遺跡内部・奥地
「私の父は有名な冒険家なんです。家はいない日の方が多いけど、帰ってきたときにわくわくするような武勇伝を聞かせてくれました」
暗い雰囲気を紛らわす意味も含めて父親の自慢話をするスコーシャちゃん。
「やだ、爪が割れちゃったわ」
「話聞いてくださいよ!」
「ヤーッハッハッハ!亡き父親の意志を継ぐ娘か!いい話じゃねえか!」
「父は死んでません!!(この二人まったく話が通じてないっ…!)」
が、ベアトリスちゃんは聞く気はなく、ジュニアさんは噛み合ってなかった。
「なるほど、スコーシャちゃんは行方不明になった父親を探してここに来たってことね」
「そうなんです!私はこのためにここに来たんです!!(それに引き換えこの人だけは真剣に話を聞いてくれる…!)」
私が聞くと二人に対して顔を歪めていたスコーシャちゃんはパアァと眩しい顔で私の手を両手で掴んで滑舌に話す。
「『ファラオの秘宝』は見つけたらお渡ししますけど、その代わり一緒にここに来ているはずの父を探して欲しいんです」
「イヤよめんどくさい。『ファラオの秘宝』は私のものだけど」
「何という女王様!」
「ヤーッハッハッハ!手伝ってやるぜダイヤの原石!どれがお前の父親だァ!?」
「ちょっとやめて!どこからその骸骨拾ってきたんですか!?」
二人に振り回されているスコーシャちゃん。
そんな根が素直なスコーシャちゃんにベアトリスちゃんが、
「ねぇ、あんたの父親ってあいつじゃないの?」
「え?お父さん?」
ベアトリスちゃんが指さした方向へ振り返ると、
「ウオオオオォォォォォ!!!」
ジュニアさん並の大男の様なアンデットがいた。
「あ、違った。ただの筋肉ミイラ男だったわ」
「絶対わざとですよね?」
ベアトリスちゃんがスコーシャちゃんに叩かれた。
「こいつはちょうどいい!俺様といい勝負ができそうな奴が現れたぜェ!」
「ふふん。それじゃあ任せたわよ筋肉バカ」
叩かれたことなどつゆとも感じていないベアトリスちゃん。
ジュニアさんはマシンガンを乱射して攻撃し、対するウォーリアーマミーは燃える槍を振り回して弾くあたりかなり強そうだ。
「あの二人はあまり期待しないほうがいかもしれないからわたしが父親を探すのを手伝ってあげますよ」
観戦しながら隣のスコーシャちゃんに声をかける私。
「………………」
しかしスコーシャちゃんの返事がない。
ちらりと見ればスコーシャちゃんは明後日の方向に視線を向けており、目に意思が宿っていなかった。
「……………?」
怪しんでいると『違和感がまとわりつかれた』様な感覚を感じた。
これとよく似たあの感覚はかつて幼少時代の…
………と考えが浮かんだ瞬間無意識に威圧を放って違和感を追い払った。
(………二度と経験したくないと思ってたのにきちゃうんだよな〜。洗脳系って………)
「ちょ、ちょっと………なんなのよ…」
ふとベアトリスちゃんが困った様な声が聞こえた。
そこには目が虚なジュニアさんがいる。
「ジュニアさんもですか…」
「ちょっとレア。これなんとかならない?」
「この手の状況は最奥にいるボスが知っていると思いますよ?」
取り敢えず洗脳されたスコーシャちゃんはお姫様抱っこで抱え、ジュニアさんは紐で引きずる形で運んでいった。
遺跡の最奥聖域
「ここにたどり着く者がいるとは久方ぶりのことだ。よくぞまいった人の子よ」
