彼女たちの生き様を見届けて―転生緋衣四葉伝―   作:粒餡

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離してイツ花ぁ!
冗談、冗談ですから!
――とある主従の会話


第一章 幸運の章
緋衣家


 時折風が吹き、その度に花びらが散る。そんな庭にある桜の木を眺めながら何度目かもわからないため息をつく。

 「……桜、きれいだねえ」

 「綺麗ですねえ」

 「……はぁ、ねえイツ花。まだ?」

 縁側に座ったまま、イツ花に対して問いかける。私は現在、鹿島 中竜様との間にできた子(と言っても自分で産んだわけじゃないけどね)をイツ花とは違う天界の使者が送ってきてくれるのを待っているのだ。

 自分の母親が普段していたというおさげを弄りながら、イツ花の話をぼーっと聞く。

 「まだですねえ、きっと途中で買い食いでもなさってるのでは? というか四葉様、前に聞いてからまだ三分も経ってないですよ? ちょっとは落ち着いたら――」

 「なっ、この母親の私より先に我が子と……!? ちょ、ちょっと探してくるぅ!!」

 イツ花が何か言っていたが、それは『買い食い』という言葉を聞いてすべて吹っ飛んだ。この私を差し置いてまだ見ぬ我が子とそんな親睦を深めるなんて……絶対に阻止、後に私がやらなければ!! そう思って立ち上がり、縁側から庭に駆け下りて、塀に向かう私をイツ花が必死に止めてくる。

 「離してイツ花ぁ!」

 「ちょ、落ち着いてください四葉様! 冗談! 冗談ですから!! 大丈夫ですよ、ただやっぱり天界からここまでとなるとやっぱり時間がかかるものでして。それで遅れてるだけですから!」

 「……本当?」

 「本当です」

 「ほんとの本当?」

 「天に誓って、本当ですよ」

 その言葉を信じて、私は再び縁側に座る。おかしいな……私の寿命は短いはずなのに、一秒がとても長く感じる。これが走馬灯ってやつか。

 「ふぅ……ああもう、早く来てくださいよぉ、ナデさん何やってるんですか……」

 「……ねえ、まだ?」

 「まだですって!」

 その瞬間、後ろの襖が開く音がした。

 

 「……しっかし、本当にひどいな」

 俺はあのあと、色々説明を受けた。俺の主な仕事はイツ花という俺とはまた違う天界の使者と一緒に一族のサポート。イツ花は主に家事を、俺は戦闘面及び雑用のサポートという分担をもらった。正直この分担が必要なものなのかという疑問もあるが、まあこれさえ終われば俺はまた向こうの世界に戻れるのだ。それを思えばいくらでも頑張れる。

 さて、それはともかくとして俺は現在俺がサポートする一族、緋衣一族と神の間にできた子どもとともに歩いている、途中で何かしら買ってやろうかと思ったが、それができないということは、ここに来てすぐにわかった。

 「そうですね……ひどいことをしますね、鬼たちは……」

 答えたのは俺が現在送っている子ども、まだ名前は付けてもらっていないらしい。見た目は、まず目を引くのがその赤い髪である、恐らく母親の遺伝なのだろうがその黒い肌と相まってかなり活発なイメージを持つが、ここに来るまでに会話を交わした結果、とても優しい子だということは既に分かっている。だが、一番奇妙な点、それはやはり彼がまだ生まれてから四ヶ月ぐらいしか立っていないということだろう。

 彼はもうそこらへんで遊んでいるような子どもと同じぐらいの背で、きっと何十年化したら立派な青年になるんだろうという風格をしていたが、恐らく数年もしないうちに、彼は俺の目の前からいなくなるのだろう。

 「(……短命の呪い、か)」

 短命の呪い、それは朱点童子が一族の復讐を恐れ、一族にかけた呪いである。その呪いのせいで一族の人間は常人とは比べ物にならない速度で成長し、そしてあっという間に死んでしまう。実際現在当主である緋衣四葉という少女も、もう高校生ぐらいの見た目らしいが、一歳にもなってないらしい。

 「(哀れなものだな……)」

 一瞬そう思ったが、その考えを俺は即座に首を振り消し去る。それが彼にとって失礼なものだと思ったからだ。

 そして、俺は気を紛らわすように京の様子を見る。その子が言うとおり。京というのだからてっきりもっと栄えてるものだと思っていたが、その光景は悲惨などという言葉では表せないほどひどい有様だった。

 まず、まともな家というものが見当たらない。大体はボロボロで、家と呼べるものは数件しかない。そして京の人々らしき人も、またボロボロな服装で誰もかしもが何をするわけでもなく、ただぼーっとしている。

