ペルソナ4→3   作:第7サーバー

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どうも、お久しぶりのペルソナです。
まぁチラシの裏なので読む人はあまり居ないのかなと思いますが。
それで小説情報のあらすじに書いた通り、少し話を飛ばしながらの投稿になります。
時系列順の投稿だと投稿できないままになってしまいそうだったので。
ゲームをプレイしていちいち確認とかしないといけない作品形式ですからね。
両方一度にだとガッツリ時間が必要なので。
という訳で、挿入や修正によって何とか完結まで持っていく予定です。
でも、やっぱり完結してから読んだほうがいいかもしれません。
なので、見分け方を用意しました。
サブタイトルがちゃんとしてないのは、まだその期間の話が書き終わっていません。
要はこの話みたいなのです。
はい、つまりこの話にも抜けが存在しているので、読むかどうかはそれぞれで決めてください。
前書きが長くなりましたが、読むと決めた人は色々とアレな本編にどぞー。


6月22日(月)~30日(火):まだまだ抜け日あり。

2009年6月22日(月)

 

黒沢と失踪者の事について会話。(街を守る者コミュ2)。

 

 

今回の失踪者の名前は“花村陽介”というらしい。

……どこか引っ掛かる名前だ。

とにかくタルタロスに助けに行こう。

 

 

「――上くん、鳴上くん!」

 

タルタロスを駆け上がる悠の姿を、パーティーメンバーとして横目に見ていた湊は、何か違和感を感じて声を掛けた。

焦っているとでも言う言葉が一番しっくりくるだろうか。

普段ならもっと細かに仲間の様子を確認し、何よりリーダーである湊の判断を尊重してくれる悠だが、今回はまさに一直線というか、率先して前へ前へと向かっているように思える。

 

「何だ?」

「何っていうか……いつもとちょっと様子が違う気がするけどどうかしたの?」

 

しかし湊の感じた違和感、焦りは、当の悠との会話には現れず、湊に向き直った悠の態度にもおかしなところはない。

 

「ん、そうだったか?」

「うん。もしかしてだけど、今日の失踪者、知り合いだったりした?」

「……いや。知らないはずだ」

 

一瞬だけ何か考える素振りをした悠だったが、軽く首を振って否定する。

悠に現れた違和感には何か理由があるように思えたが、その悠自身がわかっていないみたいな、妙な不安定さをまとっているなと湊は思った。

ただ――。

 

「つーかさ。今日のお前凄くね? 鬼気迫るっつーか、絶好調って感じか?」

「……そうなのか?」

「いやいや、そこでオレっちに聞くなよ!」

 

順平がそう言うように、その不安定さが悪いほうに出ているというわけでもなく、常時クリティカル状態とでもいうか、普段は抑えられている力が抑えきれずに迸っているような勢いが今の悠にはあった。

この状態で悠のペルソナであるイザナギでも召喚しようものなら、思わず番長とでも呼んでしまいそうだ。

 

「別に好調なら悪いことじゃないでしょ。自分でも理由がわからなくても調子が良いみたいなときは普通にあるだろうしさ」

「まあそうなんだけどな。何か今のこいつ見てると、番長、お疲れ様ッス! とか言って道を譲りたくなるというか」

「あ、わかるー!」

「えぇ……わかっちゃうんだ?」

 

似たような思考になっていたらしい順平の言葉に、湊は手を上げて賛同の意を示した。

 

「……」

 

けれど騒がしくしている湊たちとは今は一線を引いて、悠は奇怪さ溢れるタルタロスの、その道の先をただただ見据えていた。

 

 

タルタロス -47F-【奇岩の庭アルカ】

 

『その先から今回の失踪者の反応があります。あ、でも、待ってください……何か前回の失踪者とは反応が違うような……』

「反応が違う? でも、そうは言っても進んでみるしかないよね?」

『そう……ですね。一応注意して先に進んでください』

 

そこは前回の失踪者とは違い、まるで彼のために用意されたかのような階層だった。

47Fに上がった途端に目に入ったのは豪奢な扉。

その扉を開いた先は、タルタロス特有の薄暗さを伴った、だだっ広いだけのホールだったが、その中心には茶髪でオレンジのヘッドホンを提げた少年が、一人スポットライトでも浴びたかのようにぼうっと浮かび上がって、存在を主張していた。

 

「よ――花村陽介?」

 

悠が尋ねると、ただ立ち尽くしていただけの少年――失踪者・花村陽介に反応が生まれた。

 

「……誰が助けに来てくれなんて頼んだんだ」

「え?」

「俺は違う……。そうじゃない……。日常では笑って周りに合わせるだけで、非日常に関わっても助けられるだけの一般人……。何だよそれ……。違うだろ……」

 

悠の声に反応したように思えた陽介だったが、その口から出るのは何やら鬱屈とした呟きばかりだ。

 

「……彼、何を言ってるの?」

「いやまあ、俺っちには若干共感する部分がある呟きだけど……、つってもそういう場合じゃねえよなあ? とっとと救出して帰ろうぜ」

 

