ペルソナ4→3   作:第7サーバー

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再投稿。
コロちゃんにガキさんに風花が登場する話。
仲間が増えて賑やかになってからがやっぱり本番ですよね。


5月24日(日)~25日(月):嵐の前

2009年5月24日(日)

 

中間テストが終わっての休日。

悠は通販の注文を終えると、寮を出た。

悠にはその日の予定としての考えがあった。

――釣りだ。

ここに来てから“釣り仲間”は出来たものの、なんだかんだで釣り自体はできていなかった。

だから、テストが終わった今日こそ、それを実行しようと考えたのだ。

釣り道具に関しては、実はすでに用意してある。

後はもう釣りポイントを確保して、釣るだけだった。

そして良さげなポイントを見つけたので、釣り糸を垂らす。

悠の根気なら5回――いや、5時間以上でも軽く耐えられるだろう。

だが、それほどの時間は必要ない。

どこで鍛えたかは忘れたが、悠の眼力なら、浮きが沈み魚が食いつく瞬間を見逃したりはしない。

 

――……中々の釣果だ。

メバル、カサゴ、アイナメ、キス、クロダイ。

これだけ釣れれば充分だろう。

釣った魚はどうしようか。

“釣り仲間”である、青ひげ店主に見せに行こうか。

悠は青ひげファーマーシーに向かった。

 

「いらっしゃい! ――おう、悠か。おっ、釣り道具を持ってるってこたぁ……」

 

悠は青ひげ店主に今日の釣果を見せた。

 

「ほう……。中々やるじゃねえか。サイズも悪くねえ。マグレじゃねえな」

 

青ひげ店主はそう言ってにっと笑った。

 

>青ひげ店主のことがまた少し分かった気がする…

 

【Rank up!! Rank2 太陽・釣り仲間】

 

>“釣り仲間”コミュのランクが“2”に上がった!

>鳴上悠の失われた力“太陽”属性のペルソナの一部が解放された!

 

ペルソナ全書を見ると、“ホウオウ”が追加されている。

LVは20――今の悠と同じLVで、ランク的にもギリギリのペルソナだ。

電撃が無効で、“ガルーラ”に加えて、なんと“マハラギオン”というスキルがある。

これは“アギ”の一段階上のスキルである“アギラオ”の全体スキルだ。

魔力も低くない上に、“火炎ブースター”もあるので、現段階ではかなり強力なペルソナと言えるだろう。

悠が主力としてるイザナギも能力は高いが、全体攻撃ができないので、それを補えるペルソナの登場は大歓迎であった。

 

「これだけ釣れるなら、そろそろお前にも話してもいいかもしれねえな。伝説をよ……」

 

青ひげ店主はそんなことを呟いている。

しかし、今日のところは話すつもりはないようだ。

また、出直すとしよう。

 

その帰り道……なんとなく長鳴神社の方面から帰ることにした悠は一頭の白い犬と出会った。

人に慣れているようなので、近寄って頭を撫でてみる。

白い犬は気持ち良さそうに目を細めた。

悠は何か餌でもあげようかと考え、ちょうど魚を持っていることに気付いた。

 

「おい……お前」

 

魚をあげようとしていた悠に声が掛けられる。

 

「別に悪いとは言わねえが、調理もしてねえんじゃ、骨が喉に引っかかるかもしんねえ。俺が餌を持ってきた。今日はそっちにしとけ」

 

悠に声を掛けたのはニット帽にコートの男。

少し強面で近寄り難い雰囲気もあるが、悠が相手の容姿を気にすることはあまりない。

そもそもこの人物は、その会話内容から犬のことを気遣える優しい人物だと悠は認識していた。

 

「知っている犬ですか?」

「……そこの神社の神主が飼ってた犬だ。けど死んじまってな。それ以来、たまに餌を持ってきてる」

「代わりに飼ったりとかは?」

「それはできねえ。こいつは今でもそこの神社を守ってやがるのさ。神主としていたっていう散歩だって1日と欠かしちゃいねえんだ」

 

男が取り出した皿に餌を移しながらに答える。

 

「たいしたヤツだぜ。犬だってのによ……」

 

男が何かを想うように呟く。

悠はそのことについては訊かず、自己紹介をすることにした。

 

