メタルスラッグ〜女モーデン兵の転生記〜   作:只の暇人

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ベアトリス結婚騒動その2

正規軍本部

 

「………………」

 

メガネの女性・フィオがある手紙を見て困ったような顔をしている。

 

「よぉフィオ。いつもの美人が曇るような顔してっけどどうしたんだ?」

「ロビング少尉………」

 

そこへターマとエリが声をかけてきた。

言おうか悩んでいたフィオだが、意を決して話すことにした。

 

「実は、アルゲート伯爵から結婚披露宴の招待状が届きまして」

「アルゲートって確かあんたと同じくかなり金持ちよね?」

 

フィオは頷く。

 

「アルゲートか。確か黒い噂が絶えない男だったな。やれ人身売買で金を集めたとか違法薬物で金を集めたとか………まぁどっちもでっち上げとして終わっちまったが」

「…で?さっき結婚とか聞こえたけど…」

「はい。きっとこれは色々な人を呼んでアピールするつもりではないかと」

「いや、それだけではないだろう」

 

ふと通路からマルコと、ブレイブが現れた。

 

「ぶ、ブレイブ元帥!!?」

「楽にしてくれ。話の続きだが、そのアルゲート伯爵は厄介な相手と婚約をちぎる気らしい」

「………お相手は誰だ?」

「………モーデン軍だ」

「「「!!!!」」」

 

三人は驚愕の顔を見せた。

 

「アルゲート伯爵はモーデン軍と手を組む………いや、婚約をすることによってつながりを作り、安全かつ大きな存在になると計画しているそうだ」

「………そりゃまた。再婚だなんてよく思いつくな」

「何を言っているんだ?婚約を交わすのは伯爵の息子だぞ」

「ジョークだジョーク」

「そ、それより結婚相手は誰なのですか!?」

 

なんか話がずれつつあるのでフィオが修正しつつブレイブに尋ねる。

聞かれたブレイブは苦虫を噛み潰したような顔をした。

 

「………当初はモーデン軍のあの姉妹の妹とだったんだが、伯爵の息子がある人物と一目惚れをしたらしくそのものと契りを交わすらしい」

「へぇ?そいつはどんなやつなんだ?」

「名前は規制によって聞けなかったが、特徴は知ることができた。栗毛で足元まで届きそうなポニーテール。モーデン軍一番の巨乳。モーデン軍らしくないモーデン兵。モーデン軍の天使と呼ばれている。………この特徴を聞いた時頭を抱えずにはいられなかったよ」

「「「「………」」」」

「栗毛のポニーテール」

「胸がデカくて」

「モーデン軍らしくなくて」

「モーデン軍の天使って………」

 

四人はこの特徴を聞いて、ある女モーデン兵を思い浮かんだ。

 

「「「「………マジっすか」」」」

 

再起動した時出た言葉はこれだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後………

 

ここはアルゲート伯爵の屋敷。

その会場ホールにてパーティーが行われていた。

 

「いやぁ、おめでたいですな伯爵。あなたの息子が大人になるのは良い兆候になるやもしれません」

「はは、その気持ちはありがたい」

 

それなりになのある貴族とアルゲート伯爵は話し合っている。

 

「…それにしても、私が聞いた話では息子さんはベアトリスというモーデン軍のアイドルと結婚だという話だったのですが………」

「………あれは本当に驚きました。当初はそのはずなのですが、息子はお眼鏡に敵わなかったようで」

「で、ある女兵士に一目惚れをしたと?是非見てみたかったですなそのモーデン兵に」

「彼女は別室にて待機させております。きっとあなた方に驚きを感じさせられるでしょう」

「ははは、期待しましょう」

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

「………はぁ、どいつもこいつも…」

 

別の場所ではジュース片手に悪態をつくピンクのセレブドレスのベアトリスがいた。

 

もちろん彼女の付きである黒子兵達と、

 

「ベティ、あまりその発言は感心しないわ」

 

彼女の姉であるピンクのセレブドレスのアビゲイルがいる。

 

