こんにちわ。レア・ドラゴニフです。
さて現在私はどこにいるでしょう?
「ピッ、ピピピッ」
「ピッピ〜」
くらげに似た生命体が固いベッドの周りで彼ら固有の言語で話し合っている。
このくらげみたいな生物はマーズ・ピープル。つまり火星人だ。
さらに言えば私は火星人に拉致られたと言うことになる。
なんてこったい。まさか私が完全に眠りについたところで拉致られるとは。
敵意があるやつに対しては一瞬で起きる自信があったんだが、どうやら私に敵意を持ってはいないかもしれない。
………話を戻して、気づかれないように寝たふりをしていると一匹のマーズピープルが誰かを呼びに行こうと私のいる部屋から出ようとする。
すると部屋に2人と一匹が入ってきた。
「ピッ!ピピピピッ」
「やぁ、彼女は起きたかい?」
目を閉じているため姿はわからないが少年をの声が聞こえると、
「寝たふりしてても無駄だよ。周りをごまかしても僕の目はごまかされないよ」
「………やっぱバレます?」
私は観念してむくりと起きる。
少年は銀髪で白衣を着ているが、肌が緑色で人間ならざるものだと思わせる。
「お久しぶりですねプロフェッサーさん」
「うん、久しぶりだねレア・ドラゴニフ」
この少年は元モーデン軍の科学チームの局長だったプロフェッサーさん(本名不明)。
火星人に対して並々ならぬ関心を持っていたことはわかっていたが、すでに一員になっていたとは。
「…で、一応聞きますけど私を誘拐した理由は?」
「べつに大した理由はないさ。たまたま近くに君がいたからに過ぎない」
「ついでで誘拐された私はたまったもんじゃないんですけど?」
彼はついでと言ったが私は覚えている。
事あるごとに私に対して実験動物を見るような目で見ているのだ。
それはもうストーカーか?と思うぐらいには。
「…姉様をついで扱いするの…ダメ」
と、ここで金髪ドリルツインテールのゴスロリ少女がプロフェッサーさんに対して怒ったように言ってきた。
「わかっているよ。と言うよりレアを君の直感的なもので見つけ出したのだから君が話し合う権利がある」
両手を上げて降参のポーズをとるプロフェッサーさん。
少女の人形みたいな顔が私を覗き込む。
「………久しぶり、姉様」
「…そうね。久しぶりねユリネちゃん」
この少女の名はユリネ。かつて私やラルク、アスラとセリカとともに孤児院で育った同志だ。
見たとおり表情が少なく人付き合いが苦手でよく1人を好んでいた。
しかも彼女はヘンテコな生き物を好む性癖を持っているせいかさらに他人との関わりが薄くなっている。
しかしある時、彼女が静かな場所で読書するという理由で外へ出たはいいものの凶暴な野犬と遭遇。
たまたま近くにいた私は単身で野犬を撃退することに成功。
そのせいか彼女は私にだけ心を許すことになった。
ユリネが姉様と呼ぶようになってから数週間後、私が宇宙人に関する本を読んでいたらユリネちゃんが若干興奮した様子で本を譲ってとせがんできた。
その頃からユリネちゃんは宇宙人関係のものを積極的に集めるようになった。
宇宙人のミイラ然りUFOの破片然り。
が、ある時ユリネちゃんは小さなUFO(マーズピープルのミニUFO)を見つけ、誘われるように後を追いかけてきたのだが、追跡に気づいたマーズピープルが彼女を捕縛、一時期は処刑しようと考えていたらしい。
しかしたまたま視察に来ていたプロフェッサーさんが待ったをかけ、殺さない代わりに火星軍の配下に加われという提案にユリネちゃんは宇宙人と一緒に居られるという理由で即その提案に乗った。
「…あなたらしいっちゃあなたらしいわね」
「…えへん」
「ドヤることじゃない」
「ピー!ピッピ〜!(コラ!ユリネ!あんまり調子に乗るんじゃないッピ!)」
と、ここで紫色のマーズピープルが手振り(と言うより触手振り?)でユリネちゃんを諌める。
しかし紫色のマーズピープルとは珍しい。
資料によればマーズピープルには色で階級が決まるらしく、緑は一般兵、茶色は幹部、白がエリートといった感じだ。
彼はマーズピープルの突然変異種なのだろうか?
「…マーズピープルに紫色なんていたかしら?」
「ん、マー君は特別」
私のつぶやきにユリネが答える。
マー君って、あの紫色のマーズピープルのことだろうか?
