キュゥべえとの契約によって出来上がるソウルジェム…それは自分の魂を抜き取って出来上がったモノ。すなわち、ソウルジェムこそが自分の命そのものという事。
さらにそれだけではなく魔法を使ったり、負の感情を抱く事で貯まる穢れ。それらが貯まりきってしまった時…その時には…!
「魔女に…なる?みんな…さやかちゃんも?マミさんも、杏子ちゃんも?ほ…ほむらちゃんも!?」
全員が全員そうじゃないかもしれない。助かる方法もあるのかも?そう思ったまどかは一筋の望みをかけて目の前の女性に問いかける。
ふぅ…と軽く息をついたモデルのように美しい風貌の魔法少女の彼女から返ってきたのは…
「…例外はないわ」
最悪の言葉だった。ポタッ…ポタッ…と雫がカービィの頭に落ちてくる。何かと思いカービィが見上げるとそれはまどかが零す涙であった。
自分の大切な人たちはみんなこの世を憎み、人々を襲う魔女になってしまう…中学生の少女であるまどかにはそれを受け止めるのは不可能であった。
(っ╹~')<まろか…
「ひどい…ひどすぎるよ…ぐすっ…みんなみんなっ…願いの為に死ぬかもしれないのに戦ってる!なのに…あんまりだよっ!!」
「………希望を信じて戦っていた者はその真実を知り、絶望して魔女となる。ふっ…魔法少女とはよく言ったものね。いずれ魔女になる私たちは魔法少女と呼ばれるのがふさわしい…」
雲が隠す半分かけた月を見上げる青の魔法少女。その瞳は何を映しているのか…かつての仲間たちか?それとも魔女の姿か?二人にはわからない。
「…あなたはずっと…戦い続けるんですか?ここで一人でずっと?」
「…ここで散っていった仲間たちの為にも私は戦い続ける。この命が尽きるまで…」
「そんなの…悲しすぎるっ!それでいいんですか…?」
女性はほんの少し驚いたように目を見開くと…涙を流し続けるまどかに近づき、その瞳からこぼれる雫を優しくぬぐい取った。そして、戸惑うまどかの顔をジッと覗き込むと薄く微笑んだ。
「あなたは…優しいのね。最後にあなたのような子に出会えてよかった…ありがとう」
「あっ…」
そう彼女は言い残すとまどかとカービィに背を向けてボロボロに傷ついた身体を動かし、次の魔女を探しに出かけていった。
彼女はおそらく死ぬ気なのであろう…しかし、二人には覚悟を決め、去りゆく青の魔法少女を止める事はできなかった。
やがて、ゆっくりと顔を上げるまどか。その目にもう涙はなく、彼女はカービィの背に合わせてしゃがみ込み…
「カービィ…私、契約するよ」
Σ(╹o╹c)<まろか!?魔女!なる!
突然の宣言にカービィも面食らってしまう。今の魔法少女の話を聞いて、なぜ契約をしようという気になったのか…?カービィは魔女になってしまうと何度もまどかに説明するが彼女の瞳は揺るがない。
「今までずっと誰かの為に戦ってきた魔法少女たちを絶望で終わらせたくなんかない…!みんなを…助けたい!」
(っ~╹)<???
彼女には何か考えがあるようであった。しかし…とカービィが思っていたその時、まどかがギュゥと身体を優しく抱きしめ、震える声で彼に告げる。
「お願い…カービィ!…力を貸して…!」
その言葉に彼はいつもと変わらない笑顔で『ぽよっ!』と返すのであった。
___一方その頃…
姿を消した鹿目まどかとカービィを探していた魔法少女逹はカービィならまどかに危害を加える事がないだろうというマミの言葉でしぶしぶ捜索を中断し、各自自宅へ戻っていた。
腹を空かせた杏子と共に家に戻ったほむらは夕飯を用意しながら、ずっとカービィの言ったあの言葉が気にかかっていた。
(魔法少女が魔女?そんなわけない…はずなのに…)
カービィが苦し紛れに放った言葉だと杏子は一蹴している。キュゥべえも”魔法少女でもない彼の言葉が信じられるのかい?”なんて言っていた。しかし…
(何かが気にかかる…大事な事を忘れてしまっているような?)
