私、篠ノ之箒は悩んでいた。というのも私は幼馴染の織斑一夏の事がす、好きになってしまったようなのだ。もともと私はぶっきらぼうな態度と言葉遣いで全然女らしくない。だから学校の男子に虐められるのも無理からぬことだったと思う。虐められても何でもないように振る舞ってはいたけれど嫌だった、苦しかった。誰かに助けて貰いたかった。助けてって素直に言えない自分が嫌だった。そんな自分が情けなくて涙を流す私に気付いて助けてくれたのが一夏だった。助けてくれた一夏に私は素直にお礼も言えなかった。なのに一夏は
「箒が無事でよかったよ」
そう言って笑いかけてくれた。凄く嬉しかった。それに心臓もバクバク速くなっているのが分かる。きっと私の顔は林檎のように真っ赤だろう。その日は一夏の顔もまともに見れないまま家に帰った。恥ずかしかったのだ。何とも思っていなかった筈の一夏が格好良く見えてしまって、そんな一夏に助けて貰った事が嬉しくて。でも私はこの気持ちが何なのかを知らない。だからなんでも知ってる姉さんにこの気持ちを聞いてみた。
「それはね箒ちゃん。恋だよ。箒ちゃんはいっくんに恋をしているんだよ」
とても優しい表情で姉さんはそう言った。"恋"不思議とその言葉は胸にストンと落ちた。私は一夏に恋をしている。顔が赤くなっているのが分かる。でも嫌じゃない。
「もう、箒ちゃん顔真っ赤にしちゃって可愛い~」
姉さんに抱きしめられる。私は一夏が好き。でも自覚すればするほど私は不安になった。私は可愛くない。ぶっきらぼうで言葉も男子みたい。クラスの女子達みたいに可愛くなんてない。こんな私を一夏が好きになってくれるとは思えなかった。だから姉さんに聞いてみる。どうしたら一夏に好きになって貰える?と。
「箒ちゃんならすぐいっくんのハートをゲットできるよ!」
姉さんは優しい。だからこう言ってくれているんだろう。でもきっと今のままじゃ一夏に好きになって貰うなんて無理だ。そう姉さんに伝えると
「ん~わかったよ箒ちゃん!この天才の束さんに任せなさい!」
あれから数日が経った。けれど私は一夏に対して態度を変える事が出来ていなかった。好きなのに酷い事ばかり言ってる。こんなんじゃ好きになって貰えないと悲しくなって自分の部屋で泣いてばかりいた。そしたら姉さんが扉をバーン!と勢いよく開けて入って来た。
「箒ちゃん!ついに完成したよ!これが未来を演算予測し夢と言う形で見る事が出来る束さん力作のスーパーマシーン。名付けてユメミール君だよ!!」
姉さんのネーミングセンスの無さはいつも通りなので放っておく。いきなりの登場に涙も引っ込んだ。でも未来を見れるというのは興味がある。一夏とけ、結婚とかしてたら…それでこ、子供とか…。うぅ。顔が熱い。絶対にまた真っ赤になってる。
「箒ちゃん可愛い~!!」
また姉さんに抱きしめられる。その日は姉さん作のユメミール君を使って眠りについた。
「あなた、おかえりなさい。」
「ああ、ただいま○○」
夢を見ている。目の前に見えるのは仲睦まじい夫婦の姿。男の方は…あれが一夏なのか…?す、すごく格好いい。でも女性の方が分からない。顔が見えず、名前も聞き取れない。けれどそれでも分かったことがある。…あれは私じゃない。私はあんな話し方をしない。
「なぁ、〇〇今日は…俺達の結婚記念日だろ?それで…プレゼントがあるんだ。…俺と結婚してくれてありがとう。俺は〇〇と一緒になれて凄く幸せだ」