「だから違う!」

 

カッ――と陽介が叫びながら顔を上げると、陽介の背後に突然巨大なモニターが降りてきた。

 

「!!?」

「な、何だよこれ!!?」

 

『そう違う。このフロアでは俺が中心で俺が全てだ。だからよぉ。代わっちまいな俺と! ちょっと早いがショータイムだ!!!』

 

「ち、違う違う違うッ! お前も違うッ! お前なんか――俺じゃない!!!」

 

巨大なモニターに映るのは、もう一人の花村陽介。

金色の瞳をギラつかせて、陽介の否定の言葉に歓喜の笑い声を上げる。

 

「っ……」

「陽介!!!」

 

モニターから黄色の霧が吹き出し、それと同時に陽介は体から力が抜けたように崩れ落ちた。

そしてもう一人の花村陽介が――いや、花村陽介とは似ても似つかない異形の怪物がその姿を現した。

 

「ジャジャジャジャーーーン!!! ひゃはははははは!!! たのしーぜ!!! お前も、お前もお前もお前も! 全部ぶっ壊してやる!!!」

 

迷彩柄のカエルのような胴体――というか下半身に、赤マフラーに黄色の手袋をしたヒーロー……いや、何か間違った忍者象みたいな、そんな怪物が周囲に強力な風を巻き起こす。

 

「うおわっ!!? こいつもシャドウ!!? 倒しちまっていいんだよな!!?」

「それ以外何があるのよ!」

 

『はい! 強力なシャドウ反応! 推定LV30! 強敵です!』

 

風に吹き飛ばされて転げながらも、キャップだけは吹き飛ばされないように死守した順平と、強風に耐えながらも、それにツッコむように声を上げるゆかり、そして悠と、湊の耳にも風花の通信が入る。

 

「よーっし、戦闘開始!!!」

 

戦闘が始まってすぐに、悠は倒れている陽介に駆け寄った。

……意識を失っているだけのようだ。

 

「少し頼む!」

「うん、鳴上くんはその子を安全なところに!」

 

「風! 風!! 風ェ!!! 俺の邪魔をする、つまらねえもんは全部、吹き飛んじまえ!!!」

 

中位全体スキルである“マハガルーラ”によって生み出された風がフロア内で荒れ狂う。

普通なら、歩くのもままならないどころか、ペルソナ使いとして、ペルソナと同期したパラメーターになっていなければ、一瞬で腕やら足やら細切れにされ、千切れ飛んでいるに違いない暴風だ。

しかし、悠はアンズー、湊は“クシミタマ”と、疾風属性無効のペルソナによって、その暴風もまるで意に介さずに行動し、ゆかりもまた疾風属性には耐性を持っていた。

 

「くっそ……!」

 

だが唯一、順平のペルソナだけは疾風属性を弱点としている。

パラメーター補正と装備によって、ある程度のダメージは軽減されてはいるものの、それでも身動きひとつすらも難しいこの状況は、考えるまでもなく危険と言えるものであった。

 

「ひゃははははは!!! 弱点、発け~ん!!! まずは――お前からだ!!! “忘却の風”!!!」

 

「がぁああああああああ!!!??」

 

たった二発だ。

“マハガルーラ”からの“忘却の風”。

それだけで順平は、意識を失い、その場に崩れ落ちてしまう。

 

『じ、順平くん、戦闘不能! 誰か回復を!』

 

「ちょっ――いくらなんでも効きすぎでしょ!!? 復帰させちゃっていいの!!?」

「少し待って!」

 

順平に更なる攻撃が行かないように、立ち位置を調整しながら、そう言う湊の視線の端には、陽介を退避させ、イザナギを召喚している悠の姿がある。

 

「おおっと! そうは行かねーぜ!」

 

――“ジオンガ”を撃った瞬間には気づいていた。

一手遅かったと。

シャドウがその攻撃を察知して“蒼の壁”を張っているのを見たのだ。

 

バチィ! ――とシャドウを避けるように、張られた壁に沿って電撃が奔り抜ける。

 

先に陽介を安全圏まで引きずって行ったことが仇となったようだ。

電撃属性の耐性を得ることができる、そのスキルを使ったということは、このシャドウは電撃が弱点だったのかもしれないが、これで効果が切れるまではほとんど通らない。

しかし、湊たちにも攻撃していたのに、それと同時に補助スキルを使うとは。

 

『気をつけてください! どうやら、このシャドウは、上の忍者の部分と、下のカエルの部分で、同時にスキルを使うことができるみたいです! どちらか一方を集中して潰した方がいいかもしれません。上が攻撃、下が補助だと思われます!』

 

風花の通信が入る。

どうやらそういうことらしい。

厄介な相手だ。

ゲーム風に言うなら、ダウン追撃とかではなく、単純に2回行動できる相手だということになる。

自らを強化してから攻撃、あるいは相手を弱体化させてから攻撃、攻撃しつつ自分を回復……いろいろな状況が考えられる。

それと順平のことだ。

疾風属性が弱点のままでは、復帰させたところでまた同じ状況の繰り返しみたいなところはある。

まあそれを囮にしてという非道な作戦を取ることも可能ではあるが……それをやらされる順平からしてみれば堪ったものではないだろう。

 

