主人公転生   作:超高校級の切望

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ミアナ・ザフエロ

 今日はザフエロ商会が村に来る日だ。俺は、少しだけ安堵していた。

 エドモンズ会長の一人娘ミアナは自然が好きで、元々この村の近くに別荘を建てたことから繋がりが生まれたのだが、彼女は魔族襲撃の際村にいなかった。

 ミアナルートかハーレムルートで主人公が大怪我を負い暫く帰ってこれなかった時にお姉さん風を吹かせていた彼女が涙を流し「あの時みたいに、聞いてあげることしか出来ないのは辛いの……」と言ってるシーンが有ることからそれは確実だ。

 

「ルーク、嬉しそうだな」

「そう見える?」

 

 村の門で待っているとアルクさんがニヤニヤ笑いながらからかってくる。まあ、少なくとも彼女が留まっている期間は安心だろうから顔も無意識に緩んだのだろう。

 

「そういやルークはミアナちゃんに気に入られてたもんな。大きくなったら出てっちまうのか?折角優秀な跡取りが出来たんだがな………」

 

 フリックさんも肩をすくめながらそんなことを言う。弟子の俺の恋愛事情に興味津々なのだ。

 

「俺とミアナ姉さんはそんな関係じゃないですって」

 

 因みに対外的には姉さんを付けて呼んでいる。妹や弟がいないからと俺達子供組はこの呼び方を強要されているのだ。

 しかし遅いな。手紙には今日の昼頃につくと書かれていたが街道に影も形も見えない。と、その時だった。バサリと羽音が聞こえ俺とフリックさんが同時に弓を構える。アルクさんも剣に手をかけていた。

 羽音から大きさを確認する。かなりでかい、この辺りじゃまずみない飛行種。

 

「────ッ」

 

 まさか、このタイミングか?

 背中をいやな汗が伝う。空を覆う半透明の結界が破られた様子は見受けられない。単なる魔物の大移動か?

 警戒する俺達は音の発生している方向を見る。よく集中して聞けば音は一つじゃない、8………9。

 

「ルーク、村の皆に──」

「解った」

 

 アルクさんの言葉に村の皆に逃げるように伝えようとした時だった───

 

「おーい!アルクさ~ん、フリックさ~ん、ルークく~ん!」

「あれ、ミアナちゃん?」

「……………」

 

 立ち止まり振り返る。羽音と同じ方向から聞こえた声。目を凝らすとやはり9匹の羽を持った魔物……いや、魔獣の姿が見えた。三匹ずつで一つの籠を運んでいる。その箱の一つから人影が見える。

 この声は声を大きくする魔導具を使って、こちらの姿は遠見の魔導具でも使って確認したのだろう。俺達が警戒してるのを見てほくそ笑み、俺達が慌てたのを見て漸く危険がないと伝えたのだろう。

 

 

 

 

 

「どう、お父さんに買ってもらったの。竜籠っていうのよ」

 

 村の開けた場所に降りたミアナは竜籠を見せふふん、と得意げな顔をする。

 竜種数匹に吊されながら空を移動する乗り物のようだ。空を移動する魔導具もあるが個人として所有できるのはまだ存在しない。だからある意味では原始的な方法を取ったのだろう。

 9匹の竜種達は赤茶色の鱗を持ち、前足が翼と融合している、所謂ワイバーンだった。レッドワイバーンと言うらしい。

 

「よお坊主、乗ってみるか?」

 

 と、ミアナの乗っていた竜籠の先頭のワイバーンに乗っていたマルグスさんが話しかけてきた。

 アルクさんよりも強い、俺の師匠の一人だ。弟子に自分の馬術ならぬ竜術でも見せたいのだろう。わかりやすい。

 

「これすげーんだぜ?第三結界の関所から此処まで半日でついちまった」

「それは、凄いですね………」

 

 だろう、と得意げなマルグスさん。主の気分を察したのかレッドワイバーンも首を擡げまるで胸を張っているように見える。

 

「そうよ、凄いでしょ」

「早く届けられるという事は傷みやすい食材を運ぶ際の保存魔法を節約できるし、そもそも上空は地上より寒いから使わないという手も?」

「あら、よく上が寒いなんて知ってるわね。そうよ、人が乗る竜籠には暖結界を張っとかないと。後、空気も薄くなるのよ、知ってた?」

「知ってる」

「つまんない………」

 

 あれ、そういえば上空が寒くて空気が薄いって法則が元の世界と同じならマルグスさんは何で平気なのだろうか?鎧に竜籠と同様の機能でもあるのか?

 

「ん?ああ、俺防御力も高いしHPもかなりの量あるからな」

「………………」

 

 改めて、ゲームみたいな世界だな。あ、いやゲームの世界だけども。

 レベルが上がればステータスも上がり、それによっては裸で雪山だって登れるようになるしマグマだって泳げるようになるらしい。

 まあそんな機会、普通に生きてて来るはずがねぇが。

 

「ああ、そうなると坊主はあんま高く、速く飛べねーな。今レベルは?」

「6です」

「6か……6歳の平均は3だから、二倍。それでも足りねーな」

「この辺り強い魔物いませんからね」

「あー、最大3、たまにでる主とかが5だったか?お前、それでよくそこまで強くなったもんだよ」

「中央領域だとどうなんですか?」

「ダンジョンから溢れてくるからなぁ。特に金持ちなんて若い頃から護衛に守られながら安全に鍛えられる……ま、6歳の時点でレベル6はいねーが」

 

 なる程護衛がいても強くなれるのか。パーティー全体の経験値として手にはいるのだろうか?やはりゲームだ。

 

