『姓』無き少女は『家族』を得て   作:タマモワンコ

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初弾外したので投稿です。


第四話 三姉妹の宝探し

 

 

 

風美花に連れられて向かったのは、千代さんが完全に占有してしまっているという倉庫だった。それも横浜にある赤レンガ倉庫と同じぐらいに大きい。

 

なぜこんなにでかいのか…。

 

「あー………やけに大きいだろう?ここはお母様がガラクタを買いまくるせいで溢れた物達をしまっておくための倉庫なのさ。だからかなり大きいのだけれど…これでも足りなかったのさ。」

 

「お母様はへんなの集めるのが大好きだからね!この前も長い銃とか買ってたし。」

 

「長い銃ですか?」

 

「ああ。たしか…ロシアのライフルだったかな?」

 

「…なんですか、千代さんは政府とでも戦争をするつもりなんですか?朝敵なんですか?」

 

「はははは………そうでないことを願うかな。うん。それじゃ、入ろうか。」

 

 


 

 

 

 

倉庫の中は、予想していたほど酷くはなかった。

 

倉庫の床から天井、手前から奥までほぼ等間隔に並び生える棚。

 

棚の下の方には大きめのものが置かれ、上の方には銃や弾薬のような軽めのものが置かれているようだ。

 

しかし、どれもしっかりと整理されている。先程のチハの状況からもっと色々なものが山積みになってまともに使えない物ばかりかと思っていたからかなり予想外だ。

 

まあ、そんなところで私たち三人は宝探しもとい愛里寿のボコ号用の47mm砲探しをしている。

 

………というかこれ、戦車道とか関係なく集めているっぽい。だって戦闘機のP-51(?)が目の前に鎮座してるし…。

 

「風美花、なぜここにP-51が…?というかなんで上部にバックミラーついてるんですかこれ。」

 

「すまない蓮、私は飛行機には詳しくないんだ…。」

 

うむむむむ、warthunderではずっとドイツと日本しか使ってなかったからアメ機はあまりわからん…。でもダイブブレーキとかついてないしA-36じゃ無さそうだしなぁ…。だからといって20mm機関砲が生えてるわけではないしなぁ。むむむ。

 

「おねーちゃん!また飛行機見つけたよ!しかも同じの二つ!」

 

「もう飛行機はいらないんだけどなぁ…。私わからないし。」

 

「まあまあ、行きましょう風美花。」

 

「はぁ…。それで?どれだい愛里寿?」

 

「これ!」

 

そう笑顔で指差した先には、二機の機体が鎮座していた。

 

ダークグリーンの機体に、大きな一つのプロペラ。W字を描く特徴的な逆ガル翼の主翼とそこから生える前脚。片方の機体は片翼一門合わせて二門のガンポッドをぶら下げ、もう片方の機体はその主翼からその長い機関砲を覗かせている。そしてダイブブレーキと、機関砲の方は爆弾懸架装置も備えている。

 

つまるところ、この機体は―――

 

「す…スツーカだぁぁぁぁぁ!」

 

「うぉっとぉ!?れ、蓮!?どうしたんだい!?」

 

「どうって、これですよこれ!スツーカですよ!ユンカース社製、Ju-87『スツーカ』!うっわぁー!本物を見れるなんて思っても見ませんでした!しかもこれG-1型と、それよりも主翼が長いからD型後期の……うん、20mm機関砲で急降下爆撃用の爆弾懸架装置ですから恐らくD-5型ですね!うわーい!動かしたい!飛びたい!急降下したい!ばらしたーい!」

 

「私ものってみたーい!」

 

「すつー…か?でぃーごがた?ごめん、蓮、私はさっぱりわからないよ。」

 

「ならば教えてあげましょう!」

 

「おっと、いらないことを言ったかな…」

 

「教えて教えて!」

 

「よろしい!この機体は1934年にドイツのユンカース社にて設計開発が行われた急降下爆撃機、『Ju-87』です!ちなみに『スツーカ』や『シュトゥーカ』といった愛称はドイツ語で急降下爆撃機を表す『SturzKampfFlugzeug(シュトゥルツカンプフルクツォイク)』が元なので、本来はこの機体のみを表す略称ではないのですが、この機体がドイツ軍の用いた代表的な急降下爆撃機だったためこの名で呼ばれているのです!

