彼女たちの生き様を見届けて―転生緋衣四葉伝―   作:粒餡

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あああああやべえええかわいいいいい!!
――とある親バカ当主の言葉


この家の力関係

 「……私悪くないもん」

 そう言って俺たちが暴れたせいでとっちらかった部屋の隅で体育座りをしながらうちの当主様(笑)がほざく。

 「ふざけんな0:100でそっちが悪いわ」

 「そりゃ確かに最初に手を出したのは私だよ! だけど、普通女の子をその勢いで庭まで投げ飛ばす!?」

 「俺は男女平等の主義なんだよ。つうかお前だって反撃してきたじゃねえか、あれでお相子で終わせればよかったのになあ?」

 「そりゃ投げ飛ばされたら反撃するでしょ!」

 「なんでそっちから仕掛けてきてんのに反撃する必要が――」

 「お二人共?」

 イツ花の言葉で俺たちは一瞬にして黙り込み、イツ花の方をゆっくりと振り返る。

 「確かに喧嘩するほど仲がいいと申します。そういう点で見てみれば主と従者、仲がいいのは結構なことです」

 そう笑いながらイツ花は言うが明らかに目が笑ってない、いや微笑んでいて目はあまり見えないのだがわかる。確実にイツ花は怒っている。

 「ええ、結構なことです。ですが……ナデさん」

 「は、はい!」

 「相手はあなたが仕える人なのですよ、それを投げ飛ばしあまつさえそのまま喧嘩をするなんて、これを昼子様になんて報告すれば……」

 「い、いやそのあの本当にすみません! 本当に今後は気をつけますんで!」

 流石にこんな理由で俺の現世帰りが白紙にされてしまっては困るので俺はその場で即土下座をしてイツ花に謝る。

 「……で、そこのナデさんを笑っている四葉様?」

 「! は、はいなんでしょうか!」

 どうやらあのアマ俺を見て笑っていたらしい、謀反でも起こしてあの子を当主にしてやろうか……

 「ナデさんの言い分もまた正しいのですよ? 先に手を出したのは四葉様なんですから」

 「で、でもその後投げたりしてきたし……私当主だし……

 「あなたは今日から母として子どもを育てていかなくてはならないのですよ? でも、四葉様がそんなのでは私が代わりに母として……」

 「すいませんでしたあああ! なのでどうかその子は私に育てさせてくださいいいいい!」

 そう言って当主である四葉ですらイツ花に土下座をした。どうやらこの家の力関係が判明してしまったようだ……

 「……はあ、お二人共、反省していますか?」

 『はい、とても深く反省しております!』

 「もう、今回だけですよ?」

 イツ花の声がいつもどおりの明るい声に戻ると、俺たちはほぼ同時に顔を上げる、するとそこにはいつもの笑顔が戻っていた……もうイツ花は怒らせないようにしよう……

 「では、四葉様! 少々遅れましたが、天界からあなた様の子どもが来ましたよ!」

 イツ花がそう言うと、となりの部屋の襖が少し開き、あの子がこちらをチラっと見てくる。そしてイツ花をチラっと見て、イツ花が頷くとそのまま襖を開け、こちらの部屋に入ってくる。

 「うおおおお! 我が息子よおおお!」

 その瞬間、先程と同じように凄まじい勢いでその子に抱きつく。こいつ全く反省してねえな……

 「か、母様、苦しいですよ……」

 「あああああやべえええかわいいいいい!! 髪! 髪の色同じ! ああでも髪型! 髪型は中竜様と同じ! あの人ね! いつもはすっごいさらさらなのに寝起きとか、普段は髪ぼさぼさなんだよ!」

