【プロローグ】ある梱包された日常
朝起きて身支度をする。
テレビを見る。
好きなアニメをみる。
美青年育成ゲームをプレイする。
学校で良い子として振舞い。
帰宅してまた趣味に勤しんで風呂に入り。
そして寝る。
人間のサイクルなんてこんなもん。
別に不満がある訳じゃない。むしろエンジョイしてる方だと思う。
そこそこ有名な魔術師の家の分家の長女の立ち位置としては、極めて人間的で自由な生活を送れているという自負がある。
「はぁ……尊い」
だから私は今日の朝も魔術師が大嫌いな電子機器の一つ、スマートフォンの最新機種を用いて推しを愛でる。それはもうひたすらに。
そして一応うちの学園の特待生なので学費を心配する必要のない私は、スマホにお金をすとんと入れて推しの水着をゲットする。お爺ちゃんから貰った家なんだけど美術品っぽいの適当に売ったらしばらくは何もせずに暮らせるお金が舞い込んできた分家万歳。お爺ちゃんありがとう。
一通り推しを愛でると、時計は既に6時45分。あと15分で理想郷たる家から出なくてはいけない。
ピンポーン。とインターホンが鳴る。
朝早くに来るのは友達……いないな。親はロンドンで引き籠ってるし…つまり
この間頼んだ推しのウ=ス異本かな。
ウキウキ気分で扉を開けるといつもお世話になってる灰猫宅急便のお兄さん。
あ、いつもどうも的な会釈をしつつ段ボールを確認する。
………。
予想より大きな段ボールで少し驚く。あれ…三冊にそんなに厳重に?
よく見ればペタペタとワレモノ注意! ワレモノ注意! ともう呪いの品に札張ってんじゃないのレベルで張ってある。いや確かに大事に扱ってほしいけど厳重過ぎません?
判子を押して荷物を受け取る。超重い。そしてよく見たら差出人が本家だった。どうしよう一気にやる気削がれた、この前みたいな、魔術教科書だかなんだかの1万円してそうな広辞苑より遥かに分厚い本とかだったら暖炉の燃料にする。私は薄いのがいい。
かといって開けないのも癪である。詳細は帰ってからにするとして、とりあえず中身だけ確認する。
開けると更に黒い箱が出て来る。出たよマトリョーシカ方式のよくわからん奴。お前前回四回くらいやって本出てきたときは人生で久しぶりに燃焼魔術使ったからな?
しかし今回はもう一度開くと黒い羊皮紙に赤字で文字がつづられている。致命的に読みにくい。
………………。
要約すると、この次にある物を用いれば使い魔を召喚できるらしい。成功したら連絡をよこせと書いてある。
ちなみに本文はこんなことを伝える為だけに手紙を二ページ半使ってある。要件は簡潔にしてくれ。こちとら現代系魔術師()だよ?
とはいえ、使い魔が欲しくないかと聞かれれば嘘になる。
いくら魔術師としてアレな私でも餌がいらないペットくらいほしい。出来れば毛が落ちない黒猫がいいなぁ。
とか考えつつ次の箱を開ける。
………………。
そこには、日本の代表的梱包材にして一度は誰もが潰したであろう『プチプチ』にぐるぐる巻きにされた。巨大な黄金の鍵のような物が入っていた。
「………いや…プチプチって……」
イケボな時計が時間を教えてくれる。
とりあえず手順とかも書いてあったけど続きは学校から帰ってきてからにしよう。
今日も私はそれなりに楽しく過ごすことを誓って家を出る。