最奥にある玉座に座る青い肌にツタンカーメンの様なものをかぶった人が座っている。
その両脇にさっき会ったネコミミマミーがいる。
「出たわねファラオ仮面。あたしに手間をかけさせるなんて生意気ね。あんた入り口にいときなさいよ」
「………ベアトリスちゃん、客人が来たときに自分から出向くと思う?」
「思わないわね。あたしめんどくさいし」
私はため息を吐く。
「しかし口惜しいことよ。我が呪いはお前たちの心には馴染まぬようだ」
「呪?」
「我が呪いは人の欲望を支配する」
「そして私たちのフェロモンは人の情欲を支配するの」
話を聞くにファラオとネコミミマミーの能力でスコーシャちゃんとジュニアさんを洗脳しているらしい。
それに違和感の状態がファラオの呪だったようだ。
「ふうん。悪趣味な悪戯はあんたたちがやったわけね。役立たずな上に不気味な人形連れまわしているみたいで気持ち悪いったらありゃしないわ」
「………どちらかというと私が連れ回しているんですがね。っていうか役立たずだなんてスコーシャちゃんに失礼ですよ。こう言う遺跡に慣れている人は貴重なんですから」
「ふん、あんたもそこの筋肉バカもあたしの部下だからいいのよ。………って別に心配してるわけじゃないけど大丈夫なのそれ?」
ベアトリスちゃんが剣や槍が刺さりまくっている引きずられたジュニアさんを指す。
「安心してください。ジュニアさんは不死身の鬼軍曹の血を引いていますからこの程度のことなんて水も滴るなんとやら程度でしかありませんよ。それに壁にも武器にもなれますし」
「………あたしが言うのもなんだけどあんた実はかなりドSでしょ?」
ベアトリスちゃんがジト目で見つめてきた。
「有効活用です」
「前言撤回。あんた鬼畜ね。………っとその前に、あんたたち『ファラオの秘宝』ここにあるわけ?」
「………ふうん、あなたたちはファラオ様の呪いが効かないみたい」
「不思議ね。子猫ちゃんたちには隙がないの」
「子猫ちゃん何か欲しいものはないの?」
「子猫ちゃんは恋をした事がないの?」
「………本当に口の減らないメス猫どもね」
話を聞かないネコミミマミー達にイラつくベアトリスちゃん。
「こんな躾のなってないペットを放置するなんて、飼い主もどうしようもなく愚鈍に違いないわ」
「飼い方なんて人それぞれだと思いますが………」
私は呆れますが、ネコミミマミー達は楽しそうに笑うだけだ。
「いいわ。私躾けるのは得意なの。飼い主もろとも二度と私に刃向かえないように調教し尽くしてあげる」
「とか言いながら私に押し付けるつもりですよね?」
「それはあたしがレアを『信用』しているって証拠よ♡」
「信用と来ましたか。やれやれですね」
私は取り敢えずスコーシャちゃんとジュニアさんを端っこに置く。
「というわけでファラオさん。よろしくお願いします」
「いいだろう人の子よ。我が呪いに染まらぬその心、どれほどのものか我に示すがいい」
それを合図に四方八方からマミー軍団が出現した。
「………えい」
手持ち武器である改造フレイルを投げ、周囲のマミー達を一掃する。
「その程度の力では私たちは止まりませんよ」
フレイルを振り回してドンドンファラオの元へ接近すると、ジュニアさんが前に対峙していた大男のマミーが立ちはだかった。
私はフレイルを上へぶん投げ、大男マミーのなぎ払いを屈んで避けると、
「………無拍子!」
ドォン!!
