この小説は、対空戦車が活躍する二次小説ってないなあという筆者の妄想からわさわさと空想が溢れかえって生まれた小説です。
頭ぐだぐだな筆者なため、独自設定やクロスオーバー等もある小説ですが、楽しんでいただけたら幸いです。
本編開始は原作アニメ開始の七から八年前になります。
「―――貴女には、才能がありません。そして才能の無い貴女はこの『田路』の家には不必要です。すぐに必要なものだけを持って出ていきなさい。」
母(だと思われる人)は、私を呼び出してそう言った。
母に逆らうつもりもなかった私は、少しの荷物と父から渡されたお金を持って、家の門を出た。
そして門を出たところで一つ、私は疑問に思った。
―――あれ、私はこの先どうすればいいのだろう。
たった今路頭に迷っている私の名は『
行く宛の無い私はとりあえず近くにあったエムドナルドに入り、窓際のカウンター席で無料Wi-Fiとノートパソコンを使ってどうすればいいのか調べてみているのだが…
「…やっぱり児童相談所なのかな…?でも家に送り返されるだけなんじゃないかなぁ…。」
どうすればいいか、さっぱりわからない。
ネットには大人向けの方法ばかりで、子供については児童相談所に連絡するといいよ!ぐらいしか書いていない。
もし私が20歳前後とか、もっと年を食っていたならすぐにでも整備の仕事を探して、なんとか食べていけるようにするのだけれど…生憎まだ私はたった
「むむむ。」
何がむむむだ!とセルフツッコミを入れつつ買っておいたポテトをかじる。
どーしてこーなったかなー。というか私がどこかで野垂れ死んだらあの家としてもマイナスだし分家とかあるんだろうからそっちに寄越すとかすればいいのに。
むー。
「隣、良いかな?」
むーむー唸っていると、後ろから声をかけられる。
振り返ると、茶色の髪をした同じくらいの年の女の子がトレイに山盛りのポテトを乗せて立っていた。………文字通り、山盛りのポテトだ。いや、山盛りというよりも山だ。チョモラマン級だ。
「あ、はい。大丈夫です。」
少々引きつつも言葉を返せば、
「それじゃあ、失礼するよ。」
そう言ってその女の子は隣の席に座った。ううむ、なぜ他にも席は空いているのに隣に…?これでは唸れないではないか。
うー、うー。
どうするかなぁ…。
うー。うーーーー!
「ふふっ。」
頭の中でうーうー言ってたらさっきの女の子に笑われた。くっ、ジト目で見てやるぐらいしかやれることがない…。じー。
「…ああ、ごめんね?何かを悩んでる君の顔が面白くてね。」
「…そうですか。」
うん、すっごいばかにしてるな…。はぁ…。
「あ、まだ名前を言っていなかったね。私は
「…いや、名前を教える意義が見当たらないのですが。」
「こんなところで会ったのも何かの縁さ。そう思わないかい?」
そうかな…?そうかも…?まあ、減るもんでもないしいいか。
「まあ、そうですね。私は蓮。ハスとかいてレンです。よろしく、風美花。」
「よろしく、蓮。それで、何を悩んでるのかな?恋愛かい?」
恋愛…生まれてこのかたそういう感情を持ったことはないなぁ…。というか今や誰とも関わりがない状態なのよね…。
「恋愛どころか人間関係と言うもの自体が今は消滅してますね。なんにせよ、この問題は貴女に話しても意味はないです。」
「いや、意味はあるさ。悩みというのは誰かに話すだけでも解決したり、踏ん切りがつくそうだからね。というわけで話してくれるよね?」
そう言いつつ風美花はイイ笑顔でこちらに圧をかけてきた。どれだけ聞きたいのさ。
「はぁ…。わかりました。長くなりますがいいですか?」
「かまわないさ。ポテトの貯蔵は十分だからね。」
「いや、明らかに多すぎると思いますが。まあいいです。」
そう言いつつも、ポツポツと話す私なのだった。
私が生まれたのは『田路』というそれなりには有名らしい戦車道の名家でした。
