主人公転生   作:超高校級の切望

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魔女集会の閉会

 ゾワリと空気が変わる。

 魔族により歴史が動いた国があると聞いた瞬間闇がさらに溢れる。アルクメレアはおお、と興味深そうにルークを見つめるがその瞳はフードに隠れ伺いしれない。

 

「今すぐ教えろ」

「駄目です。教えたら、直ぐに向かうでしょう?この森はルセリアさんの森よりずっと強い魔物が彷徨いているのに、死ぬ気ですか?」

「死ぬ気はない。だが、その国に連れて行ってほしい」

「………ルーク、今のレベルは?」

「32」

 

 現代なら冒険者家業を始めて一年の冒険者達などに匹敵するレベルだろう。ネロの霊装を纏ったとして、魔族には………まあ勝てないだろう。ルセリアとしては送るつもりなどないがルークはそれでは絶対に納得しないだろう。

 厄介な奴だ、クリスが子育ては大変らしいよ、と良く言っていたことを思い出す。

 

「………アルクメレア、その魔族は最低でもどれだけその国にいる?」

「そうですね………3ヶ月ぐらいでしょうか」

 

 最後の皇族が処刑されるのがそれぐらい何ですよね、と付け足すアルクメレア。皇族を殺すとなるとその国で革命でも起きたのだろう。魔族が革命の教唆?何のために……国を乗っ取る……は、違うだろう。国を乗っ取れるなら襲撃日にルークへ接触してきた意味が分からない。もっと早く出来たはずだ。つまり紛れ込んだのは襲撃の後の混乱中、正体がばれる可能性も考えて長居する気はないのだろう。魔族を直接見た感想として、魔族が人類の社会に長期間完全にとけ込むなど不可能だろうし……。

 

「二ヶ月半だ……それで鍛えろ。タルト、メイ・イン、その間はお前等に独占させてやる………それと、そいつは『魔族の魔女』に狙われている。魔族との戦闘が起きた場合手を貸せとは言わないが魔女に備えて護衛をしてやってほしい」

「私は構わんが………自分で守らないのか?」

「人の多いところで、私が自分を抑えられなくなったらどうする?お前、私に国一つ滅ぼせと言うのか?」

「アー、確かにルセリア怒ったラ国一ツ消えるネ……私達魔女の中でも攻撃地味だシ」

「…………彼は己の道に後悔しないと言った。魔族との戦闘なら、私は手を貸さんぞ」

 

 タルトは目を伏せそう言った。

 

「だが、鍛えるだけなら良いだろう。それは彼の努力の結果だ」

「二ヶ月半、しっかり鍛えてあげるネ!」

「え、あの……その間私達は?」

「順番は先延ばしにする。そもそもの目的は強くなることだ、その他は我慢しろ」

「ぶーぶー、横暴だー」

「そーだそーだ」

「あぁん?」

「「「何でもありません」」」

 

 ルセリアがギロリと睨みつけ殺気を放つと大人しくなる魔女達。10万越えのネネですら大人しくなるのを見るに、序列は年齢ではないのだろう。

 

「まあ良い。それより霊装に関しての話し合いもあるのだろ?戦争が始まるんだ、使用者が現れた時の対応もかえねばならん」

 

 ルセリアの言うように、ルークという前例も現れた。この先、力を求める者も増え、精霊契約者とて増えるだろう。精霊との相性、精霊の力など細かい条件は必要とは言え戦時中に力を求める者などごまんと居るのだ、内何名かは相性も合い、契約者になれるだろう。邪魔しなければ。

 

「そういえばルーク君も霊装持ってるわね」

「………ああ」

 

 ルークが己が着ているリフューザルを見ながら肯定する。霊装持ちは大戦時代に何名か現れた。その誰もが前線で活躍して………今の時代大戦時代より劣るレベルだらけ。人命の数的な被害はともかく環境に対する被害は前回に比べれば少なく住むだろう。今のレベルのままならだが……。

 

「戦時中に自然がどうこう言うほど、私達は世界思いでもないだろう………待て、ルーク」

「?」

 

 魔女達が霊装持ちを監視していたのは戦争が煩わしいからで世界がどうのは興味ない。

 ルセリアが環境云々言っている魔女達にそういうと不意に振り返りルークの額に手を当てる。

 

「………魔女達の魔力に当てられたか………お前等、ガキの殺意ごときで魔力を隠すのを怠るな」

「いえ、多分ルセリアの魔力に当てられたのかと」

「む………まあ良い、ルーク、気分はどうだ?」

「ああ、そういえば……何か、熱い」

 

 と、どこかボーッとした様子のルーク。熱で思考能力が低下してるらしい。はぁ、とため息を吐いたルセリアがゲートを開く。

 

「先に帰って休んでいろ。こう言うのは原因と離れて休んでいれば治る。ネロ、連れて行け」

「はーい。ガルム、行こ」

「グルゥ?」

「君の名前」

「グルル」

 

 ネロがガルムと名付けたトライアイウルフの背にルークをのせ、ゲートを潜る。ルセリアはその背を見送っていた。

 

「しかし……随分とまぁ、過保護だな」

「何だと?」

「確かにルセリアの夫と良く似ている。子供が産まれたらこのような、と想像するのも解る。それでも、人間嫌いの君がやけに固執する……」

 

 タルトの言葉にルセリアの周りの空間が歪む。ビリビリと空気が震え近くの魔女達が慌てて距離を取り、ネネの周りの魔獣達が毛を逆立てた。

 