「手間焼かせないでよね!」

 

ゆかりが“地返しの玉”で順平の意識を覚醒させる。

探索に出ずっぱりでLV29の悠や湊と違って、その他のメンバーはLV25程度なので、回復型のペルソナを持つゆかりであっても“リカーム”のような“地返しの玉”と同等の効果を持つようなスキルはまだ使えなかった。

 

「「“カデンツァ”」」

 

「ぐっ……サンキュー……!」

 

さらに悠と湊のミックスレイドによって、意識を取り戻した順平、ついでにゆかりも全回復させると同時に、回避率も高める。

 

「無駄無駄ァ!!! “スクカジャ”!!!」

 

対してシャドウは自分の速力を高める。

そして暴風……これでは状況はそう変わらない。

 

「防御してて!」

「り、了解!」

 

確かにこの敵とは相性が悪すぎると、順平は素直に湊の指示に従う。

 

「ゆかりは全体回復! 鳴上くんと私で仕留める!」

「OK!」

「わかった!」

 

悠と湊はアイコンタクトを交わす。

上と下どちらを先に潰すか。

一瞬のやり取りではあったが、意見が一致するのがわかる。

 

「「(まずは――補助!)」」

 

下のカエルの方だ。

特に悠と湊は疾風属性を無効化できるのだから、強化や弱体化による状況の変化をなくすためにも、当然の選択と言えた。

それに脚となる部分を潰せば動きも封じることが出来るかもしれない。

 

「そう簡単にやらせるかっての!」

 

シャドウはカエルらしくびょーんと飛び跳ねると、フロアの壁にぺたりと張りついた。

そして自分には補助スキルの“チャージ”を掛けている。

 

「「(物理!)」」

 

“チャージ”なら物理系統のスキルだと、悠たちは身構える。

 

「くらいやがれ! “ソニックパンチ”!!!」

 

忍者の腕が伸びる。

 

「!」

 

スキル的にはそれほど強いものではない。

この場には居ないが、明彦に倣ってボクシングで言えば、フリッカージャブのようなものだ。

中距離牽制技。

しかし、“チャージ”の効果と、単純なパラメーターの強さによって、それなりに手痛いダメージを受ける。

ぴょんぴょんと壁を跳び回りながら同じパターンを繰り返してくるシャドウに、悠はアンズーに乗って空中戦を挑む。

 

「(とにかく叩き落とす……!)」

 

ライオンの頭部に鷲の身体……嵐や雷の化身であるアンズー。

LVは多少の物足りなさがあるが、耐性が優秀だったり、ミックスレイドに使うようなペルソナは、湊と相談して、骨董屋で手に入れられるインセンスカードで最低限の強化はしていた。

一体集中強化とどちらにするかと悩んで、結局状況に対する多様性を選んだ形である。

 

「俺に近づくんじゃねえ! “忘却の風”!!!」

「!」

 

アンズーは疾風無効なのになぜ――と、思った瞬間には悠はアンズーの背中から飛び降り、そのまま上空からの斜め下攻撃に移行……シャドウを斬り墜とした。

だが、同時に共感覚で痛みを感じ、アンズーも吹き飛ばされたことを知る。

 

『あのスキルには、“ガードキル”効果もあるようです! 注意してください!』

 

ただの牽制や破れかぶれではない……“ガルーラ”ではなく、“忘却の風”と名前がついてるだけのことはあったようだ。

疾風無効だからと、調子に乗ったら痛い目に遭うかもしれない。

 

だけどこれは総攻撃チャンス!

 

「有里!!!」

「みんな、いっくよー!!!」

 

踏みつぶされたカエルならぬ、斬り墜とされたカエルに、メンバー全員での総攻撃。

戦闘不能にされた下、ずっと防御をさせられている順平なんかは、ここぞとばかりに鬱憤を晴らしている。

しかし、それだけでトドメというわけにはいかなかった。

 

「くそくそくそっ! “ディアラマ”!!!」

 

シャドウは無茶苦茶に腕を振り回し、総攻撃から逃れ、体勢を立て直すと、すぐさま回復魔法スキルを使った。

 

「ちょっ……マジで!!? シャドウは回復禁止にしろよ!」

 

順平のツッコミは、このシャドウと対峙する全員の総意であったのは間違いない。

そもそも補助系は下のカエルの役目だったはずだが、役割分担をしてただけで忍者側も使えないわけではないようだ。

あるいは回復だけ別口だろうか。

どちらにしろ、どちらかが残っている状況で一方だけ戦闘不能にしても回復スキルひとつで復帰できるらしい。

状況は完全に振り出し……長期戦の様相になってくる。

 

