一話にするには、文字数がたりなかったもので……
12月6日に、前話を読んだという珍しやかな方がいらしたら、まず前話の後半を読んでくださいませ。
お手数をおかけします。
旅というのは、いつか終る。
たとえ、何も得られなかったとしても、それが何の意味も成さなかったとしても、旅は終る。
そして、命にも同じことが言える。
騎獣に乗った珊揮の背中を眺めながら、荷馬車に揺られているだけで、どんどん旅の終わりが近づいている。
戒莉は、自分には起きなかったことと、白露に起きたことをなぞってみた。
戒莉の『女難の相』は、解消しそうにない。
結局、白露というこの娘は、幸福はそのままではあるが、陰を負い、傷ついた。
それは、戒莉のせいではない。むしろ、そうであればよいのにと、思うくらいだが、そうではない。
珊揮は、戒莉が白露に随分入れ込んでいると言っていた。それは、むしろ逆だ。できるだけ、関わらないようにしてきた。
戒莉に関われば、どういうわけか女は、不幸になる。なんの根拠もない理由だが、統計的にはその率が高かった。自分のせいで、他人が不幸になるのを見たくない。
それは、人を不幸にして、ただ自分が傷つきたくなかった。ということだけだ。
自覚はある。
結局のところ、ただの逃げだ。
或いは、自分が人を不幸にしているなどと考えるのも、傲慢なことであるのかもしれない。
たとえ負の要素でも、人に何か影響を与えられるような存在ではないのかもしれない。
戒莉は、白露の様子をちらりと御者台から振り返って見た。
白露は、馬車の振動に逆らわずに揺れていた。とろとろと、眠たげなまぶたの奥では、何かを考えているのかもしれない。
いろんなことがあった割に、白露は落ち着いているように見えた。驚き、傷ついて、悩んではいるようだが、日に日にその態度が変わっていくようだった。覚悟を決めたという一種の清清しさと、残酷さ、そして強さ。そんなものが垣間見えるのは、戒莉の気のせいなのだろうか。彼女の中で、何か響いて、何が起きて、何が生まれたのか、戒莉には想像もつかない。結論だけを見せ付けられている。
戒莉は、ひとり取り残された気分だ。
戒莉と白露は、重なるところは絶望的にない。
教養や、品格、経済力と家庭環境、穢れのない手。
白露が持っているものを何一つ、戒莉は持っていない。
そんな全く似ていない白露を初めて見たとき、戒莉には何故か、白露がそこに居ていいのか、惑いながらそこに存在しているように感じた。
白露を見ると、この世界のどこにも身の置き所のない自分が見えてしまう。戒莉には、二重に苦痛だった。そんな自分を認めることと、そんな白露を傷つけること。どちらも、嫌なことだった。
そして、この結末だ。
白露は、自分自身で居場所を決めて、そこへ自分で向かおうとしている。
結局、戒莉はどこにも行けない。
皆、戒莉をおいていってしまう。
「戒莉、少し急ごうか」
珊揮の陽気な声が、戒莉を追い立てる。
「分かった」
―― 分かってない
何処へ行くのか、何処に居場所があるのか。