メタルスラッグ〜女モーデン兵の転生記〜   作:只の暇人

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女が三人寄れば姦しいというけど全くそんな気配はない

「はぁぁ〜〜〜………」

 

私が曹長にされてからもう忙しい毎日だ。

来る日も来る日も訓練、雑務、状況確認!

これじゃおちおち寝られない気分になる!

………たまに出てくるモーデンプリンなる甘いお菓子が私の至福なのだ。

 

「………平穏が欲しいなぁ」

 

と、私の部隊のいる訓練場へ向かっていると、ひとりのモーデン兵と桃色の長髪女性を見かけた。

 

「…あ、噂をすれば彼女が現れました」

 

あんな人いたかな?と私が思考の中で耽っているとモーデン兵が目ざとく私を見つけ対話していた女性は振り返る。

 

…綺麗な人だ。世辞ではなく、なんというかキャリアウーマンというか………元帥閣下とはまた違ったカリスマ性を兼ね備えている感じがする。

父親の訓練の影響かその手の見切りが上手になったな私。

 

「………あなたが最近噂のレア・ドラゴニフ一等兵………いや、曹長だったかしら?」

「はい、私がレア・ドラゴニフですが…。失礼ですけどあなたは?」

 

私が尋ねると女性は若干呆れた顔をしている。

 

「ど、ドラゴニフ曹長!この方はモーデン元帥閣下の右腕にしてレーザー兵器のスペシャリストのアビゲイル士官であります!」

 

モーデン兵の説明で私はあぁ…と口にするしかできなかった。

 

私が入隊する前に正規軍の基地を三つも襲撃し、全て完全勝利を収めた女の人がいるって。

なるほど、彼女がそのアビゲイルさんですか。

 

「…で、そのモーデン軍の参謀様が私に何様なのでしょうか?」

 

おそらくいつも同僚が期待の新人云々で私を視察しに来たのだろう。

一番活躍した人材は我が手に………なんて輩は多いからね。

 

「ちょっとそこのあなた!お姉さまに対してなんなのその態度は!?」

 

と私に指差して怒鳴りつける桃髪のショートボブの少女。

なんとなくアビゲイルさんと縁がある人のようだ。

 

「…ベティ、報告書は全て片付いたの?」

「抜かりありませんわお姉様」

 

私の時とは打って変わってまるで可愛い妹のような話し方をする少女。

 

「え〜と………モブ君説明」

「え?あ、はい。こちらはアビゲイル士官の妹君のベアトリス様です。我々の間では『氷結の姫君』と呼ばれています」

 

モブ兵士の説明を聞いてたベアトリスなる少女はふふんと威張るような態度をとる。

それがなければ私の中で『生意気なクソガキ』と認識されずに済んだのに………。

 

「説明ありがとうモブ君」

「ありがとうございます。ちなみに自分はモブ郎三等兵であります」

「なんだそのモブ感強調したネーミング」

 

このモーデン兵の名前に思わずツッコミを入れてしまった。

 

「…こっほん。ではこちらの話に戻ってくださらない?」

 

ベアトリスが割って入ってきた。

 

「………話なんてありましたっけ?」

「あ・な・た・のその態度の話よ!」

 

などというがなんのこっちゃとしか感じなかった。

 

「あなた!お姉さまに対してその軽い返事!それに舐めきったようなその態度!不敬だわ。不敬罪だわ!」

 

ようは私がアビゲイルさんに対する態度が気に入らないらしい。

とんだシスコン妹をお持ちのようで。

 

「………ベティ、話が進まないからあなたは下がってなさい」

「でもお姉様………………わかったわ」

 

ベアトリスは姉に抗議しようとするが、睨まれて仕方なく譲った。

姉には逆らえないって感じかな?

 

「…妹が失礼したわね」

「そうですね。お姉ちゃんが大好きな妹ってのは大抵あんな感じですし気にしてませんよ」

「!あなた…!」

「ベティ?」

「…ごめんなさい」

 

私の話にまた妹さんが噛み付こうとするが、姉に睨まれ引き下がる。

 

「え〜っと、結局私の下見に来たのでしょうか?」

「それもあるけど、あなたにやって欲しいことがあるから訪ねに来た次第よ」

 

やって欲しいこと?

 

「近いうち正規軍基地の一つを襲撃する計画があるのだけど、その任務にあなたも同行してもらうわ」

 

その言葉に私は唖然とし、モブ君は顎が外れたようにあんぐりと口を開き、ベアトリスは前もって知っていたみたいだがちょっと不機嫌そうだ。

 

彼女一人でも基地一つ落とせそうなものなのに私に同行させるということは噂の人材がどれほどのものか見極めるつもりなのだろう。

 

「能力把握ですか」

「あら?意外と頭が切れるのね。そうよ。あなたが噂通りの存在かどうかこの作戦でわかるわ」

「私の父が元軍人だそうですからその手の話はわかるんですよ。………もっとも私からすればスパルタクソ親父なんですけど…」

「あなたの父親について気になるところだけど、まぁそれはいいわ。一五:〇〇時にヘリポートへ集合よ。遅れたら閣下への反逆罪として処分する」

 

遅刻しただけで殺されるのはあんまりじゃない?

