「ああ…そんな…まどかぁ…」
まどかの名前を呼んで泣き崩れたのは完全に記憶が戻った暁美ほむらで彼女の嗚咽がこの場に響く。それを顔こそ向ける事はないが、悲痛な面持ちで目を瞑り彼女の代わりに言葉を発する者がいた。
「アンタ、それが何を意味するのか…わかって言ってんのか?」
「…うん。私は魔法少女になるって事は私の為に頑張ってくれたほむらちゃんの想いを踏みにじる事になる…でも、私は叶えてみたい願いを見つけたの」
佐倉杏子の鋭い視線と言葉にも一歩も引く事なく、毅然とした態度で言葉を返す鹿目まどか。それだけで言葉での説得はもはや不可能であると考えた杏子はそうか…と一言。そして…
「…部外者のアタシが兎や角言う筋合いはねぇ事はわかってる。けどな、一つだけ言わせろ」
「うん」
「マミやアンタの親友の死を絶対に無駄にするな。アタシが言いたいのはそれだけさ」
そう言うと杏子は机に中身のつまったビニール袋を置いて出ていってしまった。半透明な袋から見えるその中身はグリーフシードでほむらから貰ったもの以上の数が入っている。
「杏子…まさか…」
“ショッキングな出来事が続いたからかな?彼女はもう絶望して死ぬ気なのかもね。まあいようがいまいが変わらない…そうだろう?暁美ほむら”
「黙れ…!誰のせいでこんな事になったと思っているの!?お前が…!!」
“そうだね…僕にも落ち度はあったのは認めてあげよう。でも、元はと言えば君が無駄に時を巻き戻したりしなければ結果は変わっていた。君の話では一番最初に犠牲になったのは鹿目まどかと巴マミだけだったと言うじゃないか”
「あ…ああっ…ち、ちが…そんな!そんな、つもりは…!」
“違わない。君がしているのはただの自己満足だ。第一約束とか言ってたけど、この時間軸の鹿目まどかと君の時間軸の鹿目まどかとは別人だろう?何の意味も…”
「キュゥべえ!」
非情な言葉でたたみかけようとするキュゥべえと顔を抑えてわなわなと震えるほむらの間に庇うようにまどかが立った。その胸にはむっとした表情でキュゥべえを睨むカービィもいる。
「これ以上ほむらちゃんを絶望させるようなら私は絶対に契約しないよ。だからもうやめて!」
ほむらがパッと涙に濡れた顔を上げる。キュゥべえのルビー色の瞳も一際大きく輝いたような気がした。やれやれと言わんばかりにキュゥべえは首を振ってまどかを見る。
“待ちわびたよ、まどか…さあ、叶えたい願い事を言ってごらん?僕がなんでも叶えてあげるよ”
「まどか…ダメ…ダメっ!」
まどかの背後からすがるような声が聞こえる。記憶が戻り、クールだった彼女からは想像も出来ない程に動揺していた。
「…その前に少しだけほむらちゃんとカービィとで話させて。最後に伝えたい事があるの」
“それくらい、いくらでも待ってあげるよ。じゃあ宇宙の為に死んでくれる気になったらまた声をかけてね!”
そうしてキュゥべえも窓から立ち去っていた。ふぅ…と一息ついたまどか。
その時、しどろもどろになりながらもほむらが立ち上がったかと思えば…突然変身する。そして、左手の盾に手をかけて時間停止をしようとしていた。
「私は…何度でも…繰り返す!」
「あっ!?ダメっ!!」
( つ >o<c)彡彡彡
だが、それはするりとまどかの胸をすり抜けたカービィの吸い込みによって阻止され、怯んだその隙にまどかがほむらを押し倒す。
魔法少女の力ならば一般人に過ぎないまどかを振りほどく事など容易い事だろうが、まどかを傷つける事はしないほむらにはそんな事が出来るはずもなく。力無くもがく事しかしない。
「は、離して!まどか!」
「離さない!!絶対に離さないからっ!」
ほむらは手首も掴まれてまどかに馬乗りになられていた。それでももがき続けるほむらの頭にポンポンと手が置かれた。カービィだ。
( つ╹◡╹ )つ<だいじょーぶ!
