→しょうが無い、課金して触媒も準備するか
→えぇもう来たんだけど…この小説どうすんねん、って感じの小説です。
体を引っ張られるような感覚がして意識が覚醒した。
自分の身体がエーテルで形作られているという、永い生の中でも味わったことの無い違和感を経験しながら、今の状況を判断する。
(なるほど。コレが座からの召喚というものなのか。とても……とても不愉快だ。)
頭の中に私のサーヴァントとしてのステータスと必要な知識が流れ込んでくる。
くだらないと内心で吐き捨て、その一方で、心底人間と関わりたくないと思いながら、結局の所こうして召還に応じてしまった私の心はもう定まっているでは無いかと我ながら呆れてしまう。
本来であれば、人間を害することはあろうとも、人理の守護者になんてなるはずも無かった。
人間は嫌いだ。定命でありながら永遠の愛などと嘯き、脆い身体を持ちながらくだらないことで争う。他人からの評価に敏感で有りながら、他人から受けた恩はすぐに忘れる。
こんなくだらない生き物の配下に置かれるなど、天地がひっくり返ってもありえない。もちろん数百年に一度くらいはまともな人間も出てくるが、彼らは私を対等に見ることはあっても、配下にしようなどとはしなかった。
そのようなことを言ってくるような人間には近づかないようにしていたし。
人間の命令を聞くなんて、まっぴらゴメンだ。
それでも。あぁそれでも。
頭の中に浮かぶのは、垓下の戦いと中国異聞帯での最期の彼の姿。
二度もあの方との別れを味わうことになり、自棄になった末に更に憎んだ人間に敗北した私は、始皇帝によって差し出された甘い言葉に惑わされてしまった。
否。あれは毒であった。時間が経てば経つほどその事しか考えられなくなる毒だ。
『抑止の守護者になれば彼と再会できるかも知れない』
あぁ。あぁ!これ以上私に効く毒があろうか。確かにあの皇帝の言葉も一理ある話ではある。
というか正論なのだ。自分の手で彼をつなぎ止めることに失敗した私は、恥を忍び、苦渋を舐めながらだとしても、同じ聖杯戦争に喚ばれるという奇跡にかけるしかないのだろう。
ぐちぐち言ってても始まらない。決意を新たにしようじゃないか。
私の求めるもの、我の望みを叶える手段がもうそこにしか無いというのなら。
呪い、憎んだ人間の下であっても堪えて見せよう。
身体の形成が終わる。
エネルギーが収束し、虹色の光が収まる。私を召還したのはどのような魔術師だろうか。
私を喚んだということは、生半可な触媒では無いはず。…もしかしたら
大きな不安と一抹の期待を胸に顔を上げると、そこには平々凡々とした黒髪の東洋系の少年が、そしてその傍らにはその身と同じほどの大きさの盾をこちらに向けた紫髪の少女がいた。
『
以前カルデアの職員だったときにちらりと見たことがあるのだが、マスターに反抗的なサーヴァントが現れたときは、強制的に退去させられることもあるらしい。
私を召還するような滅茶苦茶なカルデアなのだから、もしかしたら既に彼が来ているかも知れない。そのチャンスを一時の感情に身を任せて逃してしまうのも得策では無いだろう。
「…嘘でしょ。ほんっと最悪ね…」
小さく呟いた。確かにあの異聞帯で縁は結ばれたのかも知れないが、いや、悪い冗談でしかない。
とりあえず。うん。こちらを見たままポカンとしてアホづらを晒している彼らに、呪詛の代わりに皮肉でも浴びせておきましょうか。
「サーヴァント。アサシン。契約に応じてあげるわ。それにしても、よりにもよって私を召還するなんて、随分とご立派な神経をお持ちのようね?」
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この日、藤丸立香は率直に言って浮ついていた。
カルデアという場所に来て数日が経ったが、正直ここまで良いことなど何も無かったから。
訪れた初日に爆破テロに巻き込まれそのまま過去の日本にタイムスリップ。しかもその都市も煌々と燃えさかっていて、人も一人もおらず、やっと出会えたと思ったら過去の英雄とかいう神話の登場人物が襲って来るし。そいつらをマシュと仲間になったクー・フーリンの力で乗り切ったら、今度は黒くて怖い剣士や、テロの元凶が身内だと判明したり、所長を守りきれなかったり…。
カルデアに帰ってきた後も、メディカルチェックやこれからについての説明の連続。カルデアの案内などを受けるうちにいつの間にか、疲れが溜まっていた。
また、自分が『人類最後の砦』であることの自覚と重みがのしかかっていたこともあるだろう。
だからこそ、ロマンの「第一特異点攻略に乗り出すのはまだ先になりそうだけど連携の確認とかもあるだろうし、立香くんも英霊召還しようか」という言葉に心ウキウキわくわくだったのだ。
規定の時間近くになり、呼びに来たマシュと一緒に召還室へ向かう。
召還にはマシュの盾が必要らしい。それに、ロマンの話だと、必ずしもこちらに協力的な英霊が召還されるわけでは無いから護衛がいた方が良いとのこと。
「なんでじゃ…こんな危機なんじゃけぇ、皆で協力せないかんじゃろぉ…」と心の中のゲンも言っているが、その可能性が少しでも考えられるので、いざというときに戦えるマシュを近くに置いておく方が良いのである。
あと共にレイシフトする数少ない仲間には、俺とマシュ揃って挨拶しときたいしね!
