【アハハハハッ!!あなた達は私の大事なお友達…だから、私と遊んでよ。いつまでも、永遠に!】
ポッと20cm程しかないカービィよりももっともっと小さな身体を持つ彼女の手が光ったような気がした。すると、ゴゴゴゴゴッと音を立てながら床が大きく揺れ、この部屋の窓や扉が全て閉まる。どうやらカービィ達が逃げる事ができないようにマミが魔法で鍵をかけたようだった。
”これは…僕たちを逃がさないつもりのようだね”
「くっ…マミ…!」
体重を槍にかけ、もたれ掛かるようにして立っている杏子。彼女はバラバラになったテーブルの上に浮かび、悲しい笑い声を上げているマミの元へ向かおうとするが足がもつれて倒れ込んでしまう。
「はぁ…はぁ…!あいつを止めるんだろ…動け!動くんだ…!」
立ち上がろうと足に力を込めるが…どうにも身体がいうことを聞かない。単身マミへと近づき、呼びかけを続けているカービィ、彼に続いて自分も続かなければならないのに思うように身体が動かなかった。
その理由はマミに拘束されているから…というものではなく、彼女の心にあった。
これは、今から2年前ほど前の出来事だ。
新しい時代を救うには、新しい信仰が必要だ…そういった信念を有する聖職者の父が彼女にはいた。彼女はその父親が誇らしかった。大好きであった。しかし、彼が説くその理念は教会の本部の人間や信者には理解されなかった。
家は貧しくなり、教会からも異端であると見放され、日に日にやつれていった父。そんな中でも食料を自分と妹に食べさせてくれた母。杏子は我慢ができなかった。
『少しだけでもいい…耳を傾けてくれさえすれば父さんの言う事は正しい事であるとわかってもらえるのに…』
とうとう食べる物もなくなり、信者から恵んでもらえたと嘘を吐いてスーパーやコンビニから物を盗むというそんな生活を続けていた時…彼女に転機が訪れる。奇跡を売って歩く白い獣が彼女に目をつけたのだ。
”君の願いを何でも一つだけ叶えてあげる!”
『えっ…?』
”だから僕と契約して…魔法少女になってよ!”
胡散臭い話だと思った。しかし、藁にもすがりたい状況だった杏子は二つ返事でそれを了承した。彼女がキュゥべえとの契約でもたらされた願い…それは、”父の話に人々が耳を傾けてくれるように”するというもの。そう願ったその翌朝からこれまでの地獄から一変。騒がしい声に目が覚め、半信半疑ながらも教会を覗くと…
『いっぱいだ…人がいっぱいだ!』
願いは叶っていたのだ。父が所有する教会の中はこれまで見た事もない程に人々は溢れかえり、熱心に父が説く話を聞いていた。それは毎日続く事となる。
”さて、君の願いは叶えた。次は…”
『ああ、わかってる。いっちょ派手に行こうじゃない!』
願いを叶える代償に魔法少女となった杏子は意気込んでいた。いくら父の説法が正しくともそれでこの世にはびこる魔女がいなくなるわけじゃない。ならば、それは魔法少女になった自分の出番だ。自分と父で、表と裏からこの世界を救っていくんだと…杏子は思っていた。彼女と出会ったのもそんな時だ。
『危ない所だったわね…私は巴マミ!あなたは?』
『…えっ?あ、ああ…アタシは杏子。佐倉杏子だ』
逃げた魔女を追い、隣町である見滝原までやってきた杏子。魔女を追いつめたまでは良かったが思いも寄らぬ反撃を受け、絶体絶命のピンチとなっていた。もうすぐそばまで迫っていた死に全てを諦めかけていたその時、彼女が駆けつけ魔女を蜂の巣にしていったのだ。
そんなマミの強さと優しさ…それと彼女が趣味にしていたお菓子作りに惹かれ、杏子は彼女の弟子として行動する事に決める。そんな生活が半年程続いたある日、色々ありながらも幸せだったと胸を誇って言える彼女の人生を大きく狂わせる出来事が起こってしまった。
『ハァ…ハァ…!くそっ!間に合ってくれよ!』
マミとの修行も終わり、家である教会へと帰っていた杏子。そんな中、突如魔女の気配を感知する。それは杏子が向かう先、すなわち教会にいるという事を示していた。彼女はがむしゃらになって駆け出し、魔女の結界に飲み込まれてしまった教会の前へと辿り着く。
『父さん!母さん!モモ!!』
杏子の祈りも通じてか、魔女が震える家族に襲いかかろうとする瞬間に彼女もやってくる。固有の魔法【幻覚】を駆使して、なんとか家族を救い出して魔女を討伐する事に成功。
怯える妹のモモをなだめて、両親に自分は魔法少女で願いを叶える代償としてさっきのような魔女と戦っていると隠していた事実を公表した。杏子は最初、褒めてもらえると思った。
自分がやっているのは人々を襲う魔女を倒すという世界を守る仕事だ。だから、父さんもさすがは我が娘だと、よくやったと、言ってくれる。そう思っていた。しかし、現実は残酷だった。
