絆の証は契約と共に   作:伊達 翼

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第十話『烈火の契約』

 忍が初めて魔獣を狩ってから数日。

 一行は山を越える過程で、襲ってくる魔獣だけを退治しながら進んでいた。

 

 というのも天狼の存在が大きかった。

 いくら魔獣の基礎知能が低いとは言え、元霊獣に喧嘩を売るようなことは基本的に無いからである。

 だが、何事にも例外というものはあり、たとえ霊獣が相手でも襲い掛かってくる魔獣は存在する。

 その場合、大抵は群れていることが多いのだが、稀に魔獣の方が霊獣よりも強いこともあるので、自然界で魔獣と霊獣の争いというのも絶えない。

 

 ただ、今回に限っては元霊獣であり、上位個体でもある天狼の威圧感に気圧されて単独の魔獣はそれほど寄り付かず、群れで行動している魔獣達が襲い掛かってきたのだ。

 しかし、群れと言っても山に住む魔獣なので、数は少数で多くても5、6匹程度である。

 

 ゼロ、天狼、白雪、忍、明香音はそんな魔獣の群れとの戦闘をしながら山頂を目指していた。

 特に忍と明香音は苦戦しながらも魔獣を狩ることで実戦を体験し、色々と学ばされていた。

 

 そんな風に山頂を目指す途中のこと。

 

「お? 洞窟か」

 

 先頭を歩いていたゼロが洞窟を見つける。

 

「ふむ…」

 

「どうしたの? おじさん」

 

 洞窟を見ながら立ち止まるゼロに忍が尋ねる。

 

「いや、ちょっと寄り道してくか」

 

「「寄り道?」」

 

「あぁ、この洞窟にな」

 

 そう言ってゼロは親指で洞窟を指す。

 

「なにかの住処だったらどうする気ですか?」

 

「ま、そん時はそん時さ。こういう狭いとこでの戦いや力加減なんかも覚えてもらわんとな」

 

 白雪の懸念をゼロはそのように言っていた。

 

「じゃ、行くぞ~」

 

 そして、洞窟内へと歩いていく。

 

「あっ、おじさん、待ってよ!」

 

「不安しかないんですが…」

 

「えぇ、本当に…」

 

『だが、行くしかあるまい』

 

 忍がゼロを追いかけるのを、明香音、白雪、天狼の順で追う。

 

「『ライト』」

 

 先頭を歩くゼロが閃光属性の魔法で光源を作って洞窟内を照らす。

 

『(こやつ…やはり、全属性を…)』

 

 ゼロの魔法を見て天狼は自分の考えが間違ってなかったと改めて思ったとか…。

 

「さてはて、何が出てくるかな~♪」

 

 なんとも楽しげに言うゼロに背後より冷たい視線が三つ注がれる。

 

「何か出てくること前提ですか…」

 

「この人、本当に大丈夫なんでしょうか?」

 

『わからぬ…』

 

 明香音、白雪、天狼が苦言を呈する中…

 

「でも、おじさんって何でも出来るよね?」

 

「"何でも"は出来んぞ? ま、大抵のことなら出来る自負はあるが」

 

「それって、"何でも"じゃないの?」

 

「まぁ、そうとも言うかもな。だが、俺にだって絶対に出来ないこともある」

 

「それは?」

 

「死者を蘇らせることだ」

 

 忍の質問にゼロはそう答えていた。

 

「人の寿命は霊獣や妖怪、龍種に比べて短い。だからこそ、人々は限りある命の期間に生き足掻く。それは決して無様なんかじゃない。儚く弱い存在でも、人は強く生きていけるんだ。命は限りあるからこそ輝ける。それが人間の美点であり、弱点でもある。俺はそんな風に考えてるんだよ。だからこそ、死した命を蘇らせることなんて出来やしない。それはどんな理由であっても犯してはならない命への冒涜だからな」

 

 洞窟内で話してるためか、やけに反響したゼロの声が後ろから続く明香音達の耳にも届く。

 

「……………………」

 