 「何とか、しないとですね……」

 そう言ってその子は何かを決意するように拳を握る。

 「……なあ、なんで君は、そんな風に思うんだ?」

 「え?」

 「あ、いやほらさ。何でそんな何とかしなくちゃとか思うのかなって、ここに来たのもこれが初めてなんだろう?」

 気になって思わず聞いてしまったが、聞いた瞬間しまった、と思い、何とか言い訳を口にしたが結果さらに奇妙になってしまった。

 「なんでって……それは……僕が、お母様の息子だからです」

 「……それはどういう――」

 「ナデさんは」

 俺がその理由を訪ねようとしたら、それを遮るように質問される……恐らく、聞いて欲しくないんだろうな。

 「ナデさんは、何で僕たちを助けることにしたんですか?」

 「何でって……」

 「僕がここに来たのが初めてなように、僕がナデさんにあったのも、それこそ一週間前ぐらいじゃないですか」

 「……」

 そう聞かれて、俺は少し黙って考え、言葉を紡いでいく。

 「……俺のために。だな」

 「ナデさんのため……?」

 「ああ、俺と神様はある約束をしててな、お前らが朱点を討伐したとき、俺の願いも達成されるってわけだ。それまでお前らのサポートをするっていう約束が前提でな。だからそれが一番の理由だ」

 「……そうですか」

 「……お、あれじゃないか? 緋衣家っていうのは」

 「あ、ああ確かにそれっぽいですね」

 何となく気まずい空気になってしまいさてどうしようと思っていたら、ちょうど目的地について助かった。そこは元は立派な屋敷だったのだろうが、今ではボロ屋敷となっている。が、少なくともここの家々の中では一番立派とも言えるのではなかろうか。

 「ここが、今日から俺が住む家か……頑張らなきゃ」

 「ナデさん、早く行きましょうよ!」

 「はいはい、お母さんに会いたいのはわかるがそう急かすなって、すぐ行くから」

 「そ、そんなんじゃありませんよ!」

 急かす彼をからかうと、彼は自分の髪の色と同じように顔も赤くして反論する。

 「(そりゃそうだよな、いくら体がでかくたって、やっぱりまだ子どもだもんな。母親に会いたいのは当然か……)」

 「早く早く!」

 「はいはい」

 俺の腕を掴んで家の方へと引っ張る彼をなだめながら、俺たちは門を潜り、敷地内に入り家の中に入っていく。

 「んじゃ、まず俺が挨拶しに行ってくるから少し待っててくれ。俺にも立場ってもんがあってな」

 「分かりました……」

 そして、ここの当主様とやらがいる部屋の襖を開ける、とりあえずさっさと挨拶して仕事に入らなきゃ――。

 「うおおおお! 待っていたぞ我が息子よおおおおお!」

 俺が襖を開けるとずっと出待ちしてましたと言わんばかりに即座に何者かに飛びかかられ、抱きしめられる。

 「しかしでかいな! 私よりでかいんじゃね!?」

 「……えっと、当主様」

 「そんな他人行儀な呼び方しなでよ! 家族なんだからさ!」

 「えーと、四葉様。その人、違いますよ?」

 「え?」

 イツ花さんに言われ、その何者か……恐らく彼の母親、つまり俺が仕える当主である彼と同じ髪色をした、緋衣四葉はそちらを振り向く。

 「その方は私と一緒にこの家に来ることになったナデさんです。恐らく奥に居る子どもがそうかと……」

 「……え?」

 「そういうことですので当主様、離してもらえるとありがたいんですが――」

 「え、え、あ。うおわああああああああ!!」

 こちらに振り向き直したあと、俺の顔をまじまじと見つめ顔がどんどん紅潮してくかと思ったら突然奇声をあげながら。

 「ああああああ!」

 俺の右頬にとてもいい右フックを出してきた。

 

 

 

 




緋衣 四葉 緋衣家:本家 性別:女性
初代緋衣 四葉。
心の水と土が高く、優しくも、堅実な性格で当主向きな人物。
が、その行動は破天荒な性格で、また割とがめつい。
家族を第一に考え、自分のことは第二に考える節がある。

名前の由来
緋衣草、サルビア。花言葉は家族愛
から緋衣
四葉のクローバー、クローバー。花言葉は幸運、復讐
から四葉。
このゲームの要素を凝縮した名前、サブタイトルも合わせて中々のお気に入り。

 心 技 体
火    低
水低 低 低
風    低
土低 低
(何もない場所はステータスバーが文字から出ていないところ、低は半分を超えていないところ、中は半分ぐらい、高は半分以上 超はほぼカンスト)
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