家元である母親…いえ、実際に母親なのかはわからないので家元とでも呼びます。なにせ母親らしいことなんて一つもされてませんから。家元は聖グロリアーナ女学院で副隊長を勤めていたらしく、教えていたのも聖グロリアーナで好まれる浸透強襲戦術、使う戦車はチャーチルとマチルダⅡ、あとクルセイダーのみといった感じでした。ですから田路流の人間の多くは皆、聖グロリアーナに入学していました。
私はその家で…んー、事実上の育児放棄を受けていましたね。5歳位までは乳母さんが面倒を見てくれましたが、小学校に入学する頃には姉の方の世話に回されてしまってそれ以降はほぼ全てが自分でやらなければなりませんでした。朝起きて牛乳を飲んで体操をして牛乳を飲んでご飯を炊いて目玉焼きを焼いて食べて牛乳を飲んで朝から晩まで牛乳を飲みつつ他の門下の人たちと戦車の練習をして、ふらふらしながらレンジで朝炊いたご飯をチンして目玉焼きを一枚つくって食べて牛乳を飲んで整備をして牛乳を飲んで寝る。そんな毎日でした。牛乳を飲み過ぎ?貴女のポテトに比べればましです。
…何故育児放棄を、ですか?父親が…あ、父は田路の家に婿入りしてきた整備士で、とても腕のいい整備士なんですよ。こっちは色々と甘やかしてくれたり、助けてくれたりしたので確実に父親です。それで父親が家元に聞いたところ…ただ一言、『才能が無いから』と言ったそうです。
…ええ、才能です。なんの才能か?大隊長の才能だそうです。いやー、ただ隊長の才能が無いだけで育児放棄された挙げ句捨てられるとか戦車道は魔境ですね。
いや、別に車長としては普通らしいですよ。ただ、家元のお眼鏡には叶わなかったのと、比較対象になる才能溢れる姉がいるらしいだけで。
育児放棄が始まってからは十両位の部隊の隊長にされて家元に課せられる無理難題を相手取る毎日でした。マチルダⅡ十両でチャーチルⅦ五両を倒せとか普通無理でしょう?二ポンド砲でどうあの75mm乗っけた馬鹿みたいに硬いチャーチルⅦを倒せと。仕方ないので森に籠って穴を掘り木を倒し崖を崩しとほぼゲリラのような戦い方をしてなんとか二両潰したところで全滅しましたよ。ちなみに姉の方は同じ条件で優雅に四両撃破したそうです。化け物め。
…ああ、すいません。少しあのときの怒りが蘇っただけです。まあ、それの後からは才能がないってんなら仕方ないってことで父に整備を習って、門下の車両の修理をしつつ家元の無理難題を受けていました。日々の癒しは牛乳と整備だけでしたね。整備も、いつも必ずクルセイダーのリミッターを外しては大破させる馬鹿が居たので治す車両には困りませんでしたし。
そんなこんなで三年間、なんだかんだと…まあ楽しく過ごしていたんですかね。父が育児放棄が始まって以降は家にいるときは常に構ってくれましたし。ただ、突然『そうだ、チャーチルをチャーチルクロコダイルに改造しよう』とか、『いい加減チャーチルにも飽きたしブラックプリンスを一から作ろう』とか、『そもそもイギリス戦車に飽きたしドイツ戦車でも作ろうか』とか、『二次大戦の戦車ばかりなのもあれだしシェリダン戦車でも作ろっか』とか、『戦車も飽きたしスピットファイアでも作ろう』とか、『せっかくだからシーファング作ろう。あ、あと空母も!』とか言い出したりして、しかも本当にやるのは止めてほしかったですね。何がどう転んだら戦車とかを一から作るという発想になるんですか…。流石に空母は止めましたよ。
え、私も一から作れるかですか?設計図と資材と設備と時間があれば多分。船はわかりませんが。
まあ、そんなことはどうでもいいですね。結局三年間平和…?に過ごしてたんですが今日遂に家元が見きりをつけて私をほっぽりだした、といったところです。
「…とまあ、話はここで終わりなのですが…風美花、どうかしましたか?」
話の途中でもちょくちょくツッコミを入れていた風美花は、今は何かを考えている…ようだ。
「…蓮、もし君が良ければ、私を頼ってみないかい?私はともかく、私のお母様ならなんとかできるかもしれないよ。」
…まじで?
