………極致……?ひょっとして、魔女のことか?」

「ああ。お前は剣を使うからまずは『剣の魔女』タルト。それに武器が手元にない時のために『武の魔女』メイ・イン………参加するか知らんが魔術を生み出した『式の魔女』イリア……取り敢えずこの3人にお前の修行を頼んでみる」 

 

 理由は未だ不明だが魔女になる条件に偉業を成すか極めると有る以上、その3人は剣や武、それに式とやらを極め、かつ悠久の鍛錬をしているのだろう。そんな存在から師事を受けられるのは、なるほど確かに死なない程度の条件なら、どんな条件でも飲める気がする。

 

「タルトやイリアは、まあ良いんだ……ただ、メイ・インは………その、所謂少年愛好者(ショタコン)でな……」

「魔女なんて全員年下好き(ショタコン)だろ……」

「いや、確かに私とクリスは6000以上の差があったが………その、恋に年齢は関係ないだろ?好きになったのがたまたま年下なだけで……彼奴は、本当に小さな子供が好きなんだ。自分も小さいくせに」

「……まあ、俺も、この主人公の体の容姿が整っている自覚はあるが」

「ああ。それで6歳だ………格好の獲物だろう。彼奴は、16まで守備範囲だからなぁ」

「………………」

 

 まあ最近魔物ばかり狩って技術の訓練はしていない。師事を受けられるなら受けておきたい。

 

「それに、俺なんかで良ければ幾らでも差し出してやるさ。それで魔族共を殺せる術が学べるなら安いものだ」

「え?差し出すとか何言ってるんだい。ルークはネロのものなんだよ?勝手に差し出すとか許す訳ないじゃん」

「で、お前は俺のものだろ?なら、俺の命令に従え」

「……うん、解ったぁ」

 

 ネロには独占欲がある。嫉妬がある。その大本となる好意こそ知らぬが、自分のもの認定したルークを他人が好き勝手するというのはどうも気に食わないようだ。

 

「さて、それでは行くぞ」

 

 と、ルセリアが杖で地面を叩く。地面を流れた魔力が周囲の土に干渉し、石となり門のように地面から飛び出す。端から見ると景色の絵が描かれた石の額縁。絵ではなく向こうの景色が見え、ゆらりと波紋が広がると暗い森が映る。

 ルセリアが歩きだし、門を通り抜ける際に景色がトプンという音とともに波立つ。ルークもそれに続いた。ネロはルークと共に向かう。と、通る前に振り返る。

 

「グルゥ………」

「………来るか?」

 

 お座りのポーズで待機していたトライアイウルフに声をかける。と、立ち上がり付いてきた。鼻の頭を撫でてやる。

 

「行くぞ」

「うん」

「グルァ……」

 

 ネロとトライアイウルフを連れ門を通るルーク。一瞬水の中にいるかのような感触が全身を襲ったが、直ぐに消える。前を歩くルセリアの後を慌てて追う。と───

 

凡人族(ヒューマン)の男の子?可愛いネ」

「─────!?」

 

 後ろから伸びてきた手が両頬をムニムニと弄ってくる。

 こんな薄気味悪い森だ、意識こそルセリアに向けていても、周囲の警戒は怠って居なかったはず。なのに何時の間にか背後に立たれた。

 

「しま──ッ!ルーク!」

 

 と、ルセリアが慌てて叫んだ瞬間後ろの女性がルークを抱きしめる。

 

「ンー♡可愛イ可愛イ!小さイ!髪の毛サラサラ!良い匂──あ、これ血の匂いネ」

 

 どこか訛のある共通語。嘗ては統一されていなかった言葉は共通語になってから、各国で名残、訛を残した……後ろの人物もその類なのだろう。必死にもがくが拘束は全く緩まない。

 

「その子から離れろ変質者が!」

「おっと……」

 

 ルセリアが叫びながら蹴りを放つとルークを抱き締めていた人物はムッと顔をしかめ片手を突き出す。ルセリアの蹴りの衝撃は空気を揺らすことなく、その全てがルセリアに戻ったかのようにルセリアが弾かれる。

 

「ルセリア!」

「ん、え……?ル、ルセリア!?ちょ、無し無し今の無しヨ!」

 

 自分が弾き飛ばしたのがルセリアだと解りギョッとする変質者。拘束が解かれ、振り返ると顔を青くした竜人族(ドラゴニュート)の14程の少女がいた。着ている服は、チャイナドレスに似ている。

 

「何々どうしたの?」

「メイ・インったらルセリアを怒らせたの?」

「子供連れてくるって言ってたしね。手を出したんだ」

「死にましたね、あの子」

「いや魔女死なないから」

「あ、でもあの子可愛い~」

「そうか?目つきが悪いし、血の臭いがするが……」

「ていうか何あの服。黒い拘束衣?ルセリアさんの趣味かな?」

「隣の子すごい格好………」

「──────」

 

 囲まれている。騒ぎを聞きつけてきたのだろう。木の影から、枝の上から、空に浮かび、様々な場所にいる少女、女性達が興味深そうにルークを見ている。

 息が詰まる。一人一人、自分より遙かに強い。あの森の魔物より、魔族より、ずっと……。

 

「はいはい皆さん。その辺に、怯えてしまうでしょう?」

 

 と、パンパン手を叩きながら女性が現れる。

 白をベースに緑や金の刺繍が入ったローブ。顔を隠すようにフードを被りその隙間から金色の髪が覗く。

 

「…………?」

 

 何処かで見た気がする。思い出せず首を傾げているとルークに顔を向けクスリと微笑む。

 

「初めまして。私は『全智の魔女』アルクメレア。メレアと、気安く呼んでくださって結構ですよ」

 

 そういうと踵を返し歩き出す。ルセリアがギロリとメイ・インというらしい女を睨む。ビクリと震えるメイ・イン。

 が、何も言わず歩き出す。他の魔女達も続き、ルークとネロもルセリアに続く。トライアイウルフを見れば縮こまっていた。どうりで大人しかったわけだ。

 

「行くぞ。早くしろ」

「クゥ……」

 

 ルークが歩き出すと尾をふせたまま付いて来る。暫く進むと開けた場所に出て、皆思い思いの場所に座る。ルークはルセリアが腰をかけた倒れた木に座る。アルクメレアは周囲を見回し、両手を広げる。

 

「さて、それでは久し振りに、魔女集会を始めましょう」




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