 尋ねた忍も今のゼロの言葉に押し黙ってしまう。

 

「「……………………」」

 

『……………………』

 

 それを後ろで聞いてた明香音達もゼロの言葉に神妙な表情をしていた。

 

「たまには俺も良いこと言うだろ?」

 

 その一言がなければ、なおよかったというに…。

 

 

 

 そうして、しばらく洞窟内を歩いていると…

 

「しっかし、なんか妙に暑くなってきてないか?」

 

 どことなく気温が上がっているような気がしてならなかったゼロがそのように後ろの忍達に振り返りながら尋ねるが…

 

「うぅ~…」

 

「暑い…」

 

「……………………」

 

『ぬぅ…』

 

 滝のような汗を流す忍、明香音、白雪がおり、天狼も苦しそうだった。

 特に白雪なんてグロッキー状態だ。

 

「ありゃ?」

 

 それに今更ながら気づいたゼロは…

 

「こりゃ、この洞窟の地下にマグマでも流れてたか?」

 

 そんな風に冷静に状況を分析していたが、今気にすべきはそこじゃない。

 

「(マグマが流れてるなら、どこかに出口か、マグマが溜まってるポイントがあるはず。となると、この洞窟は火山に繋がってたか。ま、こういう環境にも適応してもらうにはちょうどいいか)」

 

 ゼロはこの状況をも利用するらしい。

 ちなみに北からの寒波対策で着ていた防寒具も今では完全に逆効果でしかないが…。

 

「さ、前進してみるか。何かあるかもだしな。ついでだから、忍は属性と結界を応用してみな」

 

「属性と、結界…?」

 

「あぁ、今のお前にはどんな属性が扱えるか? それと結界術を併用すれば、問題はない。但し、あんまり本気は出すなよ? 何事も"適度"が一番いいんだ」

 

「僕の扱える属性…」

 

 ゼロの言葉に忍はしばし考えてから…

 

「えっと…氷結、結界…?」

 

 忍が自分と明香音、白雪、天狼を覆う結界を張ると、その中にひんやりとした空気が流れる。

 

「こんな感じでいいの?」

 

「……何故、俺をハブったか知らんが…まぁいいだろう。結界にもそういう使い方もあるわけだ。ちゃんと覚えておけよ?」

 

「うん!」

 

 何気なくゼロをハブったのはゼロが平気そうだったからであって、決して故意にやった訳ではない。

 

「みんな、大丈夫?」

 

「え、えぇ…なんとか…」

 

「……申し訳ありません、我が君」

 

『助かりました、我が主よ』

 

 忍の結界のおかげで多少は回復したらしい明香音達はそのように言う。

 

「ほら、とっとと行くぞ?」

 

 ゼロが再び先導して洞窟内を闊歩していく。

 

「あ、おじさん、待ってよ!」

 

 結界を維持しながら忍達もゼロを追う。

 

 

 

 さらに奥へと進むと、洞窟から抜け、開けた場所へと出ていた。

 

「やはり、火山だったか…」

 

 流石のゼロも汗をダラダラと流しながら目の前の光景を見る。

 その光景とは、マグマの溜まり場となっている場所で、周囲にはマグマの滝もいくつかあるようで、天井にも穴が開いていて空も見えていた。

 

「忍、結界を維持してろよ? この熱気はお前等には流石に危ないからな」

 

「う、うん」

 

 じゃあ、ゼロは大丈夫なのか?

 という疑問もあったが、ゼロは汗を掻いてるものの、呼吸が乱れたりはしていなかった。

 

「そして、こういう場所には…」

 

 ゼロが天井を見ると…

 

『キュオオォォォン!!』

 

 何かの鳴き声が轟いていた。

 

「十中八九、何かいるわな!」

 

 天井を見上げたゼロは楽しげにそう言っていた。

 

「な、なに!?」

 

 忍達も驚いて天井の方を見ると、そこには…

 

『キュオオォォォン!!』

 

 3対6枚の翼を持つ巨大な火の鳥が空中に佇んでいた。

 

