元々は、こっちが最初に書いたもので、本編は書き直したものでした。
今では、なんで書き直したのか分からなってます。
せっかく書いてあるので、載せることに。
エコロジー?
『旅の支度』
「これだけの立派なお支度は、誰にもできませんよ」
何が誇らしいのか、向春は声を弾ませている。
白露は、このたび大学に推挙されるという、名誉に預かった。
確かにこれは、誇らしい。
「こんなにお若くて、大学に進まれるなんて、なかなか出来ないことですよ。少学の学頭様も、お褒めになっていたというじゃありませんか」
つくづく、向春は白露を褒めることが好きらしい。それとも、本心ではないのだろうか。
やや、意地の悪いことを考えて、白露はふっと笑った。
二十歳で大学に行くことは、確かにすばらしいことかもしれない。だが、もっと若くして推挙された例がないわけではない。
白露は、それらの称賛は半分だけ、ありがたく頂いておくことにした。
なんでも『半分』、と考えるのが白露の癖だ。
手が止まっていることに、白露は気付いた。明日には、ここを立たねばならないというのに、荷造りが済んでいない。
家具など、大きなものの手配は済んでいたが、手回りの品を纏めるのが後手に廻ってしまった。
父母は、一人王都の大学に行く娘に出来るだけの支度をしてやりたいと、家具や衣類を新調してくれた。必要と思われる書籍の数々を集め、それらは寮の部屋には納まらぬであろう程だ。両親はどんな稀書をも、探し求めてくれた。そのおかげで、のちに白露は大学でも屈指の書籍持ちだと言われるようになることになる。
世間的に、白露は両親に甘やかされて育った苦労知らずのお嬢様だ。
あれが欲しいと、何気ない会話の中で一言発しただけで、翌日には白露の目の前にそれはあった。
豊富な財力を持ち、愛情深い両親。深い知性と教養を持ち、美しさすら彼女の財産だ。なにも白露を悩ませるものなどない。皆、そう思っていることだろう。
実際のところ、そのとおりだと、白露本人も思う。
負の要素は、何もないはずだ
やはり白露は恵まれているのだ。
巧は荒れていた。王を失って、こんなにも速やかに国は傾いていくものかと、白露は驚くとともに、自分の住む世界が何とも覚束ないものであることを理解した。
つい数年前に隣国の王が崩御したと聞いて、同情を寄せていたのが、気付けば自分たちも王を失ってしまっていた。
今日あったものが、明日あるとは限らない。
昨日生きていた人が、今日生きているとは限らない。
巧は、そんな国になってしまった。いや、もともと国とは、そんなものであったのかもしれない。ただ、それに気付かなかっただけで。
大学は首都にある。
白露は傲霜を目指して、旅立つことになる。
愛情深い両親のことである、当然その道中を心配した。
「だんな様が、すばらしい杖身を頼んでおいでになったそうですよ」
すばらしい。
向春の口は、ひたすらに白露の機嫌を探るように動く。
この向春という娘は、いわゆる家生だ。年は、白露よりもひとつ、ふたつ下のはずだ。もの心ついた頃から、白露の身の回りの世話をするのが、この娘の仕事だった。そうすることに、向春は疑問も嫌気も抱かない。むしろ、白露の家にいることが、こんなにお優しい旦那さまと、奥様と、すばらしいお嬢様にお仕えできることが、幸せだと笑う。
それが本当だとしたら、向春は幸せなのだろう。
「ええ、そうらしいわ」
白露は、さして興味のない口調で、向春の話に相槌をうった。
「そうですよ。あの風渡りの珊揮ですよ」
向春は、うっとりと言う。まるで、自分が伝説の一部にでもなるような気分でいるようだ。
確かに『風渡りの珊揮』は伝説の人だ。
だが、伝説は伝説だ。
明日、白露の前に現れる剣客は、珊揮という字かもしれないが、伝説の『風渡りの珊揮』ではないはずだ。
伝説は、伝説でしかないのだから。
「それより、早く荷造りを済ませないと。お前、私を眠らせない気?」
そして旅立ちの支度は、いつまでたっても終らないような気がした。
この記載があったので、大学に持ち込んだ白露の荷物が豪華だということを憶えていたようで、、、後の展開になったのね。
と、あらためて思ひました。