「…?大丈夫なんかじゃ、ないわっ!マミも美樹さやかも死んで杏子もいない…武器もロクにない私一人ではワルプルギスの夜を越えられない…まどかも契約してしまう…!!もう…これ以上は無理よ!!」
「ほむらちゃん…ありがとう」
「えっ?」
驚いた様子でほむらが顔を上げた。そこにあったのは自分を犠牲にする事も厭わない優しくて強い少女の笑顔。馬乗りをやめたまどかはお尻をはたいて立ち上がると驚愕するほむらの手を握って立ち上がらせる。
「ほむらちゃんが今日まで頑張ってきてくれた事…私は無駄になんてしない。ね、カービィ」
( ╹◡╹ )<ぽよっ!
任せろと言わんばかりに胸を張るカービィ。まどかは彼を撫でた後に再びほむらへと向き直る。
「ずっとカービィと一緒に考えてきたの。どうすれば皆を救えるか…ハッピーエンドで終えられるか」
「そんな事…出来ないわ。何を願おうと最強の魔法少女であるあなたが奇跡や魔法で誰かを救う事は同時に世界の崩壊を意味するわ。いつかあなたが魔女となって世界を滅ぼす事になるのよ?」
「見てきたんだね。私がそうなってしまう所…」
「ええ…魔法少女に希望も幸せもないわ!だから、まどか…お願いだから考え直し…「ほむらちゃん」」
ギュッとほむらの身体を優しく包み込むまどか。そして、彼女の耳元で自分の願いを告げた。それを聞いたほむらは目が点となり、離れたまどかと足元にいるカービィを交互に見ていた。
「………えっ?ほ、本当にそんな事が出来るの?」
「えへへ、本当の事言うとわかんない。でも!」
( つ╹◡╹ )つ<みんなすくう!!
「うん、だからほむらちゃん!力を貸して!!」
「希望を掴む為に!このまま絶望で終わらせない為に!」
………
……
…
台風などとは言えない程の強い風に轟々と建物が軋むような音を立てていた。やがて、地響きがしたかと思えば外から何かが崩れるような大きな音が響いてくる。
少女、鹿目まどかの隣には彼女の両親と弟、だけではなく気まずそうに座る暁美ほむらの姿もあった。さらに周囲には不安に揺れる百人余りの人々がここ見滝原中学校の体育館に避難していた。
“確かにいくらでも待つとは言ったさ…でも”
どこからともなくキュゥべえの声がまどかとほむら、盾の中で気合十分といった様子のカービィへ届く。
午前7時を過ぎた所で突発的異常気象に伴う緊急避難指示が見滝原全土に発令されていた。そう今日は…
“ワルプルギスの夜がもう来てしまったよ。君は一体どうする気なんだい?まあ…気が向いたら外に来るといい”
「…ママ、ちょっとトイレ行ってくるね」
「あ、まどか…私もいくわ」
パッと停電が起きてどよめく人々。チラリと時計を見たほむらがまどかに対して頷いたかと思えば、二人はあらかじめ示しておいたトイレ作戦でこの体育館から出る。そして、雷鳴の灯りを頼りに渡り廊下を駆け出していく。人もいない為、カービィも飛び出して併走していた。
┣¨┣¨┣¨ ε=ε=(っ╹◡╹)っ<ぽよっ!
「………カービィ…まどか…」
窓からはまだ朝だと言うのに空に立ちこめる暗雲と町中に起こっている停電のせいで真っ暗だ。そんな中、不意に立ち止まったほむらが口を開く。うん?とまどかとカービィが揃って振り返った。その顔はとても穏やかで迷いなどもはや存在しないだろう。
「ふっ…やっぱりあなた達は似てるわね…」
「えっ?そ、そうかなぁ…えへへ」
(っ╹~╹c)<???
「まどかとカービィの言う通りになってもならなくても、多分これが私達の最後になるわ。だから、今のうちに全部伝えておきたくて…」
一気に時が飛びました。そして、今回はカービィの出番少なめです。ですが、次回以降はきっと…
多分あと少しで終わります。構想は練っていたのになぜ過去の自分はこれが出来なかったのか…