ペルソナ4→3   作:第7サーバー

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再投稿。
一応補足しておくと番長はキタローの立ち位置に割り込む形になっています。
そしてこの作品はゲーム仕様で、コミュやらをそのまま描写していたりもします。
ただ、番長とキタローは別人ですし、ハム子もいるので、コミュは若干変更されています。
でもそのままのコミュもあって、それらはそこまで内容が変わらない感じです。
そんな作品です。
正当な小説とは言えない部分もありますが、それも含めて楽しんで頂ければ幸いです。


4月7日(火):学園

2009年4月7日(火)

 

悠が携帯のアラームで目覚め、学園へ行く準備を進めていると、不意にドアがノックされた。

 

「鳴上くん。起きてる?」

「ああ。起きてる」

「学園への道まだ慣れてないでしょ? よかったら一緒に行かない?」

「一緒に行こうよっ。鳴上くん!」

 

来訪者は湊とゆかりの二人だった。

どうやらゆかりは転入生である悠たちを気遣ってくれているようだ。

 

「分かった。ちょっと待ってくれ」

 

悠は最後に手荷物を確認して、部屋を出た。

 

「お待たせ」

「うん。おはようっ。鳴上くん!」

「おはよう」

「ああ。おはよう」

「それじゃあ、行こっか」

「出発~!」

 

朝の挨拶を交わして、三人は学園へと向かった。

巌戸台駅からモノレールに乗って、ポートアイランド駅へ。

月光館学園は人工島の上に建てられた学園なのだった。

三人は適当に雑談を交わしている。

 

「あ、ほら、あれだよ」

 

ゆかりの声にモノレールの窓から外を見れば、月光館学園の全容が見えた。

 

「おー! 絶景ー!」

「そうだな」

「確かに絶景なのはいいんだけどねー。潮風をモロに浴びるから、髪の手入れとかはしっかりやらないと、すぐにバサバサになるのが考えものかなー」

「へー。そうなんだー」

「湊はそういうの気にしないの?」

「そんなことはないけど。ゆかりはオシャレ好き? 上着も違うしさ」

「あー、まぁ、女子だからね。うちの学園、上着は結構好きにしていいんだ」

 

そういうゆかりはワイシャツの上にピンクのカーディガンといった姿だ。

首にはハート形のチョーカーを着けている。

一方、湊は黒を基調とした制服をキチンと着こなしている。

首からMP3プレーヤーを提げてるのが特徴と言えるだろうか。

ちなみに悠はボウタイは自分には合わないと、普通のネクタイに変えていた。

だがそれ以前の問題として、三人とも服装以前に人並み以上の容姿をしているので、どことなく周囲の注目を集めている。

もっとも三人はその状態が普通と言えるほどに慣れているのか、単純に気付いていないのか、周囲を気にすることなく、至って普通の雑談をしたままに学園へと到着した。

 

「さ、着いたよ。ここが月光館学園の高等部。――ようこそっ。私立月光館学園へ! ……なーんてね!」

 

ゆかりのそんな言葉を受けながら、今日からこの学園に通うことになる二人は校門を潜った。

 

「えーっと、二人はまず職員室だね。職員室はあっち。この先を出てすぐだから詳しいことはそこでね。プレートが出てるからすぐ分かると思うよ」

「そうか。ありがとう」

「あ、ゆかりのクラスは?」

「私? 私は2-F」

「そっか。同じクラスになれるといいね」

「まぁ、うん。そうだね」

 

ゆかりは相槌を打つと手を振って、二階に続く階段を上って行った。

 

「じゃあ、私たちも行こっか?」

「ああ」

 

玄関口から左手に曲がれば、すぐに職員室と書かれたプレートが目に入る。

 

「失礼しまーす!」

 

湊が元気よく中に入って行き、その後に悠が続いた。

 

「――あ、あなたたち、ひょっとして転校生の?」

「はい。私、有里湊です!」

「鳴上悠です。よろしくお願いします」

「あら、二人とも、もうすっかり仲良しって感じねー。ちょうどよかったわ。あなたたちは二人とも、同じクラスだから。2-F。担任は私。正直まとめて押し付けられたって感じよねー。でも、別に問題児って感じじゃなくて一安心ね」

