そんなカルデアもあるよねって話   作:しましょー

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ちょっとオリ設定入ります












白と黒

「クククッ……アハハハハ!」

 

 

()()()()()()、こちら側のジャンヌと瓜二つの彼女をそう呼ぶことにするが、彼女は白ジャンヌを見て腹を抱えながら笑った。

 

彼女の傍らには仮面の女、槍を持った戦士、杖を持った聖職者、中性的な騎士が控えている。

 

ジャンヌ同士で揉めているが、なんか姿形が同じ奴らが言い合っていても、双子の喧嘩にしか見えない。内容も姉妹喧嘩みたいなもんでしょ。

 

 

 

 

 

そんなことより、向こう側のサーヴァントからあまりに濃すぎる血の匂いが漂ってくるのが問題だ。

 

これはただ殺しただけの量じゃない。明らかに自分から血を求めた末の結果。

 

血を見るのが好きなシリアルキラーなのか……もしくは、()()()なのか。

 

別に前者なら何も問題ない。後者なら…まぁそっちでも別にまぁ問題は無いけれど。

 

少しだけ、容赦がなくなるだけだ。

 

 

 

『吸血鬼』

 

死徒や真祖と総称される彼らは、他人の血をエネルギー源として活動している者を指す。

私も真祖と呼ばれることはあるが、それは一部の人間共が勝手に呼称しているだけだ。死徒共が生きるために人間の血を必要とするのに対し、別に血を必要としていない。

 

 

私は精霊だから、血に限らず周囲の大気や生命からエナジードレインを行なうことができる。

その中でも吸収効率が段違いに高く、手っ取り早い吸血は、サーヴァントとしてのスキルに昇華されるほどの手段ではあるのだが。

まぁ単にそこまで切羽詰まった状況に陥ったことが無いので、ほとんどしたことが無い。

 

 

 

にも関わらず、聖堂教会の節穴共は私のことを吸血鬼呼ばわりして、何度も代行者をけしかけてきたのだ。

しつこいし、洒落にならない強さだったしで、非常に相手するのに疲れた覚えがある。

 

 

()()()()()()()()()()()()。聖堂教会の次に嫌い。

 

 

 

さて。あいつらがシリアルキラーか吸血鬼なのかだが…。

 

残念ながら両方だったわ…。

 

 

「私は若い少女の血を浴びることができればそれでいいの」

 

「では私は彼女たちの魂を頂こう!」

 

 

「エリザベート・バートリー」「ヴラド三世」と名乗る2人は、そんなことを言いながらこちらに攻撃を加えてきた。血も魂もお前らに与えるつもりは無いわよ。私の全ては項羽様の物……って何言わせんのよ!

 

 

思わず浮かんだ恥ずかしい言葉は、頭を振って外に追いやり、マシュや白ジャンヌの隣に並び立った。

契約した以上は、マスターの命くらいは守ってやらないとね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かくして特異点最初のサーヴァント戦が幕を開けた。

 

 

若い少女の血を欲していたカーミラは、まっすぐジャンヌとマシュに向かっていった。なんだろう、私は若くないとでも言いたいのだろうか。しょうがないので私がヴラド三世を相手取る。

 

女性領主だったカーミラはともかく、武人として名を残したヴラド三世はなかなかの強敵だ。

 

こちらの操る剣は手に持つ槍で弾かれ、即座に反撃が飛んでくる。片手の剣で受け止められる重さではなく、必然的に二刀で防御せざるを得ない。その隙に相手は崩れた体勢を立て直す。

 

仕切り直そうと距離を取ると、地面から生えてきた杭が足を串刺しにしようとする。さらに後ろに下がることで回避する。

 

私も遠距離から剣を飛ばすが、巧みな槍裁きで対処されてしまう。

 

()()()()()()()。俗に言う膠着状態に陥っていた。

 

 

 

「ふむ…型のような舞のような…。奇怪な剣技をつかう女だな」

 

幾度か剣と槍を打ち交した後、互いの隙を伺いながら口を開く。

 

 

