とある森の奥地
マーズピープル達と別れ、ある場所へ向かっている私。
「おもえば、私があの街を出て一年だったっけ?」
懐かしいなと思いつつ森がひらけ光が漏れる。
そして私の目の前に立派な街並みが並んでいた。
「………『はぐれ者の街・フラウロスタウン』」
私が父に育てられた世界であり、私のもう一つの故郷。
「…旅人よ。この辺境な街に何の用だ?」
と、片隅に旅装束っぽい格好をしただいたい40代前後の男性が声をかけてきた。
「…相変わらずですね。久々に故郷に帰ってきた人に対してもそのセリフが好きなんですねモンバおじさん」
「は?………え?」
私の言葉に男性は帽子をあげて私を見て、数秒間固まる。
「………レア………ちゃん………なのか?」
男性の言葉に私はこう答えた。
「お久しぶり………と言いましょうか、モンバおじさん」
というとモンバおじさんはダッ!と街の方まで走り出した。
「ゥオォォーーーーーーーーイ!!!みんなぁーーーーー!!!レアちゃんが帰ってきたゾォーーーーーーー!!!」
と同時に街全体が響き渡るような声をまき散らした。
「ナニィッ!?レアちゃんだって!?」
「帰ってきたのか!?」
「嘘!?本当にレアちゃんよ!」
「うおおおおお!久しぶりだなぁ!!」
「フォフォフォ、長生きはするもんじゃな」
そして扉から、窓から、下水道から、壁から、壺から、異空間から街の住人達がやってきた。
え?後半ありえない登場の仕方をしたって?
字面だけならそうかもだけどこの街ではこれが日常なのよ。
「「「「「お帰りーーレアちゃん!!」」」」」
「うん。ただいま」
フラウロスタウン・村長の家
「ホッホッホッ、よく帰ってきたのぉ」
「お久しぶりです。村長さん」
「本当に久しぶりじゃ」
住人達に連れられ私は村長さんとお茶を飲みながら会話している。
…ここで補足だけど、この村長さんの容姿は見た目10歳前後行きそうな銀髪幼女である。
そして実年齢はなんと推定765歳だとか。
人間じゃない?それに関してはまた後で。
「して、お主はモーデンなる軍団の一員なのじゃろう?何しにここへきたのじゃ?」
一通り飲み終えた村長さんが警戒をあらわにする。
「…里帰り………と言ったら信じますか?」
「ただの兵士相手なら信用できんと突っぱねるが、お主じゃからな。信じておるよ」
村長さんはからかっただけのようだ。
「とりあえずこの街の人たちとの挨拶と、あとで孤児院と家にお邪魔しようかと」
「ふむ、なるほどの。じゃがレオードはつい先ほど旅立ってしまったぞ」
「…入れ違いですか」
父親にも挨拶をと思ったが………いないんじゃ仕方ないかな。
「まぁいいや。それでは村長。失礼します」
「うむ」
そう言って私は村長の家から出て行った。
…まさか家の前にすでに住人が占拠していたのは驚いたが。
フラウロス孤児院前
「…ここは変わってないわね」
少々簡素なれどあの頃から変わらぬ思い出の場所。
幼き日の広場。
幼き日の遊具。
幼き日の………
「せんせ〜!こんなところに変な人がいるよ〜!」
と感傷に浸っていたら鼻水を垂らした子供が私を指差して叫ぶ。
………変な人とは失敬な…。
「あらまあノーズ君。仮にも女の人に変な人とは言ってはいけませんよ?」
とエプロンドレスを着た保母さんらしい人が注意する。
「それに、彼女はあなた達のお姉ちゃんなのよ」
「え?なんで?」
「うふふ、彼女もこの孤児院で育った娘だから」
「恥ずかしいですよマーシーさん」
孤児院の保母さんの名はマーシーさん。
この孤児院での院長でもあり私達の母代わりでもある人だ。
「里帰りかしら?」
「はい。帰りついでに立ち寄ってみました」
「あらまあ、みんな〜、このお姉ちゃんが一緒に遊んでくれるそうよ」
「「「「わーい!!」」」」
マーシーさんがいうとざっと10人ほどの子供達が私に群がる。