スツーカにはいくつかのタイプと改良型がありまして、初期量産型のA型、その改良型のB型、B型の長距離型であるR型、艦載機型のC型、更なる改良を施したD型、対地攻撃用に翼下に37mm砲をポン付けしたG型などと、第二次世界大戦を通して運用され続けただけあって多数のタイプと改良型があるのです!それでこの二つは…」

 

「ストップだ蓮、もういいから。」

 

「「えー。」」

 

「愛里寿までかい…。既に私は情報量が多過ぎて訳がわからないんだけれど。」

 

「まだまだ話し足りないのに…。」

 

「そうだよおねーちゃん、まだまだ聞きたいよー。」

 

「二人とも…ここに来たのはなんの為だい?」

 

「え、スツーカのレストアのためでは?」

 

「違うよ蓮おねーちゃん、ボコ号をパワーアップするためだよ!」

 

「あー、そうでした。おや、あれではないですか?口径は多分47mmぐらいですが。」

 

たまたま目に入ったそれっぽい砲を指してみる。が

 

「あれは…違うんじゃないかな?あ、ラベルが貼ってあるね。『47mm P.U.V. vz.36砲』…?蓮、愛里寿、これはなにかわかるかい?」

 

「わかんない!」

 

「だろうね。でもまあ、47mm砲でもこれは違うだろうね。名前から考えるに恐らくドイツだろうし。」

 

「むむむむ…。では、こっちはどうでしょう?」

 

近くに似たようなものがあったのでそっちも聞いてみる。

 

「これは…あったあった。えっと、『試製九七式四十七粍砲』って書いてあるね。んー、日本の砲みたいだけど、一式四十七粍戦車砲よりも古いみたいだね。」

 

「むむむむむむ。もし一式の方がなかったら、調査の上で使えたらそっちを使いましょうか。」

 

「そうかい。」

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

結局一時間ほど倉庫の中をさまよったが、一式四十七粍砲が見つかることはなかった。代わりにUボート用の30mm機関砲が球状の砲塔ごとあったり、ドイツの航空機関砲であるMK103 30mm機関砲が二十基ほどあったり、そもそも戦後の砲であるロイヤル・オードナンスL7 105mm戦車砲があったり、数年前に一○式に完全に更新され、自衛隊から全車退役した74式戦車が鎮座していたりと語り尽くせないほどにさまざまなものがあったが。

 

そもそも、よく考えてみれば日本でかなりポピュラーなチハの砲となれば普通に売っているだろうから、変なのしかないここには無いのかもしれない。うん、きっとそうだろう。目の前に見える四式十五糎自走砲とか変なのの最たるものだろうし。

 

 

「………風美花、このホロ車、ちょっと本気で運用してみません?多分ティーガーとかでもワンパンできますよ?」

 

「…この15cm砲は魅力的だけど、オープントップだから駄目かな。」

 

「ねーねー、ボコ号の砲はー?」

 

「ここには無さそうですし、買いに行けませんかね?試製九七式の方が使えなかったときはそうするか…私が作るかのどっちかになりますね。」

 

「…え、蓮おねーちゃん、戦車の整備だけじゃなくて戦車の砲を作れるの!?」

 

「はい。必要なものさえあれば戦車をまるまる一つ作れますよ。」

 

「すごい!それじゃあ自分で戦車を設計して自分で作れちゃうんだ!いいなー!」

 

 

 

 

自分で、設計をする。

 

 

 

 

なるほど、その発想は無かった。確かに今まで戦車やら戦闘機やらを作っていたが、それは全て父に先導されて既にある設計図を元に再現されたものだ。

 

無論、設計者への敬意も込めて出来うる限り完璧なものを作ったが………なるほど、自分がその設計者の立場になるというのは考えなんだ。

 

しかし…自力で設計するとなると、それについての知識が多く必要だ。トライ&エラーで自力で詰めても良いかもしれないが、そこは先人の遺産を頼らせて貰うとして………

 

問題は、目標だ。

 

いくら技術が、知識があろうとも目標となる地点が無ければなにも成し得ない。しかし、その目標を得るには私の見聞はあまりに狭すぎる。

 

…………うむむ。

 

「設計、ですか………。愛里寿は、もし自分で戦車を作れたらどんな戦車を作りたいですか?」

 

「え、私が?ん~、あ!センチュリオンの砲塔をでっかいボコにしたい!きっとかっこいいよ!」

 

「ボコチュリオンとはまた面妖な………。」

 

「なるほど、ボコ…ということは好きなもの、ですか。」

 

好きなもの、好きなもの………うーむ、牛乳、ヴィルベルヴィント、メーデー、メーデー、メーデー、ディスイズ スイレンエア 8146、スイレンエア 8146、スイレンエア 8146、メーデー………あ、これ違う。なんでメーデーを発信してるんだ?

 

ふむ。

ヴィルベルヴィントなら、機関砲を30mmにしたツェルシュテーラー45とか?でも、それはあくまで改修に過ぎないし、なによりそれ以上の改造は設計者に失礼かもだしなぁ。

 

なら、対空戦車?

