【ワルプルギスの夜】またの名を舞台装置の魔女。超大型の魔女でこの世の全てを戯曲に変えるまで世界を回り続けると言われている。
他の魔女とは違い強大すぎる力を持つ事から結界内に身をひそめる必要がなく、出現しただけで現実世界に自然災害として多大なる被害をもたらすという。
「これがワルプルギスの夜よ。わかったかしら?」
c(╹◡╹)っコクコク
【ワルプルギスの夜】について知らないまどかとさやかとカービィはマミから簡単に説明を受ける。ようするにとてつもなく強くデカい魔女という訳である。
「協力するのは構わない…だけど、どうしてこの見滝原にくるのがわかるの?」
「それは…その…」
”それは僕が彼女に教えたんだ”
どこからともなく現れたキュゥべえが素早くほむらの足を上って肩に座る。キュゥべえ曰わく、今日観測できた情報でほむらに教えたのだという。
「ん?アタシはほむらから前もって知らされたぜ?こいつらと共闘してるのもワルプルが出るって聞いたからだからよ」
「えっと…それは記憶が曖昧で…なんでキュゥべえより先に知っていたのかは私にも…」
”ほむらが持っていた記憶は僕も興味がある所だけど、今は…”
ほむらはコクっと頷くとまどかの方へ向き直り…
「まどか…お願いがあるの。私たちと一緒にワルプルギスの夜を倒してほしい」
「えっ…それって!?」
Σ(╹o╹c)<ほむら!?
あのほむらがまどかに契約を迫っている。おそらく以前のほむらはまどかが契約してしまえばどうなるか…ほむらは知っていた。なので止めていたはず。
しかし、今のほむらは魔女の攻撃が原因で記憶を失っている…偶然か必然か、そこをキュゥべえは突いたのだろう。心なしかキュゥべえの赤い瞳は輝いているように見える。
「キュゥべえ、この場にいる魔法少女とカービィが力を合わせたらワルプルギスの夜は倒せるかな?」
”…確実に勝てる…とはいえない。相手は最強の魔女だ。カービィがいるとはいえ厳しい戦いになる事が予想されるね”
「そんなにその…なんちゃらギスって強いの!?」
「ワルプルギスよ、美樹さん。そうね…噂では誰も倒せない魔女だと聞いてるわ。正直、私も一人じゃ倒せる自信がないわね」
「ふん、それで?こいつの契約すりゃあ何かが変わるのかよ。その話が本当なら魔法少女が一人増えた所で何の解決にはならねえはずだ」
ふるふるとキュゥべえが首を振る。そして、オドオドとして回答を待つまどかへと赤い瞳を向けた。
”いいや、まどかが持つ力…それは普通の魔法少女が持つ力を遥かに越えている。いや、凄いなんていうレベルは控えめな表現だね。最強の魔法少女になるのは間違いないだろう”
「………本当に私が契約すれば…その魔女を倒せるの?見滝原の町を守れるの?」
”君が本当にそれを望むならね。だから、まどか…僕と契約して魔法少女になってよ!”
キュゥべえがまどかの前に行き、耳から生えた毛のような物を彼女に伸ばす。まどかは一瞬、躊躇いを見せたが目を閉じ、それを受け入れ…
(╹~╹)<ぽよ!
「カービィ!?」
契約がなされようとしたその時、カービィが耳毛を伸ばすキュゥべえとまどかの間に入る。カービィは懸命に首を振って、困惑するまどかに契約はダメだと伝えていた。
「邪魔しちゃダメだよ。こっちで待とう?」
(╹~╹)<け~やく!ダメ!
「カービィ?どうしたの?」
とほむらがカービィの腕を掴むもそれを振り払い、まどかの契約を阻止しようとキュゥべえを睨み続けている。
おそらくこれは記憶をなくしたほむらをそそのかし、契約させようとキュゥべえが仕組んだ展開なのだとカービィは考えた。
契約を邪魔し、睨みつけるカービィをキュゥべえはただ黙って見つめていたがやがて…
”…なるほどね、君がわざわざ遠い星からやってきた理由がわかったよ。そういう事だったんだね”
(っ╹~╹)<???
