魔族を生み出した魔女はネネというらしい魔女やルセリアと同じ発芽者らしい。
話の流れからして魔族を………いや、生命を生み出す力を持った魔女を指すのだろう。つまりルセリアは生命を生み出せる?その割には彼女の周りには魔物か魔獣しか居なかったが……。
しかし生み出すと来たか………魔女故に殺せないとは思っていたが、子を残せぬなら魔族だけでもせめて殺し尽くそうと思っていたのだが……。
国母のような存在がそのまま魔女化したのではなく不死になってから魔族を産んだらしい。魔女について未だに知らないことだらけだが、もう産めないと決めつける気はない。そうなるとどうにかして魔女を殺す術を見つけなくては………。
「………むしろありがたいか」
殺せない相手にどうしたって殺さなくちゃならない理由が出来た。それだけだ。やる気が増した。
問題は、はたして殺す方法が存在するかだ………。
チラリとネロを見る。イメージを、強い思いを現実に反映させる『闇魔法』の増幅器たる闇精霊。
闇魔法の発動自体は出来る。後は、ネロによる増幅で………やれるだろうか?たかだかガキ一人の心の闇で殺せるなら、ルセリアやタルトはとっくに自殺してそうなものだが……。
まあ、やれないこととやらないことはイコールではない。殺せないなら、自分が死ぬまでは殺し続けてみるか。
「………聞かないのか?発芽者に付いて……」
「聞けば殺せる方法が解るのか?なら聞くが……」
「………いや、魔女を殺す方法は解っていない。解ってたら、ここの連中はとっくに死んでる」
だろうな、と呟くルーク。始めから期待などしていない。期待などしても、期待が外れた時にショックが大きくなるだけなのだから。
「…………それで、魔女が関わっているわけだが我々はどうするべきだと思う?」
そんなルークの反応を見てルセリアはため息を吐き、周りの魔女達に目を向ける。不死であり強大な力を持つ彼女達は世間に干渉しないと己達でルールを作った。魔女集会とはいわば互いの監視だ。彼女達が戦争している国どちらかに味方しようとすれば、それだけで勝利は決まったようなものなのだから。
魔女には主に二通りある。ルセリアやタルトのような世捨て人や、『薬草の魔女』や今回は来ていないが『式の魔女』のように人との繋がりを求め人の世にとけ込む魔女。
後者にはルールが存在する。一つの所に止まるのは50年までということと、決して本気を出さないこと。前者はそのレベルなら長命種、またはそのハーフと誤魔化せるから。後者は、魔女が本気を出せば出来ることがありすぎるから。例えば『薬草の魔女』ならルセリアの使う死拒魔法の劣化効果を持つ蘇生薬を産み出しているが、それは売らない。そういう決まりだ。
「魔女本人が出張るならともかく、今のところ動いているのは魔族だけよねぇ……ネネちゃんはどう思う?」
「………生まれたなら、好きにさせるべき。でも、魔女の命令で動いているなら私達も止めるべきだと思う」
一人の魔女の言葉に褐色白髪猫耳娘と言う属性てんこ盛りの魔女が呟く。彼女の周りには大量の魔物………いや、魔獣がいた。ルークは自分が連れている魔獣であるトライアイウルフを見るとトライアイウルフも彼女に親愛の瞳を向けていた。
「………アンタは、魔獣を産んだのか?」
「へう?」
ルークの言葉にビクリと震えるネネ。ワタワタと慌てだし魔獣の後ろに隠れる。魔獣達は低く唸りルークを睨みつけてくる。
「………あぁ?」
「……み、皆……駄目」
「やめろネロ」
そんな魔獣達の反応にネロが殺気を放ち、毛を逆立てる魔獣達。ルークが互いの首に繋がる不可視非実体の鎖を具象化して引き寄せ頭を撫で、ネネが魔獣達を撫で落ち着かせる。
「そ、そう……魔獣は私が創った………元々、動物や魔物と仲良くしようとしてたから、改造してる内に、魔女になって……」
「ネネは元『獣の魔女』……魔獣を創造してからは『魔獣の魔女』なんて呼ばれてる」