「俺は鳴上悠です。貴方は?」

「……“荒垣真次郎”だ。……って、ちょっと待て、鳴上悠つったか? ひょっとして、お前、巌戸台分寮に住んでねえか?」

 

真次郎は悠の名前を聞いて、ピクリと表情を動かすと、犬に向けていた視線を悠へと移す。

 

「そうですけど?」

「そうか……ってことは、お前がアキが言ってた……」

 

真次郎は悠の頷きに記憶を確認するように呟いている。

その呟きを聞きとった悠もまた、記憶に閃くものがあった。

 

「アキ? 真田先輩ですか? ――もしかして、真田先輩が言ってたシンジさん?」

「あ? そうだが……アキが何を言ってたって?」

「幼馴染で料理が上手いと」

 

そう。

明彦は前にそういう人物が寮に住んでいたと話していた。

今は事情があって離れているという話だが……。

巌戸台分寮にいたということは、真次郎もペルソナ使いだったりするのだろうか。

 

「……どうしてそういう話になったんだ?」

「俺も料理が趣味なんです。一度寮のみんなに振る舞った事があって、その時に」

「なるほどな……。アキのヤツは普段ちゃんと食ってんのか?」

「――普段は牛丼とプロテインばかりですね……」

 

そのまま伝えていいのか少しだけ悩んだが、悠は正直に答えた。

寮に住む者は外食やらカップ麺やら、それぞれで食事をしているが、その中でも明彦は偏っていて、悠がラウンジで見かける時はいつも“牛専科・海牛”の牛丼とプロテインばかりを口にしていた。

 

「ったく、あいつは……。次会った時言わねえとダメだな。鳴上。お前も良ければ気に掛けてやってくれ。ちょっとサラダとか食わせるだけでもいいからよ」

「分かりました」

 

呆れたように顔を顰めながらも、明彦のことを気遣う言葉に悠は軽く微笑むと頷いた。

 

「おう。んじゃあ、食い終わったみたいだし、俺はそろそろ行くわ」

「あ、この犬の名前知ってますか?」

「“コロマル”だ」

 

真次郎はそれだけ言うと、皿を回収して去って行った。

悠は真次郎が去った後にこちらを見上げていたコロマルの頭を再び撫でる。

 

「荒垣先輩か……イイ人みたいだな」

「わんっ!」

 

悠の呟きに応えるようにコロマルが吠えた。

 

>コロマルとの間にほのかな絆の芽生えを感じる…

>コロマルのことが少し分かった気がした…

 

我は汝…、汝は我…汝、新たなる絆を見出したり…絆は即ちまことを知る一歩なり。汝、“剛毅”のペルソナを呼び出せし時、我ら、失われた力を解放せん…

 

>“剛毅”属性のコミュニティである“夢の動物王国”のコミュを手に入れた!

>鳴上悠の失われた力“剛毅”属性のペルソナの一部が解放された!

 

ペルソナ全書を見ると、“ザントマン”が追加され、すでに登録済みだった“ヴァルキリー”が強化された。

ザントマンはLVが5なので、現状ではちょっと活躍の場がなさそうだ。

一方でヴァルキリーは耐性が斬撃から氷結に変わっていて、スキルが追加されている。

LVが変わったりはしていないのだが、8個全部埋まる代わりに失われたスキルもあった。

ペルソナは一体につき、8個までしかスキルを覚えられないので、自分の失われた力と差異があればそれも理解できるし、実際これまでにもあったことだ。

だが、気になるのは“斬撃見切り”というスキルだ。

シャッフルタイムで手に入ったペルソナはみんな斬撃、打撃、貫通といった属性があるのだが、失われた力は全て物理で統一されている。

この差異は思いの外大きいんじゃないかと思う。

たとえば“物理見切り”というスキルでも持っていれば、斬撃以外のものであってもカバーできるし、そもそもスライムなどは物理に耐性を持っていたりもした。

しかし、この差異はどこから来るのだろうか。

気になるのは確かだったが、考えるには情報が足りなかった。

 

……それにしても“夢の動物王国”って何だろうかと悠は思う。

動物たちじゃダメだったのか? そもそも夢って。

いや、それ以前にコミュの相手は別に人間じゃなくてもよかったようだ。

悠はそんなことをぼんやりと考えながらも、そのこと自体にはどこか納得する自分を感じていた。

 

コロマルと別れて寮へと帰った……。

 

 

2009年5月25日(月)

 

「おーい、試験の結果、張られたぞー」

 

クラスメイトの言葉に悠たちも試験結果を見に行くことにした。

悠の成績は――なんと、学年トップだ!