“ラクンダ”、“タルカジャ”、“チャージ”――弱体化や強化も合わせて、悠と湊が何とか行動不能にしようとするが、だいぶ削れたと思えても“ディアラマ”で回復される。

シャドウが回復してる分には、悠たちにもそこまでのダメージは入らないのだが、それでも相手のSPの底が見えないということもあって、不利を感じる。

やはり手数不足だ。

 

そんな中で順平が覚悟を決めた。

 

「(勇気を出せ、オレ……!)――ペルソナァ!!!」

 

「「!!」」

 

順平の行動に瞬時に反応した悠と湊が“タルカジャ”と“スクカジャ”を順平に掛ける。

シャドウの意識していない方向からの攻撃。

順平のペルソナ、ヘルメスによる“キルラッシュ”1、2――3発、入った! しかも、ダウンだ!

これでダメなら再び集中攻撃で戦闘不能、あるいはそうなっても、自分を囮にして、仲間たちにトドメを刺してもらう。

ペルソナがあれば死にはしないと思いつつも、それも絶対だという確証はない、完全に捨て身の攻撃から生まれたチャンスであった。

 

「ちっくしょ……お前みたいな雑魚がァ!!!」

 

「俺たちの中に使えない人間なんていない!!!」

「そゆこと! 一気に決めるよ!!!」

 

呻くシャドウをフルボッコ……相手がしぶといのは、もう嫌というほどわかっている。

だから、悠と湊はタイミングを計っていた。

そこに順平が割り込んできたのは、予想外と言えば予想外だったが。

 

「で、“ディアラマ”!!!」

 

「“タケミカヅチ”!!!」

「ここだ!!! ――イザナギ!!!」

 

「うっ――ぎゃぁあああああああッッッ!!!??」

 

湊のタケミカヅチの“電撃ガードキル”による耐性解除からの電撃一閃。

弱点にヒット!

これには堪らずシャドウも絶叫を上げる。

そして再びの総攻撃。

 

――起き上がると同時に、また電撃。

 

“蒼の壁”を張り直す時間など与えない。

いや、せいぜい“蒼の壁”と“ディアラマ”の二択で悩めばいい。

ギリギリまでダメージを与えてからと思ってはいたが、もう完全にパターンに入った。

ここから詰めを誤るようなことはしない。

 

そして、その直後には小うるさい上の忍者の部分を行動不能にし、さらには下のカエルの部分も一気に削りきった。

 

戦闘終了だ。

 

「ちっ、ここまでかよ……けどなァ! 勘違いすんなよ! これで俺を倒せたと思ったら大間違いだぜ!」

「何よ負け惜しみ?」

「俺はこいつでこいつは俺だ。お前らがどれだけ力を持っていようが、こいつがこいつである限り、俺という存在は消えねーんだよ! 俺はまた必ず現れるぜ! こいつの中で再び力を蓄えてな! その時にもお前らは都合良くこいつの傍にいられるか?」

「……」

「無理だよなあ? 無駄なんだよ! お前らがやってること全部! 所詮は自己満足のヒーローごっこだ!」

 

「それの何が悪いの? 助けたいから助けるだけだよ!」

 

「ハッ……どうだかな。本当にそれが本心かよ?」

「どういう意味?」

「カッコつけてそっち側にいるけどな、結局は同類なんだよ! 今は運よく制御できてるかもしれねーが、それはお前らに適性があったってだけのことで、真にそれぞれの影と向かい合ったってことじゃねーんだぜ!」

「私たちの影?」

「そうさ。影はいつでもお前らを見てる。いずれその本当の意味を知ることになるぜ! そんな無理矢理な方法じゃ必ずなあ! ひゃはははははは!!!」

 

そんな言葉と哄笑を残してシャドウが霧散するが、その粒子は陽介の中へと戻っていく。

シャドウが消えたことにより、シン――とホール内が静けさに包まれた。

 

「な、何だったんだよ今のヤツ……」

「彼のシャドウ?」

「シャドウってよ……もしかして、人間から出るもんなのか?」

 

「……」

 

「ペルソナとシャドウは表裏一体の存在……制御できれば身を守る鎧となり、暴走すれば命を奪う刃になるってことか」

 

真実は見えない。

答えに辿り着いたような気がしても、誰かがそれを正解だと言ってくれる訳ではないのだ。

だから彼らはこうして影時間の謎を追い求めて、タルタロスを攻略しているのだから。

 

「この子、大丈夫かな?」

「……どちらにしろ、シャドウは倒したんだ。またすぐに復活するものでもないだろう。仮に復活しても今よりはずっと弱くなってるはずだ」

 

今はまだこの花村陽介という名前の少年が覚醒する時ではないのだろう。

けれどいずれは自らの影に立ち向かう時が来るはずだ。

その時にこの少年は自らの影に打ち勝つことができるだろうか。

 

「……きっとできる」

 

なぜだか悠はそう思った。

そして、もし勝てないとか言うようだったら、その時は自分が殴り飛ばしに行ってやるとも。

 

>失踪者・花村陽介を救出した。

 

