コツコツコツ…全国を探しても珍しい全面ガラス張りの廊下をまどかに先導されて歩くほむら。今は授業中である為か、出歩く生徒や先生はまどかとほむらを除いていない。それは不幸中の幸いといったところだろう。なぜなら…
『ぽよ!ぽよぽよ!』
「「………」」
ほむら達が教室を出た後もカービィの声がずっと発されていたからだ。携帯の着信音と誤魔化したほむらだが、さすがにカービィの存在を知っているまどかは騙す事はできないだろう…そう思っていると意を決したという様子のまどかが口を開く。
「その…あ、暁美さん…!」
「………ほむらでいいわ。何かしら、まどか?」
オドオドしているまどかとは対照的に冷静に返事をするほむら。だが、彼女はぽよぽよ声を少しでも抑える為か、指輪ごと中指をギュッと握りしめていた。これで廊下に響く声も少しはマシになる。
「さっきから暁美さんの方から聞こえてくるこの声ってカービィの声…だよね…あっ!カービィって言うのは…きほんはまるって感じの子で…」
《まろか~!まろか~!!》
彼女の声が聞こえたのか、まどかの名前を叫び始めたカービィ。もうどうにでもなれ…ほむらはため息をついて左腕に円盤状の盾を展開させる。そして…
「カービィが出てきた!?ど、どどどうなってるのっ…」
ぽにゅっと言う独特な音と立てて床に顔を思いっきり突っ込んだカービィがまどかの目の前に現れた!彼は起きあがるとキョロキョロと周りを見渡し、頭にハテナマークを浮かべている。
そして、ほむらすかさずカービィを抱きかかえて円盤状の小盾を傾けた。すると…
「ねえ!ほ、ほむらちゃ…」
まるでビデオの停止ボタンを押したかのようにまどかの言葉が不意に途切れる。いや…まどかだけではない。カービィがガラス張りの窓の外を見ると風で揺れていた木も青々とした空に流れる雲も全てが動きを忘れたかのようにその場で静止していたのだ!
それはほむらと彼女が抱きかかえているカービィの二人を除いて…
「…これが私の能力なんだけど、こんな所で見せるとは思わなかったわ。カービィ」
(っ╹~╹ )っ<の~りょくぅ?
「そう、私と私が触れている物以外の時間を止める能力よ。それと…さっきあなたがいたアレも能力の一つね」
時間停止、それと盾の中に物を出し入れできる能力。それが彼女が保有する能力なのだが…カービィは首を傾げてぼんやりとした顔でほむらを見ている。
「どうしたの?何かわからない事がある…?」
( ╹~╹)<おなか、すぃた!
ほむらはここで誤解をしていた事に気づいた。盾の中の空間で目が覚めたカービィ、てっきりどうしてここにいるんだろう?そして、ほむらはどこにいるんだろう?それを説明をしてほしくてカービィはずっと声をあげていたものだと思っていた。
しかし、実際は空腹を訴えてほむらを呼んでいただけだったのだ!
「あなた、よく悩みのない子だとかって言われるでしょ…」
( っ'~ ')っ<んむっ!
つんつんとカービィの頬を軽くつつきながら呆れ混じりに呟くほむらにカービィは少し怒ったような雰囲気でそっぽを向く。
その子供のような仕草に笑ってしまうほむらであったが、ふとカービィが口をモゴモゴさせている事に気がついた。
「カービィ…?何を食べてるの?盾の中には食べられるような物はなかったと思うけれど」
( っ ・-)<ペッ…まずぃ…
そう言ってカービィが吐き出したのは拳銃に装填する弾だ。カランコロンと音を立てて床に転がるソレを見た時、ほむらは無性に嫌な予感が頭の中をよぎる。
(いや…まさか、カービィが盾の中の物を食べるなんて事は…)
急いで盾の中の物を確認するほむら。彼女が手を突っ込んで中をまさぐると…スカッと空気を掴んだ感触がする。やはり、嫌な予感は的中していた。
「………全部ない…手榴弾からロケットランチャー…その他もろもろ全部無くなってる…食べた、の?」
( っ~╹)<ぽよ?
