遺跡とカウボーイでインディ・ジョーンズじゃないんだから
とある砂漠の国
「ヤーッハッハッハ!見事に何にもねーとこだなおい!」
「だから砂漠になんて行きたくなかったのよ。お姉さまとお揃いの髪が傷んだらどうしてくれるのよ」
砂漠の上を走る船の甲板に豪快に笑うアレンジュニアさんとビーチパラソルの下で網目の椅子に寝そべっている半目のベアトリスちゃん。
私たちはアビゲイルさんの指示でこの砂漠の国のどこかにあると言う秘宝を求めてやってきた。
考古学を多少学んだ私からすれば秘宝は散々調べ尽くした後博物館に展示するものなのだが、モーデン軍は単なるエネルギー物質しか考えていないのが悲しいところだ。
「笑えるぐらいの差がありますねぇ」
「………そうね。あんたのその食べてる姿も笑えるわ」
ベアトリスちゃんが私の食事を指摘する。
「結構いけますよサボテン。食べます?」
「いらないわよ!」
「よく食えるなおい」
「砂漠の民にとっては貴重な食料だそうですよ。あ、サソリ肉が良かったですか?」
「どっちもいらないっての………ん?」
ふとベアトリスちゃんが視線を外すと遺跡らしき場所を見つけた。
「見て!きっとあれが遺跡の入り口よ」
「ヤーッハッハッハ!野郎ども!船を止めなァ!」
「あそこですか」
あの遺跡は前世で見覚えがあった。
たしかメタルスラッグ2もしくはXのステージ2のエリアでミイラが大量に現れる場所だったはず。
遺跡の入り口前
「ヤーッハッハッハ!小せェが深い穴だな!この下に遺跡があんのかぁ?」
そりゃ体の大きいジュニアさんからすれば小さいかもしれないがまだ成人男性レベルの大きさなのよね。この入り口は。
「うざいバカ汗臭いし図体でかい。どいて。あんたが邪魔で立て札が見えないじゃない」
「………………」
ジュニアさんは何も言わずに横にずれる。
『ダイヤの原石の如き心を持つものに扉は拓かれる』と多少掠れた字が書かれている。
「ダイヤの原石のような心ねぇ。良かったわね筋肉バカ。私のおかげで先に進めるわよ」
「親衛隊どもにあれだけ貢がせて何いってんだ?」
ジュニアさんは素朴な疑問をいう。
「バカね。あれは彼らに対する私からの『愛・情・表・現♡』わかる?」
それすなわちベアトリスちゃんは男は女王に貢ぎ続けるものだとそういってるのだ。
「何色にも染まらない純粋さだと思うんですけど………」
どこぞのアラビアン映画でダイアの原石というフレーズはそういう意味に繋がると思うのだけど。
「………なに?あなたあたしの心が純粋じゃないっていってるの?」
私のつぶやきにベアトリスちゃんの地獄耳が拾ってしまったようだ。
「そりゃベアトリスちゃんの心は全部アビゲイルさん色に染まってますから」
「あら?あなたなかなかわかってるじゃない。そうよあたしの心は常にお姉さまの色に染まっているのよ!」
少しおだててやるとベアトリスちゃんは上機嫌になる。
「ベアトリスちゃんがダイヤの原石かと聞かれたらちょっと微妙ですね。アビゲイルさん一筋の意味も含めて、ベアトリスちゃんはピンクダイヤモンドといったところでしょうか」
「ピンクダイヤモンド………そう言われるとあたし困っちゃうな〜」
通常のダイヤよりも希少価値の高いピンクダイヤモンドに例えられて嬉しそうにクネクネと動くベアトリスちゃん。
「のせられてるぜおい」とジュニアさんが呆れた声を上げるが、自分の世界にトリップしているベアトリスちゃんは聞こえなかった。
「というものの、このままでは進めませんね。いざって時には爆薬でも………ん?」
ふと私の視線の先に1人の少女が遺跡を見上げているのが見えた。
その少女はエメラルドグリーンの髪で二束ほど三つ編みにしてカウボーイハットをかぶって、動きやすさを重視したのか上半分は水着になっている。さながら少女版インディ・ジョーンズといったところだろう。
ただし武器は鞭ではなく拳銃のようだが。
「アラビジアの遺跡………本当にここにお父さんがいるのかな?」
少女は不安げに遺跡を見つめ、頭を横に振る。
「ううん、弱気になってはダメ。必ずお父さんを見つけるって決めたんだから」
少女は気持ちを切り替えて一歩を踏み出したその時だった。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ!
『ダイヤの原石の如き心、確かに確認した。それではファラオの秘宝を受け取るにふさわしいか試練を行う』
入り口らしき扉が開くと奥から全身に包帯を巻いた屍人の軍団がノロノロとやってきた。
「ふん。マミーか何体来ようがあたしの相手じゃないわ」
「え!?な、なに!?何ですか!?」
好戦的なベアトリスちゃんに対し少女は突然の出来事にパニクっている。
「………しょうがないですねぇ」
私は仕方ないので持参してきた武器を構え、少女に襲いかかろうとしたマミーに投擲する。
グジャッ!