 

――……影時間が終わる。

 

 

2009年6月23日(火)

 

「そういやお前、最近噂になってる“復讐依頼サイト”って知ってるか?」

「いや……」

 

放課後のポロニアンモール。

クラスメイトの健二と共に適当に店を回っていると、ふと思い出したように健二がそんな話題を口にした。

 

「なんか“この人に復讐してください”って書きこむと“復讐代行人”が復讐してくれるんだってさ。成功率100%でしかも絶対にバレないとか何とか」

「そうなのか。怖い話だな」

「他人事みたいに流してるけど気をつけた方がいいぜー。こういうのって何が原因でやられるか分からないからな。お前みたいに目立ってれば尚更だ」

「ああ、注意するよ」

 

とはいえ何に注意すればいいのか。

まあ、おそらくは怪談とか都市伝説の類の話だとは思うが……。

その後、健二とは別れて、交番に行く。

 

「来たか。失踪者の少年の話だろう? 彼なら無事に保護されたぞ。その間のことはよく覚えていないとの話だったが、介抱してくれた人にお礼を言いたいと言っていたから、落ち着いたらまた顔を出すかもな。もし来たら連絡しようか?」

「そうですね……。お願いします」

「ああ。それで今日は何か買っていくのか?」

 

黒沢の言葉に悠は首を振る。

今日は買い物ではなく、その言葉を確認したいだけだった。

 

「今日はいいです。黒沢さんが言った通りで、ちょっと失踪者のことが気になっただけなので。無事ならそれで」

「そうか。またいつでも来い」

「はい」

 

黒沢に頭を下げて、その場を立ち去ろうとしたところで、先程の健二との話題が頭によぎり足を止める。

 

「あ、そういえば“復讐依頼サイト”とか言うのが噂になってるらしいですけど知ってますか?」

「ああ、アレか……。知っているかと訊かれれば、知ってはいるが……アレについては正直何とも言えないと言うのが現状だな」

 

黒沢にしては珍しく言葉を濁したような物言いだった。

 

「ただの噂話だってことですか?」

「俺の勘は違うと言っている。けれど噂の通りに何も証拠がない。そのサイトにしても、愚痴を吐き出す場所を提供しているようなもので、そこに書かれた人物が不幸な目に遭ったとしても、それのせいだと言えるような状況にはない」

「なるほど……」

「もし本当にそのサイトが仲介に使われてるなら、そこの書き込みを元に相手を特定して、何か別の方法で連絡を取っているんだろう。そうなると尻尾を掴みづらい」

 

それにそういうのは俺の担当にはならないしな……とわずかにだが黒沢が愚痴をこぼす。

悠はそれに対して頷くことしかできない。

街のお巡りさんとしてやれる以上のことを黒沢はやってくれているが、それでもその手の中からすり抜けていく犯罪は多い。

そして、ひとつすり抜ける度に、誰かが知らず不幸な目に遭っているのだろう。

そのことを黒沢は大人として、警察官として、きっと悠以上に深く理解しているに違いなかった。

 

「それじゃあ、今度こそ俺は行きます」

「ああ」

 

悠はもう一度ちゃんと頭を下げて交番を後にする。

“復讐依頼サイト”のことも気にはなるが、やはり悠としては失踪者のことのほうが思考の多くを占めていた。

 

「(花村陽介……俺は彼の何が気になっているのだろうか。前にどこかで会ったことがある? それとも自分の中からシャドウを出したからか? もう一度、会うことが出来ればはっきりするだろうか……)」

 

そんなことを考えながら、悠は寮へと帰った……。

 

 

2009年6月24日(水)

 

放課後。

湊が生徒会に行くと言うので悠もそれに同行することした。

「えー、来るのー」と湊は、若干嫌そうな雰囲気を見せたが、それは冗談も入っていたようで、すぐにいつもの調子に戻り、廊下を並んで歩く。

生徒会室にはすでに役員たちが集まっているようで、そのドア越しにもいくらか声が聞こえてきていた。

悠がおや? と思ったのは、その中に憤りだとか、あまり普段の生徒会室とは、似つかわしくないものを感じたからだ。

少なくとも会議の内容によって紛糾しているとかではない。

 

「お疲れさまー。何かあったの?」

 

湊が声を掛けながら生徒会室に入って行くのに合わせて、悠も軽く会釈をしつつ入る。

 

「あ、有里さんに鳴上さん……実は例のタバコの犯人が見つかって……」

「小田桐が見つけたのか?」

「いえ、それが……ちょっと不良っぽい感じの人が、“ほら見ろ俺が犯人じゃなかっただろ、ば……バーカ”って現行犯で連行してきたみたいで」

「どゆこと?」

 

その時の様子を伝えてるだけなのに、馬鹿というところでちょっと詰まるところに千尋のらしさを感じる。

まあ、それはともかく。

 