「まあだから貴族どもには調子に乗って平民見下す奴らが多いんだよなぁ。ケッ、スタートが速くてもレベルが上がり続けりゃ頭打ちだろうによ」

「………何かいやなことでも?」

「お嬢を嫁にしたがったガキがいてな。そいつかおもっくそ見下して来やがるんだよ。『僕はその男の半分の年で、貴方を守れる最強の戦士になります』ってよ」

「……ムカつくのは解りますけど良い人では?」

「その台詞、前に街娘口説くのに使ってたってそいつの従者が………どうも目に付いた女は基本的に手を出してるらしい」

 

 この世界じゃ重婚なんて珍しくもない。特に権力者ともなれば。が、マルグスさんはエドモンズ会長の娘であるミアナをその他大勢の一人として扱われるのは我慢ならないのだろう。

 

「二人して早速お話?仲が良いのね、それよりルーク。あれは?」

「ああ、はい」

 

 その言葉に道具袋から白い林檎を取りだし投げ渡す。キャッチしたミアナは隣に立っていたメイドが果物ナイフを取りだし受け取ろうとするのを無視してシャクリと噛みつく。あんまり品がいいとはいえない行動だが此処にくれば毎回なのでメイドさんは肩をすくめるだけだ。

 

「ん、おいしい。やっぱりこれ食べないと此処にした気がしないのよね~」

 

 この白い林檎こそうちの特産品。避暑地に別荘を建てるだけの予定だったザフエロ商会がこの村と交易を行う理由になった果実だ。雪のように白い林檎だから俺は『スノーホワイト』と名付けた。

 ジューシーで甘く、しかしくどくない。

 

「ね、ね、アイリ、これで林檎パイ作って食べましょう」

「はい。お嬢様は本当に林檎パイが大好きですね」

「スノーホワイトもアイリの料理も美味しいもの。でも、食べ過ぎだと思ったら止めてよ?私、太りたくないから」

 

 確かにアイリさんの料理うまいからな、ついつい食い過ぎちまう。女子はその辺り気にしているのだろう、太りたくないから。そんなに太りたくないなら太らない薬でも買えばいいのに。

 

「あ、ドラゴンだ!」

「ドラゴンじゃないよ、ワイバーンだ」

「あんた達ねぇ……先にミアナ姉さんに挨拶でしょ」

「はわわ……お、おっきい……」

 

 と、漸く他の村人達もやってきた。ヤンクがワイバーンを見てテンションをあげアレンがワイバーンを観察しアンが呆れたように肩をすくめニーナがアンの後ろに隠れながらワイバーンを震えながら見る。

 

「ヤンク君、アレン君、ニーナちゃん、アンちゃん。久し振り、元気にしてた?」

「はい。ミアナ姉さんもおかわりないようで」

「ミアナ姉ちゃん久し振り!」

「久し振りです姉さん」

「ひ、久し振りです」

 

 ミアナの挨拶に慌てて挨拶を返すヤンク達。その姿を見て微笑ましそうにうんうんと頷くミアナ。

 

「ふふ。じゃ、皆で久し振りに遊びましょう!」

「俺はアイリさんに魔法教わるんでパス」

「アイリ、後にしなさい」

「はいお嬢様。ごめんねルーク君、別荘に荷物置いたりしなきゃいけないの」

「定期的な掃除は俺がやってますし、荷ほどきなら手伝えますよ」

 

 荷物をどの部屋に入れればいいとかも解る。が、やんわり断られた。お嬢様と遊んでやれって事ね、解った解った。まあミアナも友達だし、良いか。そんなに急に強くなれるわけがないしな。

 

「で、何やんの?」

「隠れん坊はルーク君強すぎてつまんない。鬼ごっこも…………ボードゲームも結局最後には私とルーク君の対決になるだろうし………あれ?」

「あれ、俺いらない子?」

「わ、私はルーク君と遊びたい、です………」

「…………………」

 

 考えてみればミアナならともかく他の4人じゃレベル差じゃなぁ……ミアナはエドモンズ会長が過保護なせいで鍛えられてるからな。アイリさんもマルグスさんミアナの護衛や世話役であると同時に指南役でもあるわけだし。そういう意味ではミアナは俺の姉弟子か。レベルは5だから俺の方が上だけど。

 でもステータスはミアナの方が上何だよな。ま、ここらの森は俺の庭だから追いつかれることはないが。

 

「私だって仲間外れにしたいわけじゃないわよ。ま、そもそも外で遊ぶなら一度着替える必要あるし、おままごとでもする?」

 

 此処には女が三人、男が二人。しかし男の一人は女の一人が好き。ならどちらになるかなど問われるまでもないだろう。おままごとになった。

 裏切り者は女の子の味方をしたという事でお父さん役を賜り惚れてる相手と念願の夫婦(仮)になれて嬉しそうだ。

 俺?俺は妻の愛人役でした。子供になにやらせてんだミアナ。因みに俺の妻はアンだった。2人に睨まれるし本当、胃に優しくないおままごとだった。

 

「こんなおままごとするなんて、ミアナ……姉さんの家庭事情どうなってんの?」

「え、私の両親じゃないわよ?あの2人バカップルだもん。これはうちの会員……因みに、全員よ…」

「………よくお互いにバレないなそいつら」

「因みにミアナ姉さん、僕の役って………」

「いや、ごめんなさい。悪いと思ってるけど、その………あいてなくて」

 

 アレンは犬役だった。ミアナはあくまで台本担当と言い張り何の役もやってない。

 

「さ、それよりアイリが林檎パイ作ってるはずだから食べに行きましょう。あ、ノエルちゃんも誘ってね」

 

 その後子供組と商会の人達とアイリさん特製の林檎パイを食った。とても美味かった。

 さて、ミアナ達は三日の滞在、その間は安全なはずだから、明日は罠の見回りしてから、マルグスさんとアイリさんのところに行くか。




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