「だって、あいつらの視線気に食わないのよ。結婚するのがあたしじゃなくてあいつになって、「残念だったな」みたいな同情的な視線が!」

「でもお嬢、これなら結婚せずに良かったと思えば良いじゃないですか」

 

黒子の一人がフォローを入れる。

でもベアトリスの機嫌は晴れない。

 

「確かにね。でもやっぱ気に食わないわ」

「(ボソボソ)お嬢はどうしてこんなに不機嫌なんすか?」

「(ヒソヒソ)結婚は嫌だけど取られた感じがして気に食わないってことだよ。きっと難しい乙女心なのさ」

「え?乙女?」

 

思わず呟く黒子。

 

「なんか言った?」

「いえ何も」

 

ベアトリスがジロリと睨み、黒子は事務的に返した。

 

アビゲイルは呆れ混じりにため息を吐きながら周囲を警戒する。

 

(正規軍のみならず招かれざるものも紛れ込んでいるようね。本当なら閣下の護衛をしたかったのに、あの筋肉だるまに名指しされた以上私がしっかりしないと)

 

 

 

 

 

一方、

 

(ウヒィ〜!結構大変だよこれ!)

 

赤みがかった茶髪の少女はメイド服で接待している。

 

(勢い任せだったといえこんなことならドラっちを誘えば良かったかな?)

 

その少女の正体はプトレマイックのキャロラインだった。

キャロラインは新聞でレアが悪い噂が多いアルゲート伯爵に嫁ぐという内容に度肝を抜かれ、ドラグノフ達に内緒で潜入していたのだ。

 

ちなみにメイドになっているのは可愛い服に目移りした結果である。

 

「………ところで肝心のレアっちがいないけど一体どこに…」

 

ドンっ!

 

「わっ!」

 

よそ見したせいでぶつかってしまい、バランスを崩しそうになる。

が、近くに居た清掃員が彼女を支えた。

 

「あ、申し訳ありません」

「本当にな」

 

清掃員の言葉を聞いた瞬間キャロラインの血の気が引いた。

 

「ど、ドラっち?」

「私達をほったらかして何をやっているんだキャル?」

 

キャルを支えた清掃員はなんとドラグノフだったのだ。

 

「あ、いや………これはその………」

 

ドラグノフを真正面から見ないキャル。

 

「おいそこのメイド!シャンパン持ってこい!」

 

ちょっと興奮気味の貴族がキャルを指名している。

 

「あ、はいただいま!」

 

ドラグノフの威圧を逃れる意味でもキャルは即座に対応しに行った。

 

「………ちっ」

「そんなに不機嫌になるなドラグノフ」

 

舌打ちしたドラグノフを嗜めるのは同じく清掃員の格好をしたヨシノだ。

 

「………それにしても招待された貴族、多すぎないか?」

「大中小に限らず片っ端からかき集めているそうだぞ。ここの伯爵は」

「ようは見栄っ張りか」

 

呆れるヨシノ。

 

「それを抜きにしてもモーデン軍の天使、レアが気になってここに来たということだがな」

「話を盛った可能性もあるがな」

 

そう言いながら作業に戻ろうとした。

 

「うひゃあっ!?」

「ガッハッハっ!良いではないかお嬢さん」

 

ちょっぴり太めのおじさん風貴族がキャルのお尻にセクハラしているのが見えた。

 

「………ヨシノ、これが終わったら次の仕事に入るぞ」

「死なない程度で頼むぞ」

 

やれやれとヨシノはドラグノフを押さえながら移動する。

本人に自覚があるかは知らないが、一部の住人達の間では『シスコン』に分類されている状態らしい。

 

それはともかく、キャルにセクハラしたおじさん風貴族は後にどうなったかは誰も知らない。

 

「む?どうやらメインイベントが始まりそうだな」

 

 

 

 

 

「会場にお集まりの皆様。我がアルゲートの屋敷へようこそ」

 

スポットライトに照らされたアルゲート伯爵がマイクを手に挨拶する。

 