「……たぶんだけど、小田桐が事情を訊いたうちの誰かだったんだろう」

「あー、蛇の道は蛇みたいな」

「そうだな……。本人からしたらちょうど見つけて自分の潔白を晴らしたみたいなことかもしれない」

「でも、それじゃあ、小田桐くんは納得してなさそうだよね。メンツが潰されたとかって……」

「そうですね……。でも、小田桐さんがどうこうというよりも……」

 

千尋はさすがにそれ以上は口に出せないらしく、生徒会室の様子を示す。

勝手に引き受けて、強引な調査をしていた秀利が、あまり役に立たない形での解決ということで、他の役員の口からは、鬱憤からなる微妙な陰口のようなものが聞こえてくる……。

 

「嫌な雰囲気……」

「……小田桐はどこに?」

「職員室です。その犯人を引き渡しに行ったので……」

「一応事件は解決ってことか……」

 

不意にガラッと生徒会室のドアが開き、秀利がその姿を見せる。

それと同時に陰口も収まり、生徒会室は微妙な雰囲気に包まれた。

フン……と鼻を鳴らす秀利に悠と湊の二人が近寄る。

 

「お疲れさま。事件は解決?」

「とりあえずはね。該当の生徒の処分は決まり次第、追って連絡されることになっている」

「納得がいっていなさそうだな」

「……そんなことはないさ。事件は解決した。僕が直接捕まえたわけではないが、僕が尋問した相手が捕まえてきたんだ。僕の行動が全くの無駄にはならなかったということだ。問題は……いや、ここで話すことでもないか。二人ともちょっとついてきて欲しい」

 

秀利がそう言って踵を返す。

悠と湊はなんだろう? と顔を見合わせてから、その後に続いた。

 

 

――屋上。

 

秀利が悠と湊を促して足を運んだ場所は月光館学園の屋上だった。

夕焼けに染まり始めた屋上に、三人の姿だけがある。

 

「すまないな。こんなところにまで足を運んでもらって」

「それはいいけど……どうしたの?」

 

湊の問いに秀利はすぐには答えず背中を向けて、眼下の部活動に励む生徒たちに視線をやった。

 

「地位も名誉も学歴も無い男は何を拠り所に社会貢献に努めるか……“真心だ”と、ある男に言われたんだ」

「え?」

「しかしその男は、くだらないトカゲの尻尾切りに遭い、今も服役中の身だ。偽証罪でね」

 

二人が何の話だろうと思ったのは一瞬のことだった。

これは秀利の本質に触れる話だ。

彼が彼として行動する、その原動力となる部分の。

 

「この社会での弱者は強権者の糧も同然だ。“真心”では、綺麗事では勝ち残れない! 僕はね、“弱者を出さない”組織を作りたい。そのためには強権者をも裁くことのできる絶対の秩序の構築が不可欠なんだ」

 

秀利は振り返らない。

だが、その声に苦悩を感じた悠は声を掛ける。

 

「何があった」

「……おそらくだが、該当の生徒には退学処分が下されることになる」

「退学?」

 

「トカゲの尻尾切りだよ。彼らは不出来な生徒を切り捨てることで学園の秩序を維持することを望んでいる。秩序を乱す輩への処罰に同情の余地は無いが、僕が犯人探しをしていたのはあくまで犯行の再発を防ぎ、更生を期待してのことだ」

 

「ならそう言えばいいんじゃないの? 退学は厳しすぎるって」

 

「それを言えば僕は一瞬で厄介な生徒の仲間入りさ。……次期生徒会長の座に着くまでは僕は失敗はできない。まだ僕はスタートラインにすら立てていないんだ。だが、その為に自分の志を誤魔化すのは正しいことなのか……?」

 

弱者を出さない組織を作る為に、今はその弱者を切り捨てる。

秀利はその矛盾に迷いを覚えているようだ。

 

「青い考えだと笑うかい? 所詮は学生の間のことだと。だが、大袈裟かもしれないが、これは人生の懸かった選択だ。該当の生徒はもちろん、僕にとってもね」

 

何が人生の岐路になるかなんて人それぞれだ。

学生の時の失敗ひとつで、そのまま転がり落ちる人間だっているかもしれない。

そんな相手に手を差し伸べなかったことが、ずっとしこりとなって自分の中に残り続けるかもしれない。

 

「最善な選択なんて分からないよ。だって未来なんて知らないもの。だから必要なのは、いつだって自分の選択に責任を負う覚悟」

「覚悟……」

「失敗したって足を止めない。それでも私はやり遂げてみせる」

「有里くんは強いな……。だけど、世の中には取り返しのつかない失敗というものだってあるだろう?」

「その時は――」

 

「――俺が手を貸すよ」

 

「もう! なんで鳴上くんは美味しいとこだけ持っていこうとするの! 俺“たち”でしょ! 俺“たち”!」

「あ、ああ……すまない」

 

言葉が衝いて出たというだけで、それを意識したわけではなかったのだが、プリプリと怒る湊の姿に、悠は素直に謝った。

 

「小田桐くん。小田桐くんの志が正しいものなら、ちゃんと協力してくれる人は現れるよ。誰だって本当は正しいことがしたいと思ってる。でも、最初の一人になるのは難しい。小田桐くんが目指してるのってそういうことだと思うんだ」

「……フ、確かに。君たちが協力してくれるなら何者にも負ける気がしないな」

 

>秀利のことがまた少し分かった気がする…

 

【Rank up!! Rank5 皇帝・生徒会】

 

>“生徒会”コミュのランクが“5”に上がった!