 

あけすけな言動の教師に二人は苦笑を返す。

二人とも同じクラス。

さらにゆかりも同じだということが分かったので、二人は内心で心強さを感じていた。

何だかんだで転校生という立場の緊張や不安は、そういう感情とは無縁に見える二人の中にも、わずかにだが存在していたのだ。

 

「あ、ちなみに私の名前は、“鳥海いさ子”。担当は現代文。よろしくね」

「はい。こちらこそ」

「よろしくお願いしまーす!」

 

鳥海に連れられて二人は2-Fの教室へ。

そして、転校生のお約束である自己紹介をすることになった。

 

「はい。今日はなんと転校生を紹介します。それも見て分かる通り二人。はいはい。騒がない。じゃあ、お二人さん、それぞれ自己紹介よろしく」

 

二人は軽く目配せをして、先に湊が口を開いた。

 

「有里湊ですっ! 趣味は――えっと、音楽鑑賞! あと、スポーツも得意かな。そんな感じでよろしくお願いしまーすっ!」

 

明るい湊はクラスメイトに好印象を与えたようだ。

続いて悠が自己紹介をする。

 

「鳴上悠です。趣味は釣りと読書とプラモデル作りと家庭菜園。それから、料理です。これから1年間よろしくお願いします」

 

悠の趣味は意外というか、高校生としては正直微妙な感じも多分にあったが、落ち着きがあり頼りがいもありそうな雰囲気に、それらは別にマイナス要因とはならなかったようで、こちらもクラスメイトに受け入れられた。

実際二人が自己紹介した後の拍手は大きい。

 

「へえー。鳴上くんって趣味がたくさんあるんだね?」

「ああ。そうみたいだ」

「あははっ、変なの。自分のことなのに」

「はい。すでに仲良しな二人は席も隣でいいわよね。そことそこ、一つずつずれてくれる? 転校生優先! 予備の机? 自分で持って来なさい!」

 

鳥海の言葉にバタバタと二人ほど教室を出て行く。

それを何となく申し訳ない感じで見送りながらも二人は席に着いた。

とりあえず、その日は新学期の初日だったので学園はあっと言う間に終わりとなる。

それぞれクラスメイトに質問攻めに合いながらも、ようやく一段落ついて帰ろうかという時にその人物に声を掛けられた。

 

「よっ。お二人さん。大変だったみたいだな。あっと、オレは“伊織順平”。ジュンペーでいいぜ。実はオレも中2の時に転校でココ来てさ。気にしてやんなきゃなってな。イイ奴だろ?」

 

順平はキャップにアゴヒゲに青のドレスシャツと、いかにもファッションに気遣ってますアピールをしている陽気な感じの少年だ。

ちなみにどうでもいいかもしれないが、キャップの下は坊主のようである。

 

「――あ、順平。ようやく落ち着いたんだから、二人にちょっかい出さない」

 

そんな風に順平が気安げに二人に話しかけていると、ゆかりがその間に入ってきた。

 

「な、何だよゆかりッチ。同じ経験者として、ただ親切にしてるだけだって」

「同じ経験? その二人とじゃだいぶ違うんじゃない?」

「ひどっ! これでも、転校当初はオレっちだってなあ……」

 

やれやれと首を振るゆかりに、順平は大袈裟なリアクションを取る。

 

「あー、はいはい。分かった分かった」

「すっげー軽く流されたよ、おい」

 

そのリアクションすら面倒クサイとゆかりは順平をスルーして二人に向き直った。

 

「それより二人揃って同じクラスだとは思わなかったわ。結構テキトーだよね。うちの学園」

「私は二人と一緒で嬉しいからいいよ」

「俺も知り合いが最初からいるのは心強いな」

「そう? なんかそう正面から言われるとテレるかも」

 

真正面からの二人の言葉に、ゆかりは頬を掻きながらテレ笑いをする。

 

「あ、やっぱ、三人は知り合いなわけ?」

 

得心したような順平の態度にゆかりが視線を向けた。

 

「やっぱって何よ?」

「知らない? 噂になってたぜ。なんかイケメンがゆかりッチと謎の美少女の両手に花で登校して来たって」

「はあ? 何よそれ……」

「え、謎の美少女って私?」

「自覚なし。そしてこいつは動じる気配がなしってか」

 