そう言って一夏は女にプレゼントを渡す。一夏は凄く嬉しそうで、幸せそうであんな顔をさせる目の前にいる女性が羨ましくて…。
「ありがとう、あなた。私も…私も凄く幸せです」
そう言って目の前の女性は凄く大切そうにプレゼントを胸に抱える。その声は本当に幸せそうでそれ以外にもいろんな感情が込められている気がした。
「○○愛しているよ。今までも、これからもずっと」
「あなた…私もです。ずっとずっとあなたの事を愛しています」
そう言って二人の顔が徐々に近づいていき口づけを交わす。女の方が振り返りこっちを見た気がした…。
「夢…?」
私は目を覚ました。頬には涙の跡がある。部屋には朝日が差し込んでいる。けれど私の心は暗雲で覆われている。だって…私の未来に、私の隣に一夏は居ないと分かってしまったから。それからの私の沈みようは酷かった。父さん、母さん、姉さん、皆に心配された。けれど私にはもう笑う事なんてできそうになかった。ユメミール君を使っていないのに毎日あの夢を見るのだ。幸せそうに笑う一夏と顔も名前も知らない女の姿を。そして毎朝涙を流して目を覚ます。もう、うんざりだ。
「なぁ、箒。もし悩んでいることがあるなら聞くぞ?」
ある日、そんな私を見かねたのか一夏がそう話しかけて来た。私を見てくれなかったくせに!私じゃない女を選ぶくせに!そんなドロドロとした暗く濁った感情が湧き出てくる。
「別に…一夏には関係ない」
「関係なくはないだろ。友達が苦しんでたら助けようとするのが普通だろ」
「関係ないと言ってるだろう!どうしようもない未来を見たんだ!変えられない未来を!私の未来は…もう…放っておいてくれ…」
遂には一夏に怒鳴り散らす。最低だ。一夏は何も悪くない。悪いのはこんな事しか言えない私なのに…。いけない、泣いちゃダメだ。家まで我慢するんだ。
「…よくは分からないけどさ。未来って自分で作るものだろ?なんで何もしないうちから諦めてるんだよ。」
何もしないうちから諦める…?何も知らないくせに…!
「知った風な事を言うな!姉さんが作った装置で見たんだ!なら何をしたって変わる筈無いじゃないか!!」
「何でだよ?束さんだって神様じゃないんだから間違う事ぐらいあるだろ」
一夏のその言葉は衝撃だった。確かにそうだ。私は最初から姉さんが間違う筈がないと考えて諦めていた。何もせずに。私の気持ちはその程度だったのか?いやそんな事は無い。私は一夏が大好きだ。あの女なんかに一夏は渡さない。絶対に。そう思ったら今まで悩んでいたのが馬鹿らしくなってしまった。我ながら単純だと思う。好きな男の子のほんの些細な一言でここまで立ち直れるなんて。
「箒…?」
何時までも返事をしない私を不審に思ったのか一夏が私を呼ぶ。…私があの女に勝つのはきっと生半可な努力じゃダメだろう。それでも、少しづつ努力していこう。いつか一夏が振り向てくれるように。一夏の隣に立つに相応しい女性になろう…だからこれはその記念すべき第一歩。
「…私は確かに勘違いしていたようだ。姉さんは神様じゃない。間違える事だってあるだろう。…だから私も頑張ってみる事にする」
「おう!俺に何かできる事があったら言ってくれ!必ず箒の力になるから!」
本当に一夏は優しいな…。
「一夏…ありがとう」
私は自然と一夏にそう言えていた。今まで照れて言えなかった感謝の言葉を。その日私は久しぶりにぐっすりと眠ることが出来た。あの夢はもう見ない。不思議なのはお礼を言ったときに一夏が固まっていた事だ。顔も真っ赤だったし、一体どうしたんだろうか?