「この波動は…魔獣か。しかもそこそこ強い部類と見た!」

 

 そう言うと、ゼロは嬉々として前に出る。

 

『キュオオォォォン!!』

 

 そのゼロに対し、火の鳥は威嚇している。

 

「お前等、よく見とけ。俺、本来の戦い方の一端をな!」

 

 言うが早いか、ゼロは一足飛びに跳躍すると一気に火の鳥と同じ高さまで上昇し、そこで"制止"した。

 

「「え?」」

 

「まさか、あれは…!」

 

『浮遊魔法か…!』

 

 突然のゼロの動きに子供2人は目を丸くするが、白雪と天狼はそれにすぐ気づいた。

 

「浮遊魔法?」

 

『我も詳しくはないが…確か、魔法の中でも疾風と暗闇を組み合わせた複合系の魔法だったはずだ』

 

「えぇ…私も帝国で生活していた時に聞いたことが僅かにあるくらいで、詳しくはわかりませんが…確か、契約者でも上級の者にしか扱えないとか…」

 

「そんな魔法をあんな簡単に使うってことは…」

 

 天狼と白雪の言葉に明香音が何かを悟ると…

 

『うむ。あやつ…ゼロは全属性、及び五気を体得しているのだろうな。しかも極めて上位の者…』

 

 天狼が兼ねてから確信を得ていた情報を開示した。

 

「そんな人間…世界に何人もいませんよ。いったい、何体と契約しているというのですか?」

 

 白雪がまるで畏怖したような目をゼロに向けながら、そんな疑問を口にすると…意外なところから答えが返ってきた。

 

「おじさんは…確か、4体としか契約してないよ?」

 

 忍である。

 昔から忍の両親と親交のあったゼロだ。

 当然、忍もゼロが契約していることは知っているし、それがどのような契約紋なのかも見たことがあった。

 但し、忍は実際にゼロの契約獣とは会ったことがないが…。

 

「え!?」

 

『その4体全てが上位個体とでも言うのか?! しかも魔獣、霊獣、妖怪、龍種の!?』

 

 白雪と天狼の目がいよいよもって危険なものを見るような険しい目付きになり、ゼロを見上げていた。

 

「おいおい。人をまるで化け物みたいな言い方は勘弁してくれ。これはちゃんと研鑽を積んできた結果だぞ?」

 

 火の鳥と対峙していたゼロが下で騒いでいる天狼と白雪にそう言っている。

 

『キュオオォォォン!!』

 

 バサリ、バサリと翼を羽ばたかせ、火の鳥の周りに四つの魔法陣が展開される。

 

「ハッ! やっぱ、魔法も使えたか!」

 

 ゼロが楽しげに口の端を上げると、両手を広げて火の鳥と同様に四つの魔法陣を展開する。

 

『キュオオォォォン!!』

 

 火の鳥が鳴き声を上げると、上二つの魔法陣から焔の砲撃がゼロに向けて放たれる。

 

「ハッ! 火力が足りねぇぞ!!」

 

 ゼロもまた上二つの魔法陣から小規模の竜巻を発生させると、焔の砲撃と拮抗させる。

 

『キュオオォォォン!!』

 

 すると火の鳥は下二つの魔法陣から焔の弾丸を無数に忍達に向けて放っていた。

 

「しゃらくせぇ!!」

 

 それを察知していたゼロも下二つの魔法陣から水の散弾を放って迎撃していた。

 

ジュワァァ!!

