タルンダ先輩(肉彦)が復帰する話。
スペックは高いはずなのに公式でもどんどんネタキャラ化していく人。
2009年5月18日(月)
そして中間テストが始まる。
中間テストは今日から土曜日までの6日間の日程だ。
悠は初日から軽快にペンを走らせる。
悠はまるでこの学年をやるのが2回目かのような感覚を覚えていた。
2009年5月19日(火)
Q.吉村冬彦の随筆はどれか、次のうちから答えなさい。
A.万華鏡
Q.グッドラックの意味にも使われる言葉をチューズしなさい。
A.ブレイク・ア・レッグ!
2009年5月20日(水)
Q.次のうち、仲間はずれのものを選びなさい。
A.カオス理論
Q.赤道付近に住む人が、自転により進む速度はどの程度であるか。
A.音速より速い
2009年5月21日(木)
Q.石けんは何性でしょうか?
A.アルカリ性
Q.カルシウムとマグネシウムの含有量の多い水を何と呼びますか?
A.硬水
2009年5月22日(金)
Q.あまり重要でない知識ですが、旧石器と新石器の違いは何か。
A.石器の形
Q.あまり重要でない知識ですが、キトラ古墳は何県にあるか。
A.奈良県
2009年5月23日(土)
今日は中間テスト最終日だ。
走り出したペンは止まらない!
――テストが終わった。
それまでの頑張り、日常の成果によって、悲喜交々の声が上がる中、完璧な手応えを悠は感じていた。
これは結果も期待できることだろう。
そういえば――テストとは関係ないが、朝に日曜日の日課ともなっている時価ネットで頼んだ商品が届いた。
“十徳刀”と“カデンツァ”。
十徳刀はともかく、カデンツァとはなんだろう。
アルカナカード……二体のペルソナのようなイラストが描かれている。
不意にそのカデンツァのアルカナカードを眺めていた悠の頭に閃くものがあった。
>ミックスレイド“カデンツァ”に必要なペルソナの組み合わせを閃いた!
(オルフェウス×アプサラス)。
同日 -夜-【巌戸台分寮】
テスト後に行われた病院での検査から帰ってきた明彦は、晴れやかな顔をしている。
「おかえりなさいーっ」
「先輩、全快したそうですね!」
「おめでとうッス」
「おめでとうございます」
「復帰メニューが山積みだ。まる1ヵ月サボっていたわけだからな」
掛けられる快復祝いの言葉に、闘志漲る顔で明彦は応じた。
「急に無理すると、また折れちゃいません?」
「そうも言ってられない。新たなペルソナ使いも見つかったしな」
ゆかりの心配する声に対する明彦の新情報に、順平が目を輝かせる。
「おおっ!!? 新戦力って事スか! もしかして女子とか……!!?」
「女子だ。ウチの高等部2年のな。“山岸風花”……四人共、知ってるか?」
悠は明彦の告げた名前に首を傾げた。
なんだかんだで転校してきて1ヵ月半しか経っていない。
“クラスメイト”、“運動部”、“生徒会”、“学園の教師”、と学園内で順調に交流の輪を広げている悠だったが、山岸風花という名前はその中にない。
別のクラスということになれば、さすがにまだ個人での付き合いはあまりなかった。
せいぜいが転入生ということで声を掛けられたり、何をやっているのか気になった時などに悠から少し声を掛けることがあるくらいだ。
湊と順平も知らないのか顔を見合わせている。
しかし唯一ゆかりはその人物のことを知っていたらしく口を開く。
「山岸……? ああ、確かE組の……。なんか身体が弱いとかで、学校ではあんま見ないような……」
「俺たちのいた病院へ来てたらしい。それで適性が見つかった。 ――しかし、素養があっても身体がそれじゃ、戦いは無理かもな。召喚器も用意したんだがな……」
「ええっ、もう諦めちゃうんスか!!? せっかくオレが、手取り足取り、個人レッスンとか……」
「発想がオッサンだねっ!」
「明るく言われたっ!!? ――ってか、ナニ? みんなして、その可哀想な動物を見るような目は。……見んなよ。……オレを見んなよ」
順平が視線から逃げるように縮こまる。
悠はその様子に助け舟として別の話題を口にした。
「それはそうと、順平、テストはどうだった?」
しかし、それは順平にとって追い打ちとなる話題だったようだ。
「……あ、はは、あ、赤点は回避できたんじゃない? ……たぶん」
「あんなことやっておいてそのレベルなわけ、あんた……」
「う、うるさーいっ! そういう、みんなはテストどうだったんだよっ!」
