ガラガラガラ…とおそるおそるドアを開け、教室に入ってきた暁美ほむら。長く伸ばしていた黒い髪を三つ編みにして眼鏡をかけたほむらのその変貌ぶりに教室の視線が一斉に集まる!
クラスメートたちの注目にドアの前でカチコチに固まってしまうほむらだが、すかさずまどかとさやかが彼女に助け船を出す。
「…え、えっと…あっ!昨日、まどかに見立ててもらったんだって!よく似合ってるじゃない!転校生!」
「あ、そうそう!今日はそれできてくれたんだね!ほむらちゃん可愛いよっ」
まどかとさやかのフォローにより、ほむらに対する視線は幾分かマシになる。ようやく立ち直る事ができたほむらは机に荷物を置くと早速、二人に自分の部屋に住まうピンクの同居人についてどう思っているか聞いていた。
「カービィについて?あの子はちょっと…いや凄く食い意地が張ってるけど、とても優しくていい子だよ!」
「あたしも悪いやつじゃないと思うよ。それにもしもさ、カービィが危ない奴だったとしたら前のあんたは絶対つるまないっしょ!」
まどかはもちろんの事、さやかもカービィに対してかなり好印象を抱いている。彼に関して記憶のないほむらから見てもカービィは悪い子とは思えないので信用はしていた。
「じゃあ…カービィっていったい…?魔女の使い魔ではないんだよね?」
「キュゥべえは確か…ポップスターのプププランドからきた宇宙人だとか言ってたような…?」
「う、宇宙人~~~!?」
ほむらが思い浮かぶ宇宙人というのはテレビとかでよく見る人型で丸い目と大きな頭をした奇形のエイリアン。しかし、カービィが宇宙人だと聞いて世間一般で広がっている宇宙人像は間違っている事を知る。
「そうだね~カービィについて聞きたいんだったらキュゥべえに聞いてみなよ!あいつ、カービィとも会った事があるみたいだったからさ」
「キュゥべえが?わかった…そうしてみるね」
「ほむらちゃん…あれだけキュゥべえの事嫌ってたのに今は大丈夫なの?」
まどかは彼女がキュゥべえを苦手…いや、冷たい視線を浴びせ、強く憎んでいた事を知っている。なので、彼女に大丈夫なのかと問いかけるがほむらはしばらくキョトンとした後に首を傾げた。
「私がキュゥべえを…何でだろう…?」
「どうせあいつに何か食べられた~とかしょうもない理由じゃないの?キュゥべえのやつ、意外と遠慮を知らないからさ」
「…だといいんだけど…あっ、一限目が始まっちゃう!ほむらちゃん!さやかちゃん!また後でねっ」
「うん!(キュゥべえかぁ…どうして前の私はキュゥべえが嫌いだったのかな…理由もなく嫌いにならないとは思うけど…?)」
………
学校が終わったほむらはまどか達と別れて大人しく家に帰宅する。本人は魔女を倒すべく気合いを入れていたのだが、病み上がりが無茶しないようにとマミやさやかから念を押されてしまっては素直に頷く事しかできなかった。
家には誰もおらず、机には『遊びに行ってくる。飯までに戻る』と紙に汚い字で書き置きされていた事から杏子とカービィはどこかに出かけているようだ。
「一人かぁ…ちょっと寂しいな」
ハァ…と小さくため息をつきながら制服を脱いでいくほむら。カービィと杏子が帰ってくるまで何していようかと考えていたほむらの後ろから突然、聞き覚えのある声がかけられる。
”やあ、ほむら。大変な目に…「ひゃぁぁぁぁっ!?」”
突然聞こえてきた声にビクッと大きく肩を震わせ、普段のほむらからは考えられないような悲鳴を上げる。
運が悪い事に彼女は私服へと着替えている最中であった。今の彼女の姿はスカートこそ穿いていたものの上半身は衣服を着る前で真っ白の獣の目にはしっかりと彼女の下着と肌色が見えていた。
我に返ったほむらはすぐさましゃがみ込み、脱いだ制服を抱きしめて胸周りを隠す。
「キュゥべえ!む、向こうに向いてて!!」
”訳がわからないよ。確かに君の事は興味あるさ。だけど君のその貧相な身体になんてこれっぽっちも興味は…「いいから~~~!!」”
やれやれ…と訳の分からないといった様子で彼は後ろを向いた。私服へと素早く着替えたほむらは台所へ行き、猫用の器に牛乳を注いでキュゥべえへと差し出す。
”…なるほどね。確かに記憶を失っているようだ。僕をもてなすだなんて以前の君からは考えられないよ”
「あっ…その事なんだけど…どうして私はキュゥべえと喧嘩してたの?」
”さあ…僕には覚えがないね。おそらくさっきみたいに君の怒りを買ってしまったからじゃないかな?”
