「カービィ…!すごい…なんだか神様みたい…」
“君が本来持つべきだった力だ。それがカービィの無限の力と合わさって…僕達の想像を遥かに越える力を生み出した…!”
꒰ঌc(╹◡╹୨୧)໒꒱∮<はぁい!
すっとぼけた顔でただそこに立っているだけだと言うのにほとばしる圧倒的な威圧感と神々しいオーラが周囲を覆っていた。
それと同時に空がパッと明るくなる。澄み切った空はどこまでも青が広がっていて、吹き荒れていた暴風も気持ちのいいそよ風へと変わる。
「これって…カービィの力?」
“いや…違う…まだ彼は何もしていない。なのに、何故…ワルプルギスの夜が消えた…?いや、消えたんじゃない…まさか、暁美ほむら!”
꒰ঌc(╹~╹୨୧)໒꒱∮<ほむら?
“…まさかここまでやるなんて思わなかった…彼女は、暁美ほむらは…見滝原を守りきってみせたよ。ワルプルギスの夜を越えたんだ”
「いったいどうやって!?杏子ちゃんと一緒に倒したの!?」
“…違うよ。彼女は倒したんじゃない。彼女は自らを犠牲にしてワルプルギスの夜を移動させた。そう…”
………
……
…時が遡る事、数分前。
「はぁ…はぁ…くっ!」
瓦礫を押しのけて出てきたのは黒髪の少女、暁美ほむら。頭からとめどなく流れる血を拭い、彼女は暗雲立ち込める空を見上げる。その視線の先には最悪の魔女【ワルプルギスの夜】が顕現していた。何もかもが規格外なワルプルギスの夜は結界を持たず、姿を現せば最後そこにいる人も文明も…何もかもが破壊される。
古来より伝えられてきた伝説の魔女を相手にこれまでに幾多の魔法少女が戦いを挑んできたが、そのいずれも討伐はおろか進行を防ぐ事すら出来ていない。そんな魔女に対して暁美ほむらは絶望的にも思える戦いを挑んでいた。
「まだ、私は生きているわ…ワルプルギスの夜!」
天より響く愉快げな笑い声は何をしても無駄だと言っているように聞こえていた。そんなワルプルギスの夜に対し、ほむらはそう啖呵をきって銃口を空へと向ける。伝説を相手にするには頼りない武器だが、ほむらにはもうこれしか残されていなかった。だが、その攻撃でさえも放つ事がままならない。なぜなら…
アハハハハッ!!
「…っ!しまっ…」
地上で叫ぶ少女を意に介する事なく進行を続けるワルプルギスの夜。そんな超特大の魔女に注意が向いていた為、ほむらは左右から音もなく迫り来る影に気がつかなかった。鋭利な槍と剣を持つ影はそれらを突き出して彼女を貫かんとする。
まずいと思い、咄嗟に左腕に手をかけるほむらだが、そこに本来あるべきものはなく、ただ空を切ってしまう。
「ちっ…バカヤロー!」
目と鼻の先まできていた影がそのまま武器を振り上げたその時、突然影の足元より赤い槍が伸びた。それは武器を振り上げていた影を正確に貫き、ほむらは事なきを得る。
「助かったわ…杏子…!うっ…」
「おい、テメエ…ふざけんじゃねーぞ!」
立っているのもやっとな状態のほむらの隣に佐倉杏子が降り立つ。杏子の顔は誰が見ても不機嫌である事がわかる程に怒りを滲ませていた。
「戦えないならもう下がれ!時間停止も出来ない!武器もないテメエなんざもう足手まといでしかねーんだよ!バカ!」
杏子の怒りの理由はただ一つ。言い方こそきついもののほむらの身を案じての事であった。残された武器もワルプルギスの夜を相手にするには頼りないマシンガンのみ。攻撃を防ぐ為の魔力も尽きた。そして、時を止める為に必要な小盾は希望に託してその手にはなかった。
そんな状態でありながらもなおワルプルギスの夜を睨み、闘志をみなぎらせるほむらは杏子にとってはただの死にたがりにしか見えず、ヤケになっているようにしか見えない。だから、杏子は半ば強引にも彼女を下がらせようとしていたのだが…
「そうかもしれないわね…だけど、このままじゃ見滝原の町も人も…全てが滅んでしまう!そんな事は絶対にさせないわ」
「…!?何がアンタをそうさせる?そういうタマじゃなかったはずだ、アンタは…」
「それが今私の出来る唯一の贖罪になるからよ。もっともこれもただの自己満足でしかないけど…」
「あん?贖罪だぁ…?」
そこまで言った所でワルプルギスの夜が動きを見せた。口元にメラメラと燃えたぎる炎。攻撃を仕掛けてくる…瞬時にそう判断した二人はその場を離れ、周囲の瓦礫の影へ隠れる。読み通り炎が口から吐き出された。それは姿を隠したほむらと杏子をあぶりだす為に周辺を念入りに焼き焦がしていく。
『きっとこの時間軸で全ての片がつくわ。その結果、どうなるかは私にも全く想像がつかない』
『カービィがまどかの力を手に入れるとか言ってたな…はっ、確かにどうなるのやらだ。でもそれじゃあアンタがこうまでして戦う理由にはならねえだろ?』
凄まじい熱気と溢れる煙にたまらず姿を現してその場から離れる二人はテレパシーで会話を続ける。出てきた二人にワルプルギスの夜が生み出した影が襲いかかる。