”君の目的はこの星を自分の物にする事。そうだろう?カービィ”
その言葉に皆が衝撃を受ける。カービィはすぐにはキュゥべえの言葉が飲み込めず、キョトンとしていたがしばらくしてぽよ!?と大きな声を上げた。
「ど、どういう事!?キュゥべえ!」
”僕の仮説だけど…ワルプルギスの夜を倒すには君が契約し、魔法少女となるのがベストだ。しかし、その契約を阻むという事…それはすなわち君が契約し、魔法少女となって強大な力を持ってしまうのを恐れているという事だ!”
”このままワルプルギスの夜を迎えれば君たち魔法少女たちは全滅、そして、それを覆す力を持つ君も死んでしまう。やがて…ワルプルギスの夜も通り過ぎてしまえば邪魔をする者はもういない…カービィはこの星を好きにする事ができる”
「そんな…まさか、カービィがそんな事するわけないよ!皆、信じてあげて!」
まどかはキュゥべえの言葉が信じられないようでそばにいたカービィを抱きしめている。カービィがこの星を侵略する為にやってきた宇宙人だなんて信じる事はできなかった。しかし…
「カービィから離れて…!まどか!」
「さやかちゃん!?」
さやかはカービィに剣を向けていた。カービィの事を信じたい。だけど、信じられない…そんな顔をさやかはしていた。
続けて沈黙を保っていた杏子も小さく息を吐きながらカービィに槍の穂先を向ける。まどかの腕に抱かれたカービィはこの状況に目をパチクリとさせていた。
「…マミさんとほむらちゃんもカービィが悪い子って思ってるの…?」
「私は…この子が悪い子だとは思えない。カービィが鹿目さんの契約を邪魔するのもきっと何か意味があるんだわ!」
マミはさやかと杏子に武器を向けられる二人の間に立ちふさがる。彼に命を助けてもらった…自分の作った食べ物を美味しそうに食べてくれた…そんなカービィが悪者なわけがないとマミは確信していた。
「…今の私はほとんど付き合いがないからカービィの事はわかりません。だけど…キュゥべえが間違っているなんて事は…」
(っ╹~')<け~やく!魔女!け~やく!魔女!
カービィは必死に魔女化の真相を伝えようと声を上げる。しかし、単語だけでは意味は伝わらない!
唯一その事実を知っていたほむらも記憶がない為、カービィの言葉の意味がわからず怪訝な顔をしていた。
「カービィ?私は魔女と戦うのは平気だよ。町のみんなを守れるなら…私は怖くない。それにさやかちゃん、マミさん、杏子ちゃん、ほむらちゃんもいてくれる!私は大丈夫だよ?」
(っ╹~')<魔女!なる!魔法少女!魔女!
「えっと…それはいったい…?」
”まどか!カービィは信用できない。その言葉に耳を貸しては駄目だ!”
有無を言わさぬキュゥべえにカービィもムッとしていたがこれ以上の説得は不可能であると考え、彼は空に向かってその短い手を掲げた。すると、オレンジ色の空からぴゅるるるっと音を立てて何かが飛来してくる!
「っ!?なにあれ!?」
”ワープスター…!”
「あれは…あの時の!ひゃあっ!?」
文字通り星の形をしたワープスターなるものが空からカービィの目の前に現れる。カービィは素早くまどかを吸い込むとその星に乗り込み、そのまま空へ飛び立っていった!
「まどか!カービィ!?」
”これでわかったはずだ!カービィを信用してはいけない!まどかを早く取り返すんだ!”
まどかを吸い込み、この場を立ち去ったカービィ。彼のその行動にある者はさらなる不信感を抱かせ、ある者はそれでもなお信じ続け、そして、またある者は彼の発した言葉の意味を考えさせられる事になった。
ワープスターは行きたいところに連れて行ってくれます