>鳴上悠の失われた力“皇帝”属性のペルソナの一部が解放された!

 

 

 

2009年6月25日(木)

 

陽介=自称特別捜査隊コミュ。(月1~2くらいのペース)。

 

 

「あ、鳴上悠……さん、ですか?」

「ああ」

「俺、花村陽介って言います。えっと、よく覚えてないんスけど、ありがとうございました。それだけ言っておきたくて」

「陽介……」

 

悠はやはり覚えのある名前に記憶を辿るが、どうしてもあと一歩のところでそれが掴めずにいた。

 

「どうかしたんスか?」

「いや……前にどこかで会ったことあるか?」

「え、うーん……たぶんないと思いますけど……」

「そうか」

「あ、えーと鳴上さんは――」

「――悠でいい。俺も陽介と呼ぶ」

「え、はあ……じゃあ、悠さん……悠先輩?」

「呼び捨てでいい」

「いやいやいや! それはさすがにハードル高いですって! 高校生ってことは完全に年上ですから!」

「俺が許す」

「え、えー……?」

 

>陽介との間にほのかな絆の芽生えを感じる…

>陽介のことが少し分かった気がした…

 

我は汝…、汝は我…汝、新たなる絆を見出したり…絆は即ちまことを知る一歩なり。汝、“星”のペルソナを呼び出せし時、我ら、失われた力を解放せん…

 

>“星”属性のコミュニティである“自称特別捜査隊?”のコミュを手に入れた!

>鳴上悠の失われた力“星”属性のペルソナの一部が解放された!

 

 

 

 

 

「ゆ、悠は月光館学園ってとこの2年なんだよな」

「ああ」

「そのどうっスか……いや、どうだ?」

 

陽介は敬語も要らないと言う悠との距離感を計りかねているようだ。

 

「どうって?」

「あ、いやー、ほら、俺って中3だから、ちょっと進路とか悩んでて、まぁ普通に地元のとこかなって思ってんスけど、他のとこもちょっとは興味あるっていうか」

「よければ案内しようか?」

「え、マジすか! あ、いや……でもさすがにこれからって訳には、元々お礼だけ言って帰るつもりだったんで」

 

陽介は迷っているようだ。

そして意を決したように携帯を取り出した。

 

「連絡先交換して貰ってもいいっスか」

「もちろん」

 

陽介と連絡先を交換した。

 

「んじゃ、また連絡するんで。えっと……悠もなんかあったら連絡してくれ」

「ああ」

 

陽介と別れて寮へと帰った……。

 

 

 

 

 

2009年6月26日(金)

 

失踪者救出・堤謙二郎、三山佳美。(51F、61F)。

 

 

 

 

 

2009年6月29日(月)

 

黒沢のところで足立透の姿を見送る。(街を守る者コミュ3)。

 

アニメとかでは足立は昔からやる気がない感じだった気がするけど、うちの足立さんはここで挫折した設定。

1年間かけて捜査しても何の成果も得られず、勝手に解決してた感じで終わって、無能扱いで田舎にぽーいされたみたいな。

今回もそうなってしまうかは番長との関わり方次第?

 

 

「あ、ごめん」

「いえ、こちらこそ」

 

悠が黒沢を訪ねて交番に訪れると、中から出てきたスーツの人物とぶつかりそうになり、お互いに頭を下げた。

 

「はあ、被害者が何も覚えてないんじゃ仕方ないか……。でも、気がついたら直前まで喋ってた相手がいなくなってたなんて普通じゃない。普通じゃない事件からなら無気力症の原因にも繋がるかと思ったんだけどね……はは、漫画の読みすぎかな」

 

その後すぐにすれ違ったので、その人物の顔を正面から正確に捉えることはできなかったが、そんな呟きと、無造作ヘアーというのではなく、おそらくは本当にはねている寝癖が気になって、悠は何となく後姿を見送った。

 

「ん……君か。今日はどうしたんだ」

「あの、いま俺と擦れ違いで出て行った人は?」

「擦れ違いで? ああ、警視庁の新米刑事だ。無気力症や失踪者について職務の合間に調べてるらしい」

「黒沢さん以外にもそういう人が……」

「……自分のことを言うわけじゃないが、本気で街を守りたいと思っていたり、事件を解決したいと思っている者は、この街を中心とした歪みに気づく。だが解決はできない。仮にオカルト的なものを素直に受け入れることができても、その対抗策がないからだ」

