そして、白露は美人な杖身といかつい伝説の剣客を、鴬歌に紹介した。
「あんた、でかいな」
美人の方が鴬歌に投げつけられた言葉は、実に詰まらない、単純で、最低級ものだった。
だが、その痛手たるや、鴬歌の予想していた以上だった。
「それほどではないですよ。比較の問題でしょう」
つい、本当に『つい』だったのだが、鴬歌の口はそう吐いていた。
嫌な男だ。
鴬歌は、心の中で戒莉をなじった。
あんなことを言う男、こんなことを自分に言わせる男、なんて嫌な男だ。と。
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でかい女だ。
その女は、鴬歌といった。
それは、白露の口からよく聞いた字だった。
『とても素敵な人なの』
白露は、その女性をそう評していた。
あまりにもそう言うので、戒莉はなんとなく鴬歌をものすごい美人だと思っていた。
それが初めて対面という時にいたって、戒莉は自分の妄想というものに打ち砕かれた。
鴬歌が美人ではない、とは言わないが、絶世の美女という訳ではない。やや目じりの上がった大きな目には力があり、引き結んだ口元には、一度発した言葉には絶対の責任を持つだろうと予想させるものがある。凛々しい美人と言えた。
なよよかで、楚々とした美人を想像していた戒莉の脳内は、みごとに裏切られていた。
もちろん、怨むべきは鴬歌ではない。
『素敵な人』と言われて、そんな美人を想像していた自分の想像力というものに、戒莉は我ながら呆れていた。
こんな風に、力強い、生気に満ちた女性を想像することが出来なかった。
それにしても、こんなに体格の良いのは羨ましいと、戒莉は心から思っていた。鴬歌の姿を、いかにも眩しく見上げて、戒莉はつい、本当に『つい』呟いた。
「あんた、でかいな」
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鴬歌は、ひとり反省をした。
あんな一言で、怒りを抑えられなくなってしまう自分の心の未熟さに恥じ入るばかりだ。
自分の体格が良いことは、百も承知だ。
あんな華奢で、ほっそりとした男から見れば、『でかい女』に違いない。あんなに美しい男から見れば、きっと不細工な女でもあったろう。
そんなことは、知っていたはずだ。
今までも、何度となく浴びせかけられた言葉にすぎない。
なのにどうして、許せなかったのか。
鴬歌は、暫く頭を抱えてみたが、答えは一向に出てはこなかった。
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戒莉は、反省させられていた。
「なんでそんなことを言ったの?」
白露は、呆れ気味に怒っていた。
「本当のことだ。間違っていない。悪いことでもない」
戒莉の言うことは、なるほど真っ当であるかもしれない。
「本当のことでも、言っていいことと悪いことがあるのが分からない? あなたが悪いことと思わないことも、それを言われて傷つく人もいるの」
こちらも真っ当だ。
戒莉は返す言葉を見失った。己れにも思い当たることがあったらしい。
「分かった。詫びておく」
「何て詫びるつもり?」
「でかいと思ったので、ついそう言った……とか」
「あなたって人は……それは冗談のつもり?」
怒り気味に呆れる。
「いや。まずいのか?」
「とにかく、それは言うの止めてね」
これ以上の話合いは、無駄なことだと白露は諦めた。
戒莉は、納得したようなしないような顔をしていたが、ともかくも白露の言うことを承諾した。
「分かった。で、何て言うのが正解なんだ?」