 

 焔と水が互いに打ち消し合い、水蒸気が発生する。

 その水蒸気を竜巻が吸い、焔の砲撃を押し出していた。

 

「そらそら、それでもうネタ切れか!?」

 

 完全にゼロ優位の状況だ。

 

『キュウウゥゥゥッ!!』

 

 火の鳥は苦しそうに魔法陣を維持しているが、砲撃は明らかに先程までの威力がない。

 

「骨のありそうな魔獣かと思えば、これで詰みか。なんとも呆気な……ん?」

 

 ゼロがそのように呟くと同時に火の鳥は翼を畳むと、ゼロの放つ竜巻の僅かな隙間を縫って突撃を仕掛けてきた。

 

『キュオオォォォン!!』

 

「特攻か?」

 

 ゼロの言うように火の鳥は自らの体に焔を宿し、翼を再び広げることで竜巻を吹き飛ばしながらゼロに特攻を仕掛けていた。

 

「だが、まぁ…俺には効かねぇよ」

 

 言うが早いか、ゼロが右腕に焔を宿して手刀を作ると、それを特攻してくる火の鳥に向けて突き出そうとする。

 

『ッ!!?』

 

 それを見て瞬間的に翼を羽ばたかせて軌道を修正し、火の鳥はゼロの突きを紙一重で回避するが…

 

ズシャッ!!

 

 咄嗟の回避だったため、翼の1枚がゼロの突きで裂かれてしまっていた。

 

「ほぉ? あの一瞬で回避しやがったか。ま、傷一つで済んでよかったな?」

 

『キュオオォォ…』

 

 傷付いた翼を畳み、残った5枚の翼で空中に佇む火の鳥の声は弱々しくなっていた。

 

 

 

 ちなみにゼロの戦い方を見ていた下では…

 

「完全に弱いもの虐めですね」

 

『力量はわかったが…ここまで魔獣に哀れみを感じたことはない』

 

 白雪と天狼がそのように言葉を零し…

 

「忍君。どうしますか?」

 

「う~ん…」

 

 子供達も最初はゼロの戦闘技能に感心していたようだったが、今は魔獣の方を心配していた。

 すると…

 

「?」

 

「どうかしましたか?」

 

「何だか、小さな鳴き声が聞こえてくるような…?」

 

「鳴き声?」

 

「うん」

 

 忍が耳を澄ませて周囲の音を聞いていると…

 

『キュイ、キュイ!』

 

 そんな鳴き声と共にゼロと対峙してる火の鳥を縮小したような小さな火の鳥が飛んできた。

 

「魔獣の、子供…?」

 

「あの鳥の…?」

 

 すると、忍は何を思ったのか…

 

「天狼、結界をお願い。白雪さんも明香音ちゃんをよろしくね」

 

 魔獣の子供の方へと駆け出していた。

 

『主!?』

 

「我が君?!」

 

「忍君!?」

 

 咄嗟のことに天狼は結界を張るに留まり、白雪も結界内の温度の管理で動けず、明香音も流石に危険を感じて動かなったが、忍は自身の周りのみに結界を張って温度調整をしているので単独で動ける。

 

「君、危ないよ!」

 

『キュイ!?』

 

 目の前に突然現れた忍に魔獣の子供は驚く。

 

「これ以上はダメだよ。おじさんの邪魔になる。それに君まで…」

 

『キュイ! キュキュイ!!』

 

 まるで『お前の方こそ邪魔だ!』とでも言うかのように魔獣の子供が忍を威嚇する。

 

『キュキュイ!!』

 

 それでも押し通ろうとする魔獣の子供に…

 

「ダメだったら!」

 

 忍は魔獣の子供に抱き着くようにして捕まえる。

 

『キュイ!!』

 

「熱っ!?」

 

 子供であっても魔力の扱いは心得ているのか、自らの体を発熱させて忍の拘束から逃れようとする。

 

「(あ、熱い…で、でも、ここで放したら、きっと…この子も…)」

 

『キュイィィ!!』

 

 忍の腕の中で暴れる魔獣の子供を強く抱き締めながら…

 

「ダメ。絶対に…いくら強い魔獣だからって…あの魔獣だって、ここでおじさんに討伐なんかさせない…」

 

 忍はそのように呟いていた。

 

『キュイ…?』

 

 魔獣の子供は忍が何を言ってるのかわからなかったが…

 

「おじさん! もうそれ以上はいいよ! おじさんの力は分かったから、もう…!!」

 

『……………………』

 

 忍がこの無益な戦いを止めようとするのだけは、何となくわかった。

 