姉さんが姿を消した。私達家族も重要人物保護プログラムによりバラバラになった。けれど姉さんを恨んでなどいない。姉さんが苦しんでいたのを私は知っているから。一夏と離れ離れになるのは辛い。けれどこれはチャンスだ。私が変わるための。私は自分を磨く。あの夢にでてきた女性よりも一夏に相応しい女になってみせる。だから待っていてくれ一夏。自分に自信が持てたその時は必ず一夏に会いに行くから。まずは…そうだな、話し方から頑張ってみるとしよう。
そして時は流れここはIS学園1年1組。たった1人を除いて全員が女性の実質女子高。そんな中、女生徒達の視線はある1人の男子生徒に向けられています。彼の名前は織斑一夏。世界で唯一の男性IS操縦者でもあり、私の想い人。小学4年生の時に引っ越したため、離れ離れになってしまった大切な幼馴染。この学園で再会するのは予想外だったけれど、それでも想い人と同じ学園にこれから3年間通えると思うと何だか嬉しくなってしまう。そんな事を考えていると一夏が席を立って私の方に歩いて来ます。…もしかして、覚えていてくれたの?そんな期待をしてしまう。けれど目線は私とバッチリ合っている。だから私も覚悟を決めて席を立つ。
「えっと、箒…だよな…?久しぶりだな」
私の前で立ち止まった一夏が、そう話しかけてくる。男子、三日会わざれば刮目して見よとは言いますが目の前に立つ一夏は身長も高く、大人の男になる途中のどこか幼さを持ちながらも凛々しい顔つきをしています。いけない。つい、見惚れてしまいました。
「ええ、本当に。…久しぶりね一夏」
そう言って私は微笑む。するとどうでしょう。一夏の顔がどんどんと赤くなっていって目線もきょろきょろと彷徨っている様子。まるで中学校に居た男の子達のよう。どうしてか私が話しかけた男の子達は皆、顔を赤くしていた。結局理由は分からず仕舞いだったけれど今は再会を喜ぶべきね。
「一夏から話しかけてくれるなんて思わなかった。私のこと、覚えていてくれたの…?」
迷わず私を見つけてくれた。そう私は思ってもいいの…?
「当たり前だろ?大切な幼馴染の顔を忘れる筈ないじゃないか」
「嬉しい…凄く、嬉しい」
嬉しい。一夏が私の事を覚えていてくれた。不愛想で可愛げのなかった私を覚えていてくれた。そんな私の事を大切な幼馴染と言ってくれた。それがたまらなく嬉しい。
「あ、えっと…その、さ。髪型、昔と一緒だな。昔も言ったけど…その、凄く箒に似合ってるよ」
「あ、ありがとう…」
また褒めてくれた。覚えていてくれた。髪型…変えなくて良かった。でも、心臓がうるさい。一夏の顔を恥ずかしくてまともに見れない。…顔、赤くなってないかしら…?
「そ、それと話し方も凄く女の子らしくなってて驚いた」
「やっぱり、私みたいな男女がこんな話し方なのは変…かしら」
私みたいな男女がこんな言葉遣いはやっぱりおかしかったの…?不安に押しつぶされそうになっていると
「そんなことない!箒は男女なんかじゃない!箒は可愛い女の子だ!!話し方だって変なんかじゃないし凄く、凄くドキドキする」
「え?あ、ありがとう…」
一夏が可愛いって言ってくれた。それにドキドキしてくれてるって…どうしよう、凄く嬉しい。油断すると顔がニヤけてしまいそう。
「「……」」
話したいことが沢山あったのに、何から話していいのか分からない。でも話し掛けなくちゃ。今まで頑張ってきたのはこの時のためなんだからっ。
「「あの!」」
恥ずかしい。恋愛漫画みたいに被ってしまった。どうしよう…?恥ずかしくて死んでしまいそう。
「授業を始める。全員席に着け」
そんな事を考えていると千冬さん…いえ、織斑先生が教室に入って来た。一夏は急いで席に戻るその途中、こちらを見た一夏に小さく手を振ると一夏さんも振り返してくれた。
「…なんだ。この甘ったるい雰囲気は…?まぁ、いい。それでは、授業を始める」