「そちらは狂化がかかっているとは思えない正確な槍裁きね」

 

 

「ふん。戦闘など数えきれぬほどこなしてきた。理性が外れようが、狂っていようが、最早この身体は勝手に動くようにできている」

 

 

「はぁ…。身体に染みつくほどの戦いなんて…。そこまでして得たかった物があったのかしら。逸話に恥じぬ強欲さよね、吸血鬼(ドラキュラ)伯爵?」

 

 

ヴラド三世と言えば、小説『ドラキュラ』のモデル。

以前読んだことのあるので、話を振ってみただけなのだが、その名を告げた途端、彼の魔力が膨れあがった。

 

「違うな。我は何かを得たかったのではなく、国を守りたかったのだ…!そしてその名を呼ぶな女よ。我を…我をその名で呼ぶことは許されぬ…!」

 

……なるほど。地雷を踏んでしまったかしら。

目は真っ赤に血走り、怒髪天をつくように槍を構えた彼は、私を是が非でも殺すという殺意にまみれている。

 

もう私しか眼中に無いかのような勢いで突撃してくる彼は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぬぅっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

背後から飛来した剣に右肩を貫かれることで、私との距離を残したまま停止した。

 

 

「ごめんなさいね。わざと怒らせて隙を作るなんて卑怯な手使っちゃって。でも許してちょうだい?私別に高貴な武人ってわけじゃないの」

 

 

「ぐっ…。だが、いつの間に、剣を投げていた?話している間も、そして今も、お前は二つの剣を手放していない!」

 

 

右肩を抑え蹲りながら叫ぶヴラド三世に、「そうね。新たに剣を具現化しただけよ」と身の回りに何本もの剣を生み出しながら告げる。

 

 

精霊には『空想具現化(マーブル・ファンタズム)』と言う能力がある。

自然に干渉し、思い通りに改変する力とでも言おうか。もちろん様々な制約はあるが、とりあえず手に持つ剣と同じ物を任意の場所に生み出すことくらいは簡単にできる。

 

そして、その剣を魔力で操れば、今みたいな状況を作れるというわけだ。

 

今回は、彼が怒りで我を忘れていたことで魔力に気づけなかったことが致命的な隙だった。

さっきまでであればこう上手くはいかないだろう。

 

 

「女…貴様、何者だ?」

 

 

「普通のサーヴァントよ。あそこのアホ面マスターのね」

 

 

向こうを見れば、なんとかカーミラを退けたようで、安堵の表情でサーヴァントの治癒をする藤丸の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無事に合流した後、藤丸が虞美人さん無事で良かったです~とか喜んでいる間に、向こうの陣営は敗れた2人に厳しい言葉をぶつけていた。

 

 

「バーサーク・ランサー。バーサーク・アサシン。全く、何をしているのかしら。失望したわ」

 

 

黒ジャンヌはそう吐き捨てて、残りの配下と共にこちらに向かってくる。

 

…正直厳しいかもしれない。私はまだ大丈夫だが、マシュと白ジャンヌは肩で息をしている。

まだ無傷の3人だけでなく、先ほどの2人も回復したら加わってくるだろう。そうなってしまったら、脱落者が出るのは免れない。

 

 

宝具を使わざるを得ないか…と考えていた、そんな時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ものすごい勢いで白い馬車が黒ジャンヌ達のワイバーンを吹き飛ばし、

 

 

「ヴィヴ・ラ・フランス!ヒーローは遅れて登場するものなのよね?あってるかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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マリー・アントワネットとヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト。我々の窮地を救ったのは、特異点に召喚されていた"野良サーヴァント"の2人だ。

 

 

彼らは自分の紹介を済ませた後、自分たちにもフランスを守らせてほしいと協力を名乗り出て、藤丸もそれに応じたため、今後は彼らも共に行動することに。

 

 

2人が仲間に加わり、安堵したのも束の間。追っ手であるバーサーク・ライダー、マルタと交戦。これを消滅させる。

 

 