どうもいろいろ厳しい人だな。

………うん?

 

「モブ君、今何時だっけ?」

「一四:五◯であります」

「10分!?」

 

ちょっとまて!ここからヘリポートまで約7分といろいろな下準備も含めて…

 

「そういうわけだからあなたの活躍期待しているわ」

「遺書を残す作業だけなら許してあげるわよ」

「………ワカリマシタ。ツツシンデオウケイタシマス」

 

“強制参加”に私は自分の人生って呪われているのかなと心の奥で号泣した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フランス 正規軍基地『ラドレェ』

 

正面を除いて四方を岩山に囲まれた大きな補給基地。

私たちはアビゲイルさんと妹のベアトリスの指揮下の元この基地を攻略することになった。

 

「…とまではいいんですよ。でもね…」

 

私はこの状況に叫ぶ。

 

「私一人で基地を攻略しろって無理があるでしょうが!!」

「何いってるのあなた?お姉さまからいただいた命令は絶対なの。あなたの実力を見込んでの作戦なんだから確実に決めなさい」

 

などと後ろに控えていた黒子二人からジュースを受け取り愉快そうに飲むベアトリス。

 

「過大評価ですよ!私は単なる一兵士にすぎません!精々父から丸太100本分による耐久訓練と落ちたら食人魚に食べられる川を五百メートル走ったり肺活量アップ訓練と称して1分以上水中素潜りを千回繰り返しただけですから!」

「今さらっととんでもないこといった気がするんだけどあなた大丈夫なの?」

 

私の日々の訓練内容にベアトリスは同情の眼差しを向ける。

 

「まあいいわ。あなたの実力を見せてちょうだい。ちなみに私含めてお姉さまもあなたを見ているから逃げ出したら死ぬわよ」

「退路もなしですかそうですか」

 

私はがくりとうなだれる。

もう決まったものは仕方ないのでとりあえず状況確認する。

 

「…で、私が相手する敵の編成は誰か知ってる?」

 

承諾と受け取ったベアトリスはパチンと指を鳴らすと黒子の一体が一つの紙を差し出す。

そして私がその紙を読む。

 

「…諜報員も兼ねているんですか?」

「自分たちは違います」

 

私の質問に黒子は否定する。

私はもう一度資料を見る。

 

『歩兵 二百

砲撃兵 二十

戦車 五』

 

意外と数は少なめだ。

が、数が少ないとは少なくとも拠点の防衛に自信があるということだ。

前方を除いて四方は岩山に囲まれヘリ以外は近づけない。

近づいても対空長距離砲撃機『ネオストロング砲』が全て撃ち落としてしまうからだ。

だからといって正面から攻めれば対戦車砲が一本道にいる戦車や兵士達をなぎ倒してしまう。

まさに『鉄壁の城』と比喩される拠点というべきだろう。

 

「増援の可能性は?」

「ないと思われます」

「え?こっちに凄腕参謀がいるのに?」

「斥候が盗み聞きした話ではたとえアビゲイル様が現れようとこの鉄壁の城は手に入れられまいと余裕ぶっているみたいで」

「うわ〜、完全に舐めすぎでしょう?」

「全く同感ね」

 

ベアトリスに同感されるとは…。

とはいえアビゲイルさんはなんの作戦もなくここを攻略はしない。

仮に私が失敗したからって次のプランを考えているような人だからね。

 

「私がいようといなくともアビゲイルさんならすぐに片付きそうなのは目に浮かびます」

「当然でしょ?なんたってお姉様なんだから」

 

妹も姉の実力を高く評価しているようだ。

 

とにかく私は手持ちの道具を確認する。

 

コンバットナイフ2つ、手榴弾4つ、自作の爆弾3つ、少々の小道具。

 

これらでできることは………

 

「ん?」

 

私はふと遠くの草むらを見る。

 

「どうしたのよ?」

「向こうから正規軍兵士が10人」

「は?見えないじゃないの!」

 

私の視線にベアトリスも見るが、彼女からすればよく見えない。

なにせ私は視力と気配察知の訓練をさせられたからね。

 

「お嬢!10人かどうかわかりませんが正規軍を発見しました!」

 

双眼鏡で見た黒子が報告する。

 

「マジ?あなた目がいいのね?」

「それは父に………もうこのフレーズいいや」

 

私はコンバットナイフを用意して準備に取り掛かる。

 

「では不詳レア・ドラゴニフはこれからアビゲイルさんを驚かせに参ります」

「へ?なにを…」

 

ベアトリスが言い切る前に私は駆け出す。

平穏が遠のくな〜と思いながらも私は再び戦場を駆けるのだ。

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