「この度は我が息子の結婚披露宴に招待を受けていただきありがとうございます。皆様も知っての通り、世の中は戦争で満ち溢れている。それはもうとどまるところを知らないほどに。だが私はこの戦争に終止符を打つため、我が財力をモーデン軍に捧げ、正規軍を圧倒させるのだ。そしてこの婚約はモーデン軍となつながりを深めるための儀式である。皆様にお約束しましょう。我がアルゲート一族の栄光が不滅であると!」

 

アルゲート伯爵の演説に参加者たちがほとんど拍手を送る。

 

 

 

 

 

「とか言いながら実は俺たち以外みんなモーデン軍派の貴族ってのは知ってんだからな」

 

演説を聞いたターマが呆れた声を吐く。

 

「見せつけているんだろうな。俺たちに」

「そうね。さっきちらっと私達を見ながら笑ってたわよあいつ」

「………」

 

マルコも呆れたようにいい、エリは我関せずな態度でそっぽ向く。

フィオはなんとも言えない表情だ。

 

「さて、長い話は皆さんも飽きてしまうので手短に済ませましょう。では新郎新婦ご入来!」

 

アルゲート伯爵が言うとレッドカーペットの先にある大きな扉が開いた。

そして入場者たちは新郎新婦を見た。

 

まず新郎のレオンは白いタキシードに身を包み、周りの人たちの前では恥ずかしくないようキリッとした表情をするが、どこか緊張しているのか若干硬い。

 

そして本日の目玉である新婦のレアはというと、

 

厳選して選ばれた純白のウエディングドレスに身を包み、多少の化粧をしている。

表情はと言うと目を瞑っており、まるで本当に新婦らしさが窺える。

 

「「「「「「「「「「………………」」」」」」」」」」

 

会場にいる人たち全員が言葉を失っていた。

新郎新婦………否、レアの美しさと美貌に心を奪われていた。

 

「う………美しい………」

「こ、言葉にならないな」

「さ、さすがはアルゲート伯爵、とんでもないサプライズを提供してきたな」

 

これが普通の女性なら形式的な言葉を使うのだが、それすらを忘れるくらい魅了されていたのだ。

 

「「「「………………」」」」

 

マルコは愕然とした表情で、ターマはだらしない表情で、エリは射殺さんばかりの視線で、フィオは尊敬にも似た表情で、レアを見ていた。

 

「………はっ!ゴ、ゴホン!失礼しました。新郎新婦よ、こちらへ」

 

アルゲート伯爵もレアに目を奪われていたが、いち早く正気に戻り指示を出す。

新郎新婦は歩き出すが、その姿もまた美しかった。

 

「おお…やはり美しい」

「もし美の女神アフロディーテの生まれ変わりだと言われたら間違いなく納得する自信はあるな」

「確かに。ベアトリスとは比べものにならんでしょうな」

 

入場者達はレアを見て口々に言う中、本人はその気がなくともベアトリスにとっては屈辱的な言葉が放たれた。

特に自尊心の強いベアトリスはさっきの言葉が聞こえた瞬間レアに対してさらに強い怒りと憎しみの視線をレアにぶつける。

 

それでも怒りを表に出さないのは大好きな姉がそばにいることもだが、怒りを表に出せばそれは自分自身の敗北を認めてしまうからなのだ。

 

そうこうしているうちに、神父役の老人がやってきて結婚の儀式が始まる。

 

「では、新郎・レオン・アルゲート。汝は未来永劫彼女を愛し続けると誓いますか?」

「は、はい。誓います」

 

やっぱり緊張してたのか声が上ずっているようだ。

 

「新婦・レア・ドラゴニフ。汝は未来永劫彼を愛し続けると誓いますか?」

「………………」

 

レアはまるで人形のように何も喋らない。

 

「ははは、緊張のあまり声が出ないのですかな?」

 

そこにアルゲート伯爵が近く。

 

「まぁそれも無理もない。貴殿のような下民が我らロイヤルファミリーと婚約をかわすことに大きなプレッシャーを感じてることだろう。だが安心したまえ、この婚約をなせばお前達モーデン軍と我らアルゲート家の未来が訪れるのだから」