順平が悠を示す。

特に気にしてなさそうな悠の様子にゆかりは溜息を一つ吐いて気分を切り替えた。

 

「ま、気にしてもしょうがないか。行き先が同じなんだから、これからもたまにあるかもしれないもんね」

「おっと、それって結構意味深な台詞じゃないの?」

「ただ私たちの寮が同じってだけだよ」

「何ーーー!!?」

 

湊がさらりと口にした言葉に、順平は大声を上げ、教室にまだ残っていた他の生徒たちも何事かと視線を向ける。

 

「あ、馬鹿。そんなことわざわざ言わない」

「なんで?」

「なんでって……」

 

きょとんとした湊の表情に、ゆかりがどう言うべきかと考えている間に、順平が悠に詰め寄った。

 

「おまっ、それは羨ましすぎだろっ! ゆかりッチは性格アレだけど美少女だし、有里は性格イイ上に美少女じゃねえか!」

「順平。性格アレだけどってどういう意味?」

 

ギラリと光るゆかりの視線に、順平は手をバタつかせて後ずさる。

 

「あ、いや、それは言葉のアヤと言いますか……興奮して、ついぽろっと本音が……」

「余計悪いっつーの! 湊、分かった? こういう馬鹿が出てくるから、そういうことはわざわざ言わないほうがいいのっ!」

「あ、うん」

 

ゆかりの勢いに押されて、湊は素直に頷いた。

 

「分かればよろしい。――じゃあ、帰ろっか?」

「そうだねー。鳴上くんも帰ろー」

「ああ」

 

三人はそれぞれ鞄を手に席を離れる。

 

「え、この流れはまさかのオレっち放置?」

「順平は帰らないのか?」

「鳴上。お前オレっちを誘ってくれるのか……?」

 

一人取り残されかけたところで、掛けられた優しい言葉に、ホロリと涙を拭うポーズをする順平。

 

「えーっ、順平は要らないんじゃない? どうせ途中で別れるんだしさ」

「ゆかりッチ……ゆかりッチは意識してないかもしれないけど、その言葉は普通にオレっちのハートにグサグサ来てるぜ……」

 

しょぼくれてみせる順平に、ゆかりはやはり面倒くさそうに溜息を吐く。

 

「はぁー。なら、好きにすれば」

「あ、そう? じゃあ、みんなで仲良く帰ろうぜー!」

 

ゆかりがそう言った途端、それまでの態度はどこへやらと、順平はハシャギ、気安く悠の肩に手を掛けたりしている。

 

「はてしなくウザいんだけど」

 

悠はそれを溢れる寛容さで受け入れるが、ゆかりはジト目で見やりながらボソリと呟いた。

 

「またまたゆかりっちってば!」

「……またまたじゃないっつーの!」

 

何はともあれ――そんなこんなでその日は四人で帰った。

順平と別れ、寮へと三人が入ると、メガネを掛けた長髪でスーツの男性がラウンジでその帰りを待っていた。

 

「あ……幾月さん」

「やあ、お帰り。君たちが転入生だね。私は“幾月修司”。君らの学園の理事長をしている者だ。イ・ク・ツ・キ。言いにくいだろ? おかげで自己紹介はどうも苦手だよ。油断すると噛みかねん……」

 

突然の理事長の登場に若干驚きながらも、悠と湊の二人は頭を下げた。

 

「――鳴上悠です。よろしくお願いします」

「有里湊ですっ! よろしくお願いしまーすっ!」

「ああ。よろしく」

 

軽く手を上げて応える幾月に、やはり何故いるのか気になった悠が尋ねる。

 

「それはそうと、理事長がわざわざどうして?」

「別にたいしたことじゃないさ。仕事で近くによってね。ここには桐条君もいるだろう? だから挨拶に寄ったのさ」

「桐条先輩がどうかしたんですか?」

「うん? 知らないかな? 桐条財閥。彼女はそこの令嬢なんだよ」

「え、そうなんですか!」

 

桐条財閥と言えば世界でも有数のそれであるために、さすがに尋ねた悠も驚く。

そういう高貴な――お嬢様的な雰囲気は感じていたが、それにしてもという感じだろう。

 