差し出された牛乳を猫のようにペロペロと舐めるキュゥべえの顔は見えない。ほむらはそれで納得したようで次にキュゥべえがわざわざ会いに来た理由を聞く。
”君も記憶が早く戻る事を望んでいるんだろう?だから、君が忘れた事を僕が教えてあげようと思ってね。どうだい、ほむら”
「あっ…えっと…お願い、キュゥべえ!」
__一方その頃、カービィと杏子は…
夕日が空を茜色に帰る頃、杏子はたい焼きを頬張りながら見滝原の町を歩いていた。彼女の肩には大きなトートバッグをかけられており、なにやらもぞもぞと蠢いている。
そのバッグの中から小さな声でたい焼きと呟く声が聞こえてきた。杏子はチッと舌打ちをしたものの食べていたたい焼きを半分だけ食べ、残りはトートバッグの中に突っ込む。
「…ったく…アタシから食べ物を奪うなんていい度胸してんなぁ」
杏子の手にはもうたい焼きはなかった。かわりに涎がべったりとついている。それを着ているパーカーで拭き取り、魔女の探索および食べ歩きを続行。するとどこからか肉を焼く、香ばしい香りが漂ってきた。
「…おっ!焼き鳥だってよ。どうだい?」
端から見ると道中で立ち止まり、独り言を言っているように見えてしまうがそうではない。その返事はトートバッグの中から聞こえてくる。
そう、そのバッグの中にはカービィがいた!彼は身動きが取れない為、窮屈そうにしていたが少し我慢するだけでおいしい物が食べられるので不満などなかった。
食べるという返事を聞いた杏子は屋台で売られている焼き鳥を頼んでいたのだが…指輪となっていたソウルジェムが突然、淡く光を放つ!
「…っ!?近くに結界があるな…当たりかもしれねえ!」
焼き鳥を受け取ってバッグへ入れた彼女はその反応がある方へ駆け出す。反応があったのはここからそう離れていない所。
雑魚の魔女でなおかつグリーフシードを落としてくれ…そう願いつつ彼女とカービィは町の裏路地にできた結界の前へやってきた。
夕暮れ時という時間帯ではあるが人通りのない裏路地である為、見られる心配もないと考えた杏子は焼き鳥を美味しそうに頬張るカービィを取り出し、地面に置く。
「カービィ、今から…あっ!てめえ…!焼き鳥全部食いやがったなっ!」
c( ╹◡╹ )っ<うまっうまっ
10本買っていた焼き鳥は全てカービィの口の中でご丁寧に串まで食べるカービィの頬を両手で杏子はぽよぽよする。
だが、食べ物の借りは後…そう思い、彼女はげふっと可愛らしくゲップをしたカービィと共に結界の中へ侵入した。
中は巨大なクレヨンや積み木が散乱する子供の玩具箱のような空間だ。そこで二人は奇声を発しながら結界内を小さな飛行機で逃げ回る使い魔と…
「そっちにいったわ!美樹さん、お願い!」
「任せなさ~い!まどかっ!あたしがカッコ良く決めちゃう所、見ててよねっ」
Σ(╹o╹c)<まろか!?マミ!?…さやか?
リボンを伸ばして逃げ場を塞ぐ巴マミと積み木を足場にして飛び上がり、使い魔を切ろうとするが盛大にスカってしまう美樹さやか、そして遠くからそれを見て苦笑いする鹿目まどかの姿がそこにあった。
本編第5話ですね。いったいどうなる事やら…