私は今、IS学園寮の自分の部屋でシャワーを浴びている。考えるのは今日の出来事。あの後も一夏とお話しする事ができた。私が中学3年生の時に全国大会で優勝し新聞の表紙を飾ったのもちゃんと見てくれていておめでとうって言ってくれた。残念ながら一夏は剣道を辞めてしまっていたけれど、それも生活費の足しにするためにと、部活もせずアルバイト三昧の生活を送っていたからだと聞いた。…やっぱり、一夏は頑張り屋さんね。千冬さんの助けになりたいと思う彼の気持ちは分かる。私もそうだから…。私も姉さんを助ける事は出来るだろうか…?そんな事を考えながらシャワーを止めると部屋の鍵が開く音が聞こえた。どうやら同室の方が来たみたい。少しはしたないけれど、同性ならいいだろうとタオルを巻いて扉を開ける。この数秒後、私は着替えなかったことを後悔するとも知らずに。
「こんな格好でごめんなさい。先にシャワーを使わせて貰っていたの。私は…」
「ほ…箒…?」
聞こえてきたのは恋焦がれる彼の声。けれどそれは聞こえてくるはずのない声で…。
「え…?一夏…?」
驚いた表情の一夏が見える。彼の目線が下がる。彼の顔が真っ赤に染まっていく。その彼の様子で自分の今の格好に気付く。
「あ、み、見ないで!!」
「ご、ごめん!!その、俺…外に出てるから!!」
そう言って彼は部屋を飛び出して行ってしまった。彼は悪くない。悪いのはこんな格好で出て来た私のほう。彼に対しての罪悪感でいっぱいだけど、とにかく早く着替えよう。
「「……」」
それから着替えた私は扉の前で女子生徒に囲まれていた一夏に部屋に入って貰った。そして今お互いにベッドの上に座り、向かい合っている状態で固まっている。
「「ごめん(なさい)!」」
「「え?」」
「どうして一夏が謝るの…?悪いのはあんな格好で出て来た私なのに…」
何故か謝罪が一夏と被ってしまった。悪いのは私なのに。
「いや俺も…その、ジロジロ見ちゃったし…だからその、本当にごめん!!」
「そんな、一夏は悪くない!だから顔を上げて!」
「…わかった。けど、悪いのは俺もだ」
「そんな事!」
「だから!箒も悪いと思っているならこれは俺達2人とも悪かったって事で終わりにしないか…?せっかく同じ部屋なんだ。このまま嫌な空気で過ごしたくはないだろ?」
確かに…そうね。多分このまま話を続けてもお互いに自分が悪いと言って聞かないでしょうし…それが一番の落としどころかしら…。
「ええ、分かったわ。でもこれだけは聞かせて。私と同じ部屋で本当にいいの…?織斑先生に言って別の人と変えてもらった方が…」
「そんなことない!俺は!俺は…箒とがいい。別の誰かじゃない。箒と一緒の部屋が良いんだ…」
「一夏…」
そう言って真っ直ぐな目で私を見詰める一夏。目を逸らせない。吸い寄せられるように徐々に二人の顔が近付いていく。すると突然の着信音。バッと勢いよく近づいていた顔を離す私達。なっているのは一夏の端末。
「わ、悪い電話だ。ちょっと外で話してくるな」
そう言ってベランダに出ていく一夏に辛うじて返事を返す。
「え、ええ」
あのまま着信がなかったら私達どうなっていたのかしら…?も、もしかしてキ、キスとか…?それって一夏も私のことを…?これは期待してもいいのかしら?そんなことを1人悶々と考えていると一夏の電話が終わったようで部屋の中に入って来る。
「悪い、ちょっと長かったよな。中学の友達がさ、心配して…いや揶揄い半分で連絡してきたんだ」
「それだけ仲が良い友人が居るというのは正直言って羨ましい。私は色んな所を転々としていたから…」
例え連絡先を交換しても次の場所に行くときには全ての関係がリセットされてしまう。仕方のない事だとは思うけど…やっぱり、少し羨ましい。
「なら箒。俺と連絡先を交換しよう。少なくとも今俺は此処にいる。箒を1人にはしない。…絶対にだ。約束する。俺が箒の傍にいる」
私の傍にいる…?そ、それはいったいそういう意味…!?い、一夏が近くにいる。私の両肩に手を置いて上から覗き込むように私の目を真っ直ぐ見てる。はやく何か言わなきゃ…え、えっと…
「ほ、本当に傍にいてくれる…?」
って私は何を聞いているの!?落ち着いて私。あぁもう恥ずかしくて泣きそう。
「お、おう。ほ、本当だ。男に二言はない」
「嬉しい…ありがとう、一夏」
本当に嬉しい。一夏に再会してまだ1日しか経ってないのにこんなに嬉しい事が沢山。全部一夏がくれた気持ち。ふふっ。いつか私もあなたに返せるかしら…?