順平はそう言ってみんなに尋ねるが――。
「完璧だった」
「私も! かなり良かったと思うよっ」
「手応えはいつも以上、かな。鳴上くんのおかげだね」
「俺はトレーニングができなかったからな。その分、今回のテストはバッチリだ」
S.E.E.Sのメンバーは、順平を除いて文武両道を地で行く者たちの集まりだった。
「何この圧倒的なまでの疎外感っ!!? どうせここにいない桐条先輩も学年トップとかそういうレベルだろうし……優等生しかいないっ!!?」
慄き震える順平だが、ゆかりは冷めた目でトドメとなる一言を呟く。
「……今更?」
「ちくしょーっ!!!」
だが、その日はそれで終わらない。
やさぐれた順平の代わりに、治ったアピールを美鶴に対して執拗にする明彦を加えて、さすがにテスト期間には遠慮していたタルタロスの探索を行う。
それでも最初こそ復帰したばかりで、身体が鈍って――LVが低かった――明彦だったが、ようやく探索に参加できたということでテンションは絶好調であり、すぐに改善されていった。
明彦のペルソナは“ポリデュークス”の名を冠しており、筋肉質な躯に加え、右手は戦車の砲弾のようになっていた。
そして、切り揃えられた前髪で長髪と中々に特徴的な容姿をしている。
属性的には電撃で、これはやはりと言うべきなのか、氷結属性に弱かった。
タルタロス -36F-【奇顔の庭アルカ】
36Fには番人タイプのシャドウがいた。
一度エントランスで態勢を整えて、再び戻る。
その頃には順平の様子はだいぶマシになっていたのだが、今回はこのままのメンバーで戦うことにした。
だが、その判断は意外と正しかったようだ。
今回の番人――個体名“変容の彫像”は、シャドウの特徴である仮面……“女帝”タイプであることを表すそれを着けた彫像型なのだが、順平の弱点である疾風属性のスキルを使ってきたのだ。
しかも、“ガル”ではなくて上位スキルである“ガルーラ”。
それも全体スキルである“マハガルーラ”をも使って攻撃してくる。
ついでに弱点もないどころか、得意とする疾風は無効にするようなので、ゆかりは回復役に徹することになった。
悠の防御力を下げる“ラクンダ”や、明彦の攻撃力を下げる“タルンダ”で変容の彫像の能力を下げて、正面から挑む戦法を取る。
変容の彫像はさらに“ポイズンミスト”――“毒”を使ってくるという厄介な存在だったが、ペルソナを宿していれば、“毒”といえども即死するようなことだけはないので、キチンと回復すれば、その存在にそこまで怯える必要はない。
「これで――どうだッ!」
ボクシングで無敗を誇っていると言うだけのことはある明彦の素早い連撃に、変容の彫像は遂にその体勢を崩した。
「この瞬間を待っていた。仕掛ける――っ!」
「はい、総攻撃ですっ!」
四人の畳みかけるような総攻撃を前に、変容の彫像は存在を保つことはできずに霧散していった。
タルタロス -40F-【奇顔の庭アルカ】
「む。行き止まりか?」
40Fは16Fの時と同じく、不思議な力によって塞がれていた。
「また、行き止まり……どうします?」
「……ここにも、アタッシュケースがあるな」
アタッシュケースの中身は“人工島計画文書02”。
名前からして16Fで入手したそれの続きのようだが……その文書を湊が手に取って、読み上げる。
【桐条のエルゴ研が島に“ラボ”を置くという。
……おかしい。
単なる一研究員の私でも分かる。
この島で何かが始まろうとしている……】
「――桐条、か」
「それってやっぱり、タルタロスには桐条グループが関係あるってこと? 影時間や、ひょっとして10年前の爆発事故も――」
「どうだろうな。どちらにしても10年前のことじゃ、当時子供だった美鶴には分からないだろう。幾月さんなら分かるかもしれんが、何か分かってるなら言ってるはずだ。幾月さんも当時は今みたいな立場じゃなかった。知らないと考えるのが自然だ」
「隠してるってことは……」
「隠す? 隠してどうするんだ?」
「それは……」
明彦のそのままな疑問にゆかりは言い淀む。
悠も湊もゆかりの事情は本人の口から聞いているが、それ以上の情報を持っているわけでもなく迂闊に口を挟めるような内容でもなかった。
「だが、当時のことと言うなら……美鶴。親父さんとは連絡を取れないのか?」
明彦は少し考える素振りを見せると、通信で美鶴に尋ねる。
それに対する答えには少しだけ間があった。