『…ワルプルギスの夜が進行するあの方向。あの先に何があるかわかる?』
回り込んできた影に応戦するほむら。だが、持っていたマシンガンの弾薬が切れた為か引き金を引いてもカチカチという音しかならなくなってしまう。それを見逃す影ではなく、丸腰の彼女に対して剣と槍が突き立てられた。ほむらの鮮血が影を赤く染める。
「っ!!ほむらっ!!!」
貫かれた腹部や腕から血を吹き出す。同様に襲われていた杏子は魔力を最大まで高めて周囲の影を薙ぎ払うと慌てて彼女の元に駆け出し、得物を突き立てる影を貫く。
霧散した闇は穢れとなって消えたが、ほむらは血を吐いて片膝をついた。ソウルジェムへの致命傷こそ避けているもののもはや限界だ。ワルプルギスの夜が再び口元に炎を溜めているのを確認しつつ、舌打ちした杏子は彼女を背負ってこの場から撤退する。
「…げほっ…あっちにはマミの家もあるし、美樹さやかの家だってある。風見野も…奴の通り道に近いでしょう?」
「っ!…ホントどういう風の吹き回しだよ。まるで…アイツらみてえじゃねえか…」
「この町を守っていた魔法少女はもういない。でも、思い返してみれば…私もこの見滝原で生まれた魔法少女の一人で…かっこいい…あの人達に…憧れてた…」
火を吹くワルプルギスの夜と襲い来る影の猛攻をほむらを背負いながらも懸命に耐える杏子。手を組んで鎖の結界を生み出した彼女だったが、ワルプルギスの夜の攻撃を前にその鎖も徐々にヒビ割れていく。
「…貴方もそうなんでしょう?杏子…だから、来てくれた…」
「…気まぐれだよ。何一つ守れない…何も出来なかったクソみたいな人生だったんだ。最後に華々しく散ってやろうと考えただけさ!」
燃えたぎる炎は幾多にも重なる鎖を焼き焦がし、杏子とほむらに向かって伸びる。鎖の数を増やして二重、三重、重ねていくがそれでも炎の勢いは止まらない。
なんとか押しとどめる杏子の手に何かが重なる。それは彼女に背負われていたほむらの手だ。
「ふっ、私も最後に皆が守りたかったものを…これまでまどかの為に、自分の為に見捨ててきたものを守りたい…そう思ったのよ!」
その言葉と同時にほむらの残った魔力が杏子へと送られる。重ねられたその手に光るソウルジェムは黒く変色し、今にも溢れ出しそうな程に穢れを放っていた。
「まさか…お前!!」
パキ、パキパキッ…ほむらのソウルジェムは音を立ててヒビ割れていく。それと同時に莫大な魔力が杏子へと流れ込む。強まった魔力は暴走し、ワルプルギスの夜の放った炎を防ぐどころかかき消す事に成功した。だが、その代償は大きい。
「くっ…ほ、ほむら!?」
爆風で後方へと吹き飛ばされた杏子は瓦礫に叩きつけられながらもダメージはない。だが、背負っていたはずのほむらはいない。彼女は…いや、彼女だったものはワルプルギスの夜と共にこの見滝原から完全に消えていた。あるのは砂時計、それと彼岸花を組み合わせたような魔女の結界のみ。
「あのバカ…!魔女に…魔女になったってのかよ」
策も武器もない。保有していた魔力も全て使い切った。そんな暁美ほむらの最後のとっておき。それが魔女化。彼女はわざと魔女になる事でワルプルギスの夜を自らの魔女結界へと引き込んだのだ。
呆然と立ち尽くす杏子の前にはほむらの魔女結界がある。そして、その反応もすぐに消えた。そう、いくら魔女になったとはいえ相手は伝説の魔女で到底勝ち目がない。結果は見えていた事だった。杏子は槍を構え、いつでも動けるように警戒する。しかし…
「出てこねえ…?まさか…アイツ…やりやがったのか!?」
魔女結界は完全に霧散し、魔女となった暁美ほむらの気配も消えていた。しかし、一向にワルプルギスの夜は顕現しない。魔女には性質がある。魔女結界も同様だ。
巴マミが魔女化した際の事を思い出した杏子は悟った。魔女の性質なり、敗れた時には魔女結界を別の場所に開くなりでワルプルギスの夜を退けて見せたのだと。そう、彼女は本当に見滝原を守りきって見せたのだ。
「…あのバカ…カッコつけやがって…カービィに、まどかにどう言えばいいんだよ!クソッ!!」
残った杏子のやり場のない怒りが空に響く。その空は綺麗な青さで晴れ渡り、彼女の怒りを受け止めていた。だが、それと同時に避難所の近くから天に昇る凄まじい光の柱と遅れて飛び立つピンクの影が見えた。
それがなんなのか。直感で理解した杏子は流星の如く空を駆ける星に願う。絶望はもう終わった。なら、次に起こるのは希望のはずなのだと。たった一度でいいから本当の奇跡を見せてくれと…
꒰ঌc(╹◡╹୨୧)໒꒱∮<はぁい!
カービィの声が聞こえた気がした。間の抜けた声ではあったが、何故かとっても頼もしい…そんな声であった。
ほむほむが頑張ったせいでカービィが出られませんでした。という事で次回こそ真打ち登場です。お詫びに今日か明日か明後日投稿します。多分、カンケッツする…はず。しない可能性も…あったっぴ…