マミーの頭が潰れた音がした。
それもそのはず、先端にこれでもかというくらい棘が敷き詰められたサッカーボールサイズの球体の鞭を投げたのだから。
「それそれそれそれそれ!」
鞭を振るえば大砲に直撃したかのごとく吹き飛ばされるマミー軍団。
少女には一切当たらない。
「伏せて!」
纏めて一掃するためなぎ払いで吹き飛ばす。
少女は半端反射的に屈んだことで回避した。
「大丈夫?」
「あ、はい」
ほぼ全滅させたマミー軍を尻目に少女に手を伸ばす。
『ファラオの試練を超えしものよ。先に進むが良い』
すると私たちの目の前に地下へと続く階段が出現した。
「どう?あたしのおかげで先に進むことができるわよ?さ、行きましょ。あなたも付いて来なさい貧乳小娘」
「イタタタ!落ちる!押さないでください!」
少女の後ろをゲシゲシと押し付けるベアトリスちゃん。
これが男相手だと思いっきり蹴飛ばすのだろうが…。
「大体貧乳小娘って何ですか!私には両親からもらったスコーシャ・アムンゼンという名前が…」
「あたしはベアトリスよ。覚えてくれなくて結構よ」
「ヤーハッハッハッ!でかしたダイヤの原石ィ!」
「……ヒィ!(デカっ)」
ジュニアさんの登場で尻すぼみになった少女・スコーシャちゃん。
「ジュニアさん。いきなり出てきて驚かさないでください。…スコーシャちゃんだっけ?偶然で起こったことだけども、できれば私たちと一緒に行動して欲しいの」
「は、はい。わかりました親切な人(この人も別の意味でデカイ)」
素直に頷くスコーシャちゃん。
………今一瞬視線が下に行った気がするがきっと気のせいだろう。
「あ、ちなみに私はr…」
「ちょっと〜早くしないとけり落とすわよ〜!」
自己紹介しようとしたら近くでベアトリスちゃんが蹴りの体制に入っている。
私とスコーシャちゃんはお互い苦笑いを浮かべた。
遺跡内部
奥へと進んでいくと、2人の女性が立ちはだかる。
ただし、その女性達はネコミミと尻尾が生えており、青い肌をしていた。
「あらあらウフフ、可愛い子猫ちゃん達。ここに何の御用かしら?」
「私は父を探…」
「ここに『ファラオの秘宝』があるでしょ?さっさと案内して頂戴」
「ちょっ!?ベアトリスさん!そんな喧嘩腰に………!」
ベアトリスちゃんに出っ鼻を挫かれたスコーシャちゃん。
「あらあらウフフ、………そうね。ファラオ様に気に入られたらくれるかもしれないわね」
「ねえ子猫ちゃん?ところであなたは“どっち”なのかしらぁ?」
「………は?何いってるの?」
意味がわからないといった様子のベアトリスちゃん。
「あらあらウフフ………ウブなところも可愛いわぁ。ファラオ様に会う前に私たちと遊びましょうよ」
まったくもってベアトリスちゃんとの会話が噛み合っていないこのネコミミ女性。
「そちらのあなたも“どっち”なのかしらぁ?」
ネコミミ女性達が私を見た。
「………私は好きな人しか抱かれたくありませんよ」
「あらまあ…!」
ネコミミ女性がちょっと驚きを見せた。
「これは驚いた。あなた男を求めているのね!」
「でも安心して。ファラオ様なら手取り足取り解けづヴェっ!?」
…今口うるさいこの猫ビッチにナイフを喉の中にねじり込む。
「聞いてませんでしたか?私は好きな人以外に抱かれたくありませんし、ましてや死体を空いでるような特殊性癖は持ち合わせていませんよ?」
そういってそのまま縦に一閃すると猫ビッチは縦に真っ二つになる。
元々死体だったので血は吹き出ることなくただの腐った肉の塊と化した。
「奥で待っているファラオ様に伝えてくれませんか?『もうすぐあなたに会いにいく』と」
「ヒィッ!?」
すっかり怯えてしまった猫ビッチの片割れは数は後退りした後全力で奥へと逃げ出した。
「さて、邪魔な猫ビッチは追っ払ったんでいきましょうか」
「そうね」
「ちともったいねえがわかったぜ」
「………え?………あれ?………え?」
ベアトリスちゃんとジュニアさんが頷くなか、スコーシャちゃんはさっきの光景と今の私のギャップについていけてないようだ。
「こう思ったほうがいいわスコーシャちゃん。気にしたら負けだと」
「あ、ハイ」
スコーシャちゃんは素直に頭を下げた。
レアに対する追加レポート
彼女は恋愛ごとに対してあまり話題に出したくない傾向がある。
とはいえ彼女の語る恋人に強い惚気を放っているあたりあながちその人以外と付き合う気持ちではないのだろう。
…後で聞いた話だがある一人の同胞が「そんな恋人より俺が一番」と口にした後その同胞が行方不明になった。
後で彼女に事情を聞くと「知らぬが仏という言葉を知っていますか?」と素敵な笑顔のはずなのに本能的に“聞いてはいけない”と思ったので報告は終了する。