「魔獣を………アンタ何歳?」
「12万3千ぐらい……」
ルセリアより遙かに年上だった。ひょっとしてルセリアは魔女の中でも新参者なのだろうか、8千年も生きていて……。
「ん?でも魔獣も魔物も繁殖はするが発生型もいるよな?」
「私は、魔物という現象に、新しく魔獣を加えただけ、だから……ルセリアさんには、負ける……後、たぶん『魔族の魔女』にも……」
「………?」
「魔物というのは元来地震や噴火、津波や嵐といった局所的に発生する災害だ。人類を追い込むためのな………それを無くそうとした結果が魔獣というわけだ」
「は、はい……ルセリアさんの、言うとおり……でも、魔物は人類が繁栄しすぎず種族として進化するための星の恩恵……だ、だから……全ての魔物を魔獣には出来なくて」
良く魔王を倒して世界から魔物が消えましたなんて物語があるが、どうやらこの世界では魔物を消すには世界をどうにかしなくちゃならないらしい。というかどうにかした結果が魔獣なのだろう。
というか人類の進化って。
「まあ、星の恩恵などといっても星の外にも普通に居るがな。あえて言うなら宇宙の恩恵か」
「知的生命体はこの星以外も居るのか?」
「いませんよ。宇宙に住む魔物はこの星の住人がこの星の魔物を相手取れるほど進化し、宇宙に行くまで発展した時のための魔物ですから知恵なんて必要ありません………だからこの星から離れれば離れるほど強力な魔物が増えます」
「なんだそりゃ、まるでこの星がこの宇宙の中心みたいだな」
「そうですよ。貴方の居た世界がどんな所かは知りませんが、少なくともこの世界はこの星の住人を進化させるために存在しています」
「………………」
なんだこの世界。
「まあそれはどうでも良いか。んで、質問なんだが……あんたは未だ魔獣を産めるのか?」
「わ、私の産み方は少し特殊だから………『魔族の魔女』が子を延々と増やせるのか解らない……です。ごめんなさい」
「いや、良い。魔族を滅ぼすのに殺す必要が出たってだけだ」
「魔女は殺せないよ?」
「それでも殺す」
「「「─────」」」
ユラリと闇が溢れる。ネロは嬉しそうに回した腕の力を強めトライアイウルフは僅かに距離を取る。
ネロは霊装を出してやっているだけ。あの闇は、ルークの心の闇がそのまま具象化した闇魔法。直接殺意を向けられたわけでもない地面が、木々が、草が触れただけで崩れていく。
「………へぇ、じゃあさ……魔女殺す方法が見つかったら私殺してくれル?」
と、メイ・インが笑顔で言う。他の魔女達も互いに顔を見合わせた後ルークを見る。
「私も殺してほしいなー」
「私も!」
「アタシも」
「僕も」
「わ、私も……出来れば痛くしないでください」
そうして次々に立候補する魔女達。目を見る限り、本気で期待しているわけではなさそうだ。ただ、死ねるなら死にたいと、藁にでも縋る思いなのだろう。
「そのためには『魔族の魔女』を殺せるだけの力が居る………だから、俺が魔女を殺せるほど強くなれるように、俺を強くしてください」
そして、藁に縋る思いはルークとて同じだ。自分は弱い。魔族一人殺すためにネロの力を体がぶっ壊れるほど借りても腕一本落とすのがやっとだったらしい。
強くなければ魔族を殺せない。魔族を殺せなければ、ルークにとって生きる意味はない。どんな手を使っても、強くなる。魔族を殺し尽くすために。
「あ、私は死ぬ気はまだないのですがルーク君の持つ未知の異世界知識に興味あるので教えてください」
そんな中アルクメレアは空気を読まずに挙手してそんな事を呟くのだった。
「教えてくれたらお礼に魔族の介入で歴史が動いた帝国について教えますよ………あ、でも向かいたいのなら私ではなく保護者のルセリアさんに聞いてくださいね」
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