私はなんのために作られたのかわからない。
人は戦うために私を作ったと言う。
だがなんのために戦っているのかわからない。
平和のためだと答える人もいる。
だがもっとわからないことがある。
“私はここに存在していいのか?”
私と言う兵器が生まれてから………否、私と言う普通はありえない意思が生まれてからそんな考えが浮かんだ。
今の私は何処にでもいる兵器に一つだ。
だが、何処にでもいるからこそ、壊れればそれはガラクタの仲間入りだ。
体も人の手で動かされている時点で私のように意思を持っていても動けなければ意味がない。
一時期あの水色の同僚にどこか身がこげるような感覚を感じたが、意思はあってもそれを伝える手段がなければただの兵器と同じだ。
だからいつもいつも同じ時間を繰り返す。
はずだった………。
それは私がある人物に出会ってから今までの価値観が全て吹っ飛ぶような衝撃だった。
同時に私の意思の奥深くからある使命が浮かび上がった。
『あの人に尽くしたい』と。
しかし、よく考えれば私の体は満足に動けない身。
喩え尽くしたいと考えても体が動かなければ意味がない!
ふとあの人の後ろからいつも私が見ている人達の一人だ。
金属のものを持っており、私は瞬時にあの人を害そうとしているのが分かった。
私はあの人を守るべく動かないはずのバルカン砲を敵に向け発砲する。
敵は私を見て驚いた表情をしながら蜂の巣にされた。
そしてあの人は一人でに動いた私を見てこう言った。
「あなた、私の相棒にならない?」
こうして私はあの人の専用兵器・仮称『レアスラッグ』として生まれ変わったのだ!
「えっと、ここがこうであれがこうで………」
「おーいレアちゃん!こっちに人手が足りねぇんだ!手伝ってくれ!」
「はーい今行きまーす」
こんにちわ、レア・ドラゴニフです。
今見てたメモをしまって兵士たちのお手伝いをしています。
あの秘宝の一件以来兵の皆さんたちの態度があのやらかした以前の出来事よりも軟化したと思われます。
………まぁ実際は軍資金になるかなと思ってあの遺跡のお宝を持って帰って皆さんハイテンションになってましたからね。
ベアトリスちゃんとアビゲイルさんが引きつった顔をしてましたがたかだか“1.5t”のお宝を持って帰っただけなんですよ?
ファラオさんは眠ってしまったと言えあんまりとりすぎると生活が苦しくなりそうだったのでほんの少しで妥協しました。
そんなわけで私は今もお手伝いを続けています。
何故か『モーデン軍の天使』などと言う二つ名が付けられているが………。
「しっかしレアちゃんがいてくれるおかげで俺たちゃラッキーだな」
「だな!俺たちモーデン軍は安泰の時期を入ったんじゃね?」
「おいおい安泰はまだだろ?まぁ余裕ができたのは当たってるが」
「おまけに彼女のルックスは誰にも負けないようなオーラが放ってるしな。何よりおっぱいがでかい」
「「「「「それは同意する!」」」」」
「皆さん!そんなとこでサボってないでこっちを援護してくださいよ!」
「わかった。今いくぞ」
こうして私の新たな日常が始まった。
深夜の格納庫
「お待たせスラッグちゃん」
誰もいない格納庫にて、私は私専用メタルスラッグと向き合う。
するとメタルスラッグは頷くように砲身が動いた。
「今日もあなたのための素材を持ってきたわ。さ、始めるわよ」
そう言いながらコンピュータにデータを入力する私。
私がこのメタルスラッグと出会ったのはラドレェ基地のことだ。
あの作戦の後メタルスラッグの一機をどうすればいいかと考えていたら、突然誰も乗っていないはずのメタルスラッグが一人でに動き、私の背後から接近していた正規軍兵を倒したのだ。
そのメタルスラッグ(後のレアスラッグ)を見た私はある可能性を見出した。
(この子を私の相棒にしてみようかな?)
頭によぎったのはあのホログラム少女。
マルコさんが出来たのなら私にだってできるはず。
「あなた、私の相棒にならない?」
私の問いにメタルスラッグは頷くように砲身を動かした。
そして現在私はコンピュータと格闘中である。
「伝導率は良好。コア及びボディも異常なし。エネルギーパワー100%、システムオールグリーン………」
長き時間を有し、最後にエンターを入力した。
画面にはロード画面が出ている。
「これが終わればこのメタルスラッグちゃんは………ふわぁ…」
作業が終わったことで一気に眠気が襲い、私はそのまま眠りについた。
………………………………
ふと背中に何やら温かいものが包まれているのがわかった。
それは私の軍服だったが、少し温かい。
さらにふと画面を見ると、『ALL COMPLETE』と言う表示が現れていた。
そしてメタルスラッグを見る。
メタルスラッグのそばに肩まで伸びた銀色の髪にキリッとしたような青い瞳、そして丈がちょいと短いメイド服の女性がいた。
『おはようございます。レア様』
「ふふ、おはようスラッグちゃん………いいえ、今日からあなたはサクヤと呼ばせてもらうわ」
『承知しました。レアスラッグ改めサクヤ。あなたのためにこの身を尽くします』
その身のこなしは、まるで王を前にした騎士のようにその身をかしづいた。
その後、サクヤちゃんを紹介する意味を含めて元帥閣下に報告すると「面白そう」の一言で即私のサポーターとしてサクヤちゃんのモーデン軍入りが決定した。
「というわけで、本日より私専属の部下ができました」
『本日よりレア様のサポーターを任命されましたサクヤと申します』
「「「「「メイドきたああああああああああ!!!」」」」」
サクヤの登場に男たちはハイテンションになった。
「………最近格納庫にあなたが出入りしていたのはこういうことだったのね」
「へぇ?なかなかできたメイドじゃない。どう?今から私の部下にしてもいいわよ?」
顎を手に当て、関心を寄せるアビゲイルさんと引き抜きを行おうとするベアトリスちゃん。
『私はレア様専属のメイドです。なのでおいそれと他人に鞍替えする気はありません』
「む?なんかシャクだけど今だけ引き下がっとくわ。っていうかなんでメイド服?」
『ネットワークにて『主人に仕えるための服』を厳選した結果です』
「…なるほど把握」
「さてサクヤちゃん。入隊早々早速お仕事の時間ですよ!」
『ではレア様、この私にどのようなお仕事がなされるのでしょう?』
まるでプロのメイドの如く切り替えが早い。
「まず最初は能力テストね。あなたの運動能力は………」
私の言葉にサクヤちゃんは嫌がる様子もなく頷く。
多分彼女はこう思ってるんじゃないかな?
「私の生きがいを見つけた」と。