私の半分は獣だ。
私のような者は、半獣と呼ばれる。
この国では、半獣は一人前として認められない。
学ぶことも、働くことも許されない。
人としては半人前、いや、半人前以下だというのだろうか。
私が生まれて、父母は悲しんだだろう。けれど、父母は嘆きよりも深く私を愛してくれた。そう、思う。
私は生まれて直ぐに死んだ。
正しくは、死んだということにされた。
そして田舎で密かに育てられ、物心つくころに父母の元に戻った。
その時に、きつく言われたことは絶対に人型をとりつづける、ということ。
半獣であることを、決して人に知られてはならない、ということ。
私の戸籍には、半獣とは記されていない。
戸籍の上では、私は父母の養女とされている。
父母は、人の戸籍を金で買ったのだ。
私は、人として生きている。半獣としての私は、死んだ。
私は今、人としての半分で生きている。
私の半分は、死んでいるのだ。
仕事の内容を聞くと、戒莉は嫌な顔をしてしまった。
「おや、お気に召さないかい?」
珊揮はからかい口調でそう言うが、戒莉もこの程度のことで、いちいち突っかかってはやらないことにしている。
「別に」
だが、そう言いながらも、気乗りしていないことは否めない。
戒莉のその心が、表情に表れていないはずがない。
珊揮が持ち込んできた仕事の内容というのは、一言で言えば護衛。それも巧の大学に、人を一人送り届けるという単純な依頼。
そんなものを珊揮が引き受けるというのは、どうも解せない気もする。何か裏がある。
戒莉は、疑っていた。
珊揮は、戒莉のそんな眼差しを受けて、仕方ないだろうという表情を作って、こう言った。
「是非にと言われてね。断れなかったんだよ」
ならば、報酬もそれなりに立派なものなのだろう。
戒莉は視線を落とし、溜息をついた。
と、珊揮は戒莉の顎に手を添えて、ぐいと顔を上げさせた。
「何が気に入らないのか、当ててあげようか」
「当てて見せろよ」
やや挑発的に言っているのは、腹立ちのせいだ。
「護衛の対象が、女なのが嫌なんだろう」
ズバリ言う。
実は、そのとおりだ。
戒莉が、女嫌いなのではない。
いや、一時的には女嫌いになっていると言えるのかもしれない。
今、女に関わりを持ちたくないと、戒莉は思っている。
つい先ごろ、戒莉が関わった女が死んだ。
一人は、戒莉が女を守りきれなくて死んだ。
もう一人は、戒莉が女の大切なものを奪った故に、死んだ。
戒莉は、自分に関わりを持った女は、不幸になるような気がしていた。気のせいだと割り切るには、女が不幸になる確立が高すぎる。
挙句、付き合っていた女は別の男と結婚するわ、以前につきあっていた女とよりが戻りそうで、結局戻らなかったりした。
占い師がこの世界にいたならば、『女難の相が出ている』と言われるだろうと、戒莉は密かに思っていた。
いや、よく考えてみたら、女難の相が出ている者は、女によって災厄をもたらされる者であり、女に災厄を与える者ではないはずだ。
そこまで考えてみて、戒莉はひとり、さらに落ち込んだ。
とにかく、このところ女がらみの仕事に良い結果はない。
戒莉は、その仕事は降りると、珊揮に告げた。
「ここでひとつ、その因縁を断ち切ったらどうだい? きっと、良い旅になるよ」
珊揮は、戒莉の逃げ腰を捕らえて微笑む。
その自信は、どこからくると言うのだろう。
「それとも、もう剣客は止めるかい?」
煮えきらぬ戒莉を試すように、珊揮が笑う。
この男は、それなら、それでいいとも思っているはずだ。
「俺自身が嫌で言ってるんじゃない。ただ……」
あくまでも、不幸な女をつくらない為だと戒莉は訴えてみたが、そんなことが通じる相手ではない。
戒莉の旅支度は仕組まれていたかのように、あっという間に調ってしまった。
序の部分が、300文字程度で、これはどうにもならんので、前書きにしちゃったっ