それにはしばらく放心していたほむらだったが深いため息をつき、起こってしまった事は仕方がないと気持ちを切り替える。
武器はまた手に入れる事ができるのだ…子供を前に怒りを露わにする程、ほむらの心は狭くはなかった。言い聞かせてなかった自分が悪いと考え、彼の頭をそっと撫でる。
「カービィ…お昼まで静かに我慢できそう?我慢したら今日の夕飯、好きなものを食べさせてあげる」
( - ~ - )<………あいっ
盾の中では遊んでもいいけどあまりうるさくしない事。それと何か緊急の用事がある時以外は話しかけない事。
それを守れたら好きなものを食べさせる事を条件にしぶしぶ盾の中へ戻っていったカービィ。これでひとまず問題は片付いた…残る問題は…
「まどかをどうするか、ね…」
口元に手を当ててあたふたした状態で動きを止めているまどかを見ながらほむらは考える。もういっその事、自分の素性とカービィの事を話してしまおうか…
もうそんな事まで考えてしまっていたが頭をぶんぶんと横に振り、しばらく考えた末にほむらは溜め息をついて時間停止を解いた。
………
……
…
「ねえ…!ほむらちゃん!いったい何がどうなって…あれ?あの子は…」
先ほど何かのマジックのように目の前に突然現れたカービィの事を尋ねようとしたまどか。
しかし、当のカービィは影も形もなくこの場にいるのはまどかとほむらの二人だけ。周りを見渡してカービィを探すまどかにほむらは…
「………何の事かしら?」
ほむらが選んだのはいかにも、私は何も見ていませんし聞いていませんといった様子で振る舞う事だった。
少し…いやかなり厳しいかもしれないがカービィは姿を消し、能力を解除した際に左手の盾も消えた為、この場に残った証拠は何もない。
「えっ!?か、カービィだよ!さっきここに…いたはずなんだけど…あっ!私の名前を呼ぶ声も聞こえたよね?」
「カービィ?声?さて…私には何の事だかさっぱりね。それより保健室はこの先だったかしら?」
「そ、そうだけどぉ…もうカービィの声も聞こえないし…気のせいなのかな?」
自分は確かにこの目で見たような気がした…けれど、一緒にいた彼女が見ていないのであればあれは幻か何かだったのではないか?まどかは徐々にそう考え始めていた。
非日常的な現象は案外簡単に丸め込めるものだ、これでまどかもスルーしてくれるはず…そう確信するほむらであったが…
「…また会えたかと思ったんだけどな…家にカービィが喜びそうな”おやつ”も用意してあるのに…」
マズいとほむらが思った時には遅かった。盾の中のカービィは敏感に
「………放課後、あいてる?」
「………うん、カービィの事とかいろいろ教えてね。ほむらちゃん」
………
……
…
それ以降はカービィは約束を守って静かにしていた(昼寝をしていた)為、特に問題はなくこの日の授業を終えるほむら。
転校生で思わず目を引いてしまう程の美少女…なおかつ授業では成績優秀、運動神経抜群と超ハイスペックぶりを見せた彼女にはクラスメート達から次々と遊びのお誘いがくる。
しかし、先約があるからまた今度と断った彼女は皆に挨拶をしてまどかと待ち合わせた校門の前に行った。するとそこには…
「よっ!転校生!」
「ごめんね、ほむらちゃん…私もダメだってさやかちゃんには言ったんだけど…」
同じクラスでまどかと仲が良い美樹さやかがまどかと共に待っていたのだ。はぁ…と深いため息をついたほむらは重い足取りで彼女たちの隣へ行く。
「あたしは美樹さやかだよ!よろしく~っ!」
「…ついてくるのは構わないけどこの事は絶対に他の人に話さない事。いいわね、美樹さん?」
「りょ~かい!軽くまどかから聞いたんだけど…デュエルディスクみたいな物からピカチュウみたいなモンスターを召喚?できるんでしょ?」
「………ん?」
カービィがきた事によってクラスの全員に動物好き認定されるわ、魔女とのたたかいに備えていた武器が全て消滅するわ。ほむらェ…