彼女は狂化をかけられながらも理性を保っており、こちらが信頼に足る相手かどうか確かめに来たらしい。流石は祈りで竜を屈服させた轍の聖女である。

私自身、宗教関係者にはあまり良い思いは抱いていないのだが、ジャンヌもマルタも、希有なほどに善良な人間であるというのは伝わった。

 

 

 

 

黒ジャンヌを打倒するために必要な"竜殺し"がリヨンに居ることをマルタから教えてもらった我々は、明日の目的地をリヨンに定めた後、キャンプで休息を取っていた。

 

簡易的なテントを張り、人間である藤丸の睡眠の場を作る。

 

その間、睡眠の必要のない我々サーヴァントが、当番制で見張りをすることになった。

 

 

 

 

 

 

 

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建物の中ではなく、森の中で夜を過ごすという経験は、生まれたときから高貴な生活をしていたマリーにとって初めての経験である。

そのため、サーヴァントとなったことで初めて訪れたこの状況に、彼女は楽しみを感じていた。

 

(どうしましょう。ちょっとお散歩してみようかしら。)

 

そう思い、霊体化を解く。

アマデウスも誘おうと思ったが、どうやら近くには居ないようだ。気配を探ってみると、向こうの方でマシュと話しているらしい。

 

風変わりな音楽家と一緒に居るマシュがちょっとだけ心配になったが、彼は女性と二人っきりの時すごくロマンチストな紳士になる。そのことを知っているマリーはそのままにしておくことにした。

 

 

一人でこっそり探検するのも楽しいだろう。だけど、今はそんな気分じゃないのだ。そう思い、一人で見張りをしているはずの()()のもとに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「虞美人さん?どこにいらっしゃって?」

 

 

霊体化して辺りの警戒をしていた私は、その声に姿を現した。近づいてくる気配には気づいていたが、私に用だとは思わなかった。何だろうか。

 

 

「まぁ!ふふっ、霊体化していたのね!ちょっとビックリしたわ。」

 

 

「実体化してても邪魔なだけだし。それで?何の用なの?」

 

 

私の姿を認め、嬉しそうな顔をした彼女は、まるで宮廷でお茶会に誘うかのように

 

 

「私、夜の森を探検してみたいの!一緒に来てくださらない?」

 

 

「……敵が近くに居るかも知れないのに、見張りを離れるわけにはいかないわ」

 

 

「ここ1カ所で見張るよりも、動き回った方が効率が良いんじゃないかしら」

 

 

「……私じゃなくてマシュとかジャンヌにしなさいよ」

 

 

「マシュはアマデウスに捕まってお話し中よ。ジャンヌは…そうね!ジャンヌも誘いましょう!良いアイディアだわ!」

 

 

聞く耳を持たない…。

なんとかして断ろうとしていたが、そこに件のジャンヌが現れた。

 

 

「マリー?声がしたのですが、誰か居るのですか…あぁ、虞美人さんでしたか」

 

 

「ジャンヌ!ちょうど良かったわ。今貴女を呼びに行こうと思っていたの」

 

 

「ほら、ちょうど良かったじゃない。ジャンヌと二人で行ってきなさいよ」

 

 

事情を飲み込めていないジャンヌに説明をせず、この王妃様を押しつけようと思ったのだが…。

彼女はぷーっと頬を膨らませてちょっと眉を寄せて、いかにも「怒ってます!」みたいな顔をした後、

 

 

「いいわ!そこまでして動きたくないのなら、ここでお話ししましょ?」

 

 

イタズラを思いついた子供のような笑顔でそう言った。

 

 

「女子会をします!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

半分押し切られる形で女子会という名の謎の儀式が始まった。

 

この場を離れようと思ったが、「見張りを離れるわけにはいかないんじゃなかったの?」と煽られたので残った。この王妃様良い性格してるわ。

聖女は面食らいながらも、なすがままにされていた。

 

 

もう勝手にしてちょうだい…。

 

半分諦めた私は樹の幹に寄りかかり、座り込む。

 

 

「紅茶とお菓子があったらもっと華やかだったわね…。でも年頃の少女が3人も居るのだもの。十分華やかよねっ!」

 

 