「あははは、ちょっとくすぐったいわね」
「お姉ちゃ〜〜〜ん!!」
ふと奥から黄色がかった金髪の幼女が猛スピードで突っ込んできた。
「おっと」
私は飛びかかってきた幼女をオッパイをクッションに捕まえた。
「ピルシェ!久しぶり!元気してる?」
「うん!ピィは元気だよ!」
この娘はピルシェ。
まだ私がモーデン軍に入る前に拾った子供だ。
当時の彼女は右も左も分からず、ただ一心不乱に獣を食らう暴れん坊だった。
だが私と出会ったその時彼女は私に懐き出した。
理由は彼女自身わかってないみたいだが、多分本能的に“同類”だからだと思う。
「お姉ちゃん!おはなし聞かせて!」
「ふふっ、いいわよ」
この子は私の話に一片も聞き逃さずワクワクしたような表情で聞いてくるから私は嬉しいな。
「お姉ちゃん彼氏いるの?」
「なぁ!正規軍って強いのか!?」
「宝探しがしたい」
「モーデン軍元帥ってどんな人?」
「お姉ちゃんはビッチなの?」
その他の子供達の質問に私はできるだけ丁寧に答えていった。
ただし、最後のハナタレ小僧は後でOHANASHIだ。
孤児院を後にした私はある一軒家を見上げる。
そう、ここはレオード・ドラゴニフの家。つまり私の義父の家なのだ。
(いいか?今日からここがお前の家だ)
私が初めて父に出会い、この街に来たことを思い出す。
(………思ったほど綺麗じゃないのね)
(ほっとけ。………ところで、お前名前欲しくないか?)
(…いい、自分で決める)
(………………)
(…私はレア。この名前は譲れない)
(レア…か。よし分かった!今日からお前は俺の娘レア・ドラゴニフだ!)
(…勝手に決めないで)
…本当に懐かしい。
父との食事、父との修行、父との生活。
この家にはそれが詰まっている。
父はどこかに出かけていると聞いたので会えないのがちょっと残念だが。
「あのにやけづらを殴れなくて残念ね」
だから決してあいつをぶっ飛ばそうとは考えてないよ。
………ホントダヨ?
「寂しいものよの。もう少しここにいてもいいのじゃぞ?」
「いえいえ、いつまでもここにいるわけにはいきませんよ」
入り口前で村長さんはちょっと寂しげに言う。
「うおぉぉおーーーーーン………ザビジイよぉ〜」
「レアちゃん………はよう帰ってきてくれよぉ〜」
「うう………俺たちの自慢のレアちゃん………」
その後ろにいる村人たちは号泣の嵐が浮き荒れていた。
「………そんな顔をしないでよみんな。私はここにきて幸せを思い出したんだから」
「カッカッカッ!その言葉を直接言ってくれりゃあやつらも元気になるじゃろうて」
「お姉ちゃーーーーーーん!!!」
ふと遠くからピルシェが猛ダッシュで走ってきたのが見えたので、構えをとった。
驚いた村人たちと村長さんはサッと道を開ける。
そしてピルシェは私にダイブして、私はすかさず彼女を捕まえた。
「ピィも連れてって!」
「ダメ」
猪突猛進なこの娘のことだ。
きっと一緒に冒険がしたいとかそんな感じだろう。
「あらあら、ごめんなさいねぇ」
「いえいえ、ほら。あなたはいい娘だから大人しく待ってなさい」
「ぶ〜」
後からやってきたマーシーさんに預けられたピルシェは不服そうだ。
「それじゃあみんな、行ってきます」
「うむ、精進せよ」
「またなーレア!」
「今度帰ってきたらいいもんご馳走するぞ!」
「体に気をつけるんだよ!」
村人総出での送り迎えにちょっと恥ずかしがったが、悪くないと考え私は村を出る。
(あれから何日かたったから何か起こるかもしれないわね)
モーデン軍に戻った時どうなるのかと不安になりつつも多分何とかなるさと私は歩き出した。
その日の夜
フラウロス孤児院の一つの窓から小さいなにかが飛び出した。
「ピィ………頑張る!」
少女はリュックを背負って大好きな姉を追いかけて行った。