周りから一目置かれている!

 

我は汝…、汝は我…汝、新たなる絆を見出したり…絆は即ちまことを知る一歩なり。汝、“刑死者”のペルソナを呼び出せし時、我ら、失われた力を解放せん…

 

>“刑死者”属性のコミュニティである“学園の生徒”のコミュを手に入れた!

>鳴上悠の失われた力“刑死者”属性のペルソナの一部が解放された!

 

鳴上悠の評判“謎の転校生”

 

ペルソナ全書を見ると、しかし、絵柄が影になって追加されただけだった。

このアルカナはこのランクで制御できるペルソナはいないようだ。

 

……それにしても“学園の教師”というコミュはすでに存在しているが、特定の誰かと接することもなくコミュが築かれるとは。

これは、学園全体に於ける、悠の評判とかそういうことで育めるコミュなのかもしれない。

 

「負ーけーたーっ!!!」

 

悠がそんなことを考えていると、隣からそんな声が聞こえた。

――湊だ。

 

「湊だって充分イイでしょ。10番以内の成績だしさ。――ってか、鳴上くんは凄過ぎ。頭イイと思ってたけど、まさか、学年トップになるなんて……」

 

ゆかりは感心とも呆れとも取れるような声で呟いた。

そういうゆかりの成績も上位で、ゆかり自身もこの結果には満足していた。

 

「うぅ……桐条先輩からのご褒美が~……」

 

だが、ゆかり以上の成績であるにも拘らず湊からは恨み言が漏れている。

 

「ご褒美?」

 

悠は知らなかったが、成績がよければ美鶴は何かご褒美を用意すると湊たちに話していたようだ。

 

「そういや、そんな話もあったね。でも、別に学年トップになれって言われてたわけじゃないでしょ? 10番以内なら貰えるんじゃないの? ……というか、今更だけど、私は湊の成績にビックリしてる。鳴上くんのことがあるから、あれだけど」

 

マジメに勉強をしていた悠やゆかりと違って、学力を上げるためにゲームセンターに行ってくるとか言っていた湊だ。

それで学年10番以内の成績を取ってしまうのだからと、ゆかりは湊の不思議さに溜息を吐いた。

しかし、湊はその成績でも満足はできないらしく、変わらず悔しそうにしている。

 

「確かにトップじゃなくても貰えるかもしれないけど……トップのほうがイイ物を貰えるに違いないものっ」

「……だからって、俺に言われても困るんだが」

 

悠がその言葉に突っ込むと、きっ! と湊に睨まれる。

 

「つ、次は負けないんだからーーーっ!!!」

 

湊は悠に指を突きつけて、そう宣言すると、どこかへと駆けて行った。

 

>湊のことがまた少し分かった気がする…

 

【Rank up!! Rank2 愚者・有里湊】

 

>“有里湊”コミュのランクが“2”に上がった!

>鳴上悠の失われた力“愚者”属性のペルソナの一部が解放された!

>有里湊との合体攻撃“ミックスレイド”に新たな可能性が追加された!

 

ペルソナ全書を見ると、“オバリヨン”が追加されている。

LVは13で物理関係のスキルが多い。

耐性も物理、それと火炎にもあった。

ただ、使うとするなら、経験を積ませる必要がありそうだ。

 

……それはそうと。

 

「ライバル認定されちゃったみたいだね。鳴上くん」

 

そのようだ。

悠はなんとなく溜息を吐いた。

湊はコミュが築かれた時もそうだが、そういう時はどうにも突っ掛られることが多い。

といっても、これが二度目だが。

普段は基本にこにこしているタイプなので、珍しい一面を見てるという意味ではそうなのかもしれないが。

これはひょっとすると、これからも度々こんなことが起こるという予兆なのだろうか……。

 

「……そういえば、順平。あんたはどうだったの?」

「それをこの状況でオレっちに聞くか……」

「あー……って平均よりちょい下だったら、いつものあんたより全然良いんじゃない?」

 

ゆかりが張られた結果から順平の名前を見つけ出してそう言う。

 

「確かに普段なら、全然喜べるんだろうよ……。でも、お前らが学年トップだ、10番以内だって、話をしてる横でその結果を見ると、オレっちってなんだろうな……って思っちまうんだよ」