「――さてと、他に何か聞いておきたいことはあるかい?」

「んー、鳴上くん、何かある?」

「じゃあ、他の寮生のことを」

「君たちがまだ会ってない寮生っていうと、真田君かな? 真田君は3年生だから、君たちの先輩だ。ボクシング部に所属してて、試合では無敗を誇っているらしいよ。テストでも常に上位の成績を保ってるから、何か困った時は頼るといいんじゃないかな」

「なるほど」

 

スポーツに勉強もできる先輩というのもそうだが、自分以外にも男子がこの寮に住んでいることを知って悠は安堵した。

女子ばかりだと順平のような反応をする者も出てくるし、これで一安心だと悠は頷く。

 

「他にもう一人いたんだけどね。彼は今ちょっと出てるから、縁があったらその時に聞くといいと思うよ。他に何かあるかな?」

「……この辺りで釣りはできますか」

 

悠は他に何かあっただろうかと考えてその質問をした。

幾月は少し意外そうな顔をした後に、考える素振りを見せ口を開く。

 

「釣り? そりゃすぐそこに海があるからね。やろうと思えばできるんじゃないかな」

「そうですか。どうもありがとうございます」

 

丁寧に頭を下げて悠がお礼を言うと、幾月はそのメガネの奥から探るような目を向ける。

 

「――質問はそれで終わりかい?」

「はい」

「……本当に?」

「ええ」

 

悠の頭の中には昨日――いや今日だろうか、あのおかしな街の光景がよぎっていたが、ゆかりに広めないでねと言われていたので、ここで尋ねるのは止めておいた。

ゆかりも特に反応しないし、湊に軽く視線を向けても、尋ねる気配がなかったことも理由だ。

 

「よろしい。じゃ、良い学園生活を。私はそろそろ失礼するよ。転入したては色々と疲れるだろ? 早めに休むといいよ。身体なんてグーグー寝てナンボだからね。昔、漫画にあったろ? “ぐーぐーナンボ”? ……なんちゃって」

「はい?」

「……ごめんね。ああいう人なの」

「ああいう人?」

「そうやって冷静に訊き返されると対応に困る人ってことよ」

 

 

深夜0時 -影時間-

 

“影時間”とは何かと聞かれてこの時点で答えるべきことは特にない。

今はまだ緑色の夜だとか、非日常への入り口程度の認識で問題ないだろう。

そんな時間の中で――かなり大型な壁一面に配置されたモニターを見ながら喋る者たちの姿がある。

 

「ふむ。平然と眠ったままか。二人には“象徴化”が起こっていない。本当にただ眠ってるだけみたいだね」

 

その分割されたモニターに映るのは悠と湊の二人の部屋。

どうやら、この者たちは眠る二人の様子を観察しているようだ。

 

「――ええ。これまでもただ気付かなかっただけなのか、その辺りが気になりますが、二人には適性があるということかと」

「まぁ、そう結論を急ぐものじゃないよ。とにかく、もうあと何日かはこうして様子を見てみないと」

「隠れてこんなことして、ちょっと気が引けますけどね……」

「そう言わない。二人は君の同級生じゃないか。しかも一人は同性。仲間になってくれれば君も心強いだろう?」

「それはそうですけど……」

「それにこの時間は二人とも寝てるだけだ。別段プライベートを覗くことにはならないよ。来て間もないからか、たいして荷物もないようだしね。――おっと。今日はここまでのようだね。影時間が明ける」

 

そしてわざわざ正体を隠すほどでもない者たちの観察の時間が終わる。

ただ、彼らが知らずに眠っていようとも、彼らの物語はこうしてすでに始まっており、覚醒の時もまたすぐそこにまで近付いていた。




【岳羽ゆかり】

PLV1

-STATUS-

学力:できなくはない 魅力:校内のアイドル? 勇気:今ひとつ

将来:フェザーマンならピンク

【伊織順平】

PLV1

-STATUS-

学力:お手上げ侍  魅力:子供人気はある  勇気:ないこともない

将来:フリーターなのは少年野球のコーチをやっているから……ということにしておこう

※将来はあくまで番長が干渉しなかった場合なので実際には未定。

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