他所から見れば両腕を突き出しただけ。
しかしその行動に大男マミーが大きく吹っ飛ばされた。
「ウォーリアマミーをあんな簡単に!?」
「子猫ちゃんじゃなくて実はライオンだったの!?」
ネコミミマミーは驚愕を浮かべた。
「いいえ、私は悪魔なんですよ」
上にぶん投げていたフレイルをキャッチして、一番下から最上部まで(軽く三十段ぐらい)一気にジャンプする。
すぐに着いた私はフレイルをファラオさん目掛けて投げるが、ファラオさんを守るように半透明な壁が出現し、塞がれる。
「見事な力だ。だが我の防御は破れぬ」
「そうですね。………かなり無茶しますが…」
私は壁に無理やり捻り込むように深く入れ込む。
身体中が悲鳴を上げるが、そんなことよりも無理やりこじ開けるように力を入れる。
「お前は………一体…?」
ファラオさんの驚きの混じった声。
対して私はこう答えた。
「モーデン軍所属・レオード・ドラゴニフが娘、レア・ドラゴニフです」
そして半透明な壁を無理やり引きちぎるように破壊し、ファラオさんの心臓に手刀を貫いた。
「…見事だ人の子よ。人の心とは時にかくもダイヤの如き輝きと強靭さで我を圧倒する」
「ファラオ様!」
「さぁ、我が秘宝を受け取るが良い。我はしばし眠りにつくとしよう」
私はファラオさんの手からアメジストとは違う宝石のような秘宝を手にする。
「確かに。『ファラオの秘宝』は貰います」
そういうとファラオさんは役目を終えたように目から光が消え、糸のない人形のように膝をつく。
その傍らにネコミミマミーたちが死体に縋り付く猫のように、あるいは愛人のように泣いている。
「あんたたちもなかなか頑張ったようだけどあたしのお姉さまの思う心の方が強かったようね」
「…何もやってないくせに………。ここに用はありませんね。帰りましょうか」
「そうね。こんな辛気臭い場所はあたしの肌に合わないわ」
ベアトリスちゃんはそう言いながら振り返りもせず来た道を戻っていく。
ついでにスコーシャちゃんとジュニアさんの回収も忘れない。
『待て、運命を超えし人の子よ』
ふと私の頭にファラオさんの声が聞こえる。
「………眠るんじゃなかったんですか?」
『そうしたいのだが汝にだけ伝えたいことがあるのだ。我がまだ生きていた時代にある預言があった。『混沌を撒く幻想者に気をつけよ。それを対峙するのは運命を超えし者なり』その運命を超えし人の子は汝のことだ』
「………………」
『さらばだ運命を超えし人の子よ。今度こそ眠りにつこう』
ファラオさんは二度と声を出さなくなった。
「………運命を超える………ね」
それすなわち転生を経験した私のことだ。
そして対峙する相手は混沌を撒く幻想者。
「幻想者………イマジン………まさかね」
遺跡を攻略し、基地へと帰還する私達。
「う、うーん………まだ頭がくらくらします」
「ヤーッハッハッハ!俺様はなんだかいい夢を見てた気がするぜェ!………けど身体中がスッゲェ痛いんだがなんだったんだ?」
マインドコントロールの影響が残っていたスコーシャちゃんと機嫌がいいジュニアさん。
「やっと起きたの?役立たず共が。もっとあたしを崇め称えなさい」
ふんっと仁王立ちのベアトリスちゃん。
「それにしてもあのファラオの呪い、なんでベアトリスさんには効かなかったんでしょう?…あ、親切な人も効いてませんでしたね」
ベアトリスちゃんに疑問の目で見るスコーシャちゃん。
「当然よ。あたしの心は完璧なの。あたしの世界はお姉さまさえいればパーフェクトワールドなの。もちろんお姉さまの一番はあたし」
「へぇぇ。素敵なお姉さんをお持ちなんですね。私一人っ子なんで憧れちゃいます」
自慢というか崇拝に近いベアトリスちゃんに関心を寄せるスコーシャちゃん。
「私は………ベアトリスちゃんに近い感じかな」
「お姉さんがいるのですか?」
「義理の父親だけよ。でも憧れている人がいるの。私はその人が好きなの」
「そうなんですか!」とスコーシャちゃんが驚きを見せる。
「っていうかアンタなんで一緒に船に乗ってんのよ図々しい」
さも当たり前に会話していたスコーシャちゃんにジト目で睨むベアトリスちゃん。
「ヤーッハッハッハ!俺様が乗せてやったのよォ!」
犯人はジュニアさんでした。
「ありがとうございます!」
お礼を言うスコーシャちゃん。
ベアトリスちゃんは不服そうにしながらも仕方ないかとしめた。
(スコーシャちゃんは残念だったけど私たちにとっては貴重なアイテムなのよね。私達モーデン軍の兵器の一部として………)
秘宝を見て残念そうなスコーシャちゃんをよそに私達は基地へと帰還する。
ちなみにスコーシャちゃんは行くところがあるといって途中下車した。