「先輩、どんな方が呼びかけに応じてくださるか、楽しみですね!」
「うん。冬木のクー・フーリンみたいに協力的だと良いんだけどね…」
思い出すのは冬木で共に戦った頼れる魔術師。十分な経験と技量を併せ持ちながらも、気さくにこちらを導いてくれる人だった。俺とマシュという初心者コンビがあの厳しい戦いを乗り切ることができたのも、ひとえに彼がいてくれたからだ。
彼はケルト神話という一つの神話体系のトップであり、そんな破格のサーヴァントがこんなへっぽこマスターに召還されるはずも無いのだが、どうしても期待してしまう。
召還にあたって見た資料によると、呼び出されるサーヴァントは彼らゆかりの聖遺物などの触媒を準備すれば、ある程度狙った人物を引けるそうだ。
そして、「縁」も立派な触媒になるそうで…。
「もしクー・フーリンじゃなくっても、優しい人が良いなぁ」
あれやこれやと歴史上の人物に思いを巡らせているうちに、召還室に着いた。
待ち受けていたのは現カルデア最高責任者のDr.ロマン。いつもどおり人懐っこい笑顔を浮かべているが、少し緊張が見え隠れしている。
「おはよう立香くん。よく眠れたかい?」
「おはようございますDr.ロマン。いやぁ、どんな英霊が来てくれるのかと思うと楽しみすぎて、あまり寝付けませんでした」
笑いながらそう告げると、目を少し丸くした後「大物だなぁ」と呟いていた。
だってそうじゃない?歴史上の人物に会えるってすごいことだと思うんですよ。織田信長に戦国時代の話を聞けるかも知れないし、坂本龍馬と話せるかもしれない。クー・フーリンやその師匠から魔術を教えて貰えるかも知れないってだけで、興奮してくるじゃないですか!
「あはは。うん、そうだね。それでこそ立香くんだ。きっと君の呼びかけに答えてくれる英霊は、君と相性の良い、優しくて勇気があって、明るい人物な気がしてきたよ」
そんな人が来てくれれば、上手くやっていけるだろうな、と思う。
これからの長い旅路を共にする仲間だ。相性が良いに越したことは無い。
「さて、それじゃあ早速だが始めようか。この石を召還サークルの真ん中に置いてくれるかい?」
渡されたのは虹色のモヤットボールみたいな石だった。聞くと聖晶石というらしく、この力を使って召還するらしい。詳しいことはよく分からない。
この石は冬木で倒した敵が落とした物で、今は3つしか無いけど、今後もっと増えれば召還を何回も行えるそうだ。頑張って集めないとね。
マシュの盾をセットし、その上に石を3つ置く。シンと静まりかえった部屋に、詠唱が響き始める。
「ーーーーーーーーーーーー」
言葉を重ねるうちに、召還サークルに光が集まっていく。最初白く曖昧だった光は、だんだんと虹色に変わり、バチバチと音を立てて収束していく。
「抑止の輪より来たれ。天秤の守り手よ!」
詠唱の終了と同時に一際大きい音が鳴り、部屋に溢れるまばゆい光に思わず目をつむる。
うっすらと目を開けると、先ほどまで聖晶石が置いてあったところには一人の人影があった。
隣のマシュが身を固くしたのが分かる。ロマンも警戒を露わにした表情だ。
光が収まったところで、やっと視認することができた先には、現代風の装いに身を包んだ一人の女性がいた。
(美人さんだなぁ…)
そんなことを思っていると、彼女は何やら呟いた後、キッとこちらを睨み付けて口を開いた。
「サーヴァント。アサシン。契約に応じてあげるわ。それにしても、よりにもよって私を召還するなんて、随分とご立派な神経をお持ちのようね?」
…何やら不機嫌なご様子だ。なにか失礼をしてしまった覚えも無いのだけれど。
と、とりあえずマシュもロマンも固まってるし、俺が代表して挨拶しないと…。
「えっと…初めまして!今回は召還に応じてもらってありがとうございます。これから一緒に人理修復、頑張っていきましょうね!」
「………………………なにそれ?」
え?
彼女はこちらがさしだした手を無視して固まると、部屋にいるマシュやロマン、さらには召還室の様子をキョロキョロと見回し。
たっぷり1分くらい固まり。
顔をサーッと青くして。
「………………………なによこれ………」
と諦めた表情で呟いていた。
項羽引けるまで書こうかと思います。