年頃の少女…。そ、そうね。サーヴァントは全盛期の姿で喚ばれるのだから、姿の変わらない私だけれど、多分10代くらいの身体よね、これ。…うん。覚えてないけれど、私の全盛期は10代ということにしましょう。

 

 

「そう言って貰えるのは嬉しいのですが…マリー、具体的に女子会って何をするものなのですか?」

 

 

「女子会と言ったら恋バナよ!ふふっ実は私、お昼に虞美人さんのお話を聞いてから、貴女と恋の話をしてみたかったの!もちろんジャンヌ、貴女のお話も聞かせてくださらない?」

 

 

昼に聞いた私の話というのは、十中八九『垓下の歌』のことだろう。

後世の創作だが、歌を送られた私が返歌をした後、剣で自決するというストーリー。この女王様にはあんな安っぽい話がお気に召したのかしら。

 

ふん。そんな俗っぽい話題ならお断りだ。くだらない。

 

時間の無駄ね。やっぱり人間達と馴れ馴れしくしても何にもならないわ。共闘はさせてもらうけど、不必要に仲を深めることなんて無いわね。

 

 

「貴女が恋した項羽様について話を聞かせてちょうだい?クールな貴女にあんな情熱的な逸話があるなんて、きっと素敵なお方なんでしょう?」

 

 

「そうなのよ!その逸話は嘘なのだけど、あの方が素晴らしいお方だっていうのは事実よ。特別に話してあげるわ!」

 

 

聞きたいのなら仕方ないわね!

 

 

「えぇ!いろ~んなお話を聞きたいわ!でもその代わり、その後は私の恋の話も聞いてちょうだいね?」

 

 

くっ…正直興味は無いけれど…。でもいつか項羽様が召喚されたときに参考になるかも知れないし…。

 

そう。召喚されてからこれまで、『もし項羽様が召喚されたら』という妄想…もといシミュレーションを繰り返してきたが、具体的なことがあまり思いつかないのである。

生前、2人でいるときは項羽様天下平定に忙しくてあまり一緒には居れなかったし…。

 

だから、人間の夫婦がどのような、いっ営みをしているのかはちょっとだけだけど気になるわね。ちょっとだけね!

















何かこの展開前にも使った気がする。まだ5話目なのに…。
ということで、前回の後書きに書いた"かっこいい"、"かわいい"グッちゃんでした。


かっこいいグッちゃん考えるのに3日かかったので、もう二度とグッちゃんのかっこいいシーンは書かないと思います。


※オリ設定について
①吸血
ゲーム内のマテリアルじゃ正直分からんから想像で補った。多分矛盾はしてない…はず。

型月の別作品に出てくるとある真祖は「吸血衝動」を持っていて、それを抑えるために力の七割を使っているって言う設定があるんですよ。でもグッちゃん真祖じゃないしなぁ。でも蘭良王の最期あぁだったしなぁ。って悩んでた。

この作品ではグッちゃんの吸血衝動はありません。ただ血を吸うと若干強くなります。そんな感じで。


②空想具現化
これもさっき話してた『月姫』に出てくる真祖の能力。詳しくは月姫やって。
これは地球から生まれた端末であるグッちゃんならできるかなって事で採用。



多分ガバガバなので、指摘あったらお願いします。



(追記)
書き上げたので、「感想見に行くか~」と見に行ったところ、かなりの感想が運営による対応により非表示になっていました。

おそらく小説に関係ないガチャの話のみの感想が対象と思われます。

自分で散々ガチャの話をしといて申し訳ないのですが、FGOのガチャ結果に関する書き込みはご遠慮くださいますようお願いします。

とは言いましても、「項羽と虞美人揃えたぜ!」と自慢したい方や「インド オマエ ナカマ」と肩をたたき合って慰め合いたいヒトもいらっしゃるかと思いますので、そのような方々は私のユーザーページに貼ってありますTwitterの方にお越しください。

私の注意不足のせいで、皆さんから頂いた感想が見れなくなってしまいホントに申し訳ないです…。ご協力をお願いいたします。

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