「お、俺シャワー浴びてくるよ!」
「あっ」
こちらの返事を待たず浴室に入っていく一夏の背中を見送る。やけに慌ててる様子だったけど何かあったのかしら…?
「そ、そろそろ寝るか?明日も早い事だし」
あれからシャワーを浴びて出て来た一夏と少しお話した後、時間を確認した一夏がそう話を切り出す。確かに時計を見ればもうすぐ時計の針が天辺を差す頃。
「ええ、もっと沢山お話したかったけど、残念…」
「これからも一緒なんだから話す機会はあるさ」
これからも一緒…。ふふっ本当、我ながら単純ね。こんな事で嬉しいって思っちゃうんだから。
「おやすみなさい。一夏」
「おやすみ。箒」
そうして私は久しぶりに誰かとおやすみと言い合ってから眠りについた。
時は流れて一週間後、私の姿はアリーナの管制室に在った。今画面の向こうで一夏とイギリスの代表候補生、セシリア・オルコットさんのクラス代表を決める戦いが佳境に突入したところです。オルコットさんのビット兵器を撃墜した一夏はここが勝機とばかりに突撃していきます。
「すごいですね織斑君。これならもしかするともしかするんじゃないですか?」
山田先生も興奮気味だ。けれど織斑先生は冷静に画面を見ている。それが嫌な予感を掻き立てる。そしてその予感は当たってしまった。一夏にオルコットさんの放ったミサイルが命中したのだ。煙でどうなっているのかは分からない。私に出来るのは祈る事だけ。勝たなくていい、無事でいて。絶対防御があるのが分かっていても無事で居て欲しいと願ってしまうのは私が弱いから。
「ふん。機体に救われたなバカ者め」
そんな織斑先生の言葉につられて画面を見ると煙の中に佇む白い機体。
「一夏!よかった…」
その右手には光剣。千冬さんの暮桜と同じ単一仕様能力"零落白夜"が輝いている。
「俺は最高の姉さんを持ったよ…けど、違うんだ。俺は千冬姉の力で守りたいわけじゃない。俺の力で守りたいんだ。初めてそう思える
だがそう言ってせっかく発動した単一仕様能力を解除してしまう。
「なっ何をいってますの!?」
混乱するオルコットさんの声をよそに一夏はオルコットさんに肉薄しその唯の刃で滅多斬りにする。この戦いの勝者は予想に反し、オルコットさんを下してみせた一夏だった。
「そうか…それがお前の答えか、一夏」
千冬さんのどこか寂しそうな、それでいてどこか嬉しそうな声が印象的だった。その声を聴きながらピットに戻って来た一夏の元に行く。
「一夏…あの」
「箒。聞いて欲しい事があるんだ。凄く大切な事なんだ」
私が何かを言う前に凄く真剣な表情の一夏にそう言われ、私は頷く。一夏がこれから言う話はきっと彼にとって大切な事なんだとわかってしまったから。
「俺は、箒の事が好きだ。大好きだ。きっとあの日のあの笑顔を見た時から。だから、俺と結婚してくれ」
え…?え?今私はなんて言われた…?好き?誰を?私を…?