 

と言って何も語らないレアにその肩に触れようと––––––

 

「あの〜、それ私の偽物だけどあまりベタベタ触らないでくれませんか?」

 

どこからかレアの声が聞こえた。

 

「なっ!ど、どこからこえが!?」

 

アルゲート伯爵含め会場の人達も声の出所を探る。

 

「あ!あそこ!」

 

と、一人のメイド(キャロライン)が指を指した先に、豪華な手すりを椅子のように座っているレアを発見した。

しかも服装はモーデン軍の軍服だ。

 

「レ、レア・ドラゴニフ!?じゃあこれは!?」

 

アルゲート伯爵は驚愕の後ウエディングドレスのレアを見る。

すると偽のレアの目が開き、その目が光りあるホログラムが現れた。

 

『レア様、例の物は手に入りましたか?』

 

レアのパートナー且つ専属メイドのサクヤだ。

 

「うんバッチリ。ごめんね影武者みたいな方やらせて」

『すべてはレア様の為に、です』

 

ホログラムのサクヤはお辞儀をする。

 

「か、影武者だと!?な、なぜこのようなことを!?」

「それは僕が説明いたします」

 

レアからブツを受け取ったレオンが前に出てきた。

アルゲート伯爵は一瞬唖然とするが、即座に状況を把握した。

 

「レオン!貴様、私を裏切ったのか!!」

「はい。僕は彼女と協力してクーデターを起こそうと計画しました」

 

怒りをあらわにするアルゲート伯爵に対しレオンは冷静に返した。

 

「クーデターだと!?貴様、裏切るのみならず何を考えて………」

「その答えはこれが物語らせてくれます」

 

そう言ってレオンは黒い手帳のようなものを見せつけた。

それを見たアルゲート伯爵は驚愕と同時に大量の汗が流れる。

 

「ど、どうやってそれを!?」

「私宝探しと鍵開けの天才ですから」

 

そう言ってピッキングツールを見せびらかすレア。

 

「彼女の実力を知った僕はこのクーデター計画を話しました。そして利害の一致でこの手帳を手に入れることができました。あなたが影で何をやっていたかを記録するこの手帳を!」

 

このままではまずいと判断したアルゲート伯爵は孫を止めようとしたが、両サイドから誰かに掴まれて動けなかった。

正規軍のマルコとターマだ。

 

「息子さんも交えて詳しく聞かせてもらおうかな。アルゲート伯爵」

「わ、私は………」

「おっと、今更何しようとあんたは逃げられねーよ。状況が変わったと言え俺たちを呼んだのは失敗だったようだな」

 

もはや抵抗手段がなくなったアルゲート伯爵はがくりと項垂れた。

 

 

 

 

 

その後、

 

「協力に感謝する。今までのらりくらりとかわされたが、君たちのおかげで彼を捕らえることができた」

「いえ、彼女の実力がなければ到底できない物ですし。実施活躍したのは彼女ですから」

 

正規軍元帥ブレイブとアルゲート伯爵………もとい元伯爵の孫・レオンが対話している。

 

「しかし、なぜクーデターを起こそうと考えたんだ?やはり彼の………」

「それもありますが、いちばんの理由は民のために貢献し続けることだと思うんです。お爺様のように自分のためじゃない相手のことを考えることこそが貴族の義務なのかと」

「なるほど」

「それに………」

 

レオンはチラッとしつこく絡んでくるベアトリスに多少押さえ込んでいるレアを見つめる。

 

「………惚れたのか?」

「はい!」

 

ブレイブの問いに間髪を入れずに即答した。

 

「………ベアトリスのことは?」

「好みではないので別にとしか言えません」

 

ブレイブはなんとも言えない表情をした。

 

「…まぁいい。君は長くて数日で釈放されるが」

「ご安心を、僕を一番に信頼している人たちが待っていますので」

「そうか」

 

ブレイブはそれ以上言わなかった。

 

(レアさん。今しばらくお別れですが、機会があったらまた会いに行きます)

 

そう心の中で思い人を思い続けるレオンだった。

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