 

 

 

……………………なるほど、対空戦車か。それなら弾をばらまけて楽しいだろうし、見映えも良い。

 

でも、どんなものだろう。愛里寿にとってのボコのような………牛乳?

 

 

「なるほど、牛乳を高い水圧によって高速で空へ撃ち出す対空戦車…!」

 

「うん、そんな対空戦車は嫌かな。それに対空戦車じゃどんなに頑張っても大抵砲が小さいから至近距離での撃ち合いが前提になるだろうし、そもそも戦車道では自分で設計した戦車は使用できないよ?」

 

「なん………だと?いえ、ほら、ドイツのアハトアハトとか対空砲ですしワンチャン…」

 

「いや、そのアハトアハトを載っけた戦車は対空戦車じゃなくて重戦車じゃないかな?まあ対空戦車であっても戦車道に参加できるものはあるけれど、あまりポピュラーではないね。」

 

「ううむ…新しい発想は得れましたが、まだどうにもなりそうにないです。とりあえず、ありがとうございます、愛里寿。」

 

「えへへ~♪どういたしまして!」ニパッ!

 

そう言い、愛里寿は花のような笑顔を咲かせた。

 

 

……なるほど、これは風美花がシスコン気味なのも頷ける笑顔だわ………。うん、ロリは正義と言うのもあながち間違いではないのかも………はっ!いかんいかん、思考が変な方向に進んでいた。カット、カット!

 

「蓮、大丈夫かい?ぼおっとしていたようだけど。」

 

「あ、はい。大丈夫です。しかし…ボコ号はどうしましょうか。砲塔はなんとかなりますが、やはり砲は繊細ですしできれば正規の物が良いですけどね…」

 

「んー?ねえ、蓮おねーちゃん。ここにあるものはへんなのばっかりだから、ここにあったらそれも変な砲なんじゃないかな?」

 

「……なるほど。そのあたりどうですか、風美花?」

 

 

…おや、風美花の反応がない。一体どうしたのやら……

 

んん?なぜか風美花はぽかんとしている。ああ、なるほど……

 

「その発想はなかった、とかですかね?」

 

「ん゛ん゛っ゛!………ハハハハハ、ソンナワケナイダロウ?私はきっと砲塔ごとここにあると思ってたのサ!」

 

「言い訳は見苦しいよおねーちゃん!」

 

「ぐふぅ!」

 

「あー……うん。午後五時四十二分、ご臨終です。」

 

「死んでないからね!?はぁ…。とりあえず、もう少し探すかい?」

 

「いえ…そもそもここに来た初日に色々するのもどうかと思いますし、今日は打ちきりましょう。することは試製九七式の情報収集と、千代さんから許可を貰うことですかね。」

 

「許可は大丈夫だと思うかな。どうせ倉庫の肥やしだしね。おっと、噂をすればなんとやらみたいだね。」

 

 

『風美花ー!愛里寿ちゃーん!蓮ちゃーん!ご飯よー!出ておいでー!』

 

「ご飯!晩ご飯だよおねーちゃん!ほら、早くいこう!」

 

「晩ご飯………牛乳はありますかね?」

 

「あるんじゃないかな?ほら、蓮も行くよ。」

 

 

牛乳があるならそれは素晴らしい晩ご飯だ。ふふふ、とても楽しみだ。

 

 

 

 


 

 

《視点:風美花》

 

 

 

うん、どうやら蓮と愛里寿は仲良くなれているようでよかった。愛里寿は人見知りなところがあるし、蓮は…まあ事実上の引きこもりだったわけだから心配だったけど杞憂だったみたいだね。

 

しかし…飛行機か。私はさっぱり興味がなかったけれど、蓮や愛里寿はそうではないみたいだ。戦車一筋だから問題ないと思っていたけれど………あ、そういえば私が行く予定である聖グロリアーナ女学院に、飛行機も含めた戦闘をする大会があるんだったような気がする。たしかお母様に飛行機も多少は学んでおくべきと言われた記憶がある。

 

蓮に、教えを乞うか。あの…じぇーゆー八七のときの語りから考えるに多分相当の知識を持っているんだろうしね。

 

 

………ふふ。まさか最初に私に新しい風を吹きいれてくれるなんて、やっぱり蓮は面白い。

 

蓮も愛里寿の言葉でなにか着想を得たようだし、この先が楽しみかな。




お疲れさまでした。

リボンの武者を読んでいて気付いたのですが、西住仮面の車両に『レン』っていう乗員が居たんですね…。これは面倒かもしれない。
(追記:フェイズエリカ、ちゃちゃっと買って読みました。)