「そっか。私はレア・ドラゴニフ。ユリネちゃんの姉がわりでプロフェッサーの………まあ腐れ縁よ」
「ピピピッピピ!(あ!こちらこそ!プロフェッサーとユリネから色々聞いてるッピ!)」
私と紫のマーズピープル(以下マー君)はお互い握手した。
「ピッピッピ〜!!(プロフェッサー!ユリネ!我らが王がおよびだッピ!!)」
すると一匹のマーズピープルが慌てた様子で入ってきた。
「ピピピッ(同士よ。落ち着くッピ)」
「そうだね。ルーツマーズは僕らに頼みたいことがあるのかな?」
マー君が落ち着かせ、プロフェッサーが考え事をしてる中、やってきたマーズピープルは少々困った表情をしていた。
「ピッ………ピピピピ(あ、いえ………我らが王がそこの地球人を連れてこいと…)」
「………レアを?」
マーズピープルの母艦・ラグネーム
王の間
プロフェッサーとユリネちゃん、そして沢山のマーズピープル(+マー君)に連れてこられた私はチューブだらけの部屋のど真ん中にマーズピープルとよく似た巨大な物体が姿をあらわす。
その名はルーツマーズ。
マーズピープルの言う我らが王だ。
「ヨクキタチキュウジンヨ。ワレラガオウガオマエニハナシタイコトガアル」
ルーツマーズの傍に控えていた白いマーズピープルが片言交りの言葉を話す。
「ワレラノドウメイシャヨ。ツレテキテワルイノダガイッタンソトヘデテクレ。ワレラガオウガソコノチキュウジントフタリダケデハナシガシタイラシイ」
「…ルーツマーズが彼女と2人っきりで?」
プロフェッサーが怪しそうに片眉をあげる。
ユリネちゃんは不満そうな顔をしてるしマー君は困ったような表情だ。
かく言う私もルーツマーズがなぜ私を指名したのかよくわからない。
「………納得しかねる部分も多いけど話が進まないから僕は従うことにするよ」
プロフェッサーはそう言いながらも名残惜しそうにチラチラと私達を見ながら部屋から出る。
「………」
ユリネちゃんはどうすればいいかわからないと言いたげに私とルーツマーズを交互に見る。
「ユリネちゃん、お姉ちゃんに任せなさい」
私はユリネちゃんの頭を撫でる。
「…ずるい」
撫でられたユリネちゃんは一瞬嬉しそうな表情をするが、すぐに頬を膨らませる。
そして名残惜しそうに部屋から出て行った。
「デハワレラモヒカエサセテイタダキマス、オウヨ」
白いマーズピープルたちもいなくなり、残ったのは私とルーツマーズだけとなった。
『………………』
「え?」
私の頭に直接つながったような感覚がして何かが聞こえた。
それは私にしかわからない“声”だった。
『………………』
「………なるほど。あなたなのねルーツマーズ」
『………………』
「…そう。奴らはそこまできたと言うわけね」
『………………』
「私はそこまで馬鹿じゃないわ。今動いたところで動きようがないもの。けど奴らは必ず出てくる。攻めるにはその時しかないわ」
『………………』
「ええ、肝に命じておくわ」
『………………』
「え?下ろしてくれるの?こっち的にはありがたいけど…」
『………………』
「………ん、わかったわ。ご好意感謝します」
長い会話の最中私の目の前にUFOを象ったメダルが現れ、それを受け取る。
「オヨビデスカオウヨ」
と、タイミングがいいのかマーズピープルエリートが現れる。
「………ワカリマシタ。ワレラノドウシタチとドウメイシャニモソウツタエマス」
ルーツマーズとエリートの会話の最中私はメダルを見つめる。
なんせこれは『私とマーズピープル達の友好の証』だそうだから。
ラグネーム・格納庫
「…姉様ともっと会話したかった」
「私もだけどごめんね。私は向こうの方が好きみたいなの。ユリネちゃんはマーズピープル達と、私はモーデン軍という居場所があるからね。でも安心して、私達の居場所はあの孤児院だからね」
「………うん」
頭を撫でられたユリネちゃんは機嫌を直した。
「ピピピピ!(発進準備は出来たッピ〜!)」
UFOの調整をしていたマー君が声を上げる。
「ありがとマー君。この場にプロフェッサーがいないのが吉なのか凶なのか…」
「でも不満そうだった」
プロフェッサーは実験と称した研究のためここにいない。
私がルーツマーズとの会合の説明をすると彼はどこか残念そうにしていた。
多分私を実験する気だったに違いない。
「まぁいいわ。それじゃあねユリネちゃん。悪い宇宙人に食べられないようにね」
「ん、私わきまえてる」
「ピピピ〜ピ!(我らはいつでも歓迎するっピ〜!)
私はUFOに乗り込み、ラグネームから地球へと降りて行った。
地球のどこか
「よっと、はぁ〜やっぱり地面がいいわね」
土を触って感性に浸る私。
「さて、降り立ったところといえば………」
私は降りた位置と地図を調べる。
「えっとこの辺で………………ふむ」
私は地図をしまう。
「ごめんなさい元帥閣下。ちょっとだけ寄り道することをお許しください」
行き先は地図にもなっていない秘密の場所。
ひさびさに里帰りでもしますか。
主人公は故郷へと帰ります