 「……はぁ」

 すっごい勢いで自分の子どもを愛でる当主様を見て何だか毒気が抜かれてしまった。素はいいやつなんだろうな……

 「……当主様」

 「……む、なによ」

 そしてしばらくその様子を見ていたが、頃合を見て話しかける。どうやら完璧に機嫌を損ねてしまったようだ、まあ出会いが出会いだし仕方ないが。

 「いつまでもご子息様と戯れているのもいいですが、とりあえず。名前、つけてあげましょう。いつまでも我が息子、と呼ぶわけにもいかないでしょう?」

 「む、確かにそうね……たまにはいいこと言うじゃない、ナデ!」

 たまにはってなんだ、まだ会って一時間も経ってねえだろ。

 「さて、名前だけど、勿論考えてあるわよ!」

 そう言って懐から紙を取り出す。

 「四葉様、だいぶ考えてましたからねえ……」

 「もちのろんよ! なんてったって私の息子の名前だからね! んで、名前だけど……」

 そう言うと全員から見える位置に移動して、紙を広げる。するとそこには。

 「『奏太』! 奏でる太郎と書いて、奏太よ!」

 「……案外まともだな」

 「何て名前付けると思ったのよ!」

 光宙とか無とかそんな感じのキラキラネームをつけると思っていたが、わりかしまともなネーミングでびっくりした。

 「奏太……奏太……! ありがとうございます、僕。とても気に入りました!」

 「そうでしょうそうでしょう! なんてたって、この私がつけた名前なんだから!」

 「ところで四葉様、何か意味などはあるのでしょうか?」

 「もっちろん! ほら、私って意外とうるさいでしょ?」

 どこが意外となのか全くわからない、そう思っているとこちらを睨んできたので俺は目をそらす。

 「……んで、逆に奏太には楽器を弾くように綺麗に、しかし力強い、そんな子に育ってほしい、そういう意味が込められてるのよ!」

 「そんな意味が込められてるなんて……さすが母様です!」

 そう言って奏太はキラキラした目で母親である四葉を見上げる……中々どうして、懐いているようだ。

 「さて、じゃあ奏太よ! 来たところ早速で悪いけど出陣よ! 私たちにある時間は少ないのだから有意義に使わないとね! というわけでこの母の勇姿をしかと見るといいわ!」

 「の、前にぃ」

 気が早いことに早速出陣をしようとした四葉をイツ花が呼び止める。止まろうとしたらしいが、どうやら勢いがつきすぎていたらしくそのまま四葉は転ぶ。

 「もう、何イツ花! 私もう訓練は飽きたのよ! 毎日毎日人形への切り込み切り込み! 私の剣は鬼を斬るためにあるんじゃないわ! 鬼を斬るために存在するのよ!」

 「ですが四葉様、奏太様は訓練はおろか、まだどんな武器を扱うのかすら決めてないではないですか」

 「……確かに」

 どうやら納得したのか、四葉はその場であぐらをかいて座る。

 「奏太ー、ここに来なさい、ほら。母さんの膝の上!」

 「はい!」

 そして奏太を呼び寄せると、膝の上に座らせる、どうやらかなりぴったりらしい。

それを微笑みながら見ているイツ花は「少々お待ちくださいな」と言って蔵の方に行く。そしてしばらくするとイツ花は三冊の本を持ってきて、彼女たちの目の前に置く。

 「まず、我が緋衣家には三冊の指南書が存在します。まずは剣士、これは四葉様、そして源太様の職業ですね。常に先頭に立ち、鬼を切り払う、そんな職業でございます。剣は重いものが多いですが、その分力は強く、攻撃力はもう凄まじいものであります!」

 「確かに、力は強かったな」

 「それほどでも……」

 「褒めてねえよ」

 こいつ皮肉も通じねえのか。

 「母様の職業……! 僕、剣士になりたいです! 母様と一緒に戦いたいです!」

 「ふうん! そっかそうかあ! 私と同じ職業になりたいのかあ! もう可愛いなあ!!」

 「ふふっ、まあそう焦らずに、次に、薙刀士。お輪様がついていた職業でした。こちらは剣士と比べてあまり相手に深手を与えられませんが、その代わりに前線にでればその射程の長さから相手の前線にいる鬼をまとめて斬れる! 後ろに下がっていても一体ぐらいでしたら届くのです!」

 「……そして、本来緋衣家は剣士と薙刀士の家系でした。本来ならその技術というのは門外不出。ですが、前当主である源太様、その奥方であるお輪様が朱点討伐に行った際に大江山で討ち死にした三十三間会が落としたとされる、弓使いの指南書を獲得なさったのです」