『……お父様は忙しい方だからな。一応私の方から連絡を取ってみるが、いつになるかは分からない。期待はしないでくれ』
美鶴の言葉には若干苦いものが混じっている。
嫌っているような色は見えないが、傍目には完璧超人系の美鶴には珍しく、遠慮しているような感じだった。
やはり家が特別だと、親子の関係というのも独特なものになるのだろうか。
「何それ、影時間のことでしょ……」
「そう言うな。財閥の当主ともなれば、俺たちには分からないほどの苦労があるんだろうさ。――……とにかく、いつまでもこうしていても仕方ない。この行き止まり、どんな力が働いてるのかしらんが、ペルソナで無理に押し通ることもできなさそうだしな」
明彦がそれをコンコンと叩きながら言う。
「じゃあ、今日のところはこれで引き上げよっか?」
「――ああ」
何事か考えていたのか、同意を求めた湊の言葉に、少し遅れて返事をした悠の姿を見て、湊は珍しいと理由を尋ねる。
「鳴上くん、何か気になるの?」
「いや。前回は大型シャドウを倒したすぐ後に開いた。それが偶然じゃないなら、また大型シャドウが出るのかと思ってな」
『「「「!!」」」』
「……なるほど。確かに鳴上の言う通りその可能性はあるな。面白い。最初の奴にやられたリベンジをしてやる」
悠の推測はあり得そうな考えとしてみんなに浸透していく。
その中で明彦は拳を掌に打ちつけて不敵に笑った。
不安とかではなくそういう考えが真っ先に出るあたり、これまでもそんな言動を見せてはいたが、明彦はバトルマニア的な人種だと言えるだろう。
「また、モノレールとかは勘弁してよ? 桐条グループが働きかけたのか、ほとんど報道されてはなかったけど、深夜のオーバーランとかって少し噂になってたしさ」
「あ、私も聞いたっ!」
「――……今更言っても仕方ないが、もっと上手くやるべきだった」
『そんなことはない。君たちは良くやってくれた。その話はこれまでだ。戻ってきてくれ』
「了解でーすっ!」
美鶴は良くやったと言うが、悠はそう思えなかった。
あの時、罠を覚悟してモノレールに乗り込んだ。
影時間では機械が動かないという思い込みもあったのかもしれない。
そのせいで危険な目に合い、さらにはそういう結果に落ち着いた。
桐条グループがどう働いたのかは分からなかったが、桐条グループが手を回したのはおそらく報道関係だけだろう。
そうなると、何も悪いことはしていないというのに、運転士やらのモノレール関係者はクビになっている可能性が高い。
いや、それだけでは済まない可能性が……あの時の判断の甘さがその人物やその周囲の人間の人生を狂わせたかもしれないのだ。
大型シャドウを倒して良かっただけでは終われなかった。
だが、その事をわざわざこの場で指摘して空気を悪くしても仕方がない。
桐条グループがその人物たちに対しても被害者として働きかけていることを願うしかなかった。
……いや、タイミングを見て美鶴にだけは相談してみるべきか、そんなことを考えながら悠は他の三人と共にエントランスに戻った。
「つーか、真田さん頑張り過ぎっスよ~! オレっちがいない間に行き止まりまで行っちゃうなんてっ!」
「ん、ああ。まぁ、そう言うな。俺だってこれまでタルタロス探索を随分と我慢していたんだ」
順平の様子はすっかりいつも通りになっていた。
しかし、一方では――。
「怖い……」
ゆかりは自分の身体を抱きしめるようにして呟く。
「岳羽? どうかしたのか?」
「桐条先輩……私、大丈夫ですよね……?」
「大丈夫って何がだ?」
「私……この装備で戦うことに慣れてきてる気がして……」
そんなゆかりの装備は相変わらずのハイレグアーマーだった。
「そっ、そうか……。 ――大丈夫だ岳羽。自分を信じろ」
美鶴は一瞬言葉に詰まりながらも、ゆかりを励ました。
けれどその視線は、微妙に泳いでいる。
「うぅ、それ以前に、湊を止めてくださいよ~……」
「……すまない」
ちなみにその原因である湊は、そんなやり取りを気にした様子もなく、先程手に入れた人工島計画文書02を手にぼーっとしていた。
――……影時間が終わる。
【真田明彦】
PLV12→PLV19
-STATUS-
学力:かなりの秀才 魅力:オーラが出ている 勇気:胆が据わっている
将来:警察に入るか赤マントになるかの二択(赤マント後に警察には入れない気がする)
ペルソナ:ポリデュークス
備考:ステは高いのに何故こうなった……!