「…い…!おい!ほむら!!」
「へっ?にゅあぁっ!?」
自分を呼ぶ声でハッと我に返る。エプロンをつけて簡単な野菜炒めを作っていたほむらだが、ずっと考え事していた為か、フライパンの中には真っ黒い炭と何かの塊が出来上がってしまっていた。
家の中にはもくもくと煙があがり、口元を抑えながら杏子は慌てて呆けた顔で立つほむらを押しのけてフライパンに通る火を消しにきていた。
「火事でも起こす気か?ったく…」
「ご、ごめんなさい…!すぐ作り直すから!」
「チッ…アタシがやるよ。アンタは向こうで座ってな。野菜とか肉焼くぐらいならアタシにもできる」
食べ物を無駄にした為か、少しイラついたのか?杏子はシッシッとほむらをテーブルへ追いやり、手際よく調理にかかる。そんな杏子にほむらは謝ると同時にいなくなった二人の事を聞いた。
「あん?…アタシはキュゥべえの話はあんまり信用してねえからさ。あのピンクがあっちのピンクさえ返してくれりゃ別にどうこうしようだなんて思わないね」
「えっ?」
「アイツの話を全部鵜呑みにするなって事さ。アイツと長くつき合ってりゃわかるが…まあ、そこはいいか。アタシはワルプルギスさえ越えられりゃ後はどうでもいいんだ。それに鹿目まどかの力がいるんだったら仕方ないだろ」
彼女はちょくちょく肉をつまみ食いしながらそんな事を話す。どういうわけか佐倉杏子はキュゥべえをさほど信用していないらしい。
その理由を問い詰めて聞いてみた所、彼女曰くたいした理由もなく気にしすぎかもしれないが彼が話す内容はどこか胡散臭いんだという。
「マミのヤローやトーシローのアイツはなんとも思っていないようだが、前のアンタはアタシ以上にキュゥべえを物凄く警戒してたぜ」
「…そうですか…ところで佐倉さん、言いづらいんですけどぉ」
あん?と振り向いた彼女は口をもがもがさせながら振り向く。ほむらが席を立ってキッチンで野菜を炒める杏子の横にいき、先ほどから肉をつまみ食いしているフライパンの中を覗き込むと…見事に緑一色となっていた。
「バレた…?」
「むぅ…当然です!お肉が全部ないじゃないですかっ!絶対にお肉目当てでしたよね~!」
「わりぃわりぃ…あはははっ」
___さやかの家
まだ20時で年頃の少女ならばまだまだ起きている時間帯だ。しかし、美樹さやかは真っ暗な部屋の中で一人、布団にうずくまっていた。その手に淡く輝くソウルジェムを握りしめ、彼女はずっと考え事にふけこんでいる。
「………」
”どうしたんだい?さやか…志筑仁美と会ってからえらく塞ぎ込んでいるじゃないか…”
窓も扉も締めていたはずなのにどこから入ってきたのか…布団の外から頭に響く無機質な声が聞こえてくる。プライバシーもクソもないその生き物に不機嫌になりながらも彼女は身体を起こすと…やはり、勉強机の上にキュゥべえの姿があった。
「…いろいろあるのよ…ほっといて」
”………なるほどね。どうやら君も…使えそうだ”
「…?出てってよ。今、機嫌悪いからアンタに当たっちゃうかもしれない…」
………
カービィがまどかを連れ去り、二人を探していた時…街を走り回っていたさやかに聞き覚えのある声がかけられた。それは…
「さやかさん!」
まどかとさやかの友達である志筑仁美という少女。ちなみにハコの魔女の集団自殺の時にいたあの少女である。彼女は何かを戸惑っているようではあったがやがて、重々しくその口を開いた。
「…明日お話しようと思っていたのですが…いえ、私も覚悟を決めました。この後、お時間はあります?」
「えっ?あ~…うん」
彼女はさやかに話があったらしく、聞いてみると…なんとさやかの幼なじみの上条恭介に惚れているというのだ!そうとは知らなかったさやかは絶句してしまう。
なぜなら、実はさやかの契約はその彼を思っての願いで美樹さやかもその幼なじみの上条恭介の事が好きなのだ。そして、仁美はさらなる追い討ちをかけてくる。
「私、明日の放課後に上条君に告白します」
「えっ!?こ、告白って…」
「…丸一日だけお待ちしますわ。さやかさんは後悔なさらないよう決めてください。上条君に気持ちを伝えるべきかどうか」
”では…”と会釈して立ち去る仁美を見つめて道端のド真ん中で固まってしまう。心ここにあらずというのはまさにこの事でさやかの頭にはずっと上条恭介と志筑仁美がぐるぐると回っていた。そして、気がつけば家に戻り、ベッドで転がっていたというわけだ。
(あたし…あたしは…どうすれば!)
《こぽっ…》さやかの手にする青い宝石の光が微かに闇が差し込み始めた。それはほんのわずかの穢れではある…けれども確実にさやかのソウルジェムを蝕んでいる。