 「……」

 それを聞いて、今まで緩けた顔をしていた四葉も表情を引き締める……俺は彼女の両親は知らない、彼女も恐らく顔をわずかに覚えている程度だろう。だが、それでも彼女が自分の両親を愛しているのだろうとわかる。

 「ま、こんな暗い話は置いといて、早速弓使いの説明に入りましょうか!」

 「でも、拾ったんならその人たちに返さなくちゃなんないんじゃないの?」

 と、奏太が正論を吐くが。

 「そんなの関係ありません! 拾ってしまえばそれはもうこちらのもん! 返す義理なんてございません!」

 と、屁理屈でイツ花が返す。一族が強くなってくれれば俺だって助かるから口出しはしない。

 「さて、弓使いですがその射程距離はとてつもなく広く、たとえ後ろにいる鬼たちであっても簡単に打ち抜くことができるのです! ただ、やはり弓を扱うには重い装備など着ていてはいけませんのでその分装備は薄いものに、まあそこを補うのが仲間であり家族なのです! さあ、四葉様、奏太様を一体どの職につかせてあげますか?」

 そうイツ花が問うと、四葉はしばらく考え込むような表情をしたあと。

 「……ねえ、奏太は一体どんな職業につきたい?」

 「え?」

 「やっぱり、やるからにはその職業を極めなければならない。そうなれば中途半端なことは許されない。だから、どの職になりたいかは、できるだけ奏太に決めて欲しいの。まあ決められないなら私と同じ剣士でもいいけどね」

 そう言って四葉は笑いかける。そして奏太は床に置かれた三つの指南書を眺めて、しばらく経つとその内の一つを手に取る。

 「……僕は、薙刀士になります」

 「……何で?」

 「だって、母様のお父様とお母様は、剣士と薙刀士だったんでしょう? だったら、きっとそれには理由があったんだと思います……僕は、まだ何も知りません。だから、母様のお父様とお母様の考えを学べるように、母様が剣士ならば、僕は薙刀士にと……ダメ、でしたか?」

 「……ダメなんてことはないよ、むしろそんだけ考えていられるんだから偉いよ、奏太は、将来は大物だね、こりゃあ」

 「えへへ……」

 さっきとは打って変わって優しく奏太の頭を撫でる四葉の姿を見て、俺は安堵していた。内心こいつが無茶して奏太に無茶させるんじゃないかと思っていたが、どうやらそれは杞憂だったようだ。

 「……さて、では奏太様の職業も決まったことですし、早速四葉様、奏太様、ナデさん、そして私たちによる、親睦を深めるのもかねて初の共同作業を行いましょうか!」

 「おおいいねえ! なになに? そこらへんの道場に殴り込みかける?」 

 「ぜってえに俺は参加しねえからな」

 「えー、ナデ絶対素質あるって、一緒に闘おうよー」

 「ふざけんな、俺はインドア派何だよ」

 「いんどあ?」

 「あー、何でもない。んで、イツ花。その共同作業っていうのは?」

 つい横文字を口にしてしまったため少し違和感が生まれてしまったためごまかすように俺はイツ花に問う。

 「それはですね……この荒れた部屋の掃除です!」

 『あ』

 そこで改めて周りを見た。そうだった、ここは俺たちが暴れたからめっちゃ散らかってたんだった……

 「なあに、全員ですれば直ぐに終わりますよ。終わったら早速奏太様の訓練と行きましょうか」

 そう言ってイツ花は元気よく腕を上げると。

 「それでは、バーンとォ!! やっちゃいましょうか?」

 いつもの口癖とともに掃除の開始を宣言した。




緋衣 奏太 緋衣家:本家 性別:男性
初代緋衣 四葉の初の子ども。
心の水が高く、母に似て優しいのが分かるが、母親ほどの危機管理能力はなく危ういところも。
基本的にお母さんっ子であるが、ナデにもなついている。イツ花には最初の出会いが出会いので少々恐怖感を抱いている。
 心 技 体
火    
水低 低 低

土  低
(何もない場所はステータスバーが文字から出ていないところ、低は半分を超えていないところ、中は半分ぐらい、高は半分以上 超はほぼカンスト)
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