「それは本当ですか、風美花?」
「ええ、私のお母様はそれなりに有名な人だからね。何かしらの手はとれると思うんだ。」
…なるほど、どうするか。助けを受けるか、受けないか。
…受けないわけないよね。だってほぼ手詰まりだし。
「…わかりました、助けてください、風美花。」
「うん。………その前にポテトを食べようか。いるかい?」
そういう風美花の目の前には、未だ山のようなポテトが積み重なっている。さっきまでがエベレストなら、今は八甲田山くらいだろうか。どうやら風美花は遭難したようだが。
「……食べきれなかったんですね?」
「ははは………まさか。」
あ、露骨に目を逸らした。
「もう…。それじゃ、いただきます。」
《視点:風美花》
―――彼女の隣の席を選んだのは、本当になんとなくだった。
戦車道の関東大会で優勝して、ホテルへの帰り道でエムドナルドを見つけたので一度やってみたかったポテトの山盛り買ってみたのが発端だ。
ポテトをもって席を探したときにふと目に入ったのが、しっぽのように後ろで一つにまとめた金色の髪を唸りながら揺らす彼女だった。
それで声を掛けて―――その碧眼に視線が吸い込まれた。俗に言う一目惚れ、というやつなのだろう。私が男ならすぐにでも告白していたかもしれない。彼女は山盛りのポテトを見て引いていたけど。
彼女の許可も下りたので隣に座って、ポテトをかじるのも忘れて彼女の顔を横目で見ていて―――笑ってしまった。
なにせ表情がコロコロと変わるのだ。見ていて面白かった。
ジト目でこちらを見る彼女に謝って、私は名前を名乗った。名字を言わなかったのは、その名を出すと皆一歩引いてしまうからだ。『島田』の名は私に友を与えてくれなかったから。
名乗られた彼女は少し名乗ることを躊躇ったが、名乗ってくれた。『蓮』、『ハスとかいてレンです』と。
とても、嬉しかった。その時初めて、対等な人間ができたように感じたからだ。
その嬉しさのまま、彼女へ私は悩みがあるのなら話すようにいった。彼女の事をもっと知りたかったし、もし私が、風美花が力になれるのならなりたかったから、尤もらしいことを言って話してもらった。
だが彼女の問題はただの風美花には解決できないような問題だった。
彼女は、捨てられたのだ。箱に積めて山に捨てるようなよくあるフィクションよりは優しい捨て方かもしれないが、それでも捨てられたのだ。
父親はともかく、家元である母親は蓮のことを娘としては見ていなかったのかもしれない。もしかすると、道具のようなものと考えていたのかもわからない。蓮の父親には悪いが、そんなところに蓮を返すべきではないだろう。
だが、私だけではどうしようもない。
ならば―――使えるものは使うべきだろう。
『島田』の力を。
たとえ、蓮と離れることになっても。
お疲れさまでした。
後書きでは、本編では話せないような設定やらを書こうと思っているので少々長くなるかもしれませんがお付き合いください。
現時点での独自設定
・島田ミカ説採用。名前を風美花とします。
・戦車道関連でちょくちょく勘当やら捨て子やらが発生する。対応するのは児童相談所だが対応の成果はあまり良くないらしい。
・田路流という戦車道の流派がある。横浜では島田流、西住流に並んで有名。英国戦車を中心とした浸透強襲戦術を得手とする。
主人公プロフィール(第一話時点)
名前:蓮(レン)
旧姓?:田路(タジ)
担当:戦車長
身長:132cm
出身:神奈川県横浜市
現住所:なし
家族:なし(母、父、姉)
血液型:B型
誕生日:6月12日(双子座)
年齢:9歳
好きな食べ物:牛乳
嫌いな食べ物:臭いのキツいもの
趣味:ネットゲームの『WarThunder』と戦車等の整備、制作。
日課:同上
好きなテレビ番組:『メーデー!:航空機事故の真実と真相』
好きな花:ハス
好きな戦車:ヴィルベルヴィンド
座右の銘:なし
見た目はFGOのアーチャーアルトリアの第二段階をちっちゃくしたもの。金髪を後ろでしっぽにまとめていて、目は碧眼。無論純粋な日本人。
性格は結構適当。ただし自分のやりたいこと、戦車の整備、それと牛乳が関わるととことんやる。
まだ9歳であるが整備士としては十分な技術をもっている。戦車乗りとしては、大隊長としての才能はなく、少なくとも戦車長としては『普通』らしい。
七歳の誕生日に父親に買ってもらったノートパソコンが宝物で暇があればネットゲームの『 WarThunder』をやっている…が、最近PCスペック不足が顕著になってきたとか。
以上となります。
次話の投稿は未定ですが楽しみにしていただけたら幸いです。
ありがとうございました。