「聞けば彼は家族を失っているそうだが……元々は確かにその子供を、貴方と夫の子に重ねていたのだろう……その見た目と悪い目つきを見れば二人の子と言われても違和感はない……」

「黙れ……」

 

 言外にルークとルセリアの目つきが悪いと言うタルト。ルセリアの周りの空間の歪みが強くなるが、ルセリアが不機嫌になった理由は其方ではないだろう。

 

「子に重ねて、か……もしや罪悪感か?帰したくなくて──」

「黙れと言っている」

「────ッ!!」

 

 波紋が広がった瞬間タルトが剣を振るう。空間の歪みが切り裂かれた、消える。

 

「ムキになるな。私とて敵対する気はない……この中で、貴方に勝てる魔女などいないからな」

「……………」

「………解った解った。あの子には黙っていよう」

 

 睨みつけてくるルセリアに肩を竦めるタルト。ルセリアから圧が消え魔女や魔獣達がホッとする。

 

「私としては素直に話すべきだと思うが……きっと許してくれるさ」

「それで、自ら死ぬのを見てろと?勘違いするなよ、彼奴は弱い……弱いから、ネロに縋った。憎しみという感情で己を支えた……少しでも緩めば、彼奴は命を捨てる。冥府へと落ちる」

「別にそれで本人が良いなら、良いんじゃねーの?ルセリアだってずっと居られるじゃねーか」

 

 と、魔女の一人が呟くとギロリと睨みつけられ慌てて座っていた岩の後ろに隠れる。

 

「言っただろ。彼奴は弱い、今度は魔族が生きてることを、仇もとらず、無意味に死んだことを永遠と後悔し続ける」

「難儀な性格だな………一人で生きられないほど弱いくせに、一人でやろうとして、何もせず死ぬことを許せないとは……」

 

 タルトが呆れたように言う。

 

「とはいえそれも、貴方が彼を手放せば済む話ですけどね」

 

 アルクメレアの言葉にルセリアの眉間に皺がよる。

 

「彼奴は死後、その魂も心も全て契約している精霊にくれてやるそうだ。私が関与しなくなったところで、何かが変わるわけでもない」

「相変わらず貴方は、寂しがり屋だね。そして優しい………半年すら経ってない相手にそこまで思い入れをしてしまうのか」

「私が優しい?まあ、ネロに気に入られてるようだし否定はしないがな……」

 

 

 

 

 熱のせいで頭がぼーっとする。

 ぼやけた視界の中でそこがルセリアから与えられた部屋だと思い出し、しかし体は動かない。

 

「あ、起きた♡」

「起きたか」

 

 視線を動かせば人影が見える。その内片方が手を伸ばしてきて頬をツンツンつついてきた。

 

「軟弱だなぁルークは……魔女の気配に当てられて体調を崩すなんて。まあ、そんな所も可愛いけどね」

「私の気配は死、そのものだ……普段は押さえているが、耐性のない者なら体調を崩すさ」

 

 額の上の温い感触が消えひんやりと湿った感触に変わる。何だっけ、前にもこんな事があった気がする。

 頬を冷たい手が撫でる。無意識に手を動かそうとして、しかし動かず名残惜しさを感じる。

 

「今は眠れ。直ぐに良くなる………」

 

 この人は、誰だっけ?温かい人、優しい人………

 

「………母、さん」

「………私はお前の母親にはなれない。済まないな」

 

 頭を撫でられる。それが心地よくて、ルークを目を閉じそのまま眠りについた。

 

 

 

「ねえねえ何でお母さんになれないって言ったの?ルセリアは、ルークのお母さんになりたかったんじゃないの?」

 

 クリスの墓の前で遠慮なくズケズケと問いただすネロをルセリアが睨みつける。

 

「母になりたいわけではない。クリスとの間に子が産まれていたら、そんな妄想に浸れればそれで良い」

「ふーん?」

「すまん。嘘だ……確かに子の妄想に浸りたいが、出来れば本当に母親のように思ってほしい」

「出会って二ヶ月程度なのに何言ってんの?」

「愛も知らないお前には解らんさ。人の温もりは一度味わってしまえば、数百数千の時では消えてなくならない。それなのに、忘れてしまうのが怖い。だから、代わりを捜す。いずれ失うと解っていながら」

「………だから魔女は半分以上が人里から離れるんだね。失う苦しみを味わいたくないから」

「ああ……得られる温もりをずっと感じていたいと人の世に紛れる者も居るがな」

「ふーん……わっかんないなぁ」

 

 ネロは何かを大切に思えない。知識としてルークは自分に取って大切な存在だとは解るが、感情としては全く理解していない。

 

「解んないけどさ、ルセリアはそれが間違いじゃないって言える?ネロはルセリアじゃないからね、ルセリアが何に後悔するかは知らないよ」

「……後悔、か……どうだろうな。私は何時だって、遅すぎたんだ。両親の時も、クリスの時も……今過去に戻れれば、私は3人を救えるんだろうな………」

 

 そういって寂しそうな顔をするルセリアを、やはりネロは理解できない。ただ、それは己にルセリアの様に誰かを思う心がないからだというのだけは解る。

 

「………?」

「嫉妬してるのか?お前にない感情を持つ私に」

「たぶん、ね………良いもん、ルークに慰めてもらうから」

 

 ネロはそういうとルークの部屋に向かった。

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