『願い…お前は私の願いを聞くようにと人々を仕向けたのか…?私の話は信仰によるものではなく…魔法の力で集まってきたというのか!?』
『えっ…と、父さん?痛い…痛いよ!』
この時はなぜ自分が腕を締め付けられ、怒鳴られているのかがわからなかった。しかし、今思い返せば父の気持ちはよくわかる。
父は異端と称されていた自分の話が人々に聞き入れられたと思っていた。しかし、それは違っていて実際は魔法の力で強制的に自分の元へ向かわされ、強制的に話を聞かされたものだった。裏切られた父の心は計り知れるものではない。
『お前は娘などではない!人の心を惑わす魔女だ…消えろ!二度とその面を見せるんじゃない!』
『あっ…えっ?…い、嫌だっ!嫌だよ!!父さん!?』
それからほどなくして父は人々に教えを説く事をやめた。魔法の力で何を言おうが受け入れる人々に教えを説くのは無駄だと悟ったからだ。それでも信者たちは父の話を聞こうと教会に押し掛けてきた。
そのストレスもあってか父は酒に入り浸るようになった。夢と現実の区別がつかなくなる程に酒に溺れ、聖職者であった父は狂い、そして…
『………アタシの祈りが、家族を壊しちまった。はっ…はははっ!あははははっ!!』
自分のみを残して家族は皆錯乱した父によって殺されてしまった。父も最後には自害したようで教会にはこの世からいなくなった家族が安らかに眠っていた。冷たくなった妹の手を握り、彼女は心に誓う。
他人の都合を知りもせず、勝手な願い事をしたせいで結局誰もが不幸になった。だから、もう決して他人の為に魔法を使ったりしない。この力は…全て自分のためだけに使い切ると。
そんな考えを持ったからか杏子の固有の魔法【幻覚】はいつの間にか使う事はできなくなっていた。いや、自分が無意識で封印してしまっていたのだ。使う度にあのトラウマを思い起こしてしまうから…それが原因で師匠のマミとの関係にも軋轢が生じてしまう。
『佐倉さん…いい加減にして!あなたの家族の事は残念だったけれど…そんな意地をはっているといずれあなたは死んでしまうわ!』
『マミさん…あなたに…!事故で偶然家族が死んでしまったお前に、何がわかるってんだ!!』
つい勢いで発してしまったその言葉。涙を流してしまった彼女を見て罪悪感が生まれる。しかし、もう後には引けない。自分を心配してくれたマミを傷つけてしまった。それにこれまでのように魔法が満足に使えない自分がいればマミに迷惑がかかってしまう。そう思った杏子は…
『…アンタとはもうここまでだ。世話になったな…マミ』
『あっ…ま、待って!佐倉さん…!待って!』
『あなたは独りで平気なの?孤独に耐えられるの?』
それに『あんたと敵対するよりずっとマシさ』と答えた杏子は見滝原を後にした。以上が杏子の過去だ。マミは…独りで平気ではなかった。孤独に耐えられなかった。杏子が離れてしまってから彼女にはキュゥべえしか心のより所がなかったのだ。
杏子は知らないがそんなキュゥべえにまで裏切られてしまったマミが絶望してしまうのは仕方がない事だろう。
「…マミ」
過去を振り返った事により、もう杏子の心に迷いはなくなった。マミは裏切ってしまった自分の言葉などもう聞いてくれないかもしれない…しかし、原因を作ったのが自分なのだとしたら。
「アタシが止めるしかねえじゃねえか…!」
再び立ち上がる杏子を見てキュゥべえは首を振っていた。おそらくこのまま絶望し、魔女になってくれる事を期待していたのだろう。だが、立ち直ってしまったものは仕方がないと意識を切り替え、被害に合わないようにシャンデリアから彼女たちを見下ろしていた。
「っ!?おっと!」
(っ~╹ )っ<ぽよ!
マミを救う為にずっと呼びかけを続けていたカービィがゴムボールのように跳ねながら杏子の元へ飛んできた。それを受け止めてやり、降ろしてやる杏子。
「どうだ?へばったりなんかしてないよな?」
c(╹◡╹)っコクコク
笑顔で頷いてみせるカービィに釣られて杏子も笑みをこぼす。遠くで離れてそれを見ていたマミは身体の周りに魔法陣を展開させて、魔法少女の時に使っていたマスケット銃を展開させていく。その数10を越え、50を越え…100を越える!
「よし!いくか、カービィ!」
∩
(╹◡╹)っ<ぽよっ!
その無限の魔弾とも言えるマスケット銃を意に介す事なく突っ込んでいく二人。この悲しき戦いの終わりはもう近い…
思ったより長くなってしまいましたね。次回決着…のはずです。
【魔法少女たちのイメージ】
鹿目さん→可愛い、小動物みたい
さやかちゃん→かっこいい。友達になりたい
マミさん→マミさん
杏子→かっこいい。でも、くさそう
ほむら→せめて追撃までは頑張ろう?あとmagia流して…
皆さんはどうでしょうか?