というわけで今話で登場した(?)独自設定

・陸上自衛隊の主力戦車
陸上自衛隊ではほぼ全ての主力戦車を一○式に更新済み。90式は予備役となり、74式は全車退役している。

・戦車のパーツ等について
ある程度ポピュラーな車両であれば戦車倶楽部などで色々買える。島田千代が集めているのもは大抵がそういうところに流通していないものなので本当の一点物とかもあったりする。

・自作戦車について
自作であっても、戦車道にて使用可能な戦車でありかつ戦車道連盟の認可が降りれば戦車道で使用でき、また改造なども規定の範囲内であればできる。ただし二年ごとに車検がある。
自身で設計、作成した戦車は戦車道、日本でポピュラーな日本式戦車強襲競技、欧州でポピュラーな欧州式タンカスロンのどれにおいても使用できない。しかし近年、米国において日本の野試合式の戦車強襲競技をアレンジして、10t以下の車両でありかつ安全にある程度配慮されていればどんな車両でも参加できる『オールタンカスロン(全ての戦車による競技)』、又は『オールタンカース』という競技が興っており、様々な独創的な車両が参加している。人口の少なさ故に頻度は少ないが、戦車や車両のパーツメーカー、軍需企業だけでなく米陸軍も注目しており、米軍などが主催の大会もすでに存在している。日本においてはそこまでの認知度は無いが、一部の戦車愛好家や整備士らによって細々と続いている。

・対空戦車について
基本的に全面を装甲で覆われていれば使用できる(クーゲルブリッツ等)。ヴィルベルヴィンドやM19対空自走砲などのオープントップ車は多くの国では使用できないが、日本戦車道ではオープントップであっても開いている部分を特殊カーボンで覆い、完全な乗員保護ができていてかつ戦車道連盟からの認可が降りれば使用できる。しかし昨今において認可が降りてかつ使用したのは戦車道が廃止になる前年の大洗女子学園のみであり、対空戦車が活躍しうる冬季高校陸空合同戦車戦大会においてはどの学校も対空は戦闘機頼みか全面が装甲に覆われている車両の使用のみであり、未だオープントップ車の活躍は無い。

・特殊カーボンについて
特殊カーボンは第二次世界大戦末期に日本の軍人、財政会の人間、及び政治家らの集まりである『紺碧会』及び『青風会』の研究者によって開発され、数機の襲撃機に対して装甲として使用されて多大な戦果を上げたものの日本は敗戦した。
戦後米軍がこの特殊カーボンを戦車に対して使用したことをきっかけに戦車などの装甲として使用されるようになり、その安全性から戦車道の車両にも使用されるようになった。なお、航空機に対してはある一定の高度において突然発火する現象がみられたことなどから使用されていない。
特殊カーボンはかなり安価であり費用対効果も素晴らしいため戦後第二世代の戦車以降には全ての戦車に使用されているが、それ故に対策されるのも早く現在では戦闘においては心許ない程度の装甲となっている。
なお、特殊カーボンに対しては成型炸薬弾が極めて有効であるため、戦車道連盟等では砲弾の審査を徹底している。


長くなりましたがこんなところですね。特殊カーボンの件の『紺碧会』と『青風会』はクロスオーバーポイントです。

あとはおまけの風美花プロフィールです。


プロフィール:島田流の長女
名前:島田風美花(シマダ フミカ)
担当:戦車長
身長:144cm
出身:群馬県館林市
家族:祖母、祖父、母、父、妹(妹)
血液型:O型
誕生日:11月30日(射手座)
年齢:10歳
好きな食べ物:じゃがいも
嫌いな食べ物:トマト
趣味:ピアノ
日課:散歩、戦車道
好きな動物:カピバラ
好きな戦車:マチルダⅡ
好きな言葉:明日は明日の風が吹く


行き場を失っていた蓮を救った、島田流の長女。戦車を腕はかなりのものであり、現在の関東において同世代では好敵手と呼べるのは現状田路流の田路凛ぐらいである。蓮を拾った日は、戦車道の小学生大会、関東大会の決勝戦の日であり群馬県代表として参加したが、田路凛は参加していなかったため圧勝した。

島田千代の娘であることを誇りに思っているが、島田流自体に対してはいい感情ばかりではない。

音楽が好きであり、ピアノやバイオリン、トランペットなどいろんな楽器に手を出している。今のところしっくり来た楽器はアコーディオン。

中学校は聖グロリアーナ女学院附属中学校に進学することを予定しているとか。



はい、というわけで長くなりましたが以上です。

次回、乞うご期待、です!
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