メタルスラッグ〜女モーデン兵の転生記〜   作:只の暇人

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物の価値に嘘つくと詐欺となる

「クックックッ!いい商売だったぜ」

 

とある店の蝋燭の明かりのみの部屋で男は人知れず笑みを浮かべていた。

 

「でっかい組織の幹部となればいい金周りを持ってるってのは当たりだったみたいだな。あのガキンチョに感謝しねーとな」

 

男が思い返すのはあのピンク頭の偉そうなガキンチョだ。

1番いいリボンはないかと尋ねられ、ちょうど売りに出そうとした新作を高額で売りつけたのだから男は大満足だ。

 

そう、男は贋作販売者なのだ。

 

「さて、次はどんな商売を………ん?」

 

贋作店主が次の商売をしようとしたら、上が何やら騒がしい。

もし商売を邪魔するクレーマーならば影で雇ったゴロツキをけしかけ、さらに金を踏んだくるつもりだ。

 

まずはどんなクレーマーなのか気になったので仕掛けておいた盗聴器を使ってみる。

 

『くそっ!といつもこいつもみんな偽物ばっかじゃねーか!』

『こんなガラスに色つけただけのこれが宝石だなんて。レアちゃんに指摘されなきゃ分かんなかったな』

『思い出したら腹立ってきた。ぶっ壊してやる!』

 

男達の怒号と破壊音が聞こえる。

どうやら騙された奴らが偽物に気付いてここに乗り込んできたようだ。

 

『あんた達!このあたしに偽物を売りつけたあのクズ店主を見つけなさい!あたしが直々にお仕置きしてやるんだから!』

 

女の子の声が聞こえる。

前に騙したあの偉そうなガキンチョの声に似ていた。

 

(いくらなんでも気付くのが早すぎないか?聞く限りそのレアって奴が俺様の贋作を見抜いたみたいだが…)

 

贋作店主は注意深く聞き耳を立てると、さっきからコンコンッと何度も地面を叩く音が聞こえる。

男達の足音よりも鮮明に聞こえるのだが。

 

『ちょっとレア。あなたさっきから何やってるの?』

 

偉そうなガキンチョの言葉にレアという名前が聞こえた。

 

『これは地下があるかないかを調べているんです』

 

ガキンチョとは違う女の声だ。

きっとそのレアって奴だろう。

 

『あれほどの精巧な偽物を作るには人間の手では再現できません。間違いなく機械を使用している可能性があります。音を鳴らさない機械もありますが、たとえ音がなくとも大型の機械を二階に置く事はまず無理です。したがって残る選択は音があまり響かず人目につかない場所………すなわち地下室が偽物製造の隠し場所なんです』

 

…なんてこった。レアって女は見破るだけでなくかなり高い洞察力がある。

 

今まで依頼された探偵どもは全員この工房現場である地下までは辿りつかなかったのに贋作店主の宝石を調べただけでたどり着いた。

 

本格的に不味いと判断した贋作店主は用心棒に連絡しようと思った。

 

『まぁ勿論偽物を作ってるわけですし。私以外の誰かも気付いて講義に来たと思うんです。ですが向こうは対策済みなのか用心棒を雇っていたようですね』

『ああ、レアが半殺しにしたあの筋肉ハゲダルマのこと?』

 

筋肉ハゲダルマと聞いて雇った用心棒を思い浮かべた贋作店主。

 

『相手が悪かったですね。そこらへんのゴロツキとモーデン軍の一兵士じゃレベルが違います』

『じゃああのクズ店主に教えてあげなさいな。あたし達モーデン軍に逆らった者の末路がどうなるのか………ね』

 

贋作店主は本能的に悟った。

あの偉そうなガキンチョはモーデン軍の一員だったのだ。

 

モーデン軍に逆らった者はたとえ何者だろうと容赦はしない。

 

贋作店主はリュックに今まで騙し取った金をできるだけ詰めて入れ、逃走を試みた。

こうなれば正規軍の領域内に逃げ込んでやり過ごすしかないと考えた贋作店主はいつも使っている地下の出入り口とは別のルートを通った。

緊急時のための脱出口だ。

 

そこを通って外へと通じる出入り口を開けると………

 

「あれだけ偽物の資金を稼いだのなら緊急時の脱出ルートを確保するのは必然というわけですね」

「ほんと、レアの手にかかればみんな赤子の手をひねる程度なのね」

 

座り込んでこちらを眺める女性と呆れた偉そうなガキンチョとモーデン軍の兵士たちに囲まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

「………というわけでして、図らずも軍資金がまた潤ったわけなんです」

「ふーん………その贋作販売者は?」

「被害に遭われた人達にボコボコにされた後イザベラさんが可愛がってます」

「ふっ、いい判断ね。モーデン軍に手を出した報いは彼女が適任だもの」

 

アビゲイルさんは不敵に笑った。

モーデン軍の監獄官を務める彼女ならばモーデン軍がなんたるかを叩き込むのに最適なのだ。

たまにお気に入り相手についついサービスをしてしまうのがご愛嬌だが。

 

「あ、そのイザベラさんに呼ばれてたんでした」

 

そう言って席を立ったレアの手に大きめの鞄があった。

 

「それは何かしら?」

「イザベラさんから1番いい拷問用具が欲しいと頼まれまして、私はお使いと相談を受け持ったんです」

「相談?」

「ファーストコンタクトの時、獲物を見る目で私と話し合っていたら拷問話で意気投合していまや副監獄官に任命されまして」

「副監獄官」

「体験で囚人を一人懲罰していたら「あなたこの監獄の間だけ拷問長になりなさい!」と言われました。私はただ懲罰用の鞭で二百回叩いた後だらしない顔をした囚人の股間を叩き潰しただけなのですが」

「………………」

 

アビゲイルは思った。「また二つ名がつきそうね」と。

 

そしてアビゲイルの予想通り、レアに『地獄の拷問女帝』の二つ名が広まった。

 

「『地獄の拷問女帝』って、特に大それたことはしてませんよ。電気鰻の電気風呂や3方位からの袋叩きとかヌルヌル触手風呂とかよく耐久を鍛える師匠から受けましたからね。それを参考にちょっとアレンジを加えてやらせただけなんです。勿論もう一つありまして、囚人達をビビらせるためにブラックバグというある虫をベースにした玩具ロボットを用意したのですが、イザベラさんが「やめろ」とすごい形相で拒否られまして現在秘密倉庫に封印されています」

 

とレアの弁明。

 

なおブラックバグと言う玩具はその正体を口にするのは恐ろしい“アレ”だったのでレアの悪名はさらに拍車をかけていたと言う。




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