「あ、はは……そりゃ、そうだわ」

 

そんなこんなで結果発表が終わり、ついでに学園も終わって――放課後。

月曜日ということもあり、黒沢のところに行こうと、ポロニアンモールに向かう道の途中で、おそらくは他校の男子生徒数名に絡まれている月光館学園の女子生徒に遭遇した。

悠は迷うことなく仲裁に入った。

 

「何があった?」

「あー、何だよてめえ。別にてめえにゃ関係ねえだろ!」

 

男たちは間に入った悠を威嚇している。

 

「複数で囲むようなことを彼女がしたのか?」

「だから、うっせえんだよ、てめえ!」

「なあ、やっちゃう? こいつ、やっちゃう?」

「それもいいかも、なっ!」

 

別の男の言葉に応え、悠と話していた男が拳を振るう。

しかし、普段からタルタロスでシャドウと戦う悠からすれば、それはどうにも軽いものだった。

悠は掌で拳を受け止める。

 

「――なっ、てめえ、放せっ!」

 

悠はそのまま拳を受け止めた手に力を籠めた。

 

「いでっ、いででででっ!」

「てめえっ!」

「なめやがって!」

 

他の男たちも掛かって来ようとしたが、それを見て取った悠は機先を制するように、拳を握っていた男をそちらへと押す。

他の男たちはその男を受け止める羽目になり、掛かっては来られなかった。

 

「落ち着け」

 

悠からすれば街の不良程度は、簡単に撃退できるのだが、一応陸上部や生徒会に所属している身なので、あまり大事にはしたくなかった。

その言葉に、水を掛けられたように冷静になった男たちは悠の雰囲気に呑まれた。

 

「これ以上やるつもりなら、こちらも手加減しないが――どうする?」

 

それは嘘だ。

手加減はするに決まっていた。

だいたい悠は事情が分かっていない。

見た限りでは、単純に激しやすい男たちが女子生徒に突っ掛ったように思えるが、女子生徒のほうが悪かった可能性もあるのだ。

なので、場合によっては警察に間に入ってもらう必要があるだろうと、ポケットの携帯にも意識をやった。

男たちはお互いを窺うように見ている。

最初に動いたのは悠に拳を握られた男だった。

 

「――ちっ。バカらしい。行こうぜ」

 

そう言ってその男が背を向けると、他の男たちも悪態を吐きながら続く。

その男がリーダーのような立場だったのだろう。

そして、後には悠と、一言も口を挟めずにいた女子生徒だけが残った。

 

「あ、あの……ありがとうございます」

「別に構わない。どういう状況だったんだ?」

「それは、えっと……私がちょっと、あの人たちにぶつかっちゃって……」

 

それだけらしい。

彼女の不注意もあるだろうが、絡むほどのことでもなかった。

 

「災難だったな」

「あ、はい……私、トロくて……あの、鳴上くんですよね?」

 

花柄でエメラルドグリーン、タートルネック系の服をインナーとしている緑髪の女子生徒。

顔見知りだったろうかと考えるが、悠の記憶にはない。

 

「なんで俺のことを?」

「それは、有名ですから。転校生ですし、今日のテスト結果でも学年トップで……凄いですよね」

「ありがとう。それでキミは?」

「あ、すみません。私、山岸風花って言います。えっと、2-Eです」

 

山岸風花……どうやら、目の前の女子生徒が明彦の言っていた、新たに見つかったペルソナ使いとしての適性を持つ人物のようだ。

ゆかりによると身体が弱いとかいう話だった。

見ただけでは、はっきりとしないことだが――まぁ、今の状況を振り返っても、戦いには向いていなさそうではある。

そんな彼女がこれから影時間の戦いに関わってくることがあるのかどうか。

それは学年トップになるだけの知識を持っている悠であっても分からないことであった。

 

風花と別れて、黒沢のところに顔を出してから、寮へと帰った……。




オリジナルコミュは基本的にペルソナ3のコミュ化されてない人物たちが関わってくる予定。
しかし“夢の動物王国”。
このコミュだけはノリで用意してしまった感が強い。
コロちゃん以外に何を出せばいいのか……クマやキツネがいれば話が早いんですが。
まぁコロちゃん散歩イベントの拡大版みたいな感じになるかもしれませんね。

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