「箒。俺はどんな答えでも受け入れるつもりだ。だから答えを聞かせて欲しい」
あ…答え?答えは…
「わ、私もずっと、ずっと前から…私を助けてくれたあの時から一夏の事が好きです。大好きです。こんな私でよければ…不束者ですが、よろしく、お、お願いいたします」
途中から涙が止まらなくて私の顔は酷い事になっている事でしょう。
「箒!」
ISを解除した一夏に抱きしめられる。
「一夏。嘘じゃ…ないよね…?私、頑張ったんだよ?一夏に相応しい
「ありがとな…俺は幸せ者だ。こんなに可愛くて頑張り屋さんな幼馴染に想われて…。この気持ちは嘘なんかじゃないから…俺は箒が好きだ。」
そして徐々に近づいていく2人の距離はゼロになり、初めて大好きな人とキスをした。初めてのキスは涙の味がしたけど、本当に幸せで今まで頑張ってきてよかったと本気でそう思えたから。
「ふっ。いつの間にかお前も成長していたんだな一夏…。」
「ぐすっ。先輩、泣いてるんですか…?」
「泣いているのは山田先生の方だろう。私のこれは目にゴミが入っただけだ…」
「そういうことに、ぐすっ。しておきます」
先生たちに見られていることに今更ながら気づいた。自覚すると恥ずかしくなってくる。
「あ、あの…一夏?先生たちも見てるから…」
「箒。俺、絶対に幸せにしてみせるから。必ずどんなことがあっても」
「バカ者が。幸せにするだと?貴様何様のつもりだ。幸せにするのではない。2人で幸せになるのだバカ者め」
「千冬姉…。ああ、そうだな!ごめん箒、俺と一緒に幸せになってくれるか?」
答えなんてとうの昔から決まっている。
「はい!一夏、大好きです!」
「俺も大好きだぜ!箒!!」
「まぁ、まだ結婚できる年齢ではないがな」
「あなた、おかえりなさい。」
「ああ、ただいま箒」
一夏と結婚して2年が経った。いろんなことが沢山あった。数えきれないほどに沢山。
「なぁ、箒。今日は…俺達の結婚記念日だろ?それで…プレゼントがあるんだ。…俺と結婚してくれてありがとう。俺は箒と一緒になれて凄く幸せだ」
一夏からプレゼントを貰う。それが嬉しくて目元が潤んで来てしまう。
「ありがとう、あなた。私も…私も凄く幸せです」
そう言って私は一夏から貰ったプレゼントを胸に抱える。
「箒、愛しているよ。今までも、これからもずっと」
「あなた…私もです。ずっとずっとあなたの事を愛しています」
そう言って二人の顔が徐々に近づいていき私たちは口づけを交わす。すると後ろから誰かに見られているような気がして振り返る。そこにはあの日の小さい私がいた。すぐに消えてしまったけれど確かに居た。長年の疑問が解決した瞬間だった。私は私に嫉妬して、私から一夏を奪おうとしてたんだ…。ふふっ。おかしい。気付いてみればこんなに簡単な事だったなんて…。
「どうしたんだ…?笑ったりして」
一夏がそう聞いて来る。けれどごめんなさい。これはあの日の私と今の私だけの秘密なの。だからかわりにとっておきの話をしてあげる。私のおなかに宿った小さな命。これを聞いたらあなたはどんな顔をするのかしら…?一夏、私の愛する旦那様。今日からはこの子と一緒に愛してくださいね。
「あのね、あなた。実は…」
きっと彼女は本気出せばこれくらい出来るスペックを持っている筈なんだ。そんな考えから生まれたこの作品。
インフィニット・ストラトスのメインヒロインは篠ノ之箒。皆さん忘れないで上げてください。
あ、筆者はオルコッ党です。