 

 

 その叫びが聞こえたのか…

 

「あ? ったく、これからって時なのに…興が削がれるぜ」

 

『キュオオォォォン!!』

 

 しかし、火の鳥は目の前の脅威を排除せずにはいられないのだろう。

 再度、自らの体に焔を宿していた。

 

「が、向けられた殺意には殺意で応戦しないとな…!」

 

 ゼロの方も両腕両足に焔を灯していた。

 

 

 

 その光景を見て…

 

「ダメェェェ!!」

 

『キュイィィィ!!』

 

 忍と子供が同時に叫ぶと…

 

カッ!!

 

 紅蓮の輝きが忍と魔獣の子供を包み込んでいた。

 

 

 

 忍と魔獣の子供に起きた現象を感じたのか…

 

「なに!?」

 

『キュオ!?』

 

 ゼロと火の鳥も動きを止めてそちらを見る。

 

「契約…!(この短期間にまた…こいつ、いったい何体とする気だ? いや、それよりも、もしこれが成立したら…魔・気・霊・妖・龍の内、龍以外が全て揃うことになるぞ!? こんなガキの頃でか?!)」

 

 ゼロは忍の異常な契約率に戦慄を覚えていた。

 

 ゼロとしては段階を踏んでいきながら力の使い方や心構えなどの教えをする予定だった。

 しかし、契約とは何時如何な時に起こるかわからない不確定要素だ。

 その時その時に応じて教えていこうという腹積もりでいた。

 

 だが、今の状況…忍は第三の契約の儀式を発現させていた。

 そのキーが何だったのか…おそらくは自分と火の鳥の戦いを止めようとした純粋な想いと魔獣の子供の何かが反応したのではないか…?

 ゼロはそのように考えていた。

 

「(ホント…親友。お前の倅はどういう星の元に生まれたんだよ?)」

 

 ゼロはティエーレンにいる竜也にそのような言葉を心の中で漏らしていた。

 

 

 

 一方、契約の儀式を発現させた忍と魔獣の子供は…

 

『キュ、キュイ!?』

 

 自身の変化に戸惑う魔獣の子供に対し…

 

「………………………」

 

 忍もまさかこんな状況で契約の儀式が発動するとは思わなかったようで、少し呆然としていた。

 

『主よ!』

 

「…はっ!?」

 

 天狼の叫び声で我に返った忍は抱き締めていた力を少し緩めると…

 

「落ち着いて…これは僕と君の契約だよ。でもね…僕達は出会って間もない。なのに、契約が発動した。僕はこの契約を受け入れたいけど、君はどうかな? 受け入れたくないなら断ってもいいよ」

 

『キュイ?』

 

 忍の言葉に首を傾げる魔獣の子供だった。

 

「さ、君はどうしたい?」

 

 優しげな笑みを浮かべて忍が魔獣の子供を解放すると…

 

『キュイィィ!!』

 

 魔獣の子供はそんな鳴き声を上げてゼロと相対している火の鳥の元へと向かい、契約は失敗かと思われると…

 

「っ!」

 

 忍が左手の甲を右手で押さえ、その表情が僅かに歪む。

 

「『焔鷲(えんじゅ)』!」

 

 そして、魔獣の子供に向けてそのように叫んでいた。

 

『母よ! 僕達なら大丈夫です! だから矛を収めてください!』

 

 魔獣の子供…忍が『焔鷲』と呼んだ個体は火の鳥の元へと飛びながら、"人間の言葉"を発していた。

 

『キュオ!?』

 

「マジ、かよ…」

 

 焔鷲が会話したということは契約が成立したことを意味し、よく見ると忍の左手の甲に6枚の翼を広げたような刻印が浮かび上がっていた。

 

「(ただの洞窟探検で契約するとか…どうなのよ?)」

 

 ゼロはただただ目の前の現実に溜息を吐くばかりであった。

 

 こうして忍は第三の契約獣との契約を果たしてしまった。

 この状況にゼロは微妙に胃が痛くなったとかどうとか…。

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