「だから黒沢さんは俺たちに協力をしてくれるんですよね」

「そうだ。だが、君たちのことをそうそう広めるわけにもいかない。彼が信用できないとかいう話ではなくな。……彼は若干抜けている部分もあるが、優秀な人間だ。正義感も強い。この判断が彼の挫折に繋がらないといいのだが」

「挫折?」

「学生の君に言うことでもないが、優秀で正義感が強い、そういう人間は得てして上からは煙たがられるものだ。自分にやましいことがあれば当然、なくてもいずれ追い抜いかれると頭の片隅で考えてしまうからな」

「……あの人の名前ってわかりますか?」

「“足立透”だ」

 

足立……何となく引っかかる気がするが、特別珍しい名前というわけでもないだろう。

なら知り合いだろうか……いや、知らないはずだ。

 

【Rank up!! Rank3 正義・街を守る者】

 

>“街を守る者”コミュのランクが“3”に上がった!

>鳴上悠の失われた力“正義”属性のペルソナの一部が解放された!

 

 

 

 

「だがそういう周囲の雑音を振り切って、ああいう人間が上に行けるようなことがあれば、現場も少しはマシになるんだがな」

「……そうなるといいですね」

 

コミュは黒沢ではなく足立に反応したのだろうか。

その答えはまだわからなかったが、悠はそれだけ言って、とりあえずその話はそこで終わった。

 

 

 

 

 

2009年6月30日(火)

 

「あら、鳴上くん……」

「長谷川。今、帰りなのか?」

「ええ。鳴上くんはアルバイト?」

 

放課後……悠がポートアイランド駅前にあるラフレシ屋でバイトをしていると、湊と一緒に図書委員をしていた沙織が声を掛けてきた。

沙織は悠のエプロン姿を物珍しそうに見ている。

 

「鳴上くん、お友達?」

「あ、すみません。仕事中に話し込んでしまって」

「いいわよ。それより彼女?」

「いえ、違います」

「なーんだ、そうなの? まぁいいわ。ちょうどいい時間だし、今日はこれで上がっていいわよ」

「そうですか? ありがとうございます」

 

一応は気を遣われたという形になるのだろうか。

彼女どころか、悠にとっては湊に紹介されて一度話したきりの相手なのだが。

 

「……なんかダシに使うみたいな形になって、すまないな」

「構わないわ。お仕事お疲れさま」

 

空気を読んで待っていてくれた沙織と二人、職場であるラフレシ屋から少し離れて喋る。

 

「ああ、ありがとう。長谷川のおかげで少し早く上がれたし、お礼に何か奢ろうか?」

「そんなの気にしなくてもいいけれど……なら、そこの自動販売機で飲み物でも」

「了解だ」

 

悠は自動販売機で自分の分と二つ飲み物を買った。

流れ的に飲み物を渡してさよならともならず、近くのベンチに座り雑談を交わす。

 

「あ……」

「どうした?」

「いえ、ごめんなさい。私のせいで少し面倒な噂が流れるかも」

 

不意に声を上げた沙織の視線の先には、こちらを窺うようにして何やら喋っている女子生徒たちの姿があった。

 

「ああ……でも、そういうのはお互い様だ」

「ならいいのだけど……私、あまり学園生活に馴染めていないみたいで」

「そうなのか?」

「ええ。女子で私と親しくしてくれるのは湊ちゃんだけね」

「男子は?」

「遊びに誘われることはあるけれど、親しいと思える相手はいないわ」

「そうか……」

「そういう誘いを受けるせいで、他の女子の印象が悪くなるのも分かるのだけど、誘ってくれるのを断るのも違うと思うの。だって、別に悪いことをしているわけじゃないでしょ?」

「……難しい問題だな」

「湊ちゃんにもちょっと訊いてみたんだけどね。湊ちゃんもそんな感じのことを言ってたかな」

「……」

「鳴上くんは私とは逆に女子からの誘いが多そうね」

 

悠がその言葉に何と返すべきか考えていると、沙織はそんな悠の姿が面白かったのか楽しそうに笑っている。

 

「ふふっ、困らせたのならごめんなさい。……私ね。誰かに必要とされたいの。その相手を好きになれるかは別として、必要としてくれるなら誰でもいいんだと思う。鳴上くんはどう? 私のこと必要?」

「……どうだろう? でも、有里は友達なんだろ」

「うん、そうね。……鳴上くん、今日はこれで帰るわ。私のこと必要になったらいつでも誘ってね。あなたなら他の男子とは違う風に思えるかもしれないから」

「そうだな。でもその時はみんなで遊びに行くってのもいいと思う」

「ええ、それはとても楽しみだわ。それじゃあ、また」

 

沙織と別れて寮へと帰った……。




チラシの裏とはいえ結構メモ書きとかも多くて申し訳ないです。
そういうのが気になる人はこの作品が完結するのを気長に待ってください。
完結することがあれば、その時はチラシの裏から脱出します。
最近は全然読めてないんですけど、他にもいろいろ作品はありますからね。
作者のヤツはもうほんと完全に暇な時とかにちょうどタイミングが合ったらでいいので。

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